現物が先にあって後付で定義されることが多いので、各装置毎に微妙な曖昧さを抱えているが、本質は運転安全装置であり鉄道では保安装置と呼ばれるもので、各国毎の考え方や慣行で区分と命名は異なるが、西欧系は列車防護装置ATPとして機能により4つにクラス分けして定義、日本型保安装置については、車内警報装置、ATS、ATCと区分している。それぞれ一言で言えば、
- 車内警報装置(車警)とは停止R現示を警報するもの
- 自動列車停止装置:ATSとは制限速度を超える過速度の列車やR現示で安全範囲を越える列車を強制停止させる装置
- 自動列車制御装置:ATCは連続制御で安全な制限速度内に減速する装置である。
 日記目次
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 総目次
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ATS-S車上装置全回路図:Click↑
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ところが「国鉄型ATS」と総称されるATS−S型、−A型、−B型は、「停止信号警報装置」であり、信号現示や速度照査による強制停止機能は無く、「停止現示警報確認ボタン」で、以降運転士個人責任を確認させるだけで停止制御の無い、到底ATSとは言いがたいシロモノ。
「(停止信号)車内警報装置」に、5秒の時素で非常制動を掛けるだけのEB装置・デッドマン装置である。ボタン操作・確認扱いによって、信号動作と運転士個人の責任分界とする装置であるが、機能はATSではない。
すなわち「R現示を知らせて、5秒以内に確認ボタンが押されないと非常制動を掛ける」R現示警報にタイマー停止を付けただけのもので、速度照査も位置照査もなく、一瞬ブレーキハンドルを操作している間に確認ボタンさえ押せば最大速度でR現示に突入できる到底ATSとは呼べないものだが、この方式の欠陥ATSが
'66/04全国に設置された。制御に当たっての管理値は敢えて言えば「現示管理」である。制動点が決められない。
国鉄型ATSについての各社報道は、88年12月中央総武東中野事故以来2005年4月福知山線尼崎事故まで一貫して、システムに要求される必然動作「確認扱い=確認ボタン押す操作」を、「ATSを切る」と記す誤報を訂正することなく維持して読者の正しい理解を2020年現在まで妨げている。
大新聞の強烈な権威も有り、Wikipedia流のソース至上主義に毒されていると時に誤謬情報が卓越して真実を掴めない厄介なエアーポケット状態になってしまっている。
JR化後の88/12東中野事故89/04北殿事故を承けた運輸省の行政指導があって、B型は全廃してATS-Pに換装し、
S型(130kHz警報地上子)は出発信号と場内信号:絶対信号だけは信号冒進で非常制動が掛かる機能(123kHz地上子)を付加してATS−S
Nとし、
さらにJR東海以西各社は過速度防御用に車上時素式速度照査機能(108.5kHz地上子×2)を付加した
ATS-ST/(−Sx)としたが、
最高速度で冒進可能な構造で、冒進前提の防御は変わらず、警報から実際の制動限界までは30秒前後もあって、それを運転者任せ切りで時にブレーキ扱いが遅れて衝突事故を繰り返した。
また、'68年頃から駅進入番線を直進側と勘違いして高速のまま進入して脱線転覆する事故が重なって国鉄はATS−S装置を流用し列車検出コイルと地上タイマーを組み合わせて分岐器過速度警報装置を開発、制限速度55km/h以下の分岐に設置した。
これに対し私鉄ATSは翌年1月の
1967/01私鉄ATS通達で常時自動投入、3段階速度照査、赤信号R現示直近照査速度20km/hに規制している。
制御は「速度管理」。国鉄型ATSとの決定的な違いは信号冒進速度が
20km/h以下に規制されていることで、衝突エネルギー(=停止制動距離、信号冒進距離)が国鉄型ATSの
1/36〜1/42に抑えられることである。
この運輸省通達内容は結果的に前年4月に全国配備の国鉄
ATS-S(-A/-B/-C)システムを監督庁が真っ向から批判したものとなっている。
この「私鉄ATS機能通達」を取りまとめたのは国鉄から運輸省への出向者で後の国鉄電気工作局長となった石原某氏とされ、1966年全国整備の国鉄型ATSの欠陥を埋める内容で翌1967年初に発令された。
後に出向解除で電気工作局長に就任しても私鉄ATS通達は省みられず、ブレーキハンドル連動常時投入化などの若干の改良以外は欠陥国鉄型ATSの換装は出来なかったほど国鉄は頑迷固陋の支配下にあった。
私鉄ATS通達は、実施以降故障時誤扱い以外は大事故は起こっていない優れた通達であるが、国鉄分割民営化1987年4月前夜付けで事実上廃止されて民営化JRに国鉄型欠陥ATSはそのまま残された。
その結果88年12月東中野事故、89年4月北殿事故、本線上ATS常時投入違反の97年10月大月事故と繰り返された。
また過速度ATSについては各事業者に任され'05/04/25の尼崎事故後の
過速度ATS義務化通達まで放置された。
ATCは、連続速度照査と制限速度以下での自動緩解と、基本的に線路条件制限総てが設定されていて、連続制御の採用でどの位置でも停止命令を伝えられるものを言うが、ATSとの区別は重複領域があり各社の名乗りが絡み、後付で省令として定義された。
だが速度制限については総ては設定されていなかったし、新幹線ATCでは確認扱いを残していて微妙な領域がある2分類である。欧州基準のATPの方が機能区分が多い。
衝突防止に
最も優れた管理値は先行列車に対する「位置」であり、その代用特性として閉塞位置を使ったATS−Pに導入され、その優秀な実績でD−ATC/DS−ATCに取り入れられ、また山手貨物と東京トンネルのATC区間がATS−Pに置き換えられた。(詳細は
ここ:「停止位置基準速度照査方式」はなぜ優れているか!
を参照)
ATS−Sxへの25km/h速度照査導入(=赤信号突入速度制限)は比較的
安価に実現可能な方法があるが、'87/04国鉄民営化時にアベコベに私鉄ATS通達の方を廃止して存続させ事故を繰り返している。東京大阪近郊新潟仙台などATCやATS-P/-Ps採用の一部区間、全線ATS-PT換装のJR東海を除いて
JRは総て欠陥ATS−Sxである。
以下、ATS・ATCの概要について簡単に説明する。
【 車内警報装置 】
1956/10/15 参宮線六軒駅
衝突事故を機に重要線区に車内警報装置設置決定。
その機能は、停止現示を警報して、運転士に確認操作=確認ボタン押しを求めるだけ。
1941年9月山陽線網干駅急行追突事故を承けて設置途中で米占領軍命令で放棄した
鉄道省型多段速度照査式ATSは、技術水準にまだ問題もあった模様で、この時、省みられることはなかった。
[A型車内警報装置]
1300Hz搬送波信号電流を商用周波数信号電流に重畳して連続誘導式とした,車上信号化前提の方式.
