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[149].交流電気機関車国産開発秘話
    鉄道データファイル誌補足

  間違い探しでソコソコ売れると揶揄される「鉄道DATA FILE」誌 #148号、「国鉄・JRの車両−試作型交流・交直流電気機関車、& ED44型」のページ(148-7〜-12)で記事の流れとして同誌には珍しく大きなスクープが有る

  もちろん好い加減さで有名なデータファイル誌のこと、フランスからの交流機関車輸入を通産省が認めなかったという記述(P8C3−L5〜−L1)と、輸入両数削減通告でフランス側から断った(P11C2L1〜L5)という記述が並立しているし、技術解説は執筆者の変な作文が加わってどうしようもない部分も多いが、従前知られていたのは「フランスの交流機関車輸出拒否で仕方なく国産開発した」としか伝えられてなかったものを、国産を目指して開発中の重電メーカー側が通産省に国産を強力に働きかけていて、交流整流子モータ試作機が回ったことで、輸入台数を当初の10台輸入引き合いから1〜3台輸入へと大幅に引き下げて交渉を頓挫させた事実と、「ヨーロッパ交流電化視察中の国鉄派遣団に電動機開発成功を知らせ取りやめにした」ことを書いている。これはデータファイル誌には極めて珍しいスクープだ。
 戦前の碓氷峠用電気機関車ED41型のサンプル輸入・デッドコピーED42型問題があるから、断られたのか断ったのかは微妙だが、形の上では断られたにしても国産化優先のために輸入台数を激減させてフランス側から断らせたようなものだ。
内容が矛盾したまま並記してどちらが正しいか分からないのはサスガ、データファイル誌!ではある。

 折角のスクープではあるが、相変わらずの間違い探し本であり、執筆者が自身の根拠の乏しい推測をあたかも事実であるかのように解説している箇所が多数有り、技術的・専門的な知識がないと真偽を判断できないから、一般アマチュアに誤謬が拡がっていくのは困ったものだ。疑問点も順不同で指摘して置こう。その後の号の「鉄道用語事典」では、直流・交流電化について執筆者の余分な作文が削り取られてほぼまともな解説になっている。これまでのエラーの流れを見るとデータファイル誌は技術解説の執筆者と、その原稿のチェック体制に大きな問題が有るのだろう。

 以下×がTDF誌記事の誤り。

  1. 直流供給電圧値選択理由の間違い(#148-P7C3L1〜4:148号7頁3段落1〜4行、−Lは逆カウントの意。以下同)

  2. 交流供給電圧値選択理由の不適(#148-P9C2L3〜12)

  3. 交流電化のメリットには、
    ×民間の電力会社から電力供給を受けることが可能な点である。………(P8C1L3〜5)
     直流でもほとんどが電力会社からの供給であり、半分近くを自家発電するJR東日本だけが異例。根拠不明のデタラメ節だ!
     交流電化のメリットとして、高い電圧を使えて変電所設置間隔を大きく取れる理由は、車上で走行用の電圧に降圧できるから生ずるメリットである。ひと言で言えば直流変電所を車載にしたのが「商用周波数交流電化」方式だ。(P7C3L5〜P8C1L2)

  4. 吸い寄せられるから赤色???
    × 交流では電圧が大きいうえ、一定のサイクルで極性が変化するために周辺に生ずる磁気も強弱を繰り返し、うかつに近づくと吸い寄せられる危険性があるため、感電防止の警戒色としての意味合いも込めたものだった。(P12C1L13):下線部意味不明の作文!「吸い寄せ」は特別高圧の一般的危険性。

  5. 細かいが、整流子モーターの構造の呼び方は「2N極M溝」で極数2N(極対数N)、整流子片数=溝数M、ブラシ数2Nという構造になるが、P11C4L28の記述は「………整流子は14極から16極におよび、ブラシの数は50個を超える。」となっていて意味不明である。例外的な特殊構造の解説を落としているか、資料の解釈をどこかで間違えたか、間違った資料で執筆している。
    4極48溝重ね巻構造図

    下側導体:緑色上側導体:青色
    上側スリップリング構造を削除すると電動機
     資料もなく正答を推定しても仕方ないが、溝数&セグメント数50、極数14〜16でないと構成できない。次のページ(P12C2L4〜7)には14極〜16極とあり、こちらが正しそうだ。ED44型の解説記事中での脈絡を欠くミスは不注意に過ぎる。7〜8極対で電機子が半端な50溝とすると重ね巻ではなく波巻きの可能性が強い。因みに100KW出力程度の直流直巻整流子モータはほとんど4極で、電機子が48溝前後の重ね巻き(375V)が標準的だ。波巻き接続にすると極対数倍の倍電圧定格(750V等)になる。

  6. P12写真CAPTIONの「現在の主流になっている三相交流電動機とは異なるものの、直流に整流せず交流のままモーターに送る直接式の先進性は評価されてよい」とは意味不明だ。後述の様に小電力ならAC-AC直接変換も実現可能だが、大電力の機関車は交直両用だから直接変換方式を採用する意味がなく、交流区間でインバータ+コンバータで三相交流モータを駆動するVVVF方式について「直流に整流せず」と誤解して、その誤解を前提に解説している疑いが濃厚だ。同一筐体にインバータとコンバータが収納されて中間の直流部が表から見えないことでの誤解ではなかろうか?これは(#49-049シリコン整流器)の記述から一貫している誤解だろう。

 僅か6ページでこれだけの大きな作文、エラー箇所があるところが「データ・ファイル」誌のデータ・ファイル誌たる所以だろう(w。だが、エラー箇所を子細に見ると執筆者が独自の解説を加えた部分がほとんど外している。執筆者自身が物理的な理解をできないまま、感性に任せての出任せ解説をしていることに問題があるようだ。

2007/02/27 23:55
<TDF>

TDF補足訂正

鉄道DATA FILE誌補足 (目次へ) ./tdf_err.htm <TDF>

  • ×→× TDFミス表示明確化:2011/08/25
    2007/04/27+ /03/02 23:55
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