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コキ106/107脱線は軽負荷時ローリング共振!
鶴見事故ワラ1型(ピッチング共振)再来か!


[F1]     軽荷重でのローリング共振3倍化で脱線   
(無荷重&全荷重振幅1.5に対し、軽荷重で振幅4.5)
江差線コキ脱線A106/107型2012/09/11@事故調報告より
 JR北海道の江差線で立て続けに3件の高速コンテナー貨物列車脱線事故が発生して、マスコミ的には他線も含めた線路の整備不良とデータ改竄だけが強調されましたが、運輸安全委員会による事故調査報告書によると、他社にも共通する走行特性上の重要問題が指摘されています。

 江差線高速貨物脱線事故は、@2012/04/26、A2012/09/11、B2014/06/22 と、3件連続して起こり、主要因がそれぞれ異なるという要注意事故です。 線路の整備不良が@、新聞用ロール紙の片積みがB、そして軽負荷時のローリング共振がAで、AB項は各社に共通問題で、整備不良&保線データ捏造のJR北海道に限ったことではありません。 B片積みは、コンテナー内部の検査はあまりできない前提で、貨物ターミナルなど出発地でのコンテナー片積み検査で積み直しを求めるとか、計測区間を置いて(できれば信号連動の)片積み警報を出して、編成から外す措置が必要、Aは走行特性が絡み(右F1参照)、全荷重と無荷重では適切に走行特性が切り替えられて問題ないものが、空コンテナーなど軽負荷の場合に、台車のダンパーが無負荷モードになっていて左右方向のローリング共振が著しくなり、輪重抜け脱線したもので、コキ106/107型で特に発生しました。毎年数件は発生していた貨車の「競合脱線」が1981年以降17年間も絶えていましたが、コキ106型投入直後の1998年から7件発生していて究明が必要となっていました。

 コキ104型では軽荷重モードと全荷重モードの切換が積載重量14.6トンを境に行われるのに対して、脱線したコキ106/107型では18.3トンで、この間の積載重量でローリング共振が起こり振幅が3倍余と著しく大きくなって脱線したものですが、振動吸収機能のダンパーに応荷重機能がないことで、減衰定数 ζ (ジータ)が振動的となり鋭い共振特性を生じて、共振周波数で駆動されると大振幅となって輪重抜け脱線に到ったものと推定されています(右図:ローリング周波数応答参照@運輸安全委員会事故調査報告書→)。 空コンテナー5個搭載時のローリング共振も事故車に近い、かなり大きい振動で、コキ106/107競合脱線の主要因になっている可能性があります。 満載と空荷の2状態切り替えでも、積載重量がその2状態に管理されていれば差し支え無いはずですが、2012/09の江差線A事故では、空コンテナー2個+空パレット満載コンテナー3個の計5個搭載で、もっと激しい共振状態となり脱線に到ったもの。 やはり応荷重で制震ダンパーを働かせる必要があるけれど、それは未開発で、現行のブレーキ力2段切換だけで無く、当面は制震ダンパーの積空モード切替値の適切な設定で、空コンテナー積載付近では共振しない特性に改めることと、共振させない重量管理が必要でしょう。

