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「新幹線信号設備」p146
  図3-91鉄電協刊より
地上子インダクタンスは355[μH]. [H]は誤記

 在来線ATS-Sでは310μH、4.8nF、130kHz
  by「ATS・ATC」p11L−4

「列車制御」概説本

 中村英夫著「列車制御工業調査会2010/06/30刊(\2100.中古\980.)を通読しました。一般向け鉄道書というとトリビア的、重箱の隅を突くようなヲタ的記事偏重の中で、一部狂信的ヲタは「安全装置としてのあるべき機能」といった話題に対して「事業者糾弾のための非技術的・政治的話題」のレッテルを貼って忌避・攻撃する状況があり、業務テキストさえも現役主流ATS-Sxへの配慮か直接表現ができずに、既に廃止された私鉄ATS仕様通達(昭和42年鉄運第11号)を無解説でコラムに掲載して間接的に注意喚起する状態が続いてきました。
 そんな中で土佐くろしお鉄道宿毛事故2005/03/02、福知山線尼崎事故2005/04/25、と過走・過速度ATS設置で防げた大事故が続いてようやく雰囲気が変わり始めたところで、本書「列車制御」が運転と信号、保安装置について総論的に述べていて、インターロックである各種鎖錠の解説や、「非対称誤り特性」によるフェイルセーフとか、ATSについては一部開発にも従事した著者が-Sから-P、-X(-DK/-DN)、C-ATSまで概説、全社に捨てられた-SPまで経過説明していて大変有用で、総体としては一読をお勧めの本です.

 そういう肯定的前提で記事の内容評価を述べますと、鉄道の安全施策が大事故を契機に次々改良された経過を踏襲して新幹線事故が述べられていまして、これが柳田邦男著中公文庫#461「新幹線事故」1977/3刊の記事に丁度重なって、比較して読めばさらに興味深いものになりなりますし、また、エラーや、異論といいますか納得出来ない点もありまして、ランダムに述べていきます。

「新幹線事故」vs「列車制御」    <1>

 先ずは「新幹線事故」と「列車制御」の事故評価比較を下表TBL1に示します。
 ATC絡みの4大事故中、鳥飼事故の具体的内容は「列車制御」には触れられていません。これは車両基地からの列車合流点手前の待機位置に、停止現示と強制停止がなく、過走でいきなり非常制動3となって居たことで想定距離では停まりきれず過走して本線に突入、通過列車と間一髪!高速衝突寸前となった事故です。過走・冒進後の取扱の誤りが重なって高架上の脱線事故となり復旧に時間が掛かりましたが、ATCの基本機能3信号=強制非常停止不動作の絡む安全システムとして深刻な事故でした。

新幹線新大阪駅210km/h誤現示
AVR過渡応答波形


[f1]制御系の制動不足:ダンパー付け忘れで約10Hzの減衰振動発生(包絡線着目)
搬送波が電源電圧で振幅変調されて+10Hz=210km/hコードになる.(=60Hz×15+10)
[f2]↓ 搬送波「北東方向2」900HzにSSB上側波で10Hz=210km/hコード≡910Hzとなる.

東北・上越新幹線以降のATC-1Dではもう1波1200Hz+第2信号波を割り当てて、
2波で速度段階を増やし誤動作を抑えている.O3=900Hzには1200+38.5Hzを加えた.

[f3] (「乱調」で振幅変調される.乱調が15逓倍されるのではない)
 主対策としては本線在線区間手前に停止させるP点に類似したQ点を合流点3区間手前設置して常用の停止限界内に停まるように改めて、運転操作を誤っても停止限界点を超えにくくして、非常制動3が掛かる前に停める様にしたことと、3区間を2m延長して50mとして突破出来なくし、線路の塗油管理強化で滑走防止を図って切り抜けた訳ですが、柳田氏「新幹線事故」の記述が平板で、どの措置に卓効があって「問題解決」としたのかは分かりにくくなっています。
 Q点新設というのは「新幹線事故」(p100L3〜)以外には記事がみられませんが、各車両基地(当時は東京(品川)、大井、三島、大阪、岡山、広島)の出庫線総てに新設した主旨からしてP点類似の制動地上子で、合流閉塞区間手前の3区間(50m)分手前位置に一旦停止させる位置と思われ、P点の閉塞境界手前150m設置に対して、(3区間手前53m前後)閉塞境界手前103m前後ではないでしょうか。150mでは停止限界票に対して若干早めに止めすぎで、あまりにギリギリの位置も必然性が乏しく100m手前頃がそこそこの位置でしょう。ハード上も取扱上も「設置位置の若干異なるP点」という整理が無理がありません。 右枠引用資料「新幹線信号設備」p146図3-91記載の地上子コイルインダクタンス355[H](108〜132kHz)は単位誤記で、正しくは355[μH]なのはATS-S地上子の定数310μH、4.8nF、130kHzからも明らかです。1000倍のmHでは共振容量よりもコイル自体の漂遊容量の方が大きくなって目的の共振回路は構成できないでしょう。
 単位接頭語「n:ナノ=10−9」は電子雑誌などでs40.前後から「nF」として使われるようになった様で、SI化に則って3桁毎の呼称に整理されて普及しオングストロームÅ=10−10mやミリ・ミクロンmμ=10−9mなどが廃用されましたが、鉄道専門書には未波及の模様で現在も「0.0048μF」表記ですから一般電気屋としては古文書を読む様な時代ワープ感がややあります。 中村博士「列車制御」は鳥飼事故の対応には全く触れていません。
 なお、新幹線途中停車駅の出発部構造が鳥飼基地出口と同じく限界位置までに強制停止がなく過走で3非常制動の方式で鳥飼合流と同様ではあるのですが、駅の場合は乗客乗降のために必ず一旦は停止しますので、順調なら無停車進入の本線同士や車両基地からの合流とは違います。 名古屋の引き上げ線には設置していないのも同じ理由でしょう。博多は当時は本線合流ではありません。
 駅の出発なら停止状態から十分加速する前に3が働くか、30km/h制限に当たって異常を印象付けて停まりやすいのに対して、本線同士合流・電車基地合流は一旦停止が前提ではなく制限速度70km/h(〜分岐器次第で160km/h)一杯で進入して停止現示を受け確認ボタンで30km/h制限となることもあるので、本線上の閉塞境界手前P点と同様に常用停車位置への停止誘導は必須なのに鳥飼事故まではそれが欠けていたということになります。 これは3区間の2m延長の差より寄与率の大きい事項です。
 新幹線では、通過駅の出発線には誤出発対応に48m長の非常制動3区間がありましたが、開業当初は何故かターミナルである東京駅・新大阪駅の出発にはこの3を設置し損ねてしまい、東京駅で誤出発してポイントを割り込み脱線事故を起こしています。See→日記#139冒頭節。1965/08/21のことで、タイミング次第では対向列車と正面衝突事故になるところでした。この事故の経験を経て翌年1966/04/01から全国展開となった在来線ATSには出発信号の直下地上子が設置されました。

