ATS-Sx速度照査付加案

  目覚まし時計と揶揄されるATS-Sxにも、簡単な車上装置(ボード装着)で2段階の速度照査が可能で、私鉄ATS通達に準じた安全性を確保できることが判りました。
  信号機から約600m手前に設置されたロング地上子の警報を利用して以下の様な運転規則上の速度照査を行うもので、ATS受信機へのボードの増設で安価に実現可能なものです。
以上は
○ 総ての一般閉塞信号に有効です。(Snでは絶対信号だけ非常制動。閉塞信号はSのまま。)
○ 運転速度余裕αは2km/h〜5km/h程度で制御可能と思われます。
○ 警報5秒後から列車の減速性能に応じて速度制限値を下げる制御が可能です。 (下記 3-b.)。制限速度電圧を発生するミラー積分回路をスタートさせるだけで良いので、これも極めて小規模のものです。
ATS−S諸設定値と動作試算 <TBL>
種別 備 考
項目電車旅客貨物


警報時間[秒] 5 ATS-S地上子
設営基準
制動定数
km/h/s
20/0.7
3.968
20
2.778
15
2.083
空走時間[秒]236

第1照査速度V1 555545 現示速度
第2照査速度V225橙橙YY現示速度
照査速度余裕5

停止距離[m] 242.7313.3321.5
空走距離1[m]116.7133.3152.8 含ATS 5秒
制動距離[m]126.0180.0166.7
V2減速時間[秒] 14.5618.8020.60(V1−V2)減速/減速度+空走時間
V2制動距離[m] 31.545.060.0
空走距離2[m]33.350.083.3 除ATS 5秒
設置限界位置[m]276.0 363.3404.8V1(停止距離+空走距離2)



  以上でATS-Sx系の弱点が大幅に緩和され、'67/01私鉄ATS仕様通達(昭和42年鉄運第11号)に近い安全性が確保されます。その上、警報後の一旦停止喚呼は、25km/h到達喚呼に置き換えて済むはず(現状の非公式=違反取扱追認可能)。

  もし(1)〜(3)が在れば東中野、富士は防止できました。
  絶対信号には20m程手前にATS−Sn の直下地上子があり、無条件の非常制動が掛かっても速度照査がないので最大600m余の冒進となり宿毛事故が起こりましたが、この速度照査が行われていれば冒進25m〜30m+空走距離で停まります。
  更に、(6).15km/h速照まで付けいてれば、沼津片浜、鹿児島線海老津先衝突事故も防止できたでしょう。25km/hなら20m〜30mで停まれますから、直下地上子がない一般の閉塞信号に特に有効で、安全性が極めて高くなります。

  (5)b.警報重複の場合、ロング地上子が複数ある場所があるので、扱いとしては2度目以降を無視する必要があります。そうすることにより何等かの理由で短距離に地上子が設置された場所に、正規位置の地上子を増設することで、速度照査の汎用性を確保することができます。(05/06/05追記3/3)

  この機能は、車上装置に1ボード、速度のコンパレータ2個、20秒タイマー1個、非常制動リレー接点2個、基準電圧発生部だけの超安価・簡易な装置で実現可能です。中学生・高校生の工作程度のボードですからハンダなど組立の信頼性に自信があれば自社工場の片手間で作っても良いですし、ボード関係に慣れた孫請け工場に頼んでも良い。(余談ですが、ハンダなど接続の信頼性は怖いです。工場を停めて徹底教育をして、実技試験、資格試験を重ねて技量維持を図っています。国鉄がハンダ作業をやめたというのは消極的ですがこの信頼性の問題です)

  このATS-Sx改良案なら実現できそうに思うんですがどうでしょう!各JRは採用しませんかね?

04/02/21、書き上げてupしたら 04/02/22:鹿児島線猪追突事故2周年記念日!

