過走防止装置設置通達 (#23)
土佐くろしお鉄道突入事故ATS対策
05/03/02土佐くろしお鉄道の宿毛駅突入事故を承けて国土交通省鉄道局長は
3月
29日各地方運輸局長宛に「線路終端部における安全対策の向上について」と題する下記の文書を送りマスコミ及びインターネット上に公表した。
源URL=
http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha05/08/080329_.html
線路終端部における安全対策の向上について
(通達 & プレスリリース)
|
平成17年3月29日
<問い合わせ先>
|
|
鉄道局技術企画課
安全対策室
(内線40782、40772)
TEL:03-5253-8111(代表)
|
国土交通省としては、土佐くろしお鉄道(株)の列車脱線事故(3月2日発生)を踏まえ、3月3日、全国の鉄軌道事業者に対し、駅の終端防護用設備、車両のブレーキ装置等、終端駅における運転取扱い及び乗務員の健康管理について緊急に点検を行い、一層の安全確保を図るよう文書で指示してきたところですが、今般、緊急に取り組むべき安全対策について、全国の地方運輸局を通じ通達しましたのでお知らせします。
緊急に取り組むべき安全対策の概要
今回の事故に鑑み、高速度で駅終端部の車止めを乗り越えて駅舎の壁に衝撃したという状況から、終端防護用自動列車停止装置の機能向上
等により、行き止まり線箇所での列車の運転速度超過の防止を図るため、整備計画を策定し計画的に整備を実施するよう指導することとしました。
-----------------------------------------------------------------------
各地方運輸局長 殿
|
国鉄技第195号
平成17年3月29日
|
|
鉄道局長
|
線路終端部における安全対策の向上について
先般、平成17年3月2日土佐くろしお鉄道鰍フ宿毛駅構内において、特急列車が高速で終端駅に進入、車止めを乗り越え駅舎の壁に衝撃し、11名の死傷者が生じる列車脱線事故が発生した。
事故原因については、現在、航空・鉄道事故調査委員会において調査中であるが、当該駅終端部の終端防護用自動列車停止装置の機能が、その区間の列車最高速度からの非常制動距離を考慮したものであれば、本事故は防止できた可能性があると思料される。
ついては、今般、緊急に取り組むべき終端防護用自動列車停止装置の機能向上等を下記のとおり定めたので、貴管下鉄道事業者を指導されたい。
記
- 整備対象
緊急に取り組むべき終端防護用自動列車停止装置の機能向上等については、行き止まり線に進入する際、場内信号機外方の閉そく区間の列車の最高運転速度が100キロメートル毎時以上の箇所を対象とする。
- 構造要件
緊急に取り組むべき行き止まり線の終端防護用自動列車停止装置の構造要件については、次のとおりとする。
- ) 点制御の速度照査機能による場合は、場内信号機外方の閉そく区間の列車の最高運転速度からの非常制動距離を考慮した照査位置及び照査速度であること。(引用者注:ST型等時素速照)
- ) 速度照査機能を有しない終端防護用ATSロングの警報用地上子の新設又は移設による場合は、場内信号機外方の閉そく区間の列車の最高運転速度からの非常制動距離を考慮した警報用地上子の位置とすること。(引用者注:ATS-Sロングのみ)
- ) ただし、上記(1)又は(2)の設置すべき地上子の直近に速度制限用ATSがある場合にあっては、その速度に対する非常制動距離を考慮した地上子の位置とすることができる。
整備計画
整備計画を策定の上、計画的に整備を進めること。
[ SN系にも速度照査勧告を!高速北海道は放置できない ]
通達内容を子細に見ると、行き止まり駅進入に際し最高速度100km/h以上の区間につき、最高運転速度からの非常制動距離を考慮した構造を求めているが、
「U.構造要件(2)」の ATS-S/-SN系では、速度照査による強制停止は求めず、警報だけのロング地上子のみでの対応を許容していることが特徴である
それだと最高速度140km/hのディーゼル特急がATS-SNで疾駆する北海道や、それと同一ATS-Snの東日本ローカル線では、赤信号の警報だけになって、確認ボタンを押せば以降強制停止が無くなる構造がそのまま容認されたことになる。
技術的には、信号直下用の非常停止地上子の周波数123kHzを使った速度照査による「分岐器過速度防止装置」が存在し、その流用で実現可能であるが、なぜか今回の緊急通達から洩れている。既設であれば別だがATS-SN系の速度照査による過速防止装置(ここをクリック)設置勧告も追加すべきだろう。
宿毛駅地上子設置情報
位置 m | 速度 km/h | 間隔 m | 備考
|
---|
照査 | | 防御
|
---|
|
---|
800 | 75 | | 130 | 20.425
| 過速防止 事故後増設部
|
---|
700 | 65 | | 119 | 19.070
|
---|
400 | 45 | | 79 | 14.286
|
---|
242 | 30 | | 47.5 | 10.999 | (242mは推定)
|
---|
|
---|
168 | (25) | | 分岐器制限速度
|
|
---|
38 | 10 | | 30.7 | 1.991 | 過走防止移設
|
---|
0 | 0 | | 12.2 | − | 絶対停止
|
---|
|
---|
設定 | | 算出 | 12m過走余裕
|