新大阪駅異常現示事故原因波形    <2>

 新大阪駅構内210km/h異常現示事故の解説では「列車制御」記事に不適切があります。直接の原因はAVR(自動電圧調整器)のダンパーの不具合で、主AVRは端子板にヒビが入ってダンパー(=振動吸収装置)回路が接触不良で時折遮断されたのと、副AVRはメーカーが製造時にダンパーそのものを取付忘れたために、AVRの主・副とも出力応答が振動的になり、その振動周波数約10Hzで3が振幅変調されて右波形図[f1]の様になりました。 非常停止3信号は特に確実に車上に必ず伝える必要がありますが、他の速度信号周波数が電源周波数の整数倍を搬送波にして=大きな運転電流高調波の干渉を避けるために電源周波数の整数倍を避けて、その間の周波数となるよう信号波周波数を選び、さらに送信エネルギーの総てを信号波として送り、復調に必要な搬送波は受信側で別に電源波の整数倍として生成する「電源同期SSB方式」なのに対して、3のみが例外の電源周波数整数倍の900Hz(60Hz×15倍、50Hz×18倍:南西方面)、840Hz(60Hz×14倍:東行き)、850Hz(50Hz×17倍:北行き)、で周波数が運転電流の成分と全く重なるため、信号波として区別するために速度信号より出力レベルを特に大きくする必要があり約30倍に設定しています。 そのため、下り西向き方向の3に予期せず発生した910Hz(=900+10:上り北東行き線210km/h信号)が本来の速度信号をマスクして誤現示を生じました。これは830Hz(=840−10:下り西行き線210km/h信号)でも同じ関係ですが、故障AVRには接続されて居らずトラブル発生していません。

 信号波の周波数割当表をみますと開業当初は、10Hz、15Hz、22Hz、29Hz、36Hz、(41.5Hz)、とあり、電源同期方式採用の理由となった運転電流の高調波の1次分離れた周波数からその周波数をみると、60Hz基準でそれぞれ、50Hz、45Hz、38Hz、31Hz、24Hz、(18.5Hz)、又は50Hz基準でそれぞれ、40Hz、35Hz、28Hz、21Hz、14Hz、(8.5Hz)、ですから、イメージ周波数としても重なりはありません。 だから運転電流の高調波が混じってもそれが搬送波と誤認されて誤動作する可能性は小さくなりますが、コマンド周波数をこれ以上増やすのは困難で、加えて交互に設置の2チャンネル選択の時間も無くしたいと考えたのなら、強制非常制動の3が安全の為、SSBではない独自方式で、運転電流の高調波に重なってもやむを得ず追加されて特別に高レベルで送出する非常制動信号ではないか?先出、品川事故でさらに在線強調2E用41.5Hzを加えたのではないかと思えます。

 電源が60Hz、減衰振動周波数が約10Hzで、「端子折損の接触不良」故障を伴っていたことから最大変調率を100%で作図しましたが、図をクリックすれば最大変調率30%の図が表示されます。
 この寄生振動による振幅変調で、3信号900Hzの両脇±10Hzに発生した910Hzが丁度上りの210km/h信号で、誤現示となりました。
 応答が振動的になり減衰振動を起こす事を「乱調」などと呼びますが、電源同期SSB方式で電源周波数60Hzは15倍されて900Hzになっても「乱調が15倍される」動作はどこにもありません。 搬送波が振幅変調された場合の周波数スペクトラム解析計算については正弦波の積を和に変換する高校数学例題そのもので、無線通信ではない電気工学科でも基礎として出てきますので、長年の他分野のことでうっかりお忘れになったのでしょうか?

 なお、当時の国鉄本社が「信号系にはフィードバック制御を使わない」ことを決めていたのは、余分な誤動作要因を増やしたくないことに加えて、日常保守作業の現場が帰還制御絡みのトラブルに対処しきれない危惧もあったのでしょう。 機器本体が電源電圧±20%で正常動作するというのに±1%の電源を準備して不具合とは、「シンプル is ベスト」で、「過剰品質もトラブルの元」を地で行く蛇足の措置ではありました。

 1960年代ですと、フィードバック制御を扱う「自動制御理論」の講座は一大鬼門で、著者中村博士が卒業された前後の年代の東京理大電気工学科(著者略歴=オーム社2013/05/20刊「鉄道信号・保安システムがわかる本」奥付p2)の期末試験では数年以上に亘って受講生の60%余が成績不良として春期休暇明け近くに行われる追試に廻り、合格できずに4年次に再履修する学生も居たそうです。必修教科ですから単位を取らないと卒業出来ません。 同校は理数系は得意だが語学がダメの受験生が集まってきて「落第や追試が多い」「教科書が極端に難しい」との世評が有名でして、追試に廻る者の多かったドイツ語でさえ30%余追試だったwというのに皆さん得意なハズの理数系教科「自動制御理論」で受講者の追試率60%余とは実に突出した鬼門教科です。 折からの1964年東京オリンピック準備・運営ボランティアでも優遇措置はなく必要な単位を取れずに留年した学生も少なくなかったのだとか。(理工系大学としては筋が通ってはいます!オリンピックで留年なら良いじゃないの!って同年次生になった後輩達に慰められてたってw)
 テープレコーダの開発時に、負帰還オーディオ・アンプの調整不適切で100kHz近い寄生発振を起こしたままテープ録音したところ、格段の高音質録音ができたことから磁気テープ・アナログ録音での「高周波バイアス方式」が発明・実用化された「怪我の功名」の故事などからみても帰還制御技術は当時の特別の鬼門だったのです。「発振」現象は普通、正帰還で起こります。逆接続では発振出来ないのですが、それが逆極性の負帰還で発生するので先ずは入口で理解に混乱を来しました。
 実際は「自動制御理論」を履修する3年次生にもなるとサボリ方も覚えて朝一番で辛い09:00〜12:10まで午前中一杯2コマ180分目一杯の講義を時折サボるようになった「怠惰の反映」でもありまして、一部工業高校の拡張授業でも伝達函数とボーデ線図判定法、ラプラス変換による微分方程式の解法など、一部簡略化はあっても、ほぼ同内容を教えて一応の理解を得ていたことからも、その先に大学の授業で学ぶ機会を与えられない実業工高生に学ぶ真剣さで逆転を許したのであり、「極めて高い追試率」が技術水準のリニア・スケールという訳ではないことは付言しておきますが・・・・。

【 新幹線事故記事比較 】 <TBL-1>

事項\書名列車制御新幹線事故
鳥飼事故
73/02/21
p134§6.1
 新幹線の安全の要といわれたATCに疑問符の付いた事故が1972年から73年にかけて鳥飼基地,品川基地,新大阪駅と立て続けに発生した。「フェール・セーフ神話の崩壊」とまでマスコミに騒がれた事故を,当時の信号技術陣は深刻に受け止め,原因の究明を行った。同時に,ATCシステムの耐妨害特性強化,そして事故の事故の再発防止に向けての抜本的対策を講じた。
(注:鳥飼事故については具体的言及がない)
p1〜118
原因:不詳レールに油垢付着、
  滑走防止装置で次区間へ過走
  3区間手前の強制停止地上子が無い.
  (本線P点相当が車両基地合流部にない)
  分岐位置確認せずバックし脱線
対応:03区間を2m延長絶対停止コイル50m長に
  Q点を設置3区間手前
   停止限界内に停止させる
  塗油量管理、
  過走時実車点検励行
品川事故
74/09/12

 <TBL-1.2>
p135C#14 原因:ATC機器室の電源がトリップし、本来のATC信号電流が絶たれた際に、別室からの誘導電磁界による電流が作り出した錯誤ATC信号波が車上で受信された
対策:トリップ時には信号波発生部の電源も遮断されるようにしたほか
上越・東北新幹線においては、1つのAM変調周波数ではなく2つの周波数を組み合わせることにより信号とする2周波組合せATC方式として強化した.
p119〜157
原因:ATC室階下電力変圧器の高調波漏洩磁束
  +進相コンデンサーとの共振
  +速度信号波発生器遮断無し
  (信号機器誤地絡で欠陥顕在化)
対策:キャリア&信号波発生装置同時遮断
  現場の進相コンデンサー撤去
  ATCを2周波式に改良
  無信号停止2にも信号波割当2E
See→ATC-1D 略解
新大阪事故
74/11/12