ピッチング共振脱線が鶴見事故主要因  <1.2>

 ここで思い出されるのが1968年11月の鶴見事故の原因となった2軸貨車ワラ1型の軽荷重時の ピッチング共振です。 駅の多くが貨物取扱駅の貨物全盛時代でホームや踏切待ちなどで貨物列車の通過を見ていますと、線路の不整でガシャガシャガシャ・・・・と長い減衰振動を始める貨車が時折通って、それが当時の新型貨車「ワラ1型」でした。
 これが東海道線鶴見駅付近の3複線で現総武直通横須賀線下りを走っていて脱線、隣の東海道線下りを走っていた横須賀線電車が事故に気付いて減速したところへ、対向側上り横須賀線電車が進入、脱線した貨車と衝突し脱線して対向下り横須賀線電車を貫通!死者161名重軽傷多数の大惨事となりましたが、この惨事の切っ掛けとなった脱線をしたのが、ワラ1型。
 旧型貨車を更新する、鋼体貨車としてワム70000型、ワム60000型、ワラ1型、パレット積載貨車ワム80000型と続く中で、ワラ1型採用に当たり、「ワム60000型類似」として定められた走行試験を省略したことで、軽荷重時の走行特性の欠陥に気付かないまま就航させていたことが故久保田博氏の著書「日本の鉄道車輌史」p242(グランプリ出版2001/03/21刊)に述べられています。 そうだとしても、国鉄組織に異常情報が集約される体制があれば、事故発生前に手を打てていた可能性はあります。 感覚で言えば3Hz前後の激しいピッチングが5波以上聞こえていた記憶があります。他の貨車では起こらなかった現象なので特に記憶に残っています。

共振試験設備と「Q or ζ 」値管理必要  <1.3>

 根本的には、共振試験機や、試験線での特性確認を義務付けて、許容積載荷重の総ての値で「振動増倍度:Q」や「減衰定数:ζ(ジータ)」の値で共振の強さ、制振度を規定する必要があるのでしょう。 旅客の場合は荷重が比率として軽量で、車体重量30トンに対して200人乗り降りしても12トンの増減に収まりますが、貨物ではコキで、車体重量15トンに対して、最大45トン〜48トンが増減する際だった荷重変動があって、旅客より応荷重対応の必要性は切実だと思います。

[F2]ステップ応答: ζ の値で「臨界制動状態」にする

[F3]実用的上「やや振動的」程度が最も収束が早い
(アナ・コンによる2階微分方程式の解)
[F4]   共振回路のQ:(電圧)増倍度
Q=ωL/R=1/ωCR
 なおコンテナー貨車「コキ」は中梁構造のない捻れ剛性が小さい構造で、共振周波数が非常に低く、捻れ方向の追従性が良くて共振による振幅増加は心配ないというのなら良いのですが、念のため捻れ共振特性も計測しておいた方が安心でしょう。 タンク車の剛性が高くて線路の捻れに追従できず繰り返し乗り上がり脱線した中央線初雁駅の例(1965年)もあり、計測可能になったら確認はしておくべきでしょう。

 共振時の「振動増倍度:Q」というのは、共振周波数で励振し続けた場合に共振物の振幅が駆動振幅の何倍に収束するかという直感的に分かる振幅比で(See→共振のQ)、電気の共振回路では常用されていて、ATS変周型地上子はQ>130〜180などと規定されていて(「ATS・ATC」鉄道電気技術協会2001/03刊p12,32表2-1、表3-4、表3-5)Qを機械振動の共振に使っても問題ありません。
 2次振動系の制動状態を示す「減衰定数:ζ」規定なら汎用で、制御系や電気、機械どこに使っても差し支え有りませんが、現場実務上、どちらが扱いやすいのでしょうか?計測しやすい方に決めて特性値として管理することが重要です。

 これに加えて、応荷重の減速力設定も現状の2段切換(コキ5500など)より、比例制御が望ましいですし、鉄道総研で開発試験中だった貨物用のアンチスキッド装置はどうなっているのでしょうか?空気バネ台車採用と、その空気バネの空気圧を使った空気制動装置で、より正確な応荷重特性は実現できるはずですが、振動の制動力(ダンパー)については可変できる製品がありませんので新規開発が必要ですし、それを牽引する機関車には空気バネでのエアー消費に見合った大容量コンプレッサーを必要とします。ブルートレイン寝台デビュー当初の牽引制限は、空気バネによるエアーの消費から来ていたはずです。 エアーの高速充填を考えると、ブレーキ管だけではなく、高圧空気の引き通しも必要になるでしょうが、高速コンテナー貨車では既に電磁弁式があり、さらに高圧エア引き通しが実装されている車種もかなりあるはずです。