東海道山陽など主幹線用に1960〜使用.1970年、ATS−S型に統合し廃止。
左右レールに流れる信号電流を車上で検出して,無信号でR現示(赤信号)を警報する.
地上側はR現示時の信号電流の増加を監視し,列車が警報地点まで来ると一瞬(1秒間)信号電流を断って車上にR現示を伝える.
前方信号機器からインピーダンスボンド(=信号電流用トランス)を介して左右レールに供給される信号電流を自車の車軸が短絡して閉回路を構成する(1巻きのコイルを構成する)ので,これを
「軌道回路」と呼ぶ.A型車警も同じく「軌道回路式」でR現示情報を伝送.
車上のコイルでこの短絡電流を検出し,B型は信号電流ゼロを以てR現示を検出.
送出側は短絡電流値で列車までの距離を知り,列車が規定の位置に来たら信号電流を瞬断(1秒)してR現示を知らせる.
信号電流は常時流れるので突発のR現示にも応答し,東京大阪の国電区間に用いられた.また,都営浅草線−京成−京浜急行の
速度照査式ATS=1号型(0.8〜3秒断)の原型である.
B型の難点は車輪踏面とレールの接触抵抗が不安定のため警報位置の調整が難しいこと.特にS型の直下地上子に相当する動作は軌道コイルによる添線式軌道回路で打ち消すなど構成にやや難があって,
東中野衝突事故(88/12/05)後の対策として運輸省の行政指導も有り1991〜2頃に関西国電区間も含めて総て
ATS−Pに換装された.
'50/ 開発.'54/ 京浜東北&山手で,'57/〜中央総武&大阪電車区間で使用開始.'88年東中野事故を機にATS-Pに換装し廃止。
[C型/S型車内警報装置]
地上子との電磁結合で車上の発振周波数(105kHz)を車上子コイルと地上子コイルの電磁結合を介して地上子の共振周波数(130kHz)まで高くして信号現示を伝える,現S型ATSの方式で地上子の共振周波数検知方式名を取って「
変周式」と呼ぶ.
近年、JR西日本が「非変周式」と呼ぶFFT方式の共振周波数検出方式を開発、実用化したため、「LC共振地上子方式」と呼ぶ方が自然になった。
準幹線用に'61年〜裏日本縦貫線(青森−米原)使用.'63/トランシスタ化してS型となる.機能としては−C=−S.
| ATS−A,−B,−S型 ATS−A,B,C=S, Sn=SN -ST=SW=SS=SK≒SF: Sx, P, PF, Ps, L, SP
|  ATS・ATC
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1962/05/03 常磐線
三河島駅2重衝突事件の多数の犠牲を機に,全線にATS設置を決めたが,その仕様は既使用のR現示
車内警報装置に5秒タイマーの非常制動を加えただけのもの,
すなわち車内警報のA型B型C/S型に5秒の無操作タイマーを付けただけ。
そのままATSのA型B型S型になった訳で,到底「自動列車停止装置」とは呼べないものだった.だから
ATS−A,B,S型の基本構造は前述
車内警報装置を参照されたい.
この
国鉄型ATS全般に言えるのは、前述の通り、実質が、停止信号警報に対するEB装置・デッドマン装置、=信号と運転士間の責任分界確認装置であり、停止現示で自動停止させるATSではないこと。
先ず,システムが,衝突防止に必要な特性値を全く把握・管理していない原理的欠陥を持っている.速度と位置情報なしにR現示だけでは制動タイミングを特定出来ないのだ。
この欠陥に敢えて目をつぶり「想定外の事故」と称して対症療法を重ねることで重大事故毎の際限のないモグラ叩き対応となった。1967年頭に出されてJR発足前夜87/03/31付けで廃止された私鉄ATS通達(S42鉄運第11号通達)の内容こそその怠慢に対する真っ向からの批判になっている。
警報点は,その区間の最高速度で規定時間空走の後,支障限界内に停止できる位置に地上子を設けた.警報を受けたら無条件で確認ボタンを押して運転を継続するが,その後の警報は全くない.67/08新宿駅タンク車衝突炎上事故はそうして確認ボタンを押してから引き起こされた.
実質EB装置でしか無い国鉄型ATSでの日常的安全確保のため、運転規則では確認扱い後、一旦停止と、再発車後に25km/h以下で停止現示の信号機手前50mまで進んで停まることを定めていた。
ところが、首都圏の過密区間では列車を捌けなくなることから、一旦停止を省略、さらに高速の橙現示制限45km/h〜55km/h制限で停止信号に接近するのが常態化して、東中野事故の半年くらい前には管理側から、運転規則違反の一旦停止省略勧告通達が出されて東中野事故'88/12に到っている。
新宿駅冒進衝突タンク車炎上事故'67/8/8での停止信号冒進抑止対策として場内信号機にも直下地上子を設置し警報を発する様にしたが,閉塞区間の短い過密線区では地上子を隣の閉塞区間に設置する例も多く,ロング地上子との、とっさの判別は困難だから,'88/12東中野追突事故のように実際にはあまり役立たなかったと思われる.(国鉄のマスコミ発表は非常制動で停めるとして世論を誤誘導して東中野事故に繋がった)
この警報位置では都市部では通常Y現示など中間現示制限速度で走行しており,実際にブレーキ操作が必要になるまで30秒近い時間遅れがあり,この間に警報を失念,勘違い等を起こし衝突事故になった(68/07御茶ノ水等).そこでR現示警報を2段階ボタン操作でクリアすることとして警報持続装置と呼んだ.
分岐器に過速度で進入し脱線転覆する事故が重なった(68/06膳所駅等)ため,国鉄は車上子検出コイルで地上タイマーを起動し地上子から警報を与える地点速度照査:分岐器過速度警報装置を設置した.