 <TBL-1.3>
p134、p136〜138 原因: AVRの内部回路に,鉄道では使ってはならないとされてきた「フィードバック回路」が使われていたのである。フィードバック回路は,ちょっとした変動に対し寄生振動を誘発し(注:Δ設定・調整次第),それがAM変調波と誤って認識されるおそれがある。このことを乱調と称している(右上[f1]AVR電圧波形参照). 新大阪駅ではわずかな乱調が,下り列車の侵入を防止するための3信号(900Hz)を送り出す搬送波発生部で15倍され,900Hzと合わさって910Hzになり,上りの210信号に化けたのであった。(p134L−8〜注:×「乱調」は15倍されない)
対策:・・・・国鉄電気局と鉄道技術研究所は,それまでの徒弟的手法による技術伝承ではなく近代的な安全性管理の仕組みを構築することにし,・・・・・・安全性技術のデータベース作成と・・・・・・安全性管理プロセスの構築という形で結実した。
p158〜182
原因:ハンチング周波数≒10Hz←AVRダンパ欠損
 (+ネジ締過ぎ基板折損接触不良で顕在化)
  +帰還制御方式禁止方針の不徹底

対策:・・・・「経験伝承」の部分が多く、安全のために必要な技術基準でさえ、国鉄の全技術者の共通のマニュアル(規定、手引書)にはなっていないことに気付いた。・・・・・・
 国鉄では、本社の技術者の間では当たり前だと思われていることであっても、安全のために不可欠なものについては、すべて文書(ドキュメント)によるマニュアルにし、これを地方の技術者にも徹底することになった。(p181L9〜L−1)
著者 中村英夫2010/06/30工業調査会刊
     '11/02/25オーム社再刊
柳田邦男1977/03/25初版中公新書#461

統一的実務管理システム未構築    <3>

 中村博士は新大阪事故の対応により 「安全性管理プロセスの構築という形で結実した」 とベタ褒めしますが、それは褒め過ぎで、大量生産企業ではどこでも常識の、諸規定や図面の一元管理にはほど遠い状態が各JR内では今も続いていてトラブルになっています。
 柳田氏が「新幹線事故」で新大阪事故対応の具体的改訂として指摘したのは、各種ノーハウの「文書化」と「地方技術陣への徹底」ですから、その後も遵守すべき形あるものになって実務上有効なものになっていますが、中村博士が「列車制御」記事で述べた「徒弟的手法による技術伝承」「プロセスの構築」では抽象的に過ぎて結果の評価に留まってしまい、もう一歩踏み込んで述べないと何を為すべきか、その後の具体的作業方向を示すものにはなりません。

 管理欠陥トラブルの典型例が、JR西日本のATS-P過速度ATS誤設定問題で、各社の合意を形成するJR7社協議では曲線制限速度について、JR西日本での列車種別毎本則+αコードの採用を認めていましたが、実際のJR西日本大阪支社の設計現場にはその特例合意が全く伝わっておらず、7社共通方式(=JR東日本方式)で設定していたため、尼崎事故後の事故調査委員会による調査で設定間違いとして発見されて、速度制限ATS-Pの設定値の実に73%が「誤設定」とされて改修したことがあります。JR東日本と同値の普通車設定以外=高速列車設定をしてないことを規定に反する間違いとされた模様です。「JR東方式で危険な訳じゃないから良いだろ!」という感覚が通らないのは、規則適用の間違いがたまたま運良く危険側でなかったからといって、逆に危険側への間違いだったら事故になりかねず、安全維持にも明白な規定違反は見過ごせないということです。制定規則が選択可能な2重規定なら問題ありませんでした。しかし尼崎事故調もそういう判断基準を適用するのでしたら同時に規定・図面の登録・参照一元化の必要性についても言及する必要がありました。
    See→日記#90曲線速照の72.9%も設定ミス!
 本来であれば、規則や諸図面は一元的に登録されて初めて発効するのがスジで、JOB開始に際しては必ず登録内容を直接参照して特に改訂を確かめてから実作業に掛かるもので、通常の量産会社なら個人の手控えからの作業は厳禁されています。 それがJR西日本など旧国鉄各社では、新幹線新大阪駅事故でノーハウの文書化を決めたものの、いまだに一元管理が確立されたとは言えず、時折齟齬を来す、管理上の重大欠陥が長らく解消出来ないでいます。 「カンバン方式」を形だけ真似ても、その基礎となるデータ管理・図面・諸規定・文書管理体制ができていないのでは、滅私奉公への思想改造運動=労働組合支配介入の不当労働行為推進・労務管理支配強化・組合攻撃にしか効きませんで、強要と監視の職場支配を強行して外資や他社の軍門に降った某日産自動車、北辰電機、それでも存在できなかった山水電気などと同様に肝心の本業で崩壊します。

 多数の私鉄の国有化による路線毎の多基準並立だけではなく、例えば、曲線の制限速度制定法など、規則自体に歴史的経過があって別の規則で多重定義になっていて、基本の考え方としての、水平面での高速・普通列車種別毎の安全比率3.0〜3.5から制定する「本則」の他に、傾いたカント面での安全比率4.0から制限速度を算出、さらに現行の通称「本則+α」と呼ぶ特別規定は列車種別4種毎に平衡カントに対する「許容不足カント」を制定して、ここから列車種別制限速度を算出、その結果を一覧表として「座席指定特急動力客車」用の限定基準として制定する、といった特例改良制定が、時を追ってバラバラに行われたことで、規則全体の一覧性が無く、大変分かりにくくなっています。
 その結果、尼崎事故現場は半径304m、カント97mmで、「本則」ですと60km/h制限ですが、JR西日本の高速指向で各列車種別毎の許容不足カント:普通列車60mm、特急車70mm(機関車列車50mm、振り子式特急110mm、車体傾斜式90mmは非該当)を適用しますと、それぞれ、70km/h制限、75km/h制限になるのですが、事故現場の速度制限は70km/h一律で、JR西日本の定めた制限速度表でも70km/hとなっていました。特急75km/hを採用せず70km/h制限一本にした理由は事故調の調査でも判明しませんでした。
 カントを上限の105mmに出来れば許容不足カント方式では75km/h制限のハズですが、現場は名神高速道路と交差する地形からカントを0から逓増する緩和曲線長を充分取れず97mmに留まったための普通車70km/h制限です。JR西日本が現場を「カント不足」と言っているのは、高速型設定で上限の105mmカントに達しない97mmであることを指していて、速度制限が足らないのでは有りません。
 また実用上の5km/h差は誤差範囲で実用上は差し支えないのすが、制定規則としてみる時に、一元化されてないのはリスクを増やし、微妙な齟齬を生みますから規則としては将来的に整理一本化すべき曖昧内容ですし、例外判断は台帳の記録に残す必要があります。

 実務的な規定の曖昧さは、尼崎事故調報告にもあり、速度計誤差の改善についてJISなど諸規則の周知徹底遵守を言っていますが、これはそれぞれに解釈の余地が残って互いに逆方向に解釈して誤差を増やすことがあって現場的指示ではありません。計測方法を具体的に定めて双方の相関を取れというのが現場作業に即した勧告でしょう.実務的には使用した速度計の素の物理特性が2桁=00〜99設定では相互に相関を取るしか精度を保障する手立てはありませんし、製品機能の詳細を理解できていたら元々準備されていた3桁モードを利用して設定していたでしょう。無論、計測精度維持は前提です。