 空気バネは調整弁で負荷荷重Mに関わりなく高さ一定に調整していますから、バネ定数Kが、自動的に負荷荷重Mに比例するように調整されています。これは、無制動の場合の共振固有振動数frが変わらないことを示します。すなわち、
   (ω≡2πfr2=K/M =(kM)/M =k となって負荷質量Mに関係なくなります (但し k は、MとKの比例定数。[F8]式参照)。
 負荷に依らない制動定数 ζ を実現するには、ダンパーの抵抗も応荷重制御で荷重M比例にする必要があり、現状ではその機構が実現されておらず、枕バネの2段切換となっていますが、空コンテナ積載の軽荷重時に適応範囲を超えてしまいA事故に到ったものです。

工学院大学オープンカレッジ鉄道トピックス講座: 「日本の  <2>
鉄道の安全技術の発展と残された課題」

   (講師:曽根悟教授)開講を知っての考察
2017/03/30 27:35

 満員電車ゼロ政策が小池都知事の公約に採り入れられて更に山形・庄内中速度新幹線提案などで一躍脚光を浴びているkkライトレール(阿部等社長)運営の工学院大学オープンカレッジ鉄道講座(曽根悟教授企画監修)でトピックス講座として「日本の鉄道の安全技術の発展と残された課題」が5月連休明けに90分授業3時限で開講されることが分かりました。 開発・設計・実務の方からはなかなか出てこない学究らしい総論発想なので大いに聞いておきたいテーマですが、安くはない受講料を我が支配者のキツい点検をかいくぐって捻出できるかどうかが主関門!(w。「飲み代とカラオケ代を減らしなさい!」とか厳しく迫られてましてトホホ状態。 一般講座の方は受講料会社持で参加している受講生が多い様で、個人の興味でのポケットマネー参加は極少数の模様です。
 講義の項目としては、日本での
  1. ATSの発展と現状
  2. 残された潜在的な危険要素への対処
  3. 海外鉄道との比較
となっています。
 当初この鉄道講座は例の冷蔵庫氏が講師陣として宣伝されていて根拠の薄い鉄ヲタ向け放言雑談講座か?と受講パスを決めていたのですが、氏は単独のトピックス講座だけの担当で主講座は受け持たないことが分かり、近藤圭一郎氏(鉄道総研駆動電子回路開発等)、松本陽氏(前鉄道事故調委員長)、須田義大氏(東大生産技術研究所教授実験場所長)、辻村功氏(鉄道車両用電動機、電機システム開発等)、中村英夫氏(日大情報工学科教授)、前出曽根悟氏などによる内容のある興味深い課題だけ摘まみ食い!と思い直しました。 冷蔵庫氏は信者の一部鉄ヲタ向け看板人選で、鉄道本職さん勧誘には逆効果の人選でしょうが、信者の一部鉄ヲタたちはその特別講義を受講しているのでしょうか?
   See→1:検索:鉄道講座、  2:尼ヶ崎事故本批判検討記事(日記#95日記#81&日記#171
 標記講座で曽根悟先生がどんな問題提起をされるか分かりませんが、以下、ありうる項目を拾っておきましょう。 どれだけ当たりますか?
降雪パターン[F4]
[F5]東横線元住吉事故(日記402)参照