しかしこれは5秒時素により55km/h以下の速度制限にしか使えず,高速分岐が無防備となった.84/10西明石でのブルトレ富士脱線大破事故はそうして過速無防備の60km/h制限の渡り線に100km/hで進入して車体がホームに衝突して起きた事故である.
この時運輸省は過速度(青信号)のATS設置についてなぜか指導を出していない。前年67年私鉄ATS通達の優れた水準からしてこれは残念だ。もしこの時、過速度事故に対する「青信号ATS通達」を出していれば尼崎事故を予防できた可能性が強いのだから。運輸省鉄道局にとって国鉄は「聖域」だったのだろうか?(05/09/06追記)
ATS投入忘れ事故が続き(68/02米原等),これに対して'67/01私鉄ATS通達は自動投入機能を求めたが,国鉄はATS電源未投入防止装置を付けて,ノッチが2段目以降に進まない様にした.しかし後年,ブレーキハンドルの挿入やマスターキーなど運転装置に連動させた方が妥当なことに気づき,ハンドル連動ATS電源投入方式を採用したが,その改造途中の97/10/12,大月駅で回送電車が誤出発をしてスーパーあずさ衝突脱線転覆事故を起こした.
ATS−Sn/SN/旧SF (JR東日本,北海道,貨物)
東中野追突事故88/12&北殿駅正面衝突事故89/04を経て,直下地上子を警報(130kHz共振)ではなく,即時非常制動(123kHz)とした−Sn/−SNがJR東とJR東海共同担当で開発され全JRに配備された.この即時停止地上子も地上タイマーと組み合わせて分岐器過速度防止&警報装置を構成し,非常制動や警報動作を行う様にした.短編成列車の誤出発による支障限界突破を防ぐ誤出発防止装置もこの共振周波数の地上子を用い,列車進入から一定時間後に有効にしている.JR東日本の関東近郊(P区間)以外と,北海道,及び当初の貨物がこの改良を採用した.
ATS−ST/−Sx:/SW/SS/SK/SF/Sn' (JR東海/S系の総称)
ATS-Sx時素速度照査地上子対と看板
-SF/-ST/-SW/-SK/-SS
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JR東海は上記−Sn/−SNに加え更に108.5kHz地上子対を置いて,この間の通過時間を車上タイマーと比較して速度照査を行う装置を開発してATS-STとし、JR東海以西のJR各社にも採用され、最近ではJR東日本のATS−P併設区間にも要所に設置されている。これは分岐器過速度防止装置として開発され,無防備だった制限速度60km/h以上の分岐器に各3対ほど設置されたが,更にこれを頭端駅や出発信号の過走防止装置として、橙現示速度を前提に各2対〜3対、地点の最高速度前提の各4対〜5対設置される様になった.
Y現示速度で過走した場合に支障限界内に停止できる設定では当然,Y現示速度を超えて進入されると防御出来ない.ロング地上子の位置でY現示速度の速度照査があれば概ね冒進や支障限界突破を避けられるが設置されていなかった.
JR西,四国,九州はこのATS−STから列車番号送信部を除いてCPU制御とする車上装置の改良を行い,それぞれATS−SW,−SS,−SKと呼んでいる.
速度照査用車上タイマー(速照時素)は旅客電車用標準0.50秒に対して機関車&ディーゼルカーでは1割近く低速の0.55秒とした.貨物会社搭載ATS−SFも後に速照を搭載したが、基本的にこれに合わせ550mSとした.
またJR九州の振り子式電車搭載のATS-SK受信機は時素を0.45秒に設定して10%高速照査としている.(参照写真:06/2/13記)
これらATS−Sからの改良型を総称してATS−Sx型と呼んでいる.
尚、JR東海に乗り入れるJR東の車両にはATS−Pに加え−Snに換えて上位コンパチの−ST速度照査ボードが増設されており、この車上装置を通称−Sn’と呼んでいる.
経過を省いた現ATS-Sx概説をここ[変周式]、([ATS-SS])に述べる.
尚、ATS-Sn/-Sxでは総合試験車による地上子コイルの車上点検に対応して不動作時も共振させ、その周波数を103kHzとした.また車上の常時発振周波数は-Sn/Sは105kHzだが他の-Sxは103kHzとしている
ATS−P
(車上で停止予定点からの速度限界を逆算し制動する方式)
西明石ブルトレ富士脱線大破事故'84/10と天王寺駅事故'82/01を承けて,本格的な位置−速度制御を行うH型ATSを開発,'86/年末に西明石,大阪,京都,草津の4駅,F66の16両に装備して,分岐器過速度防止装置:H型ATSとして運用を開始.これが現行ATS−Pのプロトタイプ(原型)であり信号保安関係はJR各社共通コードで互換性を維持している.
ATS-Pの動作は,R現示での停止予定点(=閉塞絶縁点)を想定して,ここを基準点に各地上子からそこまでの距離と勾配を車上に与え,自列車の標準減速性能と刻々の位置から許容速度を逆算,これに接近すると警報を発し,停止速度限界を越えると強制制動を行う.直通ブレーキ系では緩解の速い常用最大制動が掛かり,自動ブレーキでは非常制動が掛かり,10km/h以下に減速するか,地上子から現示アップを受信するまで緩解しないので、降雪・結氷時の高速運転等特殊条件を除き基準点を超えることはない.
R現示での停止予定点距離は信号現示段階(R,YY,Y,YG,G)により最大5種類与える.停止地上子は各信号毎に4基(閉塞信号)〜7基(場内信号、最大8基)設置して距離情報を与えるので,多重系を構成してATS地上設備の故障をカバーし情報が更新されなければ冒進せず外方の停止予定点までに停止する.
地上子設置位置は、最高速度でも停止可能なT600、直下取消再設定のT30〜T25、電車・気動車がY現示速度で停止可能限界のT180、停止までの間に減速途中パターン取消地上子T85設置が基本で、T180までに現示アップされるとブレーキ操作の必要がない。この4基に加えて低減速車のY現示速度停止可能限界としてT280などが条件により追加され実質連続制御化する。場内信号では更にT130、T50、T280が追加され直下地上子はT25で停止信号時に即時停止コマンドを発する。
速度制限の場合は制限開始点までの(放物線)パターンを刻々算出して減速し,制限+余裕速度以下になれば緩解できる.従って無駄な徐行区間や冒進のない適切な制御が行われる.