 これら、現場での具体化に若干の違和感を感じます。
 なお、新幹線品川事故の記事には両者に違いはみられませんが、ATCの2周波方式は以降の東北・上越新幹線(ATC-1D:図[f2]の上側50Hz系)だけではなく、東海道・山陽新幹線(ATC-1W)も2周波方式に改良しています(図[f2]の下側60Hz系)。これは210km/hを超える高速運転に対する信号現示を設けるためにも、1周波方式では足りなくなっていたため、第2搬送波に拡張した高速信号を託す必要も有ったためで、誤動作抑止と併せて2周波化しています。第1搬送波は2周波を閉塞毎に切り換えて一方を使っています。 現在はさらにデジタルATC化されて、地上位置を基準に制限速度を車上演算して車間距離を詰め輸送力を増やす制御をするようになっています。

民営化前ではないATS-Sn開発時期    <4.1>

 1987年の分割民営化時にJR各社は私鉄ATS通達基準の適用を無条件で免れましたが、「列車制御」ではJR各社がATS-Sn(改良型ATS、p92L−4〜)、の開発をしていたために適用されなかったかの記載で、それでは時季がまるで違い、勘違いか?作文が過ぎるでしょう。
 国鉄分割民営化にあたり運輸省は「私鉄ATS通達は大手私鉄各社に対する1967年時点のもので、分割民営化の1987年現在では存在しない」という屁理屈をコネ上げてJR各社を適用除外にして国鉄型ATSをそのまま存続させ、私鉄ATSと2重基準にしました。
 翌年の中央緩行線東中野事故88/12/05と飯田線北殿駅正面衝突事故89/04を承けて全JRのATS改善に向けた新開発をJR東海とJR東日本が担当して絶対停止123kHz地上子を開発して全JRに採用決定、ATS-SNとし、さらにJR東海が車上時素式速照108.5kHzを追加してATS-STとし、車上装置をCPU制御で再設計してJR東海以西の各社にATS−Sw、−SK、−SSとして採用されたのが様々な書籍・文書で明らかになっている事実です。
 東中野事故当時は、夏の上野駅特急冒進事故を機にJR東日本でATS-P換装方針が決まっていて88/12/01新規開業の京葉線に初めて全面ATS-Pが採用されましたが、ATS-Sそのものの改良計画はまだ全くなく、京葉線新木場開業4日後の東中野事故でマスコミ各社からの取材で「なぜ直下地上子で強制停止出来なかったのか」と問われたJR東日本広報が「ATSは警報だけで、強制停止はない」「警報を受けて停まらない運転士さんは居ない。お猿の電車ではない!」と烈しく反論。 (厳密に言いますと事故現場はATS-B区間ですから、直下添線ループであり、ATS-Sの直下地上子とは違いますが、全く同機能ですからそのままにします。)
 「直下地上子で強制的な非常制動」というのは新宿駅タンク車衝突炎上事故67/08/08を承けた対策として国鉄自身が広報し広く報道されていたものですが、実はそれが間違っていた!そして東中野駅追突事故で亡くなった運転士が「お猿並みだった!」ことになって、マスコミ対応していた山之内秀一郎副社長が引き取って「ATS-P換装前倒し、範囲拡大」を公約した事でJR東日本が冒進のない安全度の高いATS-P線区を突出して増やしました。いかに協力的な国鉄JR記者クラブに対してでも運転士と乗客が亡くなっているのに「お猿の電車」は大失言でしょう。
 東中野事故の発生状況を子細にみれば直下地上子でATS-SN(≡改良型ATS)の機能である強制非常制動が掛かっていれば場内信号から先行列車まで137mの距離があって橙Y現示速度55km/hなら全く衝突しないか、ごく軽微な被害で済んでいましたが、この時点での直下地上子による非常制動の指摘はJR外部のマスコミ各社からだけであり、JR東日本旧国鉄側はそれを否定するだけで全く話題にもなっていません。 この点はJR東日本に当時のマスコミ対応記録はあるのでしょうから部内やOBなら調べられるでしょうし開示すれば論議の余地は無くなります。
問題点に気付いていれば技術的には京王・小田急・東武など私鉄各社ATSの多変周方式と同じもので、ATS-Sとの上位コンパチ性さえ守ればすぐに実現可能でしたが、そうではなく「お猿の電車論」だったのです。
 以上の経過から「列車制御」記事の様な87/03/31までの国鉄時代、JR化後の東中野事故88/12/05までに改良型ATS=ATS-SNが開発されていたことは有り得ないことです。 国鉄JR式ATS開発の当事者である中村博士がこういう誤情報を発してはいけません。

1号型ATS稼働は1960年、×1967は照査段階増設    <4.2>

 1号型ATSには1960年供用当初からY現示45km/h、第1停止後15km/hの2段の速度照査機能があり「(私鉄ATS通達の出された) 1967年に導入」とする記載(p96L-7)は間違いです。また信号進入時の動作として、Y現示手前G現示進入で0.8秒断45km/h照査、R現示手前Y現示進入で3秒断・一旦停止後15km/h照査(p97図4-8)というのも京成自身発行の資料と(取消線部は合ってます。以下、この行は、当方の図の読み誤り。)はそれぞれ1区間ずれています。 私鉄ATS通達が最高速度100km/h以上で3段階の照査を義務付けたことから、強制制動を掛ける速度段階を増やして、75km/h、25kmを加えたのが1967年改良で、p96L−10からの解説内容は1960年供用開始当初からの機能です。p97の「さらに地上側に2つの地上子を配置し,・・・・・・・・速度照査を実現している・・・・」という部分が1967年の改良部ですから記事は間違い。   See→京成・都営1号線ATS

東武TSPは固定パターンで国鉄には使えない!か?では東武貨物は?    <4.3>

 東武TSPについて1974年に検討したが、固定パターンで貨物を含む多車種の走る国鉄では輸送力を落として使えないという説明(p97L5変周式パターン制御ATS)もシックリ来ません。東武鉄道には機関車があり貨物列車もあって現スカイツリーのある当時の業平橋駅(旧浅草駅)にも乗り入れていたはず。 列車毎の減速度の違いは許容最高速度の違いに置き換えて減速定数を貨物15、機関車旅客20、電車20/0.7、空走時間を貨物5秒、機関車旅客2秒、電車1秒、などとして、貨物の最高速度を65km/hに制限することで制動特性の違いを吸収して同じ閉塞割りで走らせていたわけで、その方式に倣って列車種別毎に「Yパターン」「Rパターン」の初速を制定すれば解決したことです。 See→ATS-Sx設定一覧
 現に東武鉄道は稠密ダイヤながら貨物列車を運行していましたから、混在の解決策は列車種別毎の速度定義でした。 1974年以降なら都市部で貨物の各駅停車は有りませんから充分吸収出来ました。 国鉄での採用検討時に、東武鉄道担当者に子細を問い合わせていたら解決法が簡単に分かったのではないでしょうか。
     See→東武TSP概説: 「貨物列車ではPG1:57→35km/h、PG2:35→8km/hのパターン」=東武TSP下の貨物運行
 東武に貨物が無くなったのは自動車輸送に追われて需要が無くなったからであり、貨物輸送自体が輸送障害となったからではありません。