残された潜在的な危険要素への対処  <2.2>

  1. ATS/ATC
     微妙な考え方の相違として、ATS/ATCを「信号装置」として捕らえるのか、「安全装置」と考えるのかで対応法の違いになり、「信号を守らせる諸性能の保障」とするのか、「ありうる悪条件下でも安全を担保する設定」とするのかが分かれて、後者が省みられないのが現状でしょう。 尼ヶ崎事故直後のJR西日本記者会見では対応した幹部がATSなどハードの諸仕様をほとんど知らず、自社のどこに聞くべきかも把握していない安全体制軽視が露呈されましたが、安全装置としての側面をもっと強化して理屈を組立直す必要が有る様に思います。
  2. 車両の共振  <2.2.2>
  3. 建造物の共振(地震)  <2.2.3>
  4. 進行波・反射波型共振(定在波型共振=分布定数共振)  <2.2.4>
  5. 脱線検知法開発  <2.2.5>
  6. 線路など損耗軽減  <2.2.6>
  7. 分岐の鎖錠(インターロック)範囲はどこまで?信号操作のみで可もあるのでは?  <2.2.7>
  8. 異常時操作・緊急操作の慣熟  <2.2.8>
  9. ホーム柵・ホームドア  <2.2.9>
  10. 標準的な試験法  <2.2.10>
  11. 異常通報・情報共有体制  <2.2.11>
    MRK
    [F8] 運動方程式(2階微分方程式)
    2階微分方程式
    [F9] 2階微分方程式を構成→アナログ計算機
    LRC直列回路
    2階微分方程式
    [F9'] 2階微分方程式を構成→アナログ計算機
    減衰振動解
    [F10] 減衰振動解
    p121f6.1
    [F11] 結合振動回路
    p121f6.3
    [F12] 二重振り子 or 結合振動回路の解
    ミラー積分器
    [F13] ミラー積分回路
    EC-1アナコン
    [F14]
    ヒースキット社アナログ計算機EC-1$199.@Wikipedia
    アナログ・コンピュータとは当初「電子式」を指していた
  12. 実効性有る刑事免責  <2.2.12>
    人命に関わる事故が発生すると、報復処罰感情に迎合して、主に現場オペレーターを人身御供に刑事処罰を加えることで再発防止をはかるというやり方が取られてきて、事故発生に全く責任のない現場労働者が長期に裁判に晒されたり、重い刑事処罰を受けることが続いています。 警察幹部からは「人死にが出ている以上、刑事処罰は必要だ」(山形県警@羽越線事故2005年)などという乱暴な発言が有るくらい処罰側は無思慮です。 事故調査委員会の調査には免責がうたわれていますが、その調査結果は公開されていて、形式を変えて刑事訴追に使われますので「免責」に実効性が全くありません。たとえば法務省が政府職員である事故調査官に事故報告書と同主旨の「鑑定書」を書かせて刑事訴追の証拠に転換するのは福知山線尼ヶ崎事故などに見られる通りです。 元々事故調査委員会には処罰の権限がなく、そこでの「免責」は実効的意味がありません。 酔っ払い運転事故のような故意犯では酒気帯び運転処罰の強化で激減しましたが、過失犯には重罰効果は多くないでしょう。
     また、処罰対象が末端現場にのみ偏って、重要な誤りを冒した上部に責任が及ぶことはありませんでした。 たとえば北陸トンネル列車火災惨事のように、「トンネル内停車は危険だ」と走り抜けて地元消防と協力して消火し1両全焼という物損事故(1969年)に留めた特急日本海の殊勲の乗務員たちを「運転規則違反」として処分してしまい、トンネル内停車を処罰を以て強制。 その3年後の急行きたぐに列車火災では北陸トンネル内に停車しての消火活動を余儀なくされ、機関士殉職、死者30名負傷者714名という大惨事になりましたが、検察は大惨事化の基本原因であるトンネル内停車を処分を以て強制した犯人、日本海火災事故で対応規則を改めなかった不注意な犯人には一切手を触れず、火災発生に何の責任もない乗務員3名を起訴し、長期に刑事裁判に晒して仕事を奪いました。 火災時のトンネル内停止は処分を以て強制されたもの。決定権の無かった末端現場に重大災害化の責任を問うべき根拠の全くない人身御供処罰でした。こんな不公平&不当な刑事処罰で事故が減ることは決してないでしょう。
     公共交通機関での事故再発防止には、刑事免責を保障して精確な原因調査を行う考え方の国が西欧を中心に広がっており、処罰要求の国民感情もあるけれど、現状の不公平な現場人身御供型処罰はやめにして、正確な原因を究明して有効な再発防止策を取ることの方が重要だという方向も妥当でしょう。
  13. 会社・団体・法人の刑事処罰  <2.2.13>
    国民感情に即した処罰対象では?尼ヶ崎事故も、笹子トンネル天井板崩落事故も、会社組織としての管理の怠慢から防げなかったもので、責任の個人特定ができ難い案件としても、会社組織には責任を取って貰う必要があるのでは?
    経済事案では会社に対する処罰規定が有り、個人責任追及と矛盾するものではありません。
  14. 警察・検察の人身御供処罰主義の悪影響  <2.2.14>
    刑事罰での過失責任追及に純法律的には「予見可能性」の有無で処罰を分けていますが、実運用では非常に恣意的で、先出北陸トンネル火災惨事のように無実の人を訴追するような現場労働者生け贄主義が横行しています。 技術的には素人である警察検察が言葉尻を捉えて縄付きを出すのを警戒して「様々な要因の競合」を強調せざるを得ない状況があり、結論を分かりにくくして必要な対応を鈍らせているきらいがあります。
     製造ラインであれば、不具合要因のパレート図を作って、アクション可能要因のウチの大きなものから順に潰して問題解決するので、その一番大きな要因を「主要因」=原因と呼びますが、事故調査ではそれが意に反する刑事処罰に直結してしまう危惧があり、その回避には「多要因の競合」を言うほか無くなって、主要因をぼかしてしまいます。 たとえば日比谷線中目黒駅脱線衝突事故や鶴見事故の調査報告が典型でしょう。 総論では暈かして分からなくし、各論・具体論で問題点を指摘する形になっています。 それで鶴見事故でのワラ1型のピッチング共振が霞んでローリング共振脱線を招きました。指摘が具体的であれば気付いて対策した可能性は少なくないのです。

