154-衆-国土交通委員会-2号 平成14年02月27日
無閉塞運転廃止質問 (瀬古由起子)

○瀬古委員 日本共産党の瀬古由起子でございます。
 二月二十二日、JR九州の鹿児島本線の列車衝突事故について伺います。
 この事故で百十四名もの方が負傷されました。一日も早い回復をされるように祈っております。
 この事故は、普通電車がイノシシと衝突して停車していたところを、後続の快速電車の運転士が、赤信号で停止した後、徐行運転を開始、これは無閉塞運転と言われているものだそうですけれども、前方に注意しながら時速十五キロで走行しなければならないのに、普通電車の前方の信号を中継する信号ですね、これを快速電車の進めの信号と間違って、加速して追突したというように言われております。JR九州の田中社長は、これは絶対にしてはいけない初歩的なミスだった、安全対策を一から見直したいと陳謝したと報じられております。
 こうした人為的なミスというものをどう防ぐか。もちろん、本人の教育もありますでしょう。そして過密ダイヤだとか過密労働の問題、こういう改善も私は必要だと思います。それでも人的なミスは起きる場合があります。とりわけ、大量輸送機関である鉄道でこのような人的なミスを起こした場合は、それを防ぐ対策はないのか。私はあると思うんですね。
 実は、この列車の事故と同様な事故が、一九九七年八月に、東海道線の沼津―片浜間で起きております。この事故の教訓から、JR東日本は、無閉塞運転、閉塞信号が赤のときにその区間に進入する場合は、運転士の判断だけではやらない、運転を再開する場合には、列車運行を管理する指令に連絡して、許可を得てから出発するようにしております。
 このような改善は、JR東日本だけでなくて、JR四国、名鉄などでも採用しています。この方式の採用、または、赤信号では後続列車が入らないようにする、こういう無閉塞運転そのものの見直し、こういうものはもっと早く、前回、四年前に起きた事故のときに本来検討しなきゃならなかったと思うんですね。それが十分検討されていれば、人為的なミスが起きてもそれをカバーすることができたんじゃないかと思うんですけれども、その辺はいかがでしょうか。

○石川政府参考人 今回起こりましたJR九州の事故でございますが、これにつきましては、現在、事故原因調査というものを航空事故調査委員会でやってございますので、そういうことを前提とした上でお答えをさせていただきたいと思っております。
 それで、今御指摘の平成九年八月のJR東海の事故、これは今回のJR九州と同様の事故と言えるものではないかという御指摘がございましたが、これは東海道線の沼津―片浜駅間での無閉塞運転の取り扱いの誤り、これによる先行列車への追突ということだろうと認識してございます。
 この平成九年の事故でございますが、これは実は、追突した列車の運転士が、今お話がありました制限速度毎時十五キロ、これを大幅に超えて、約七十五キロ、時速七十五キロでぶつかってしまった。それで、かつ、前方の確認を怠ったということでございます。
 したがいまして、これにつきましては、運輸局から当該鉄道事業者に対して警告書を発出して、事故原因の究明及び再発防止対策を講ずるように指導しました。さらに、本省から全国の鉄道事業者に対しまして、このように毎時十五キロメートルを大幅に超えた、約七十五キロメートルもの速度まで加速させて、かつ前方の確認を怠る、こういうようなミスを防止する観点から、無閉塞運転の取り扱いに関する規定の遵守あるいは厳正な取り扱いということについて再徹底するように指導を行ったところでございます。
 さらに、同年の十月でございますが、運輸省におきまして、JR各社の安全担当部長等、それと運輸省の担当で構成されます鉄道保安連絡会議というのがございます、これを開催いたしまして、この無閉塞運転の取り扱いをテーマの一つとして取り上げまして、当該事故の状況を詳細に各社に説明し、また無閉塞運転時の安全確保の問題について検討を加えてきたところでございます。

○瀬古委員 私が聞いているのは、このときにJR東日本は改善したわけです。しかし、なぜ九州は、あなたたちが指導なさって、そのままになっていたのかということを聞いているんです。どういう指導をなさったんですか。
 このようにやはり人為的なミスは起こり得る、だから一定の何らかの対応をしなきゃいかぬのじゃないかという御指導をなさったんじゃないですか。それがあったら、こういう同じような事故は起きないと思うんですけれども、いかがでしょう。