ATS-Sは常時発振の負論理構造でATS-SN下でコンパチ動作!
  車上装置×共振周波数→○発振周波数     <4.4>

 若干、言葉の問題かも知れませんが、氏が電気工学科卒工学博士のATS開発設計者ということで一般向け解説書での専門的正確さを求めて触れますと、「車上装置の共振周波数」(p90L9〜)ではなく、車上装置の発振周波数です。わずか数行前には正しく「発振周波数」とあるのですから、注意して頂きたい。 それより困るのがATS-Sの動作解説で「130kHzに変周するとブザーが鳴動することになる」としていて、もしそうですと、ATS-SNの即時停止コマンド123kHz地上子では動作しなくなります。 正しくは、常時発振周波数105kHzをフィルターを介して拾っていて、それが他の周波数に変周されて出力が無くなるとブザーが鳴動する負論理動作なので、ATS-Sの130kHz地上子でも、ATS-SN即時停止の123kHz地上子でも警報動作してS/SNの共用コンパチ動作となることをきちんと述べて頂きたい。 ATS-ST速照の108.5kHzではATS-Sの常時発振周波数範囲内(105±5kHz)であるため動作せず、無用の誤警報は出しません。
 ATS-SN、-ST、-Sxの車上装置ではコマンド周波数それぞれのフィルターが搭載されて、常時発振周波数フィルター出力と併せて制御機能の弁別をするので、それは私鉄多変周式として20年昔の私鉄ATS通達対応で実現されていた技術でしょう。JR東海ATS-ST車上装置では各フィルター出力をリレー論理でコマンド解読しましたが、JR西日本はそれをμ-CPU判別としてATS-Sw車上装置を構成、そのまま-SK、-SSにも採用されました。 ベストセラー鉄道本作家の某川島ヲタ氏など非専門一般ライターとは違うATS専門家の学者なのですから、このあたりは特に正確に書いてもらいたいものです。
 詳細解説が無くて部外からは確認できませんが変周式の車上装置には2階微分の振動による「共振周波数」は存在しない模様で、電気振動の片側の一瞬に駆動エネルギーを供給して遮断、最高点から自然落下で再び駆動電位に下がるのを待って一瞬の駆動を行う、いわゆる「弛張発振」である可能性が高いものです。  この発振コイル=反結合正帰還コイルに、LC共振地上子のコイルが電磁結合して電圧を発生させるので、その共振周波数にまで発振周波数が引き上げられる動作だと思います。 定常状態が105kHzで発振して、LC共振地上子と電磁結合すると130kHz〜108.5kHzと必ず周波数の高い方に変周するのは、地上子コイルとの電磁結合のない定常発振状態が遮断状態での電位の自然落下で、地上子コイルと電磁結合して周期を早める方向の制御しかできないため。 変周式車上装置の発振器が広い発振周波数帯を確保出来るのは、一般的な共振や移相による線形発振動作とはどうも違う、弛張発振のように見えるのですが・・・・・・。真相は?

安全装置にデータベース方式は適切か?    <5>

 エラーを嫌うもの程、監視対象と1対1対応させて、点検を容易にしてエラー発生を防ぎ、修復・管理を楽にするものです。ATSの地上情報機器を当該現場に置くのもその基準に良く合った適切な方法で、たとえばATS-P地上子が、その設置地点からみた停止信号機迄の距離と平均勾配を車上に送って車上演算で限界内停止させるのはまさに1対1対応で、どんな車両を持ち込んでもそのまま自動的に対応してしまいます。
 これに対して「車上データベース方式」は、車上に準備した路線データを位置マーカーを頼りに読み出して処理するもので、路線別、上下線路別、進路別・番線別のデータを準備・選択して利用するので、現場状況の変化対応も容易ではありません。 1対1対応からは外れてデータ管理リスクを生ずるものですから、車上データベース方式の祖:ATS-SP開発の一員である著者が、どういう理由付けで採用しているかを捜したのですが、明解な説明はありませんで、ATS-SP紹介の末尾p104後半で以下のように述べています。

・・・・・・運転士が列車の運転計画などの情報をICカードに記録して携行する・・・・このカードに線路データ変更分自動的に追記し・・・・・・自動書換を行う。・・・・今日の情報機器では知らぬうちに無線を介してプログラムの修正もされる時代であるし,携帯電話を利用して多くのデジタル情報がやり取りされている。これらの技術からすれば問題にならない課題と考えているが,実用化検討時は障害とされ,結局その当時は実用化が見送られた。
・・・・当時はデータを車上に記憶させるのではなく地上から与えるべきという考え方も根強かった。
   See→安全装置にデータベース方式は適切か?:日記#300

 ATS-SP開発者としてそれがボツにされた口惜しさは切々と伝わるのですが、なぜ1対1原則を捨てて誤装着のリスクを増やしても採用したいのかの説明としては如何なものでしょう? ATS-SP却下後の車上データベース方式の経過を辿りますと、先ずは制御振り子の動作地点制御に使われ、ATS-Sx地上子を検出してデータベースと照合して絶対位置を確定し、そこからの走行距離で曲線位置を算出して傾斜制御をする方式で好成績を収めて実績として認められて、 一方、ATS-Pの運用実績で位置基準車上演算方式=パターン方式がその優秀性を認められて、線路容量まで増やしたことから、 両者のイイトコ取りで、D-ATC、DS-ATC、ATC-NSでの採用に繋がり私鉄でもデジタルATCブームとなった訳です。  振り子制御なら不動作だったり万一誤動作しても乗り心地悪化で済んで危険な状態にはならなかったからこそ乗客を乗せての実証実験が出来たもので、いきなりのATSのメインに採用することに躊躇いがあって当然だと思います。 また現示アップを特別のコードではなく軌道回路信号電流の転極で知らせる方式にも不安があったでしょう。 この辺は「現場の慎重論」で先ずは前段の実証試験:強制振り子制御の段階を踏んで信頼性が確認され、護られたわけで、これを否定的に捉えるのは開発者としての思いが強すぎるのではないでしょうか。