【 補足 】
 アナログ計算機と過渡現象解析:
   減衰振動、共振、2階の微分方程式   <2.3>

 車輌の「懸架装置」といいますと、車体という質量Mを、バネKで支えて、油圧ダンパーなどの振動吸収装置Rで共振発生を抑えるという、右図(b)[F8]の、運動方程式:2階の線形微分方程式を基本として現されます。 M、R、K、の値により減衰定数 ζ が決まり、応答が振動的になったり、過制動状態だったり、その境界域の臨界制動状態になったりします。(前「共振試験設備と「Q or ζ 」値管理必要」1.3項)。
 理想的な応答特性としては、振動的にはならずに最も早く収束する「臨界制動」状態ですが、実用的には許容できる若干の振動を残した方が収束時間が早くなることは知られています。

 線形微分方程式であれば紙と鉛筆で力尽くの手計算で解析できますが、現実の構造では非線形が多くて、バネ定数が2段切換とか、板バネの層間摩擦による制動とか、片効きショック・アブゾーバなどと、筆算に載らない特性が多くありまして、正確な解析を阻んでいました。
 それを簡易に直視する手段として、かっては電子式アナログ計算機(See→・・・・とは)が多く使われていました(F9〜10、F12参照)。歴史的には様々ありますが工業製品化され、多数の書物の書かれた実用上の実態は「微分方程式解析表示器」でして、機器組込の単機能で用いられることもありました。それ以外の一般的な「アナログ計算機」が大量生産商品化された例はありません。 すなわち、物理的特性値を電圧値として与え、結果を読み取るもので、構成要素としては演算増幅器(オペアンプ)で積分器、符号反転器、加算器を構成、非線形要素も構成して、諸定数の設定を、ポテンショメータ(一種ボリューム・ツマミ)や、演算定数部品(C、R)の抜き差しで簡易に行う構造のため、電圧(波形)として現れる様々の応答解を直視観測でき、それを元の物理量に引き直して読み取ることができます。 積分器はミラー積分回路(右[F13]構成図)で、演算増幅器と抵抗とコンデンサーだけで構成し、抵抗を複数にして加算機能を持たせます。微分器は演算増幅器に広い高域特性が求められて構成困難のため汎用計算には使わず、式を積分形に整理して演算させます。

