京成押上・都営1号線ATS

 '67年私鉄ATS通達を承けて京成電鉄の現状は以下の通り

京成電鉄ATS 現動作情報

信号現示 
現示
free
減速
YG
R点
(Y)
注意
警戒
YY
R点
停止
 
制限 7545251515km/h
超過 450
制動 常用:自動緩解非常 
当初よりG:75km/hYY:25km/hが増えている

ループ点:点:京急点相当

【 情報出所 】
  信号・標識・保安設備について語るスレ 930, 934


【 京成電鉄3100型搭載ATS 仕様&動作概説 】 (1960年)

<自動列車停止装置>

 本装置は,東京都地下鉄1号線に乗入れ運転する場合に,最も適切な方式として採用されたもので,現在国電区間(京浜東北,山手,総武)に使用されておりますB型車内警報装置に準拠し,これに自動列車停止の機能と車上における連続列車速度照査機能とを付加したものであります。  

<地上装置>

<動作一覧>

地下線運転の場合          (1960現在)
信号現示進入速度
km/h
警報表示自動停止確認扱による
解除
白色灯赤色灯ベ ル 
進行信号 連続点灯    
注意信号15以下連続点灯
(一時消灯)
(一時点灯)   
15〜45 一時点灯※動作※ 可能
45超過一時点灯◆動作常用制動可能
第1停止
信号
(地下線)
15以下連続点灯
(一時消灯)
(一時点灯)    
15超過 一時点灯動作非常制動可能
第2停止
信号
15以下 連続点灯  不可能
進入後
15超過
動作非常制動赤色灯は不可能
なるもその
他は停止後可能
15超過

   地上線の場合
 地上線における停止現示は地下線の第2停止相当の現示のみであるから上表より第1停止の場合の動作を除く。

引用者注:※制限速度以下での警報動作は疑問?信号電流0.8秒瞬断で一瞬チン鳴動か?◆連続点灯が妥当だが?(現在は連続点灯)

継電器名称
記号名 称
MR主継電器
15R15照査継電器
45R45照査継電器
ACR確認継電器
LACR低速確認継電器
15BR15制動継電器
45BR45制動継電器
主継電器の動作
通過信号
機の現示
信号電流
遮断時間 
主継電器
の動作 
0s打上
0.8s0.8s間落下
1R3.0s3.0s間落下
2R落下

継電器の時素
MR0.3s〜0.5s
15BR1.1s〜1.4s

照査継電器の動作
速 度15R45R
0〜15km/h未満扛上扛上
15〜45km/h未満落下
45km/h以上落下



     【 情報出所 】
   KDK 3100 P26-27 1960年号
   京成電鉄株式会社発行資料より


   速度照査器
 15km/h及び45km/hに相当する周波数を基準にして照査継電器の動作を制御するもので濾波器、増幅器、発振器等を内蔵する。

   受信器増幅部
 受電器に誘起する50c/sの微少電圧を増幅整流する。

 以上、1960年現在:

【 国鉄ATS-Bと京成京急等1号型ATSとの違い 】  <KDK>

 国鉄ATS-Bの動作との大きな違いは、 ATS−B型が信号電流値(≒送端電圧)を監視して位置を知り現示を警報する微妙な方式で、しかも警報動作だけに対して、
京成・都営・京急型はR/R1現示手前区間(等)に踏み込んだ途端に動作するシンプルな方式で、しかも連続速度照査機能がある。
  現示信号通過で信号電流0.8秒断。現示速度照査により常用制動で減速、更に地下線のみの第1Rに踏み込むと3秒断、15km/h超過で非常制動。絶対停止の第2R区間では短絡されて信号電流はなく秒以上経過で非常制動となっており、ATS−Bの様な微妙な調整は存在しない。これが今も生き残っている理由だろう。地上線では現示45km/hの冒進型防御を過走余裕で防御してる。
 京浜急行では更に高速域にYGF:105km/hB(Y)68km/hを増やしている。
 45km/h速度照査と強制制動がある分−B/−Sより断然優れていて、さらに地下区間で重複式制限を守っての直下地上子冒進だと−Sx(98年)より20m+3秒分多く区間だから先行列車が在線する第2停止までに停止する。大事故発生の条件は速度照査のない−Sxにあるから、ATS-Pには及ばないものの1960/12/04供用開始の装置としては実用的に優れた方式と言える。(当初地下線用とされたR1現示が設置箇所での冒進を防いできたのだろう)
 特筆すべきはR1、R2現示:無閉塞運転中にも15km/hの速度照査が行われること。もしこれがJNR系ATSにあれば、沼津片浜、鹿児島線海老津、東中野、総武線船橋の各衝突事故は起こらないか軽微で済んでいた。ATS−Pにも無い機能だが、自車の短絡する信号電流の有無を監視するだけで無閉塞運転中の条件は採れるので−Pに加えて良い機能だ。