 同様の「現場の慎重論」から量産車には長らく不採用だった機構が在来線の「滑走防止装置」で、試作車としては101系、103系、201系の総てに装着されて機能試験されましたが、その実態が安全確保の「アンチスキッド制御」ではなくブレーキ全緩解で保守作業を軽減する「フラット防止装置」だったことから量産車には採用されず、試作編成からもわざわざ撤去されました。 「前後台車の速度差を検出したら滑走と見なして(遅速に関係なく)制動緩解する」という仕様をヲタ誌で見た時に、それでは滑走してない軸までノーブレーキにしてしまう衝突誘発システムではないか!車輪が三角になっても止めなきゃイケナイ場面もあるだろう!と思って驚いたものです。 在来線への採用は全軸独立制御や前後台車独立制御ができるようになってからですし、同様の滑走防止装置搭載の新幹線0系が繰り返し過走事故を起こして60m〜800m余ものオーバーランを繰り返したのは、滑走防止装置で制動全緩解しても、そこにATC過速度非常制動が掛かって、滑走・全緩解を繰り返して停まれず、岐阜羽島駅800m過走事故発生は当然のことでした。
 前出鳥飼事故での予想外の3非常制動区間突破の真の原因としても実は疑われている訳で、在来線で車両開発陣を抑えてフラット防止装置採用を断固拒否できたのは在来線運行幹部に事態を見通せる人達がいて開発側も救われたのではないでしょうか。 101系量産車への新型ベンチレター採用拒否だけで批判的に語られるべき人達ではありません。
 営団地下鉄技術陣がその解析力にあかせてガードレール設置基準を極端に弛めてしまい中目黒事故2000/03/08に至ったのは、営団地下鉄にはそうした「現場からの過走防御」が足らなかったからかもしれません。
【 地下鉄委員会 】:  <TBL-2>
共産党の営団地下鉄(=経営職場)単位の地区委員会。 地域単位の地区委員会と同格?現状不詳。支部化したか?かって日本鋼管などでも存在して、国鉄では聞かないがどういう事情かは不明。
 「地区委員会」は組織の実態に合わせて多数の自治体を纏めたり、大経営単位で組織されている。かっては「三多摩委員会」などとフレキシブル。
 中央委員会−県委員会−地区委員会−支部(cell:旧「細胞」)−党員。
 支部には地域単位の地域支部と職場団体単位の職場支部とがある。
 市町村委員会は市町村議員(団)単位の対外窓口で地区委員会傘下の規約ライン外任意組織:市町村の課題は対応する市町村委員会名で活動、自治体名の入らない「○○県南部地区委員会」では不都合ということの模様
営団検修職場からの繰り返しの輪重計設置要求は半蔵門線車両に限った輪重調整に留められて他線である日比谷線で惨事になりました。営団当局と御用組合に真正面から物申して不当弾圧を受けた「地下鉄委員会」系の影響力が半蔵門線外には及びきれなかった結果でもあります。 拠点だった筈の綾瀬も千代田線であり、日比谷線までは影響が及ばなかったのでしょうか。ここは鉄道業界の運動体として技術的業務に関する具体的見解を明らかにしている数少ない集団です。あとは唐突な雑音アジも時折混じる千葉動労機関紙ぐらいのもの。国労も全動労も優秀な専門家の組合員をもっと組織的に活用すれば良い物を!と常々思います。
    See→ 事故報告無視、輪重測定装置設けず  2000年3月 中目黒事故.不当弾圧回避に「赤旗記事」として公表か
         (地下鉄委員会機関紙「ヘッドライト」 2000/05/08 311号)
        ATC下での中目黒駅衝突事故1992年6月 (同機関紙 1992/06/22 187号)
       同紙 バックナンバーIndex

 DDM駆動連接試作編成E331系で基本が採用されてE233系に採用されたLAN制御方式の拡張応用で、線路脇の光ケーブル回線に信号・ATS系の各要素を配置してここに個別データを配する、すなわちリスクを低める1対1対応の復活が低コストで可能かも知れない訳で、そういう状況での車上データベース方式「堅持」には納得出来る理由がありません。

ATS「国鉄中心技術開発」は逆認識ではないのか?    <6>

 ATSの開発が国鉄主導で行われて、私鉄はそれを若干の改良をして採用しているという記載については異議があります。A、B、C/S型車内警報機、列車停止装置でATSの素材である素子やハード的方式を開発したのは確かに国鉄(と信号機器メーカー)です。 「変周式」(=LC共振地上子方式)を実用化した「C型/S型車内警報装置」「ATS-S型」のコマンド伝達機構はたしかに国鉄の鉄道技術研究所(鉄道技研)と信号メーカーでしょうが、安全確保のための必要十分条件は何か、何が必要かという基本的検討を、ひとり国鉄が欠いていて、使い方次第で大変有用な素材を開発しながら、それを充分活かせない欠陥仕様ATSを全国展開しました。 その翌年に、運輸省発の私鉄ATS通達(昭和42年鉄運第11号通達)により私鉄各社・信号メーカーが最低限必要な水準で新たに構成したのですから、素子開発は国鉄系だったが、コロンブスの卵の実用化策は私鉄ATS機能通達だったというべきです。 磁気式とか、パターン制御型は国鉄型由来ではありませんが、早くから私鉄ATSで採用されて、多段の速度照査という国鉄型には欠けているATSとしての必要条件を備えています。
 戦前の山陽線網干駅急行列車追突事故1941/09/を承けて設置工事の始まった鉄道省型ATSでは2段階の速度照査を行う連続コード式として設計されて広島−博多間で完工間近だったものを爆撃で搭載前の車上装置がほとんど破壊され一旦頓挫したものの敗戦直後に運用試験までしていますがGHQの占領行政下で工事再開不許可運用試験禁止命令が出されて、機械式チョッパー方式という脆弱性もあってか米軍占領中に完全に立ち消えになりました。研究室感覚の製品では現場に受け容れられないのでしょう。 その設計当事者の紹介記事にも安全確保にATSがどうあるべきかが一応は述べられており、発生事故の現象面だけを追ってモグラ叩き的対策を続けた国鉄とは「志」からして違っていました。国鉄が「志」の点でひとり抜けていたのです。この重要点に目が行かないから「国鉄が開発、私鉄はそれを流用」という妥当でない認識になるのでしょう。
   See→鉄道省ATS解説(復刻)
 See→鉄道省型ATS 記事復刻

  [f4] 重複閉塞式
 ATSの素材としてみれば国鉄と周辺信号メーカー発祥ですが、A型はそのままではなく、営団日比谷線(1960年供用)などWS−ATCや新幹線アナログATC(1964年供用)として水準に達したものですし、B型も、都営1号地下鉄・京成・京浜での1号型ATS(1960年供用)で妥当な2段以上の速度照査ATSとなり、C型S型も信号現示速度制限を共振周波数に割り付けた私鉄型の多変周型ATS(1967年通達対応)として妥当な機能を得たもので、操作や状態に拘わらず停止信号で無条件に警報を発して一律に確認扱いを要求し、最高速度で停止信号に突入できる=速度照査と強制即時停止のない国鉄型ATS(=1966年全国展開のA型、B型、S型)とは全く質の違うものです。
 素材の技術がいくら高度でも最終的にシステムとして必要充分な機能が求められる訳で、営団地下鉄銀座線・丸の内線でかって使われた超ローテクの重複閉塞式打ち子式ATSの方が即時強制停止である分、安全性で優れていました。打ち子式ATS地下鉄の衝突事故は新宿駅引き上げ線で折返し回送車が車止めに突っ込んで1日動けなかった事故しか知りません。 あれは原因の正式発表を見ていませんが、過速度で折返し用引き上げ線に突入して制限区間内に停まれなかったのでしょうか?高速側の速度照査機能が無くて防げなかった!?それとも旅客を扱わない引き上げ線にはまだATSがなかったものか?(営団地下鉄日比谷線中目黒の折返し回送衝突事故では引き上げ線にATSが設置されていませんでした。丸ノ内線新宿駅の引き上げ線がその設置基準だと防御がありません)。 「重複閉塞式」というのは停止信号が2つ重複して、手前が進入を許容して強制制動停止、先方が進入禁止停止としている方式です。

ATSのあるべき姿も「限定適用」か?    <7>

 本書「列車制御」でのATS、ATCの位置付けは、個々の素子や方式の説明はあって正確さで流石第一線の開発陣に居た方の記事とは思いますが、安全確保に何を管理すべきかのソモソモ論が欠けていて、尼崎事故後の事故調・国交省の方針にも異論のあることを強く匂わせています(p93L3〜L12)。
 「・・・・・これらの事故防止機能をATSとして具備すべきか否かは議論の余地があり,必ずしもATSによらずに対策することは可能である。しかし,福知山線の事故を契機に列車の運転に伴う危険事象そのものが俎上に載せられた。・・・・・」
とありますが、事故調の勧告は、ATSに依らない対策がされていないものについての速度照査と過走防止しか言及して居らず、曲線過速度ATSの基準も転覆限界についての國枝の実験式による転覆限界速度の90%という安全確保ギリギリの値を提示しているだけですから、JR各社の基準(=制限速度遵守強制)で過速度ATSを設置すると一桁多い設置数となっています。 神戸電鉄などは事故調勧告通りの設置で僅かなものでしたから、ATS設置に対する批判の矛先を国交省の行政指導に向けるのはスジが違うと思います。 行政指導内容は、個々の判断は各事業者の責任で行い、過速度・過走対応を求める行政指導も、他に安全を保障出来れば事業者判断で選択出来ることになっています。 役人側の指導責任回避の側面は確かにありますが、他の方法の採用は全く否定して居らず、無対策は事業者だけの責任だと言ってるわけで、具体的対応策としては事故調提起の方法は妥当です。