'88/夏の上野駅での特急冒進インシデントを承けて,東京を中心にATS−P換装を決め,88/12/01新開通の京葉線新木場−南船橋−蘇我を初の全線ATS−P区間としたが,その直後の12/05中央緩行線東中野追突事故発生,12/14函館本線姫川曲線過速度脱線転覆事故発生で,ATS−Pへの換装前倒し拡大となったが,加えて残るATS−S区間の直下地上子非常制動化改良(Sx化)が決まった.
ATS−PT
JR東海が全線に設置したATS-Pで、保安コードは協議決定により7社共通である。福知山線尼崎事故2005/4/25を経て、JR西特認コードだった「本則『+α』」をJR東も採用、ATS-PTで増設の、路線の最高速度、無閉塞運転区間長も7社共通コードと合意された。
ATS−PF
貨物仕様ATS-P:車上装置.原理的には旅客用Pとの違いは無いが,ATS-Pのコードに貨物用速度制限の割当がなく、貨物の様々な種別に全く対応出来ないため合成音声で旅客の制限速度を読み上げる機能があるとか,一般貨物ではブレーキを強める方向の操作しかできないことから等加速度前提の旅客用ATS-Pとは制動曲線が合わないなどでパラメター設定だけでは解決出来ず、機能としても貨物用のATS-Pが必要である。先頭の取消地上子の最適位置が電車よりかなり手前なので、現示アップ後も減速を要求されやすい等の相違が出るが,詳細は不明.
ATS−Ps
ATS−Sxの上位互換で,多変周型ATSとしてATS−Pと同様のパターン型速度照査機能を持つ.地上子位置と間隔で勾配補正や速度制限を行う.
制動パターンは2段階で、−ST過走防止装置が高速時を放置しY現示速度以下しか防御しないのに対し,最高速度から防御して危険なエラーをフォローしている.地上子非動作の103kHzで取り消しとなる廉価版で,亜幹線用として新潟近郊,仙台近郊に設置された.
ATC−L/(ATC-1F型) <ATC-L>
'88/03/13 運転開始青函トンネル(津軽海峡線)の,高湿度で霧の発生しやすいトンネル区間向きの車上信号式ATSとして開発,装置としては新幹線ATCの構造に準じたもので,自動ブレーキ搭載の機関車ED79に対して予告信号を現示,次閉塞に突入する前に手動操作で減速を完了させるATSが採用された.減速未完了のまま次閉塞に突入すると常用制動で停止する.直通ブレーキの電車はATCとして運行している.車上信号式ATSは認めないという運輸省令でクレームが付けられて現在ATC−L型と呼ばれているが、機関車が自動ブレーキであり込め不足を起こす状態でのATCはあり得ず機能としては国鉄JR命名の通りATSである.交流運転電流のノイズに強い電源同期式SSBで1搬送波2信号波組合せ方式を採用.周波数割当は新幹線ATC-1Dの副信号波から2波を組み合わせて速度信号にしているが、そのコードに新幹線との共通性は見られない.コードが違えば全く別物だし、元々盛岡以北はDS-ATCでこれとも一致しない.だから在来線初の交流電化区間のATCとしては新幹線で実績の厚い方式として採用されたのだろうが、「新幹線との共用」を言うなら、相互に閉塞長まで変えての時間差「排他的共用」しか考えられない.だから「青函ATCは新幹線ATCとは互換性がない」が正しい.自動ブレーキではATCで自動緩解するとブレーキエアの込め不足を起こし,安定した自動回復が困難なので,汎用には手動のATSしか使えないしブレーキ操作の制限を生ずるから装置としてはATCでもコード仕様は明らかにATSだ.
#次区間予告現示が特徴:110,Y110,45,R45,0,R0,02E
ATS−SP
鉄道総研が試作提唱したATS−Sxの上位互換で,不採用のママ廃棄されたもの.ロング地上子でATS−Pと同様のパターン型速度照査を行い,軌道電流の転極でパターン解除をする構成だが,信号電流は絶縁破壊のフェイル・セーフのため閉塞区間毎に極性を変えて居り,閉塞区間外設置の地上子で作られたパターンは閉塞区間が変わると消去される可能性があるため、輸送量の多い短小閉塞区間がある線区に使えず嫌われたり,車載の位置情報のメンテなどに問題があったようで,一部で話題にはなったが結局採用されなかったが、−Sx地上子をマーカーとする車上データベース方式は後日制御式振り子システムに採用され、その実績からD−ATC/DS−ATCに採用された.