[ ロングの移設・増設が抜けた宿毛対策 ]
高知新聞(4/5夕刊)などの報道に拠れば事故現場、宿毛駅の改良は、4/5に速度照査地上子3対の新設と既設2対の移設・設定変更が行われ、75km/h照査が停止目標から800m手前、65km/h照査が700m、45km/h照査が400m、従前の分岐器過速度防止用で設置されたと思われる25km/h照査は30km/h照査となり位置不明(ポイント先端から74m必要≒242m?)、過走防止と思われる30m(×65m)位置の22km/h照査は38m位置に移設で15km/h照査速度(過走余裕距離から10km/hが適切)ということで、若干余裕が大きめのきらいはあり、15km/h設定では車止め接触条件が残るが、暴走は防げる配置となった。(右上表参照)
しかし、運転士に終端突入の危険を知らせるロング地上子は従前の194mと場内信号対応636m位置(=最大51km/h&77km/h)のままで、場内用が通達U項(2)に矛盾したままであるが、正しい位置とのこと。無警告の非常制動で停まれる様になったが(補助設置ではない)基本のATS-Sとしてはこれも120km/hに対応できる915m〜1016m余の位置へ移設か増設の必要がある。応答が大きく違うのは運転しづらい。(停止位置対応の地上子は増設した速度照査地上子対の速度制限値により移設の必要はない:5/16訂正付記)
そして、宿毛のATS-S地上子設置が「正しい」ということは、他の行き違い駅も120km/h対応していないということだから、対応する過走防止が無い以上、安全上は今後、特急は入線できないままになるが、設置位置としては「正しい」という変な状態になりかねない。国交省鉄道局が位置算定基準の落ちを認めて全国対応を求めれば簡単解決なのだが、迷惑を受けるのはシモジモばかりだ。
(算出根拠はここをクリック、
ATS-Sx諸定数についてはここをクリック)
(計算表のダウンロードはこちらをクリック)
【高知新聞ホームページ略図の加筆・訂正】
源=高知新聞3/5図 3/9出発信号、場内信号位置、突入速度。
赤旗新聞4/8(4)過走防止速照位置、算出:速照地上子対間隔
尚、マル5速度照査位置65m(3/4共同-赤旗)は誤。4/5に38m15km/h移設設定された。
12km/h〜10km/hが車止めに当たらない設定だが15km/hでも接触に収まるだろう。
30m22km/hという値は11km/h〜21km/hの進入が無防備で車止めに衝突する無設置に近い
誤設定であった
(05/04/15付記)
05/04/25発生のJR西日本福知山線尼崎脱線転覆事故を承けた国交省の[技術基準検討委員会]05/1129中間とりまとめに基づいて06/03/24技術基準等の改正が発表された。これにより、先のH5国鉄195通達に欠けたATS-Snや合流部、及び最高速度100km/h以下の速度制限が猶予期間を置いて義務付けられて、本稿前出の欠陥は埋められることとなった。
これで国鉄型ATSに残る重大欠陥は信号ATSに冒進速度制限がないことで、国鉄民営JR化に際して廃止した1967年私鉄ATS通達(s42鉄運第11号)の復活が必要である。(07/08/01追記)
鉄道に関する技術上の基準を定める省令等の一部を
改正する省令(平成18年国土交通省令第13号)の公布について
<問い合わせ先> 鉄道局技術企画課 TEL:03-5253-8111(内線40704)
平成18年3月24日
背景
平成17年4月25日に発生したJR西日本福知山線における列車脱線事故を契機として、鉄道の安全性や信頼性をより一層高めるため、学識経験者や鉄道事業者等からなる「技術基準検討委員会」を設置し、鉄道の技術基準で求めるべき安全水準のあり方について検討を行っているところです。
平成17年11月29日には、技術基準検討委員会において「中間とりまとめ」が報告され、その中で技術基準において当面緊急に対応すべき項目が示されたことから技術基準等を改正することとしました。
改正省令
(1)鉄道に関する技術上の基準を定める省令(平成13年国土交通省令第151号)
(2)軌道運転規則(昭和29年運輸省令第22号)
(3)無軌条電車運転規則(昭和25年運輸省令第92号)
(4)鉄道事業法施行規則(昭和62年運輸省令第6号)
公布日 平成18年3月24日(金)
施行 平成18年7月 1日(土)
改正の概要
(1)速度制限装置の設置
曲線、分岐器、線路終端、その他重大な事故を起こすおそれのある箇所への速度を制限するための装置の設置を義務化及びこれに伴う工事施行認可申請等の手続きにおける記載事項の見直し
(2)運転士異常時列車停止装置の設置
運転士の異常時に列車を自動的に停止させる装置の設置を義務化
(3)運転状況記録装置の設置
事故時の速度やブレーキ等の運転状況を記録する装置の設置を義務化
(4)飲酒や薬物を使用した状態での運転の禁止
(5)その他所要の改正
(1)から(3)については、以下のように、適用を猶予する経過措置を設ける。
- 新線及び新造車両に対しては、施行日から2年間
- 高速線区又は高密度線区の既設線及び既存車両に対しては、施行日から10年間又は施行後最初に行う改築若しくは改造の工事が完成するまでの間
- 低速線区かつ低密度線区の既設線及び既存車両に対しては、施行後最初に行う改築又は改造の工事が完成するまでの間
mail to:
adrs
|
過走防止装置
|
宿毛事故解析
|
|
主目次
|
Last update: 2005/04/16
04/14 (05/04/05作成)
|
【高知新聞ホームページ】(源)