 開発者が一刻も早く製品を実用化したいと思うのは当然です。その辺は開発畑経験者として特に良く分かります。ワカランチンの保守派・守旧派のブレーキを乗り越えて実施する大変なエネルギーが必要とされます。JR東でのATS-P普及をみても現場を含む根強い抵抗を副社長・社長・会長主導のトップダウンの形を取って乗り越えて、20年余をかけて首都圏近郊では房総半島全域、超ローカル久留里線まで換装しています。
 しかしそれを利用する側:使う側と製造など経済活動とする側からみますと、安定性や収率、弱点も見た冷静な総合評価が必要なわけで、特に安全性・安定性の求められる保安装置を、開発側の是非とも実施したいバイアスのある視点だけから決めてはいけません。特にJR東日本にATS-P導入を決定したのはその開発陣の強い要求ではなく安全を求めた運行側でした。
 某量産会社で大きな設備投資を伴う画期的高性能新製品を開発したとしてオーナー社長がボンッと40億の設備投資をしましたが、組合側は技術的未解決点が多くて、その段階で量産しても対応不能と判断してブレーキを掛けていましたが間に合わず、案の定、不良品多発大幅赤字を改善出来ずに量産中止となり、さらに開発研究は続けて、「今度こそは大丈夫!」と再度巨額の設備投資を提起。 しかし引いてみると量産の問題点を解消出来たとは言えず、再度の失敗は見えていました。組合員開発者は量産化したい気持ちが一杯なのは痛い程分かりましたが未解決課題が多すぎて、またボーナスを削られては堪らん!と団体交渉を申し入れても「社長マターで、人事・労務からは何も言えない!」し、機密扱いで公開出来ないというので、その状況報告と設備投資反対の見解を組合機関名ではなく、執行委員中の首無し争議団連名のビラで全社に配布して批判。 怒った社長が「首だ!機密漏洩!」と叫んだものの、「もう首が無いんで一旦繋がないと切れません」と返されて、社内世論は圧倒的に批判的なものになりましたが、資本金総額の3倍を投入して結局不良品廃棄による大幅赤字を脱却できず失敗廃棄となりました。 SONYが「クロマトロン」量産開発に失敗して大赤字を出して撤退し1電子銃(ガン)方式で明るい高性能ブラウン管「トリニトロン」に切り換えて辻褄を合わせたのと似たようなものですが、性能を落とした代替品でダメージコントロール出来なかった分、打撃は深刻でした。 結局は、「組合の指摘を無視して無茶な投資で80億円もドブに捨てたんだから、その赤字を口実にしてボーナス値切るのなんか許さないっ!」と頑張ってボーナス・賃上げ減額幅を抑えるだけになったのですが、 開発側だけの判断には実施バイアスが強くて無理があるということです。
 開発ものの採否・導入は、開発者の要求からだけでなく、振り返って見極めるのも重要なのです。
 もっとも、後に世間で配当損失保障が大問題になった時、あれは他者への博打場投機でヤクルトなど屋台骨を揺るがす巨額損失になりましたが、この社では総て自社設備への博打的投資に留まっていて、その範囲では実業の会社としてマトモでした。 事務折衝(=縮小団交)の席上、組合側が「うちには絶対『損失保障』問題はないでしょ。金があれば全額自分自身の投資で使っちゃう会社だから」と突っ込むと、資金調達担当をして国際資本市場調達の導入など当時はごく珍しかった資金直接調達法に切り換え銀行離れを試み成功させた実力派役員団交委員長が笑い転げて「君等もそう思うか!WWW」。

思わぬ欠陥か?!管理特性不適か?
  国鉄側の言い訳そのままは残念、柳田本!    <7.2>

 「新幹線事故」の第3節は在来線ATSに絡む事故の解説で、若干の冗長感はありますが、新幹線品川事故、新大阪事故同様に個々の事実の正確な記述があり大変有用なものになっています。執筆時に国鉄側の「解説」に引きずられて意味合いを変えてしまった点が大きく3点あります。しかし、それに気付ける「事実」は掲載されていますから、優れたルポ本としての価値は損ないませんが、列記しておきますと、
 以上の3点が、国鉄側の言い分そのままに受け入れてしまい、事態の本質を整理して突き出すものにはならなかったのが大変残念ですが、「力率」なんて電気屋と設備関係者のもので一般人が詳細を理解しきれなかったのは時に無理からぬ処で、1977年刊の古い本ながら良いレポ本として段ボール箱には入れず常に手に取れる本棚にずっと置いていました。
 ちなみに「力率」について近くの本屋で高校物理学参考書を30種ばかり覗いてみましたが、記載があるのは僅か3種類だけで、それも主内容ではない参考事項として1/3ページ程度しか書いていませんから、高校物理の教科書にはまず記載が無い様で、読み捨てられてほとんど記憶に残らないでしょう。かって「数学U」の付録最終ページに「 ニュートンの求根法 」が解説されていたのですが、授業では飛ばされてしまい、ざっと見で電算機使用の力尽くの近似計算法らしく、手を触れた事もない大型電算機の解説をされても手計算では結果を確かめようもなく、意味がないのでパスしていたところ、ペーパーバックの読本「電算機の数学」を眺めて、条件判断機能を持つプログラム電卓で利用できることが分かり、改めて数Uテキストを掘り出してきちんと読み取って試行錯誤で真値に収束するアルゴリズムを理解しローンの支払い条件から利息率を逆算するなど様々試作したものです。 結局、現実場面の無い教科書解説では記憶に残りようがないのです。

厳密な表現が必要!CARAT
「全部車上データベースが最適」など有り得ない    <8>

 「CARATでは,これまで地上で責任を持って行っていた保安のための制御機能を,車上に配置することが自然であるとの結論に達した。」 「地上では,列車の追跡とそれらの情報から割り出した,個々の列車に対する走行許可地点情報の伝達,そして駅構内の転轍機の制御に専念することにした。」(p121L6〜)
と、理由解説無しに結論だけが述べられていて、かなり汎用的な安全原則、バグ抑止原則である「1対1対応」を否定する理論としては非常に困ります。

[f5] 「電圧平衡」なら右端が適切.3灯断線でも1灯点灯
中央は回路として無意味で、著者の校正漏れでは?
「電圧平衡器」はAT饋電のオートトランスに相当

 
[f6] インピーダンス・ボンド結線表記新(p90図F,p136図6-2)旧
右旧表示の方が実構造に即しているが、
近年信号系文書では左表記が目立つ

[f7] 高圧タップ式制御原理回路図

[f8] 雄弁解説!原理 or 物理構造.