ATS−X
鉄道総研が試作したATS-Sロング地上子内にトランスポンダを組込んでケーブルを兼用する地上子を使って現示毎の停止点までの距離を車上に伝え、現示アップ情報を軌道回路から伝えようとするものである。車両側からみての互換性はない。
ATS-Pと比較して流用するロングケーブル分のコストダウンは図れるが、パターン取り消し法(停止位置距離更新法)を地上子から軌道回路に換えて果たしてどれ程の削減効果があるか、JR東西P区間への相互乗り入れでP,X双方の受信機を積んでも採用する利点があるかどうかを考えると、独立設置ならほぼ同格としても、先に普及してJR各社共通コードとなっている現ATS-Pを無視してまでの採用は何処も二の足を踏むのではないか。
現ATS-Pの供用20周年低原価再設計プロジェクトの方が現実的で、鉄道総研開発品はSTに続きまたもお蔵入りの憂き目をみるのではないだろうか。全く独立の鉄道に導入するのは可だから、台湾、韓国の大都市近郊など日本型過密ダイヤの鉄道に導入するには適している。06/06/25追記項
ATS用語メモ
06/07/01追記
<ATS_Words>
- 信号電流を地上装置から列車に伝える方法として、左右のレールを列車の車軸で短絡させて一種の1巻コイル(ワンターンコイル)を形成して信号電流を伝える「軌道回路」方式と、信号の遣り取り専用の素子を設置する「地上子」方式とが使われている。
- 「軌道回路」とは、左右のレールに信号電流を流して情報を得る方式一般を言い、元々は自動閉塞方式で、車軸による短絡で列車の在線を検出するための方式で、レールを信号毎に絶縁して閉塞区間とし、その終端から始端に向け2本の線路に信号電流を送り、それが手前側の信号地上装置に到達すれば閉塞区間に列車は不存在、車軸に短絡されて到達しなければ列車有りとして閉塞入口に停止信号を現示する。
この軌道回路に流す信号電流にATSやATCコマンドを載せて列車を制御し信号を知らせる方式を「軌道回路方式」と呼んでいる。信号電流は商用周波数をそのまま使うほか、分倍周したり、AF発生器に拠るものがある。
商用周波数をそのまま使う場合は、その極性(位相)で前閉塞区間の在線非在線を伝えてそれを有極継電器で検出し3位式信号を構成する場合が多い。AF式は周波数の選択で現示を伝送する。
「軌道コイル」は、車軸による短絡電流の有無を検出することで閉塞区間中の軌道コイル位置より先に列車が居るかどうかを検出するもの。新幹線の駅進出判定に列車後方側から用いられて分岐転換時期を早めている。
- 運転電流は「インピーダンスボンド」と呼ぶ信号電流分離トランスの中点から給電して、その巻線の両端を左右のレールに繋いで信号電流と共用にしている。重負荷区間ではインピーダンスボンドが磁気飽和してトランス機能を喪うことを怖れてか、信号電流トランスを別に設置することもある。
車軸検出器

07/12/22 東京駅#16
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- 軌道回路方式は列車の位置に拠らず連続して信号を受信するので「連続制御」、地上子はその地点だけで信号を受け渡すので「点制御」と分類される。地上子情報を記憶して連続速度照査する場合も信号の受け渡しに着目すれば途中変更できないので点制御に分類される。B型車警・ATS−Bや後述するATCは軌道回路方式で常時情報を得ている。
- 地上子にはATS-Sxなど制御コマンドをそのLC共振周波数として持つ「変周式」が多いが、ATS-Pでは制御パラメターをデジタル信号として送信する「トランスポンダ地上子」が用いられ、それらではコマンドを直接車上に送信する。新幹線の過走余裕不足地点での過走防止装置などイレギュラーな用途には誘導コイルを使った「車軸検出式地上子」や、軌道コイルも用いられているが、これは列車検出のみ可能だから、コマンドは送れないため、地上装置を介して軌道回路から送る。
- 変周式(=共振周波数方式)というのは、地上子がコイルとコンデンサーによる共振回路を構成してその共振周波数に各種制御コマンドを割当ているが、この地上子コイルからコマンドを読み取る方法として、車上の発振コイルが電磁結合してその間発振周波数が引き上げられるのをフィルターで検出する方式を変周式と言い、その地上子は「変周式地上子」と呼ばれるが本質は「LC共振地上子」である。国鉄JR系のATS-Sx、京王、小田急など多くで使われている。
また、JR西日本で新設計のATS車上装置ではATS-P3とATS-Sw2を同一筐体で実装しているが、その−Sw2部は、変周式コマンド検出法をやめて、一種の白色ノイズを送信して受信側で周波数分析を行い車上子に電磁結合した地上子の共振周波数を知る周波数分析方式(FFT方式)を採用した。饋還発振ではないので他の周波数に引きずられて誤動作するようなことは少なく、実績次第で他に拡がりうる受信方式である。この方式を念頭にATS-Sx地上子の動作方式の別称を「LC共振地上子方式」としておく。今後ATS-Sw2の普及により数年〜10年ほどで似た様な命名が一般呼称化するだろう。
ATS-Sロング
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対電気検測車改造
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ATS-Sxロング
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トランスポンダ地上子
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- 単変周と多変周の違いは、変周式地上子の共振周波数が単数かどうかで分けていた。ATS-S旧型地上子が130kHz単一周波数地上子で、停止信号でない場合は共振コイルをリレー接点で短絡して共振Qを下げて変周しない様にしていたが、後日、検測車で車上から地上子を検査する方式採用に合わせてその短絡線に10nF前後のコンデンサーを挿入して停止信号でない場合の共振周波数が105kHz〜103kHzになるよう改造を施し、更に制御振り子列車の絶対位置マーカーとしても使うようになったので電気的には純粋な単変周はなくなり、信号地上子機能として単一状態を割り当てた単情報となった。ATS-Sx系地上子はそうした2周波単情報が基本であり「単変周」という言葉自体ほとんど意味がなくなった。
最近の区分けは「多情報−単情報」点制御方式/地上子としている。ATSシステムとしての使用周波数の種類を考える方が妥当になった。
多変周方式はそれぞれの地上子に複数の共振周波数を割り当てたもので、信号現示数だけ共振周波数を割り当てる用法が多い。京王、小田急はこの方式で、信号現示を制限速度として記憶して連続速度照査しているが、制御情報は地上子でしか得られないので連続制御ではなく点制御である。
東武TSPは、多変周地上子式だが、その周波数の幾つかに位置基準パターン生成を割り当てて規定位置に設置している。
