Upd=2003/10/05 (1988/12  LIST 海老津追突

東中野衝突事故推定



  衝突の解析方法は以下に依った.衝突後の移動距離と、推定減速度から衝突直後速度を求め、運動量保存則から質量反比例で衝突速度を求めることができる.移動距離は現地調査の資料により推定、減速度は非常制動減速度が基準、運動量保存則の適用は、衝突後の分離塊毎に等減速度として初速を求めてその質量を乗じて総和を求め、衝突車の総質量で割れば衝突速度となる.
  この方式の大きな誤差要因は、衝突後の減速度が確定しにくいこと.先行車がブレーキをいっぱいに掛けていれば、ブレーキ特性を実車試験で得られるが、中途半端では中間値を確定できない.この事故では、先行車と衝突車間に列車分離が見られないことから、衝突車と同じフル制動と見なした.
  その減速度は3.7km/h/s〜4.5km/h/s程度と考えられるので、試算ではJRQ事故調に倣い4.0km/h/sを採用するが、上下限3通りを計算すればよい.

  当時の報道内容から衝突状態を推定 すると以下の通りが無理がない.
  衝突車はY現示制限速度55km/hより若干低い速度(≒52km/h)で走行中、場内信号の約600m手前でR現示のATS-B警報を受けて、確認ボタンを押してそのまま走行を続け、先行車から130m手前の直下警報点(「直下地上子」はATS-S用)で警報を受けたが、反射的に確認扱いして減速せず走行を続けた。先行車の直前で気付いて非常制動を掛けたがブレーキが効き始めたのは7m手前(ブレーキ痕28m−先頭移動量21m:12/07毎日27面12/06朝日夕刊11面)だったから停まれず衝突に至った.衝突で車体が潰れたため重心で見た平均の移動量は24.75m(21m+3.75m:12/05朝日夕刊写真&両端の2両は廃車にならなかったことから推定)となった.
(# 衝突状態の解析計算は、東中野事故(1988/12/05朝)時に検討したもの.減速定数は仮に28〜33=3.8888…km/h/s〜4.58333…km/h/sで試算した)


<NAKANO>東中野事故

(JR東日本千葉支社通達)昭和63年10月24日
ATSの取扱いについて
「確認扱い」、「場内及び閉そく信号機の停止信号に対………」

(信号機の停止表示を知らせるATSの警報ベルが鳴った場合の運転士の操作)
 直ちにブレーキを操作した後、確認ボタンを押し、列車が停止するまでブレーキを緩めてはならない。
(3) 前(2)の場合、停止信号を現示している信号機から相当の距離を隔てて停止したときは、「停止位置移動、制限25」と喚呼し、当該信号機の外方50メートルの地点まで時速25キロメートル以下の速度で注意運転する。
 なお、輸送混乱時に停止信号の外方に距離をとって停止した場合は、さらに輸送障害を増大させることになるので、そのような箇所においては、最善の注意をはらって当該信号機に近づき、その信号機の閉そく区間内に停止すること。
 以上、写真の原文のまま。間違い部分は×閉そく区間に、○正しくは閉そく区間手前
<fig>

〔資料出所〕
読売新聞縮刷版1988/12/19朝刊(1)左上、5段見出し10段140行記事&写真52行分「混乱時、赤信号越し停車を」「JR支社が指導文書」「事故(東中野)翌日に撤回」

※注:「その信号の閉そく区間内」は信号の先側。だから赤信号冒進指示になってしまう。「なお」書きのこの部分は、赤信号手前50m停車の意の誤表現と思われる。真の問題は本文言外の「一旦停止をせずに50m手前まで進め」という違反運転指示。これこそが東中野事故の引き金なのだ。通達本文通りの「赤信号一旦停止」運転はまさに「遵法闘争」になってしまうことこそが問題だ。12/9同紙夕刊(19)によれば一旦停止通達の徹底で連日8〜10分の遅れとある。運転関係の専門家とは思えない文言の間違いにマスクされて真相が見えなくなっている。
 千葉動労の危険指摘は、「なお」節が文章表現エラーであり、規定違反の無停車運転常態化に原因があることを承知しながら、読売記事などマスコミの評価にそのまま乗って「冒進指示書」などと追及してるから「表現上の誤り」で済まされて説得力がなくなり会社を助けてる。真相の分かる専門家集団が素人マスコミの外した見解に迎合しちゃいけない。

「動労」時代から引き続いて職場の労働組合としての技術的見解を出し続ける姿勢だけは了とする、………。業務の学習を「資本への追従」などとして全否定のラダイト運動型セクトの悪影響で、活動家が隠れキリシタンの様にコソコソ学ばざるを得ない様な組合じゃ職場の信頼が得られない。日本での労組起源:活版工組合オルグは労組非合法下で誰にも負けない文選工の腕を競って職場の信頼と説得力を得ていた。組合員の個人的努力で今は信頼が維持されてる様だが。

上図参照、運転規則では一旦停止後25km/h以下で停車位置移動。通達はこれを言外に一旦停止抜きに25km/h〜55km/hで信号直前まで進むことを求めている。Y現示速度は線区により45km/h〜改良線区55km/h制限。下図の速度照査が有れば最悪でも軽微な事故、まず発生しなかった。

<speed_ref>


BGM=美しく 平井康三郎曲,深尾須磨子詩 Data.Ent.Arr哲生1993/09/25