図には結線だけでない説明力がある.
何を説明したいかで上下表現が変わる.
左図添付なら「2トランス式」は明瞭で
ヲタ誌多数派の「1次側での電圧切換」
という誤解は起こらなかっただろう.
 高価なケーブルの省略によるコストダウンをリスク増に優先させたことは比較対照の問題で分かりますが、そもそも車上データベース方式が適切と言うにはその根拠の解説が要るでしょう。ケーブルコストの問題が解消されても1対1原則には戻らないということですから。

 記事を子細に読み込みますと、絶対的地点情報は地上子から読み取ることになっていて、それは「1対1対応の原則」そのものです。 それなら曲線情報、勾配情報も基本的に地点に張り付いた情報ですから、車上データベースではなく地上に置く選択は充分有り得ます。 ATS-P方式で車両・列車由来のパラメターは、減速能力、列車長さ、車上子取付オフセット、列車許容速度、許容不足カント毎+α制限等です。
 このうち「許容不足カント毎+α制限」が地上子側にのみ割り付けられていることが不合理で、許容不足カント110mmの振り子車制限と、同90mmの車体傾斜式車両の制限コードがバッティングして併用出来ず、また貨物列車の種別毎制限を制定出来ないで居ます。
 これを地上−車上分離して、曲線半径とカントを地上子情報、許容不足カントを車両・列車毎の車上情報に切り分ける=1対1対応の厳密化を行うことで、車両毎に制限速度を算出できますが、 それを「車上データベース化」というのは当たりません。
またコマンドのビット数が足りるかどうかという問題は生じて当面は車上データベース採用の根拠を与えます。 これら個々の地点に配置すべき情報と、線区全体の走行許可制御を地上で行うとは当然独立でしょう。
それを「車上データベース方式が適切」「従来の1対1対応を改める」とは単純化集約出来ません。 逆に「情報の性格を精査した配置の振り分けにより1対1対応を強化する」方向なのではないでしょうか。

 また、ATS-Pを例に取りますと、コードの桁数の決め方は、従前の実態に引かれて必要以上に桁数が多かったり、分解能誤差から低速域での動作不安定を引き起こしたりの弱点があり、制限速度位置までの距離なら4m単位より大きくして32m〜64m単位にする(=3〜4 bit節約)とか、地上子設置位置を8m単位等コード分解能基準に決め直す(=1 bit節約)とか整理出来る無用の冗長性も内包しています。 速度制限コード自体が5 bit(0〜31×5 km/h=〜155km/h)ですから、曲率やカントの有効桁数もこのオーダーで足り、現在、距離に10 bitを割り当て(=0〜511×4 m=〜4,092m)ているのを6 bit程度と精度のバランスを取って設置位置の方をコードに合わせて1単位の整数倍に定めることは可能でした。ATS-Psや1967年〜開発の東武TSPでは設置位置を固定化することで設置位置情報取得を必要なくしている訳で、ATS-P開発時点の1984年〜でも工夫次第ではありました。同じ時素リレーを使うB型ATSと1号型ATSの格段の違いのように、同じ素材を割り当てた機能にだけ使う国鉄流か、トコトン使い切る私鉄流かの差はあって、目覚まし時計仕様に留まるか、多段速照付き安全装置を構成出来たかの結果の差となったように思います。

結線図ミスか?信号灯電圧平衡器    <9>

 信号に複数の電球を使って断線故障による不通をなくす試みが紹介されていますが、その回路図([f5]図中央)は明らかにエラーで動作できず、正しくは右図でしょう。説明図の校正漏れの様で、電気屋相手なら誤記は読み捨てられるか、描かれた部品から当たらずとも遠からずの正解を推定されて「回路(c)だろう。結構粗忽!」と言われるだけですが、一般向け書籍としては読者に是正取捨能力が無い前提ですので特に気を付けて頂きたい。
 また「ロッドの熱伸縮を自動吸収する驚きの機構」として紹介されている「パイプコンペンセータ」(図6-7:p144/p134)は、その図だけでは動作せず、バネ機構で牽引しておく必要がありそう。一般向け解説図としてはかなり舌足らずです。

なぜ変更?インピーダンス・ボンド表記    <10>

 近年、信号関係の書籍では、インピーダンスボンドの表記[f6]が構造図に近い図右側のものではなく、左側に変わりました。(本書、p90図F、p136図6-2) 電気回路図表記の慣行では、対向するか縦列に並ぶコイルは磁気的な結合がある場合でしたから、新表記では、2つのインピーダンスボンド相互に磁気結合が有るかの誤解を生じさせる恐れが出てきますので、従前通りが妥当と思うのですが、こうも一斉に表記法が切り替わるというのは、斯界で何等かの合意がされたのでしょうか?それなら外部から何を言っても関係ないことですが、逆に外部の電気屋としては、構造を素直に表現する従前の表記を維持することも勝手という話になります。
 回路図は単に電気結線を表記するだけではなく、動作原理や構造をも一目瞭然に説明してしまうものの方が優れていますから、配線図生成ソフトが描く、無用な折れ曲がりだらけの図面は質の悪い酷いものとされる訳です。
 右[f8]の参考図は同軸ケーブルからの不平衡給電を、送信アンテナへの平衡給電に変換する「平衡・不平衡変換1:1バラン」の結線図ですが、「原理図」ではその動作状態が一目で分かり、「構造図」では機械的構造が一目で分かる、雄弁振りで、或る程度の電気知識が有ればほとんど動作解説を必要としません。説明したい内容によって図を選択します。
 先の[f5]でも、右端図が構造でも原理でも、もっとも明解な回路図表記です。
 鉄道でも古くは「高圧タップ式電気機関車は1次高圧側タップを切り換えて速度制御する」という誤謬が多数派を占めて鉄ヲタ誌だけでなく「運転理論」読本の解説文まで占拠していますが、情報が[f7]の様に正確な原理図付きで広められていたら此の様なことにはなっていません。こういう優れた表現能力のある図を、分かりにくくする試みは、余程の事情がない限り避けた方が良いと思います。雄弁な手段を大事にしたいものです。

「列車制御」同一装丁でオーム社刊あり    <11>

 中村英夫著「列車制御」には工業調査会2010/06/30刊のほかに、同一装丁で翌年2011/02/25発行のオーム社刊行版がありますが、両方を読み比べますと、その序文がオーム社版で末尾2行が増えて「工業調査会版を再びオーム社で刊行した」とあって、そこを読む限りは同じ本のようで、目次ページ数10ページが別カウントになって数値が10ページ若返っただけで、索引などページ表示が10頁若くなっているのが一覧できる他は変更が見当たらず、本の主たる論旨は変わってない様に見えて、敢えてオーム社版は買わないできました。僅か8ヶ月で根本的書き直しを必要とするような情勢変化は起きないでしょうし、筆者に書き直したい動機も無いでしょう。
(出版社工業調査会倒産後、オーム社が再刊を引き受けたもの@2017/06/07追記)

 一般人からは時にサリン・テロ教団のオウム出版と間違われるオーム社と言いますと強電・電機・計測・理論本:大学・工高教科書の老舗で、アナログ計算機とかシンクロスコープ本のほか強電雑誌も出していて、毎年、当該学科の成績優秀卒業者に雑誌を3ヶ月間無償贈呈していました。 しかし、超多忙な新卒就職直後では時期が悪く、贈呈期間も短すぎて、効果が薄い様で、宣伝のつもりなら、せめて1年間、4年次生に贈り、日経パソコンの執筆者贈呈本みたいな金ぴかの派手なレッテルでも表紙に貼って廻りに見えるように贈れば良いものを、と思ったものです(w。 学校・学科により贈呈人数や期間が違うのかも知れませんが、我が学科は約100人中3人推薦依頼があって3ヶ月間贈呈でした。これは教授へのお付き合い程度でしょうか?(14/07/10)

2014/06/23 /06/17 23:55

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