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[109]. BUG出し不足のATC-NS! | ||||||||||
12日付け各紙朝刊に拠れば,先月東海道新幹線で稼働開始したデジタルATCでの非常停止が続発して原因を調べていたが,車両側のプログラムに問題があり処理能力を超える演算で停止していることが分かり改修することをJR東海が発表した. デジタルATC化で新たに加わった主要な機能はATS−Pの速度照査方式である「停止基準点からの距離と自車の減速性能で現在の制限速度を逆算する」方式をATCに導入して列車間隔を詰めて輸送容量を増やし,無駄な徐行距離を削減して若干の時間短縮を図ろうとするものであり,それをデジタル方式で構成するかアナログ方式で構成するかはその機能に関係ない. ATS-Pでは地上子から信号までの距離と下り勾配値,あるいは速度制限点までの距離と制限区間長をコマンド・パラメターとして車上に送り,車上では自車の制動特性とコマンド受信以降の走行距離から基準点との相対位置を求めて上限速度を算出して速度照査することが基本原理だから,安全確保のための無駄が極少なく(赤信号)冒進の起こらない優れた方式だ.
車両側に路線状況のデータベースを持つ方式は制御式振り子電車の傾斜タイミング制御に導入されてATS-Sx地上子位置情報を照合して動作させた方式ではあるが,振り子車制御の場合は制御が全く動作しなくても横Gが乗り心地限界値を超えるだけで安全性には全く問題なかったから,安全装置ATS/ATCの主要動作部に車上データベース方式が採り入れられたのはデジタルATCが初めてである. 同様の処理能力不足よるトラブルは埼京線開業時のCTC自動処理能力が不足して列車を捌けなくてソフト改良まで約1ヶ月間手動切替で切り抜けた事があり,また山手線にATCを導入したときもトラブルだらけだったから,初期不良だと逃げればそれまでだが,全線を処理した埼京線のケースと違い,1列車分の処理だから大して情報が錯綜する訳でもなく,コマンド受信バッファーを設定して演算終了までBUSYで待たす程度の機能のある常識的なソフトだったら普通は発生しないトラブルだから,この程度を「想定外」だったと言うのは演算BUSYのタイムアウトを短く採りすぎたというのだろうか.この手のバックアップは大きな余裕を採って絶対に許容できない値に出来るものが多い.それを有り得るギリギリに設定して「想定外」で落としたのだろうか?デジタルATCのシステム設計にATS-Pの様なスマートさがどうも感じられないのは,あれこれ詰め込んでいるからだろうか? 更に引っかかるのは相互乗り入れの可能性の残るJR東日本とJR東海、西日本、九州のATCシステムの互換性を全く考慮しなかったことだ.従前はATC-1D仕様として電源周波数50Hz/60Hz両区間で動作できる方式に統一していたためJR東日本の車両は50Hz区間から長野新幹線の60Hz区間への直通が容易にできた訳である. ATS-P開発の大成功後,その特長の一般向け解説を間違えたままなのかもしれない.新幹線ATCでのP型照査実現には極端な話,地上側は次の停止点閉塞境界あるいは制限速度開始点までの距離を伝えるトランスポンダ増設だけで済ますことさえ出来た.そうすればJNR−ATCの欠点である閉塞区間入口からの早期の減速を無くして1段制動化は可能だったのだ.古い電子部品が入手できない問題があってそのままというのが辛いこともあるのだが,東海、西日本、東日本各社とも上位コンパチ改良の方向は考えなかった様だ. またデジタルATCでの1段制動導入の主たる理由は重ねて報道されているような「乗り心地改善」ではなく車間を安全に詰められることによる「線路容量の増加」である.TGVの様な最高速度以外取り柄のない低性能の列車を使って増線で輸送量をこなすよりもSKSの様な高性能列車とその能力を引き出せる信号系(ATC)の改善で輸送能力を増す方が安上がりなのだ. 諸外国からの新幹線視察団が最も驚くのが速度よりも毎時12本+回送もの運転密度なのだそうだ.その辺は都心部通勤国電の毎時30本運行を初めて見るお上りさんの感覚と似たようなものだろう.この高速高密度運転を安全に実現する技術が大変優れている. 中国が日中戦争正当化の急先鋒靖国神社への首相参拝にあれだけ長期に激しく抗議を繰り返して最終決定を引き延ばしてきたが4年間で5度目の参拝強行でタイムリミットとなりとうとう高速鉄道建設事業から日本を排除した.小泉変人首相は金にもならない不当な日中戦争正当化行動で日中平和友好条約(=戦争終結条約)の趣旨を踏みにじってSKS中国輸出を潰したと「歴史に名を残した」のだ.しかしその実,いまだに車両輸入などねばり強く技術導入への門戸を閉ざしてないのはこうしたSKSシステムの優秀性を交通大学出身の江沢民前主席など政治レベルまでも熟知しているからだろう.中国国内の輸送需要から云えば当面安価なTGV仕様で足りるが,自国産業としてのその後の輸出競争力と技術蓄積を考えたら「有人衛星打ち上げ技術を持つ国」の誇りを掛けてSKSシステムの水準を追わなければ喧嘩にならないだろう. 同様に総武快速横須賀東京トンネルや山手貨物線(=埼京線)のATC廃止ATS-P換装は輸送力増強にこそ最大の意味があり総武ATC老朽化はそのきっかけだ.ATS-Pへの換装に合わせて新宿湘南ライン誕生だし東京駅解結のNEX増強と,遅延の波及を断つ普通列車の東京駅折り返し増加だ.ここを隠した宣伝は社員まで誤解させてしまう. JR関係者によるATS-Pの解説は(主にデジタルだけ強調するテキストの解説から来るのだろうが)その本質的な良さを理解していないのではないかと思えてならない. 今回の事態は危険側の誤動作ではないが,無人線区での充分な試験はなぜやらなかったのだろう?ATS-Pは開業前の京葉線で実車試験していたし,DS-ATCも開通前の八戸区間で試験,ATS-NSだって先行して九州新幹線で供用しているはずだが,タイトな試験はしなかったのか?それとも東海道区間の錯綜振りが想定外なのか?初期不良としてBUGが残るのは仕方ないが,どうも「想定」不十分だった気がしてならない.
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2006/04/12 Last 23:50 09:50
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