○石川政府参考人 先ほども申し上げましたように、無閉塞運転の問題について、その年の十月に行われました鉄道保安連絡会議というところでテーマとして議論をいたしました。それで、その後、JR各社、それぞれのみずからの路線の実態、それからどうやったらそれが実施できるか等々について検討が行われたわけでございます。  それで、先生お話しのように、JR東につきましては、その次の次の年ですが、平成十一年二月から無閉塞区間の運転について、運転指令の指示により行うということになりました。それから、おっしゃるように、JR北海道、一部の区間でございますが、それにつきまして十一年九月から、JR四国でも十二年十一月からというような形でしてございます。
 その他の会社につきましては、それぞれの路線の実態等々を考えながら検討を加えてきたわけでございますが、現在のところそういうことになっていない会社があります。それにつきましては、今回の事故にかんがみまして、再度検討を行っているところでございます。

○瀬古委員 時間が余りありませんので余りやれませんけれども、結局、見逃したというか、この九州の場合は指導し切れなかったということでしょう。だから、きちっと、今言われたように、JR東日本や四国などがやっているようにやればこういう事故は起きなかったわけです。そういう点で、少なくとも国土交通省がなぜここまできちっと指導し切れなかったのかという責任は、私はやはり十分あると思うのですね。そういう点では、これからもっと徹底しますとか、これからいろいろ改善しますとか、また、鉄道事故調査委員会のいろいろな御示唆もこれからまたあると思うのですけれども、やはり国の責任として、こういう事故を二度と起こしてはならないということでそれぞれやっているにもかかわらず、放置された、この九州はやらなかった理由があるわけでしょう、それを何で放置してきたのですか。あなたたち、知っていたわけでしょう、ここは改善していないということは。

○石川政府参考人 前回の平成九年の事故につきましては、先ほど申し上げましたとおり、本来十五キロのところを七十五キロというふうな速度までかなりいっちゃったというようなこともございます。そういうようなことで、そういう厳正な取り扱いあるいは再徹底というようなことをやってきたつもりでございますが、それから、さらに加えて、指令による無閉塞運転ということについても、それぞれの各社ごと、少しずつやってきております。
 いずれにしましても、安全確保ということについては……(瀬古委員「九州はやっていないでしょう。だから、何でやらせなかったのかと聞いているのです。きちっと答えてください」と呼ぶ)それは、基本的に私どもは、国土交通省というのは、もちろん全体の事故原因の究明あるいはそれによる必要な措置ということについて、いろいろなことを講じるように努めてまいりましたけれども、基本的に、鉄道事業者がまずみずからの路線の実態を踏まえて、かつ運転保安設備の整備あるいは関係係員の教育訓練というものの徹底を図り、みずから安全確保に努めるべきものだと考えております。

○瀬古委員 みずからやれない鉄道会社についてはきちっとあなたたちは指導するべきですよ、あなた、知っていたのだから。今まで事故が起きている、こういう事故が起きて、みんなそれぞれ改善しているのに、ここだけ放置していたわけでしょう。私はやはりそれは責任があると思うのですね。  きちんとそれぞれの鉄道会社でという、もちろんそれはそうです、鉄道会社がやるべきですけれども、鉄道会社によっては、ちっちゃいところでとてもその体制ができないというところもあります。中小の場合は財政的に一定援助をしなきゃならないというところもあるでしょう。しかし、少なくともJR九州でいえば大会社ですから、きちんと自分の責任でやりなさいということはやはり言うべきじゃないかと思うのですけれども、大臣、いかがでしょうか。

○扇国務大臣 あってはならないことが何度も何度も起こる。私、まず聞いたのです。一般のドライバーでも、車庫に入れるのに後ろの壁にぶつかりそうになったら、停止線、今センサーでわかるのです。前に列車がいるのに、前に物体があるという、センサーをどうしてつけられないのと聞きました。そうしたら、費用がかかるのです、無線が入っていませんと。
 ですから、今回は、少なくとも電車がとまった、イノシシであろうが豚であろうが、ぶつかってとまったのならすぐ無線で本社に言う、そして本社の中央指揮所から次の列車に無線で連絡をして、前の信号は青になっているけれども青の手前で普通電車がとまったよと無線で言う、それくらいのことはするべきでしょうといって注意をして、どこでできていなかったかの原因を私は言いました。そして、今度、少なくとも無線にするぐらいは当たり前でしょうということを指導しておりますけれども、個々の会社によってはそこまでいっていなかったということもわかりましたので、以後こういうことがたびたびというのは情けない話ですから、厳重に指導していきたいと思っています。

○瀬古委員 ぜひ御指導を徹底していただきたいと思います。とりわけ中小の小さい鉄道などについては、いろいろな整備や体制の問題はぜひ配慮はいただくというようにお願いしたいと思います。  時間がございませんので、次に移ります。
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