 日本に(電子式)アナログ計算機が紹介されたのは1953年(s.28年)とされており、そこから電機各社で汎用製品化されて研究所などで広く使われる様になり、自動車開発や、建築関係などで使われ、国立高等工業専門学校(工専)などには設置されていましたし、アマチュア・教育向けのアナログ・コンピュータEC-1型が1963年(s.38年)にアメリカ・ヒースキット社から売り出されて日本のラジオ雑誌「ラジオ技術」誌グラビア&記事(17巻11号1963年11月号p120〜)にも紹介されていて、ハードとしては入手し得るものでしたが、「2階の線形微分方程式」という数学のレベルで、普通高校課程では届かず、一部工業高校〜工業高専、工業大学のツールとなっていました。 アナログ計算機の入門書も出版されていました。
   See→例:アナログ計算機入門: 長森享三・木地和夫(日本電気)共著1961/03/30\350.OHM社刊

 アナログ計算機(アナコン)演算のデモとしては、ステップ函数を1回積分で直線のランプ函数、2回積分で放物線、それに帰還を施してその定数次第で単振動(正弦波)、減衰振動解、指数函数といった変化を示せて(右掲載→F10)、さらに2重振り子・結合振動回路解析(右[F12]振動波形)が定番番組でした。 2階の線形微分方程式まで、すなわち減衰振動解までは演算増幅器3基で解け、9基内蔵の ヒースキット社製品の教育用アナログコンピュータEC-1 で実現できました。 演算増幅器は5極3極管である6U8単管で構成されて60dBほどの利得があり、双2極管6AL5のクランプ動作?で待機時の出力電位保持とし、解をオシロスコープ上に表示する繰り返し型(高速型)で、アナコンとしては最低限の演算デモができる構成でした($199.、9入力、5ポテンショメータ、3初期条件設定、9演算増幅器)。 ヒースキットのアナ・コン(アナログ計算機)発売を承けて、アマチュア学生生徒たちにより日本でも入手しやすかった5極3極管6BL8で演算増幅器を構成して、積分コンデンサーの初期化短絡スイッチに双3極管12AU7を使うなどしてアナコンの試作実験が行われました。
 後年、計算尺まで「アナログ計算機」とされましたが、それは後追い分類で、当初は電子式のみを「アナログ・コンピュータ」(アナログ計算機)と呼んでいました。

 現代なら高性能オペアンプICが多数出ていますので、高速型(繰り返し型=CRT表示)なら製作実験は簡単で、リークの少ないコンデンサーと、その待機時短絡用のリレーを準備して簡単に実験できます。 真空管方式より最大出力電圧が数分の1になるだけですから、スケール変換で十分動作可能でしょう。 課題としては線形微分方程式に慣れるためのものです。 物理学科と通信学科の学卒技術者へのメカトロ設計OJT新人教育で使ったことがありますが、さすが優秀校出は理解が早い!! 指定範囲を総て潰して網羅的に試算できるデジタル計算機を使って(例=[F1]など)区分求積近似をするよりは手っ取り早く当面の解を出せるでしょう。

 アナコンを目立って活用したところは戦後の自動車産業で、乗り心地や騒音解析、シミュレーションに多用したそうですが、第2次世界大戦中のナチスの弾道ロケットV2号の誘導制御にこのアナコンが使われていたことが知られていて、ナチス・ドイツが日本より10年余進んでいたことになります。 (注:高射砲の照準補助装置には使われていて、日独の差は「弾道弾=ミサイル」開発そのもの)

