スイス列車脱線:カーブで速度超過
事故調「人為的ミス」
【ジュネーブ伊藤智永】スイス・アルプスの観光列車「氷河特急」の脱線事故で、スイス政府の運輸当局は30日、バレー州ブリークで会見し、事故原因は運転士のスピードの出し過ぎで、人為的ミスだったとする暫定調査結果を発表した。これで、事故調査委員会の原因調査はほぼ終了した。
地元メディアなどによると、事故現場付近は速度を時速35km/hから55km/hに上げる境界線上だった。通常、カーブを通過した後で時速を55km/hにすることになっているが、運転士がカーブ地点より80m手前から加速を始めたという。列車の長さは126mだった。速度計の解析の結果、5両目の途中が境界を通過中に時速56km/hに達していた。最初に6両目が脱線し、5、4両目も引きずられたとみられる。
時速が56km/hになった時点で自動制御装置が働いた。運転士がブレーキを踏んだ形跡もなかったという。列車の運行は予定よりも遅れていたという。
運転士は事故直後、線路が曲がっていたと話していたが、線路に問題はなかった。また、天気、風速、車両についても事故原因となるようなものはなかった。
運輸当局は過失責任についても数週間で結論を出す見通しで、地元当局は運転士の刑事訴追も検討している。運転士には8年の経験があり、事故の経験はなかったという。
この事故では、兵庫県尼崎市の国本安子さん(64)が死亡。29日現在も重体2人を含む日本人10人がスイス国内で入院している。
毎日新聞 2010年7月31日 東京朝刊
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