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Geo日記
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[73]. 曲線過速度防止装置設置基準通達出る

  5/27、国交省鉄道局は曲線での過速度防止装置設置について下記の通達を発した。
  この過速度防止装置設置基準通達は転覆事故頻発で「分岐器過速度警報装置」を至急開発設置した1968年頃に出されるべきもので、2000/03/08日比谷線事故までガードレール設置基準未制定に並ぶ運輸省の怠慢というべきものである。
  本文をみると、転覆−復旧境界遠心力から平衡速度を算出し、高速側がその90%以上の速度の場合に設置を義務付けている。遠心力は速度の乗比例だから81%以上に義務付けたことになり安全比率1.23という安全限界ギリギリの値といえそうだが、尼崎事故の実績は転倒速度108km/hに対しJR西日本発表の転覆限界は133km/hだからその速度比率は0.812、安全比率換算で1.52なので、それより緩い基準を通達するには尼崎事故の特殊性について詳細の理由が必要だ。(現実の表は後述の通り0.7a=2前後で作られている模様。論より証拠の現実問題では0.8倍以下、a=1.57以上でないと怖くて決定できないだろう。通常では安全比率a=2.4〜3.5で運転されている)。
  その具体的算出例では、曲線半径と軌間、カントから函数形で設置義務速度を定めれば一義的でスッキリするのに、そうではなく、400Rを境に20km/h差と30km/h差以上を義務付けて基準が不連続となっている。素人相手の通達ではないから、通達本文同様の函数形で設置基準を示すべきだろう。発表の該当数2,400箇所余は本文なのか、別表に拠るものなのかすら明記がない。

  算出式は下図の算式を一般化すれば良いから、過速度防止装置設置要件は
lin km/h高速側制限速度
η速度余裕率(通達0.9)
曲線半径
m/s^2重力加速度
mm軌間
mmカント
mm許容重心高
とするとき、国交省通達の装置設置条件は
lin≧η・sqrt{R・G・tan(θc+θg)}
  但しθc=arcsin(C/W)、θg=arctan(W/2H)
一方、表計算ソフトやBASICにないarcsin函数をarctanで代用する換算は
sinθc=C/Wのとき、tanθc=C/sqrt(W^2−C^2)=1/sqrt((W/C)^2−1)
∴ θc=arcsin(C/W)=arctan{1/sqrt((W/C)^2−1)} となるから
lin(R,C,W)≧η・sqrt{R・G・tan(θc+θg)}
  但しθc=arctan{C/sqrt(W^2−C^2)}、θg=arctan(W/2H)
 この限界式で作図してみよう。 軌間W:1067mm、範囲は半径R:100〜1000m、カントC:0〜105mm、 速度限界比ηを転倒速度の0.9倍というのが通達内容だがあまりに安全比率が低く、の場合、速度で1/√2倍も念のため計算した。 過速度防止装置設置基準
以下'05/05/30追記
 上記計算結果図は、カント97mmについて、通達本文の「転覆限界速度×0.9」と「……×0.71」および制限速度、本則制限速度(30mmカント)を併記したものだが、通達本文基準式は、その付表の「400R以下は20km/h以上、400R以上では30km/h」という基準とは懸け離れていて、どうも安全比率、すなわち転倒速度の√2分の境界を参考値として通達している模様である。
 尼崎転覆脱線事故はJR西日本主張の「脱線限界速度133km/h(=転覆-復旧境界速度)」と、実転覆速度108km/hから、0.812より大きな値(=転覆し易い値)を採用するには尼崎事故について車両特有の故障や欠陥など特別な説明が必要で、通達本文記述式の「転倒限界速度の0.9倍」は到底採用できない。
 安全比率は長期的な安全基準としては大いに支持するが、事故防止の緊急措置としての改善命令なら、転覆限界に極めて近い通達本文値0.9(遠心力で0.81、安全比率で約1.23)は論外だが、尼崎事故値よりは小さい0.8以下で、0.71(遠心力で0.5、安全比率で)より大きい適切な値がある様に思う。
 また遅れ上等で線路脇に人影が見えただけで停めてしまう程神経質なJR東日本と、事故救助中や制動性能を保障できない様な豪雪中でも減速運転を許さず、過酷な処分、日勤教育を以て回復運転を迫って救急隊員をはね殺したり、現示から減速しながら次の絶対信号を260mも冒進させるなどの重大インシデントを起こしながらその究明を放置して悪条件下での高速運転続行を図るJR西日本とは対策の緊急度が大きく違うだろう。
 国交省として内部で基準が混乱していないだろうか?2重基準の通達、事故条件よりかなり緩い基準値は妥当ではない。また多額の経費を要する通達なので、過剰部を減らす為にも、基準は付表の方式ではなく、通達本文で用いた函数形式の表記方式の方が適切だ。転覆限界速度はカントや緩和曲線とカント逓減率で違うのだから速度差だけで規定するのは難しい。東中野事故までは1分の遅れで乗務停止処分だの吊し上げだのと現在のJR西日本と同様だったJR東日本が、次々の事故に追われながらも唯一社、主要路線のATS-P/-Ps化をほぼ済ましていた訳だが、今回の通達での最大打撃が悪役西日本や同様の独裁支配の東海ではなく一定の努力を重ねた東日本で、しかもATS-Snのため-STより1桁高価な設備になるというのは皮肉と言うほかない。北海道は先に-SNでの速照を決めていたが、この設置基準では東日本と共に全部ドット付-ST/-SW対応車両にした方が安上がりになるのかもしれない。
過速度防止装置設置基準0.9 過速度防止装置設置基準0.71 転倒限界速度  
2005/05/29 23:55
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