 日本の鉄道界へ振動解析が持ち込まれたのは、戦前・戦中に航空機設計に従事した人たちが、戦後の航空産業禁止措置で鉄道技研に流れて高速電車を開発するようになってのことで「バネ下荷重軽減」という表現で持ち込まれました。 アナコン自体は1953年(s.28年)に日本に伝わって以降、日本電気や東芝、日立が作っていまして、研究・教育機関には納入されていましたから、当時の鉄道技研にも当然に設置されていたと思うのですが、その利用情報は出てきていないのは、鉄道関係者には過渡現象解析などあまり関心を持たれなかったからなのか?解析直では無い「バネ下荷重軽減」論でアナログ計算機の演算結果は切り離されたのか?それとも高価なオモチャ扱いで国鉄本社文系官僚に買って貰えなかったのか?真相はどうだったのでしょう? ←←←鉄道技研に設置されて、「運転シミュレータ」を構成し、初期のディーゼル特急キハ80系などの実路線での運転曲線を演算してダイヤ設定を助けている。やはり鉄道技研への導入は妥当で当然のことの普及だった。 See→ アナログ計算器総論: 2017/10/11追記

【 金星の運行 】
理科年表2017年版p60、p51、p4〜14抜粋
2017年
月日
等級出入時刻 可視
時間
[分]
備考
日出日没
1/07 __:−4.409:2820:3006:5116:44226 宵の明星

没>日没
日没より
遅い没
1/12 22:06:4716:57東方最大離角
1/17 __:−4.509:1220:4106:4916:53228
2/16 __:−4.607:5720:4306:2717:24199
2/17 16:06:2627:25最大光度
2/26 __:−4.607:2020:2506:1517:33172
3/02 23:06:1017:37
3/18 __:−4.205:4318:5305:4817:515/ 62 日出より早い
3/25 19:05:3817:57内合
3/28 __:−4.104:5117:4405:3417:5943 明けの
明星


出<日出
日出より
早い出
3/29 __:04:47









05:3245
3/30 __:04:4205:3149
3/31 __:04:3805:2951
4/01 __:04:3305:2855
4/02 __:04:2905:2758
4/03 __:04:2405:2561
4/04 __:04:2005:2464
4/05 __:04:1505:2267
4/06 __:04:1105:2170
4/07 __:−4.304:0616:3905:2017:5974
4/19 09:05:0418:17
4/27 __:−4.503:0815:2204:5418:24106
4/30 06:04:5018:27最大光度
5/07 __:−4.502:4915:0604:4318:32114
5/27 __:−4.402:1915:0104:2918:48130
6/03 21:04:2618:53西方最大離角
6/06 __:−4.302:0715:0604:2518:54138
12/22外合?
18/10/10内合

[F15]     月齢4.0+金星4.3等星:1等星の132倍 LV=13 感−3
金星が上弦の月状に見えている!   Click Photo↑
2017/01/02 18:12 1/125s f8 ISO-800 F200mm α-Sweet Digital

 元々は零戦が急降下中に謎の空中分解事故を繰り返したことの原因究明で、トリムと舵と安定板(尾翼)のフラッター共振現象を発見して、徹底した軽量化で剛性が足りず脆弱だった零戦で顕在化したもので、取り敢えずの大幅な飛行速度制限を行いました。この事故解析を行った航空機設計者たちがアメリカ占領軍の航空産業禁止命令で鉄道技研へ流れ新幹線開発などに参加したわけです。 零戦を含むプロペラ機では「トリム・タブ」という小翼の角度を微調整して昇降舵や方向舵の平衡中心位置を調整をしていますが、この機構が高速時にフラッター(共振)を起こすので、より高速のジェット機ではトリムタブは使わず、安定板全体の取付角を調整するのが普通の構造になっています。