JR東日本のATS-Ps地上子は有効/取消の2周波変周地上子の組合せをコマンドとして位置基準パターン生成に割り当てて規定位置に設置している。
- トランスポンダとは元々は応答装置で、航空自衛隊にF104J戦闘機導入時に空戦での「敵味方識別装置」として一般に知られるようになったが、衛星通信の中継器をも指しているし、旅客機に搭載してレーダー画面に便名・高度などを表示させ航空管制に利用するものでもある。鉄道では地上子装置名としての色彩が強く、呼び掛けへの応答よりも「デジタルでの通信」に着目して、実動作が片方向でもトランスポンダ(地上子)と呼んでいる。しかし総て一方通行のATS-PN地上子がトランスポンダと呼べるかどうかは若干疑義があり、次第に「PN地上子」などの鉄道的呼称に収束していくのではないだろうか。
- 「添線軌道回路」というのは、レールに沿わして構成した「ワンターンコイル」で、車両側のアンテナからみれば軌道回路と変わらない。ATS-Bの直下(誤出発)警報や、新幹線の過走絶対停止03区間に使われている。
- AFとは元々は「可聴周波数」の意味で、具体的には16Hz〜20,000Hzを指すものだが、利用分野別に若干の意味合いが異なり、AF増幅器とはAF帯域を含む増幅器一般で、それが直流域を含むと直流増幅器となり、電話が300Hz〜3,000Hzが基準で、鉄道はこれにほぼ準じている。AFの鉄道での対立概念は「商用周波数」(50Hz〜60Hz)だが、交流電化区間などのノイズ対策で分周や倍周、分倍周軌道回路が用いられて、これらは当初メカ式の電動発電機やパラメトロンなどで商用周波数電源から作られたためかAFではなくLFなどとして扱われている。ATS-Pでは伝送に高周波RFが使われるようになった。
- ATS-P電文とはATS-P信号コードの国鉄呼称。
- ポーリングと割込、垂れ流し
データ処理手法で、自動計測装置やCPUなど中央処理部が周辺装置に問合わせをして結果を得る方式を「ポーリング」、逆に、周辺装置が中央処理部に状態変化を伝えて処理要求する方式を「割込」と呼んでいる。周辺装置が他装置との制御信号の遣り取り無しに常に情報を送信して、受信側が任意に拾う方式を通称「垂れ流し方式」と呼んでいる。
CPUには概ね割込受付線があり、割込信号を受けると外部装置を特定して優先度を確認してそれまでの処理を棚上げして優先処理(割込処理)を行う。優先処理が必要な用途には順位付けをして優先割込処理をして応答時間短縮を図る。周辺装置の処理が終わり次第に元の処理に復帰する。
ポーリングは一回りに時間が掛かるが割り付けた全部を順序通りに回るので、様々な状態を順次監視、記録する用途に用いるが、応答時間が最大で処理1周分待たされるので、それを待っていられない緊急事項は割り込み処理に割り付ける。
PC制御から広がったから、これらの言葉がATS-P動作解説文に突然無解説で出現して一般門外漢を混乱させることもあるが、ポーリングと言わなくても「最大8個の地上子を定められた順番に呼び出して制御する」とも表現できて、高度概念ではない。地上子を信号外方から順に呼び出すが列車が通過した地上子の呼び出し順番は後に廻すなど1200bpsの低速順次通信による遅れの影響をなくするナルホド!の制御をしている。
3位式自動信号結線例
(保安装置は上図信号現示を車上に伝えるものである)
See→[用語説明補足]
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ATC(自動列車制御)とは,営団日比谷線(1961年)と新幹線('64年)でATC(Automatic Train Control)という名乗りで運行が始まって,その定義が後追いになっているので(法定を除き)絶対的なものは存在しない様だが,共通要件としては,
主制御に連続コード式を採用(点制御は補助)
自動緩解機能があり,制限速度以下に速度低下するとブレーキが緩む
線路条件を総てシステムに設定している
が挙げられる.
しかしながら,3項目は,現在,在来線の臨時速度制限がシステムには設定されず,また新幹線も東京近郊の中間的速度制限が運転者任せだから,設備運用の問題ではあるが厳密にはATCの要件を満たしていない.新幹線30km/h現示も自動緩解ではなく確認扱いが必要だから,一律定義ではない.ATSとして開業した津軽海峡線青函トンネルを「車上信号のATSは省令上認められない」とかいって「ATC」を名乗らせたのはナンセンス。込め不足問題を抱える自動ブレーキ車にATC設置こそ誤解の基で却って困る。ハードとしてはATCのそれを取り入れながら、自動ブレーキ車である機関車列車に付きものの「込め不足」の懸念からATSを名乗った当初のJR側の判断の方が運輸省の言い分(省令:法定)より妥当である。
車上信号式 は国鉄JR−ATCだけの要件だろう.3年先行した営団日比谷線&東西線が地上信号式のATC(WS−ATC)だからだ.
以下、断片的だがATC地上装置の解説として,記しておく.国鉄のATC車上装置は固有名称の他1〜6型と番号が付けられ線区に跨って運行するものもありうるし、改造部は同一型名に飲み込むので、入り組む部分が出来、設置車両基準ではスッキリするが、具体的な動作の絡む構造解説には適していない。
営団日比谷線・東西線:<WS-ATC>
日本初のATC、日比谷線'61年,東西線'64年開業,AF-FS式5現示地上信号式
「AF−FS」:搬送波がAFで、その変調方式がFS.
「AF」:Audio Frequencyとは,可聴周波数だが,鉄道信号の場合商用電源周波数(50/60Hz)以外の周波数を指している.ATC信号の搬送波にAFを用いる.
「FS」:Frequency Shiftとは,必ずしも明確な概念ではないようだが,(副)搬送波を変調するに際して,デジタルの0/1に対応して(副)搬送波の極性を反転させる変調方式を
FSと呼んでいる例が多い.初の火星探査機マリナー4号の画像変調方式だった.副搬送波15周期で1ビットを送信.初の火星表面写真だったが写真1枚の送信に数時間を要した.
「FS」というのはデジタル信号1ビットの伝え方の問題の様で、敢えて分類すれば、±90°の位相変調といったところ.これがなぜ「FS」と呼ばれるのか釈然としないのだ.
搬送波を変調する方式としては
振幅変調(AM,DSB,SSB),周波数変調(FM),位相変調(PM)がある.
変調波に(1/周波数)の重み付けをして位相変調すると、周波数変調に等価になるので安定した周波数が簡易に必要な場合に利用された.狭帯域FMは側波の位相がAMとは90度違うだけで周波数成分は同じである.
PWM,PAM,PFM,PCMはパルス波を搬送波として信号を載せる方式で、更にそれでマイクロ波を搬送波として変調し通信に使ったもの.
☆PCM:パルス符号変調はA-D(アナログ−デジタル)変換結果を1ビットづつ順次伝送するもの.
☆PWM:パルス幅変調はパルス幅で信号波を送る方式.VVVFで多く用いられたDC−AC変換の基本技術.
☆PFM:パルス周波数変調はパルス周波数(周期)で信号波を送る。チョッパー車に利用された.
☆PAM:パルス振幅変調はパルス振幅で信号波を送る方式.
