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[74]. 他要因を算式に取り込む? 曲線過速度防止装置設置基準通達
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通達に示された「転覆限界速度の0.9倍未満は過速度防止装置無用」という通達は尼崎事故現場での0.812(=108km/h/133km/h)が対象外になり変だとは発表文を検討した多くの人が感じて、後に国交省に説明を求めた模様だ。「JR西日本試算の単純な数式ではなく『風の影響などを考慮した』」とかの説明を受けたそうだ。 従前の算式は、風や重心移動などのその他要因を考慮しないのではなく、安全比率(≧2.4、すなわち安全余裕)の中に含めて算式を単純化している訳だから、風の影響を別項で計算するのは、軽量車体で転倒しやすいという要素を抽出することになり、過不足なくリスクを取る試みだ。 安全装置は、その性能次第で安全のための無駄を必要とし、その点でオペレータと対立し、時には外されて事故に致る。特に大き過ぎる安全余裕は「オオカミ少年」化してしまう。安全基準の演算の正確さは、そうした無駄を最小限に留めて、逆効果や無駄な投資を回避して安全を担保するものである。精密な限界計算というのは裏返せば無駄な安全度を採らなくて良くするということであるし、安全のための無駄を最小限に平準化してオペレータの困惑を極小にするということだ。 そう考えたら、設置義務限界は函数形で提示して、地上子先頭位置も指定して、リスクを揃え、必要性の薄い箇所への設置命令を避けるのは当然であり、今回の様な400Rを境に速度差20km/h〜30km/h以上に義務付けなどという荒い無駄の多い基準は役所のアリバイとしても出せない。無用のゆとりを要求して運転しにくくする問題と、先の宿毛事故対応では-SW/SS/ST型地上子対2〜3対で100万円弱というから、2400箇所中の1割が対象外になるだけで2.4億円が不必要になる。「秒担金20銭」で人件費コスト計算、などというシビアな製造業界から見たら、あまりにルーズな感覚だと思った。 ★ 付表を子細に読むと「算出例」となっており、函数形での利用や、それを利用して現場毎の想定最大風速を織り込むことが可能かもしれない。 (2005/06/07追記) 間違いだらけの 「速照地上子設置位置」宿毛駅先の宿毛事故では、100km/h以上で運行する線の行き止まり駅に、ATS-ST系では過走防止装置設置を義務付け、ATS-Sn系ではロング地上子位置を最高速度対応に改めるという平成17年国鉄技第195号通達で幕引きされている。この時の報道で明らかなのに無視されていることは、速照地上子が2対設置されていて、全く無効な設置だったことと、ロング地上子設置位置基準にも問題があって、宿毛駅下り線の都合6点8基の地上子中、非常制動2基を除く4点6基に問題があったことだ。分岐器の20km/h制限に対して25km/hでの速度照査は厳しい基準として妥当だが、設置位置は防御する初速と空走時間で大きく変わり、空走時間2秒として、 80km/hで247m(=(80^2−25^2)/(20/0.7)+80/3.6×2)、 120km/hでは549m(=(120^2−25^2)/(20/0.7)+120/3.6×2)先に 速照地上子を設置する必要がある。実営業ではこんな長距離を無駄に徐行するわけにはいかないから、その区間を3〜4分割して、 ☆速度制限点に最も近い点に25km/h速照地上子を設置、 ☆その防御可能速度で次の速照値を決めて減速曲線からそれ以上に設置位置を決定 ☆その防御可能速度で次の速照値を決めて減速曲線からそれ以上に設置位置を決定 ☆ 〃 ☆以上を防御最高速度、先の先頭設置位置まで繰り返す という手順だが、宿毛では10m位置に設置されているだけだった。防御可能速度を逆算すると何と空走時間だけで制限地点に突入してしまう。完璧な設定エラーである。 過走防止の23km/h速照も、停目対応ロング地上子位置も、場内信号対応ロング地上子位置も揃ってエラーで、宿毛事故後の3段階の速照増設と移設・設定替えでようやくまともな設定になった。 無届け工事は許されず、信楽高原鉄道はそれで処罰されているから、工事主体の鉄建公団、認可の運輸省共にエラーを見過ごして土佐くろしお鉄道に引き渡したということであるし、設置位置基準自体に穴があった訳だが、どのエラーも公にされていない。最高速度からの過走防止装置設置の義務づけがなかったこと自体が重大なエラーだが、設計審査で設置位置不適を見過ごすとはどういうことか。こうした実績からして、設置限界位置も明示する必要があるのだ。カーブ直に付けられても意味がない。 |
2005/06/05 18:00
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