 その振動解析技術が鉄道車輌設計に適用されたものの、理論解析直に減衰定数 ζ としての提起ではなく、「バネ下荷重の軽減」として持ち込んだのは敗戦に追われた外様航空技術者たちが鉄道業界に受け容れられるための工夫だったのでしょうか?
 当時の鉄道技研の仕事が、どちらかというと「データ収集所」であって、その先のデータを活用した研究開発はほとんど行われていなかったとされています。当時の常識では車体が重いほど安定して高速で走れるなどとされていたそうですから、そこへ「減衰定数 ζ 」とか「臨界制動状態」などという概念を直に持ち込んだところで受け容れて貰えない危惧は感じていたのでしょうが、そうした解析のルーツを伏せたまま「バネ下荷重」だけで押したのは共振現象など過渡応答特性解析の近隣分野への波及を妨げる愚策で、大いに疑問を感じるところです。 本来の解析と簡易説明とを並列で提起すれば良かったものを、閉鎖された航空業界からの流れ者外様と思って引きすぎてしまった様に見えます。 高速台車の開発・乗り心地だけでなく、ピッチング共振(鶴見事故ワラ1型脱線)、ローリング共振(江差線コキ106/107脱線)、新幹線の架線共振集電悪化対策などに共通して活用されるべき概念だったのに、かなり遠回りになって残念でした。
 なかなか普及しない理論解析法として今残っているのは、高速走行用架線の振動伝播速度、進行波、反射波、定在波、不連続点での吸収といった分布定数解析的取扱で、今後は鉄道界に一般普及されつつあるところでしょうか?


見掛けの上弦・下弦≠相対角90度  <3>
2017/03/24 23:55

 理科年表での上弦の月、下弦の月の定義は、月と太陽の相対角が90度となった日時を指していますが、それは目視ですと半円よりやや痩せて見え、直線の弦に感じるには月齢に半日〜1日分程度のズレがある様に感じました。 上弦では+0.5〜1日、下弦では−0.5〜−1日程度の方が弦が直線に感じます。 それは月の夕方と日の出の薄明かり線が感覚としては夜側に見え痩せて見えるのではないか?と思いました。

 今年の3月28日の正午月齢は0.0日と、珍しく日本の上空で新月の中心になっています。
満ち欠けの周期が約29.5日なので、太陰暦系ですと、大の月30日と小の月29日が交互にやってきて1年=12ヶ月で354日となり、太陽基準である1年=365.25日に対して毎年11.25日づつ余るわけで、約3年に一度強の閏13月が出現する勘定になります。 旧暦時代の季節の移ろいは月基準で考えては誤差が大きくて農業などには使えず、太陽基準の春分、秋分、夏至、冬至、八十八夜、二百十日、二百二十日などが並列されてかなりややこしいことになっていたようです。もっとも太陽暦でも約4年ごとのうるう年2月29日の影響で、春分の日が一番大きく振られて3月20日〜22日を異動しているので、ふらつき幅が1/12年対1/365年という12/365≒1/30になる違いでしょう。

 3月26日(日)未明は、晴れていれば4:30頃から日の出まで東の空に「逆三日月」がみられるはず。
月齢0日=29.5日で、今年は3月28日が正午月齢0.0日の新月に該当します。
三日月は月齢2日の3/30で、夕方の三日月ですと30日正午より1/4経過した月齢+2.25日(太陰暦3日=三日月)、逆三日月は月齢−2日の3/26ですから、 未明ですと26日正午より1/4余早い月齢−2.25日=27.25日(太陰暦28日)、という訳です。
 以降新月は4/26、5/26、6/24、。満月が4/11、5/11、6/9、。上弦が4/4、5/3、6/1、。下弦が4/19、5/19、6/17、(2017年理科年表)となっていまして、0時前後が月の出の上弦の月が一番目に入らないでしょうが、良く晴れた日には「昼の月」として午前中は白雲のように浮かんではいるのですがなかなか気付かれませんで・・・・・・。

 なお、昨年暮れから2月にかけて宵の明星として輝いて居た金星の方は現在、太陽の前を、地球を追い越して通過中で、 日中が明るすぎて肉眼では見えませんで、もう「明けの明星」に切り替わり 04:40頃〜日の出前まで東の空にみえるかも。見やすいのは4月に入ってから以降晩秋頃まででしょう。 (天体望遠鏡なら日中も見えるはずですが、太陽近傍を通過中なので慎重に太陽を避けないと目玉焼き事故で失明の危険!)

2017/04/02 03:55

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