☆AF−AM:搬送波がAF:商用交流電源以外の周波数で、その変調方式がAM:振幅変調.千代田線・常磐線('69年開業)ATCに採用.振幅変調と云っても実態は、搬送波を信号波周波数でon-offしている状態.テキスト「鉄道信号一般」P91に「DSB」とあるが、搬送波も送る純AM=広義のDSBであり、決して抑圧搬送波方式ではない.(波形図参照)
東海道新幹線:JNR-ATCの祖 <JNR-ATC>
(ATC-1A東海道,-1B/-1W山陽,-1D全国共通2搬送波式:2搬送波方式に改造、速度値は線区毎に決められた分は東西を統一できなかったが、基本コードは同じで国鉄JRアナログ式ATCの標準構造になっている)
電源同期SSB1波方式(1A型〜):01,02,03,30,70,110,160,210km/h の速度信号ランクで1964/10営業開始し、後の2周波化改造では基準の制動性能向上で110→120km/h,160→170km/h,210→240km/hと改め、更に各線毎の高速度信号などを加えて電源同期SSB2搬送波2信号方式(1D型〜):01,02,02E,03,30,70,120,170,240km/h,270,285,300km/hなどとなり、現在デジタルATCへの換装工事が進められている。
営団地下鉄日比谷線(1961年〜)に次ぐ日本で2番目のATC.30km/h〜210km/h信号波が軌道回路(左右のレール)に送出されて車上子で検出される.信号波が閉塞区間入口の地上装置で検出されなければ列車在線、検出されば不在線として自動信号系を構成する.
01:先行列車が在線する閉塞の手前に停止させるために、軌道回路から30km/h信号を受けながら制動距離+余裕だけ手前の「P点」と呼ばれる地上子から停止信号を受けた状態.現示アップでクリアされる.P点は各閉塞毎にあるが30km/h現示にのみ有効.
02:先行列車在線閉塞区間突入の無信号状態.故障、停電、誤コードなど.
02E:上記状態で、雑音に依る誤動作を防ぐため軌道回路に送る停止信号.-1D型改造で導入。
03:絶対停止の添線軌道回路からの信号:誤出発・過走防止装置.
1974年の品川信号事故&新大阪誤現示事故を経て速度向上改造と併せ(2搬送波式:-1D型)2信号波組合せ方式&03無変調波を変調波に上位互換で改良している.現在は更に東北新幹線盛岡以北のDS-ATC同様ATS-P照査方式の位置情報から制限速度パターンを生成する方式への換装工事が行われている.従前ATCとの互換性は論議されたが独自の方法となった。

B点:ホームに差し掛かると30km/h現示に落とす点.近年線路容量増加・高速化のため踏み込み送信により閉塞境界より先の停止パターンギリギリに設定し直して時隔を詰めている.
SSB方式:単側波方式. <SSB>
信号波成分だけ送信し,搬送波を送信しないので、単純な振幅変調方式に較べて信号波を6倍以上(会話なら50倍!)の電力で送れるため、現在AM通信の主流になっている.
電源同期方式:
送受信とも電源周波数を基準に搬送波を作成して、信号波を送信する方式.交流電化の場合、運転電流の高調波が極めて強力で信号波をこれと常に分離するためと、SSB方式は受信側で搬送波成分を加えるので、周波数の正確な一致が求められる.そこで共通電源の周波数を基準に採って逓倍し一致を図る方式=電源交流を歪ませて高調波を取り出す方式が採用された.歪み方式は高倍率になるほど効率が悪いので、発振周波数をカウンターなどで分周してそれを基準周波数信号と比較して発振周波数を調整するPLL(=Phase Locked Loop)方式が有利になる.
振幅変調方式
: 伝えたい信号波で振幅変調を行うと、搬送波周波数の両側の信号波周波数だけ上下の周波数に,それぞれの振幅が最大で搬送波の1/2の「側波」と呼ばれる信号波が現れる.情報を伝えるには側波だけあれば良い.(正弦波の積を和に分解すれば簡単に判明)
搬送波もそのまま送る方式が一般商用放送に使われるAM変調
上下の側波だけ送るのを「DSB」両側波
(直流電化区間ATCに採用∵基準となる交流電源が車上には来ない),
片側だけ送るのを「SSB」単側波と呼ぶ(交流電化区間ATCに採用=新幹線と青函).
搬送波周波数より高い側波を上側単側波U−SSB、
低い側波を下側側波L−SSBと呼び、
新幹線では東・北方向(博多→東京→盛岡・新潟・長野)線路を
U−SSB、
南・西方向(盛岡・新潟→東京→博多)をL−SSB
と決めている.(疑問!:北陸新幹線全通で米原につながると、1周して逆方向!困った!w)

国鉄型ATC一覧
装置型名
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| 方式
| 電 化
| 設置線区
| 供用
| 廃止
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地上 | 車上
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1A | 1
60Hz
| 1信号波 1搬送波
| 電源同期SSB
| 交流電化区間
| 新幹線
| 東海道
| 64/10/01
| ●1D→ATS-NS
1B | 山陽 | 72/03/15
| ●→1W
1D | 2信号波 2搬送波
| 東海道 |
| ●→ATC-NS
1W | 山陽 | |
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1D | 2 50Hz (60)
| 東北 上越 長野
| 82/06/23 82/11/15 97/10/01
| Δ→DS-ATC 全国標準型
| | | | | |
| 1F | L | 2信号波 1搬送波
| 在来線
| 青函(新 在共用部)
| 88/03/
| ●在来線コード のみ→DS-ATC
| | | | | |
| − | 3 | 1信号波 1搬送波
| BSB
| 直流電化
| 東西線 | 69/03/
| ●→CS-ATC
1J | 4 | 常磐地下
| 71/04/
| ●→新1J?
1C | 5 | 東京隧道 | 72/
| ●→ATS-P
1E | 6 | 山手 京浜東北
| 81/
| ●→D-ATC Δ
埼京赤羽 | 86/ | ●→ATACS
| 1J? | 4? | 2信号波 1搬送波 | 常磐地下 | 00/07/ |
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●パイロット信号の得られる交流電化では電源同期SSB方式
基準のない直流電化でAM/BSB方式(キャリア断続方式)を採用
●地下鉄東西線は営団の地上設備のため国鉄JRには車上装置3型のみ
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【 デジタルATC 】
D-ATC,DS-ATC,KS-ATC=ATC-NS <D-ATC>
デジタルATC区間
名称 | 線区 | 供用 | 備考
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| DS-ATC | 東北新幹線 | 02/12/01 | 大宮−八戸
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D-ATC | 京浜東北線 | 03/12/21 06/07/30 | 大宮−鶴見 山手
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KS-ATC | 九州新幹線 | 04/03/13 | 八代−鹿児島中央
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ATC-NS | 東海道新幹線 | 06/03/18 | 東京−新大阪
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| T?-ATC | 台湾新幹線 | 07/ | 台北−高尾
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「デジタルATC」は,先ず東北新幹線八戸区間(DS-ATC)と京浜東北線の換装(D-ATC)に採用され,九州新幹線(KS-ATC),東海道新幹線換装(NS-ATC),山手線で稼働中で、鶴見以南の京浜東北線も換装工事中である.(右表)
デジタルATC方式最大の特徴は,地点基準の制限速度を車上で算出して速度照査を行う「ATS-P方式速度照査」(パターン方式)を採用して無駄な徐行距離を無くし列車間隔を詰められる様にして輸送容量を増やしたことである.これが各線ATC更新改良の動機となっている.