<Hosoku> [3.b]
(補足1)【短閉塞で】
 ATS-Sxのロング地上子設置位置は「区間最高運転速度」で走って警報を受け5秒走行後非常制動で冒進しない地点だから、特別の制限が無ければR現示手前約600mだが、制限があると短くなり、20秒後の25km/h制限では過走する条件ができる。それを防ぐには、5秒後から時間比例で制限値を下げる機能(3)-b.が必要である。照査速度電圧を発生する回路としては簡単で動作が安定なミラー積分回路で済むし、現在の速度センサーもリニア特性なのでコストはほとんど上がらない。(補足=04/03/23)

(補足2)【導入時の支障】
  05/03/02土佐くろしお鉄道宿毛(すくも)駅特攻事故が発生。100km/h前後の高速で駅に突入するという派手な事故を防げなかった原因は、ATS-SS(四国・西日本型)の過速&過走防止装置が最高速度から設定されて居らず、止められなかったことが主因、次いでロング地上子位置が高速特急用としては近すぎる設定ミスが挙げられます。もし、ここで提案するロング地上子での速照機能があれば、非常停止していたはずで、こうした設定ミスがなければ事故にならずに済んでいました。


  そこで当提案を現実に採用した場合の制限・弱点を整理しておきます。
1).分岐過速度警報装置・同防止装置の支障
  制限速度60km/h以上の高速分岐にはATS-ST速照対3組による過速防止が設置されていて問題ないが、55km/h以下はSx区間のほとんどがATS-S時代のままの分岐過速度警報装置なので、その警報作用で非常制動が掛かります。ATS-SNの速度照査にも非常制動だけでなく警報速度があり、これも非常制動。対策としては、総て非常停止型に設定し直す必要があります。地上タイマーを調整してST型の設定にすれば良いが、最高速度までなめらかに防御するには3対に増やす必要があります。
2).赤信号定位の駅への進入で25km/h走行距離のため10数秒遅くなります。進行定位なら全く支障はありませんが、行き止まり駅や単線では進行定位にできませんから、この遅れは除けません。これはATS-Pを導入し現示アップ機能を使うケースなので、ATS-Sxでも同様に制限されているはずです。
3).短閉塞での支障
  ロング地上子位置が手前の信号区間に設置される場合、注意現示制限が注意信号より手前になり運転しにくくなります。
4).ロング設置位置の短い設営 (補足1の試算,試算表参照+5km/h余裕で再計算)
  過走防止に最低限の長さを決めます。 補足1の55km/h−25km/h2点方式の場合、)
  旅客列車:55/3.6×(15+5+3)+55^2/20=503m (旅客限界値)
  貨物列車:45/3.6×(15+5+6)+45^2/15=460m
55km/h−25km/h
2点の間に2km/h/sの減速照査が加わった場合
  旅客列車:55/3.6×(5+3)+(55+25)/2/3.6×15+25^2/20=320m
  貨物列車:45/3.6×(5+6)+(45+25)/2/3.6×15+25^2/15=325m (貨物限界値)
過走冒進防止には15秒間で25km/hまで直線的に速度を落とす照査が必須であることが分かります。
 地上子から信号までの距離が更に短すぎる場合は、(5)-bに拠り動作可能な位置に地上子を増設して重複警告とすることで解決できます。
 また土佐くろしお鉄道のロング地上子位置が停止目標194m/場内信号357mというのは特急進入速度から考えて共にあり得ない値です。停止目標基準194mはおそらく場内信号までの減速を前提とした値でしょうが、その手前の場内信号のロング地上子は非停止信号(=注意信号)で突入し速度照査がありませんから、区間の最高速度は1つ前の第1閉塞区間のもの(=120km/h)を採らなければなりません。
土佐くろしお鉄道宿毛駅入線はロング地上子設置位置と、その決定法の両方にエラーがあると言うことです。
(補足=05/03/09)

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Last update: 2005/03/09             (04/03/23 org./02/22