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ATS車上装置回路図。s.22年1月「信号保安」2巻1号 p60〜63記事 <C1> |
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ATS全体回路図.s.18年7月「信号」16巻4号p178〜 <C2> |
技術秘匿型公表の経験 <C3>開発者の権利保護と、公共利用を目指す技術公開のバランスをとる法制として特許・実用新案制度がありますが、時に周辺技術や市場未開拓の関係で特許取得が意味を為さなくなることが有り、競合他社に出し抜かれないために、特許申請の技術解説を歪曲したり重要な部分を伏せたり、特許申請そのものを避けて技術秘匿したりは時折見られるもので、特許公告文が技術的に意味が通らなくても公告されています。私が「実に巧みな技術秘匿!」と最初に思ったのは、松下電器製オーディオ・アンプの「ブリッジ型モーショナル・フィードバック回路」。スピーカーとアンプの相性を厳しく求められるため製品としては短命で終わり、商品としては絶えていましたが、現在はYAMAHAがダンピングファクターの高いアンプ付きスピーカー(能動スピーカー)として製品化している程度です。 解説にいわく「ブリッジを平衡させて駆動電圧の影響を消し去り、機械部の運動による起電力を取り出して帰還制御する」という触れ込みで、古い「ラジオ技術」誌(ラジオ技術社刊)に紹介され、製品も「高級電気蓄音機」(=電蓄)として幾つか売り出されていたのですが、学生時代にその定量解析を試みて上手く解くことができずに10日程もあれこれ試行錯誤してしまいました。 その結果、松下電器の説明=「ブリッジの平衡」云々を棄てて、スピーカー端子から見たアンプの出力インピーダンス計算と、スピーカー自体の解析モデル(等価回路)としてボイスコイルの直流抵抗+音声電磁変換器の形として、逆起電力が動作速度比例と考え、スピーカー巻線の直流抵抗値を、アンプの負性抵抗が打ち消すモデルなら定量解析できることに気付き、さらに、それを原理転用した製品「電子ガバナー回路」でも同じ説明がされていることが分かりました。 教訓!人の示唆だけでなく、自分流解析を行うこと! 新卒採用時の各職場廻り実習で開発セクションに行きますと、丁度この「ブリッジ式電子ガバナー」の試作実験を始めたところで、1年先輩が回路解析を担当して試作ボードに可変抵抗器6基を取り付けて動作試験をしていました。 回路図を見て「これはブリッジ式MFB回路の直流版!」と気付きまして、等価回路(解析モデル)と解析式を作って提出、諸定数を試算しますと現実と良く一致して設計解析式として採用されました。 唯一、電圧変動補償抵抗だけがどうやっても解析計算に載らず現物合わせに留まりましたが、適切なトランシスター計測器もまだ無かった時代・・・・・・。 オーディオ用としては速度安定性がやや不足していて、サーボ制御の急速な台頭もあって、製品寿命は比較的短命に終わりましたが、当時は金の3倍近い相場だったプラチナなどの貴金属接点をガバナー(定速制御装置)に使わずコストダウンを図るための試行の一つとして、数社が製品化しました。 しかし、今の中国のようなコピー製品天国だった時代に参入しない家電メーカーが目立ったのは定速度性能の不安定性に最初から見切りを付けていたからでしょうか? それとも松下電器の仕掛けたトラップ「ブリッジの平衡」に填まって迷子になったからでしょうか?我が某社は先輩が後者で、回路の定量解析に可変抵抗だらけの実験セットで苦労していました。 総合的な回路解析技術がまだ汎用化されず、設計者の名人芸に留まっていた時代に、松下電器の公表解説「ブリッジ式MFB/ブリッジ式電子ガバナー」が私の定量解析を迷路に誘い込み幻惑させる技術秘匿策になっていました。 セミナー業者から買って配布した社員の技術教育テキストで「イマージナリー・ショートが実現されているとすれば・・・・・・・」と称して、どんどん回路定数決定していく設計手法に出くわして、「そのイマージナリー・ショート状態になることを苦心惨憺して証明して、誤差も安定係数Sも決めてきたのに、肝心の部分を飛ばすとは何事か!」、「この設計方式では独自回路は開発設計できない!これは酷い!」と思ったものですが、基礎の証明なしにどんどん回路設計させてしまう電子回路技術者促成栽培なのは確かでした。 |
イージス艦vsコンテナー船衝突図 | イージス艦あたごvs漁船衝突図(日記#182&#183) |
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