信号の遣り取りに従前の信号周波数ではなくデジタル方式を中心に用いたことで「デジタルATC」と呼ぶが,それは動作の基本原理に関わるものではない.
次いで線路条件データベースを車両側に持って,位置など索引情報から限界速度を得ることで地上側設備の簡略化を図っている.この車上データベース方式は地点機器と1対1の関係ではないので安全装置の構成としては議論を生ずる処である.最初に車上データベース方式を提唱した鉄道総研開発のATS-SPはどこも採用しなかったが,ATS-Sx地上子位置を読みとり車上データベースと照合して振り子を制御する方式の採用実績を経てATC系に採用されることとなった.
パターンは表で持つJR東日本方式と逐次演算の東海方式があるが原理的な差はない.JR東海方式が最大演算時間を読み誤った模様で予期せぬ非常制動が掛かり06/04〜/05に車上ソフトを改修換装している.
(06/05/21追記)
通達 「自動列車停止装置の設置について」
昭和42年鉄運第11号 (1967/01)
自動列車停止装置の構造基準
自動列車停止装置の設置基準に該当する区間に設置する自動列車停止装置の構造は、次によらなければならない。
- 場内信号機、出発信号機、閉塞信号機が停止信号を現示している場合、
重複式の信号制御区間の終端、
重複式でない信号制御方式では信号機の防護区域の始端までに列車を停止させるものとする。
- 速度照査機構をそなえ、速度照査地点を照査速度を超えて列車が進行する場合、自動的に制動装置が動作するものとする。
- 照査速度は線区の特性に応じて多段階とし、列車最高速度が100km/h以上の区間は3段階以上、100km/h未満の区間では2段階以上を標準とする。
- 停止信号を現示している信号機に最も近い地点における照査速度は20km/h以下とする。
- 車上設備の機能が正常であることを運転台に表示する。
- 地上設備設置区間を運行する場合は、列車は車上設備を開放して運転できないものとする。
注記:地方鉄道法(=私鉄対象)による事業者向け。
ATS・ATC改訂版(日本鉄道電気技術協会'01/07刊 tel 03-3861-8678)3ページより
通達実施以降、故障時・誤操作を除いては大事故には至っていない。
この運輸省通達は国鉄分割民営化(1987/04)前に廃止されている。そのため欠陥ATSであるATS-B/-Sが存続して、東中野駅追突(88/12)など防げたはずの衝突事故を起こしている。
[地上設備別ATC分類]
[新幹線ATC] (総て交流電化区間)
ATC-1A 東海道新幹線(開業時)
ATC-1B 山陽新幹線(開業時)
ATC-1D 東北・上越新幹線:全国展開用改良
ATC-1* 東海道新幹線2周波改良(型名不詳、1D?)
ATC-1W 山陽新幹線(高速化改造:車上装置にATS-1Jあり)
DS-ATC 盛岡−八戸間DS-ATCで開業('02/12).ATS-Pの位置基準のパターン照査を採用
KS-ATC 九州新幹線(04/03/13〜)に先行採用、換装工事中のATC-NSと同一仕様
ATC-NS:東海道新幹線もATS-P同様の位置基準の速度照査式(パターン照査)に換装'06/03/18供用
[在来線ATC] (津軽海峡線のみ交流電化区間.他は直流区間)
ATC-1J 常磐線各停ATC化:('71年,千代田線直通)
ATC-1C 総武快速線ATC::錦糸町−東京('72年)−品川('76年)間
ATC-1E 山手、京浜東北,根岸線ATC化:('81年)
ATC-1E 埼京線(+赤羽線)ATC('86年)開業
ATC-1F 津軽海峡線(青函トンネル)('88/03/13)開業
ATC−L:実質はATS
ATC-1Jn 常磐線各停1段制動新ATCに換装:(2000/07千代田線と共用)
D-ATC 京浜東北線換装('03/12/21)
ATS-P同様の停止位置基準速度照査パターンを算出するATCに換装
[車上装置別ATC分類]
車上設備は個々名称の他、番号で呼ばれている。番号は必ずしも時系列と一致していない。
後日車両関係での名称整理と思われる。
型名 | | 設置路線
|
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車上 装置
| 地上 設備
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1型1A | 東海道新幹線(初代1964/10/01〜)
| 1型1B | 山陽新幹線(初代72/03/15〜)
| 1型1D | 東海道山陽新幹線:2周波改良全国標準型
| 1型1W | 山陽新幹線
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| 2型1D | 東北上越新幹線(初代82/06/23〜/11/15〜)新幹線全国標準型、長野97/10/01開業〜
| 3型1J | 常磐線(千代田線乗入れ1971/〜)
| 4型−− | 地下鉄東西線内WS-ATC乗入れ型(69/03全通)
| 5型1C | 横須賀総武線(東京トンネル内72年開通:地上設備は2004に廃止)
| 6型1E | 山手京浜東北根岸赤羽線(1981〜)
| ?型1F | ATC-L 青函トンネルATC(88/03〜)
| ?型?? | 常磐線(2000年07月〜)
| ?型?? | DS-ATC用('02/12/01〜)
| ?型?? | D-ATC用('03/12/21〜)
| ?型?? | KS-ATC九州新幹線(04/03/13八代以南開業.ATC-NSとコンパチ)
| ?型?? | ATC-NS東海道新幹線換装(06/03/18)山陽換装中
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【 私鉄のATS・ATC 】
○ 東武鉄道ATS=TSP
○ 京王ATS
○ 小田急ATS
○ 都営浅草線/京成電鉄/京浜急行ATS
○ 京浜急行ATS
○ 日比谷線東西線ATC
mail to:
adrs
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Last Upload:
Last Update: 07/03/25 ('7/3/04,'6/6/25,'4/3/09,'3/12/22,'1/11/6♪up56-57等に加筆)
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