【 ×不採用鉄道省型ATSが×源か?1号型ATS 】←別物   <Shou>

 戦前・戦中工事の鉄道省型連続コード式ATSの構造と機能を述べた以下2本の記事に拠れば、これが「1号型ATS」の起源か?と思われる。 しかし「連続コード式」とあり「商用周波数の断続誘導式」ではないので、京三記野氏が鉄道省での比較検討時に競合して採用されなかった方式と取り違えている可能性があります。
 仕様上の相違は3点、
 一つはY現示速度の相違で、京成・都営1号は45km/hに対して、網干事故直後に初めて導入した当初のY現示速度が30km/hだったことで仕様による設定の違い。
 もう1つはB型車警・ATSに引き継がれた不安定な距離判断をやめて、踏み込み即に断続して現示を伝える方式を採っていること。
 加えて地下鉄線内では停止信号2区間の重複式に対応して第2停止があるのが1号型ATS。
 京三製作所記野紘吉の記事で、「商用周波数による軌道回路電流を列車接近によりコード発信器で断続させて,3種類の情報を出して車内信号機に現示する」とある通りです。

     See→鉄道省型ATS資料

「ATSの概歴と各システム」

    記野紘吉(京三鉄電協派遣)執筆:鉄道ピクトリアル2006/9#779号p101右L23

 1941(昭和16)年9月に山陽本線網干駅で列車追突事故が発生し,再びATSが論議され,1942年12月になり連続誘導式による2速度制御ATCを東海道・山陽・鹿児島各本線と東京・大阪付近の電車区間に採用が決定した.・・・・・

 この方式は,商用周波数による軌道回路電流を列車接近によりコード発信器で断続させて,3種類の情報を出して車内信号機に現示するもので,当時追突事故が頻発していた山陽本線から着工した。

 地上設備は1945(昭和20)年8月までに広島−門司港間がほぼ完成し,車上装置も大部分納入されていたが,空襲でほとんど焼失して使用開始に至らなかった.

「鉄道重大事故の歴史」

    久保田博著グランプリ出版2000年6月8日初版2005年10月11日第4刷発行

5-3 戦時期の保安
 種々の検討の結果、1942年(昭和17年)に連続コード式を決めて、当時海運からの転嫁輸送で輸送力の強化が要請されていた山陽線に設置を緊急工事として推進された。
 しかし、終戦直前の戦災で資材が焼失して未完成となり、やがて戦後の混乱とGHQにより不急の工事とされて不許可となり、ATSの採用は放置されてしまった。  (p74L14)

8-3 車内警報装置およびATSの採用
・・・1921年(大正10年)に東海道線汐留〜品川間で磁気誘導式のATS,
1935年(昭和10年)東海道線大津〜京都間で連続コード式車内警報装置、
1940年(昭和15年)東海道線三島〜沼津間で連続コード式ATS、
1943年(昭和18年)東海道線茅ヶ崎〜平塚間の貨物線で連続コード式ATS  の試験を行っていた。
 戦時輸送対策の緊急工事として戦争末期に、東海道線東京〜沼津間と山陽線姫路〜門司間に連続コード式ATS設置工事が進められた。
 この方式は、
@信号機の注意現示区間に進入の時に、確認扱いをしないとブレーキが作用すること、
A乗務員のブレーキ扱い後、30km/h以下でないと緩解できないこと、
B無閉塞運転では20km/h以上になると非常ブレーキが掛かること、
  など、高水準のものであった。

 しかし、戦争末期の空襲により資材を焼失して、完成できずに終戦となった。本工事は終戦後も継続に努めたが、資材難に加えてGHQの承認が得られず、工事はやむなく中止となった。(p116L10〜)

2014/03/23(SUN)追記

京浜急行ATS 動作情報

信号現示 
現示
free
抑速
YGF
減速
YG
B点
(Y)
注意
警戒
YY
B点
(R)
停止
 
制限 1057568452515(15)km/h
超過 450
制動 常用非常 
 速度照査段階は多いが、超過した場合の動作段階は常用制動で45km/hまで減速と、非常制動で停止の2段階。1960年京成・都営・京浜統一仕様のまま. 無閉塞運転中も速照

【 情報出所 】  信号・標識・保安設備について語るスレ 167, 169-173

mail to: adrs
Last update: 2017/06/05, 2014/03/23, 2004/01/02
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[京成ATS-1型解説、車上装置]  <ATS-1>


[京成ATS-1型 地上装置]  京成電鉄3100パンフより