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主目次

青函トンネル避難訓練停電事故、
安全には直接影響しない「ハンドリング」問題だが

新在共用区間も逆行対応すべきでは?

 青函トンネルでの異常時移送訓練で報道陣を乗せた反対方向からの救援列車が引き返したとたんに停電して20分ほど立ち往生した「事故」が大きく報じられているが、救援列車逆行に当たり必要となる送電状況の切換操作をしなかったためのトラブルで、褒められた話ではないが、特別の危険を生じさせた訳ではない「ぽかミス」である。
   以下プレスリリースのダウンロードurl= http://www.jrhokkaido.co.jp/press/2016/160210-3.pdf


[図1]在来線−新幹線共用区間の異相セクション(3箇所)のみ方向性有り

[図2]
      青函トンネル構造図 「鉄道工学ハンドブック」p92〜93記事:久保田博著より
受電可能点(縦坑・斜坑・避難路等)に変電所設置=方向別饋電で異相セクション設置か?

[図2’]
   「鉄道路線・施設を知りつくす」p75記事:都市鉄道研究会著2009/04/14学習研究社刊
(先進導抗≡現排水・換気抗:竜飛11.4km−吉岡11.0kmで貫通3‰勾配。本抗下0〜Max118m)
See→青函トンネルを作る3つの坑道 ThinkQuest@Japan2002 Team 50196

[図3] 異相セクションの短絡
(竜飛海底駅で起きたトラブル)



[図4] 3相2相変換:スコット結線

[図5] 遮断器2基一体の切換開閉器
 上記プレスリリースを読み込むと、
という話が図解付きで7ページに亘り書かれてる。

 無用の追及を怖れてか「特別高圧35.4kVの短絡」(図3)という表現は避けられているが、その「配慮」が一般の人には却って事態を判りにくくしており、「国鉄JRの説明には、常に政策的配慮=歪曲が潜んでいる」という疑念を深めてしまっている。 レールの折損故障を国鉄記者クラブに頼み込んで表現を和らげて「レールのヒビ」と呼ばせた類いの印象操作であるが、不審を呼ぶだけの愚挙であり正確で率直な説明の方が良い。レールの折損で脱線しないデータは当時もしっかり有って、しかもATC信号が停止になるから危険が有った訳ではない。率直に説明すべきなのだ。

架線接地は絶対的非常停止発報手段   <1.1>

 まず「架線地絡」は、東海道新幹線開業以来使われている非常停止状態伝達法で有り、地絡で変電所の遮断器が飛んで停電させ、ATC信号復調のための搬送波(=電源周波数の整数倍)を作れなくなって関係区間の列車総てに非常停止が掛かり、新幹線列車の持つ最大のリスク=危険である高速度のエネルギーを一刻も早く放出させる非常に豪快なシステムになっていて、短絡による特段の危険は生じないタテマエだ。
 停電するから冷暖房は切れてしまい照明も非常灯のみになり身動きが取れなくなるし、架線地絡させた接点が熔着して復旧できなくなることも間々あり、運転士がトンカチで引っぱたいて熔着を割って復旧させるような原始的な操作も残しているが「危険」はない。
 東海道新幹線開通直前の新潟地震1964/06/16で地盤液状化による落橋やビル倒壊など激しい被害を目の当たりにして、先ずは変電所に地震計を置いて強震(S波)を検出すると架線を停電させてATCの動作停止を介して全列車に非常制動を伝えるようにした。 その後問題とされた東海地震対策もあり、検出点を線路から震源想定の海底等遠隔地に増やし、また伝播速度の速いP波強震検出と、停電検出促進で停止タイミングを早める工夫がされて、気象庁の早期地震警報システム「ユレダス」に受け継がれた。
 新幹線開通以来54年経って通信技術の発展により、信号線から非常停止コマンドを送れるはずで、両者選択可能にせよ、という指摘が工学院大曽根悟教授など各方面から出されており、視察に訪れたTGV開発の技術者たちは新幹線の架線地絡停止方式に驚き呆れてフランスでは採用せず、フランス側が一時受注した台湾新幹線でも「信号で適切な位置に止める」と即時停止を否定する逆ブレ・リスクのシステムにしたのだとか。 緊急時に即時停止信号発生であれば良いが、一刻も早く減速する基本を棄ててしまってはフランス側が誤りだ。 保安対策が十分なされて長期の実績のある「架線短絡」に危険はなさそうだ。
 なお、直流電化路線では緊急無線発報で非常停止手配を取っており、日常の運転電流が非常に大きくて事故電流との区別が不確実・困難なこともあり、地絡火災による乗客死亡106名の桜木町事件1951/04/24の悪夢もあって給電法が「並列給電」と「変化率遮断」に全面改良されたが、地絡させることはない。

新規導入の切換セクションの制御方式で、通過方向問題発生   <1.2>

 これまでの在来線運行時代は同所竜飛海底駅付近にはおそらく異相セクションが設置されていた筈であるが、その構造は自動切換ではなく固定の絶縁セクションだったから絶縁架線部による起動不能箇所は生ずるが、通過方向を規定する折り返し問題は生じなかった。
 トンネル本体内に275kV送電ケーブルを敷設するのはかなりきついから、約23kmある海面下区間に変電所を設置する可能性は低く、その両側・両端、すなわち地上に通じる「定点」である竜飛海底駅と吉岡海底駅、あるいは工事用斜坑跡に向けた斜坑に電力ケーブルを敷設して地上から電力を送り、その付近に変電所を設置して走行電力を供給するのが無理の無い構造だろう。
 自動切換セクションの方向問題は、架線への給電を3線軌での新幹線仕様に変えたことで新たに生じたもので、開通遙か前の最初の試験に多数の報道陣を載せてしまったことで、軽微なトラブルが大きく報道されてしまったのだから、北海道新幹線の運営指導に当たっているであろうJR東日本からの派遣指導部隊が内部ではケチョンケチョンに吊るされている!「一度、上手く行ってからマスコミを乗せろ!」と(w。
 じつは東海道新幹線の開通前運転試験でも、新幹線列車が某重電メーカー担当の関西方の某区間に進入するたびに停電して停まってしまい暫くは原因究明に青くなっていた極秘エピソードも有り、新規供用・開通前の動作確認試験では思わぬトラブルに見舞われるのが常ではある。1964年初夏の話だから同年10月開業前の、とうに時効の逸話である。

動作・操作仕様は統一すべきでは?   <1.3>

 しかし、危険は無くても、システムとしての使い勝手は、在来線共用区間も、新幹線専用区間と同じにすべきではないのか?新幹線専用区間では切換セクションの接続を、列車が先側エアセクション付近にある間だけ先側に繋いで通過後に即時復旧させていて、該当区間の列車検出と1対1対応だから動作に方向性はなく、そのまま逆行可能である(図5:図7.150参照)。 ところが在来線共用区間は右上[図1]のように、走行方向を固定して、切換地上子到達で先側電源に切換、脱出地上子到達で復旧だから、逆行すると自動切換動作できずに短絡してしまい、今回のトラブルになっている。

 なぜ、新幹線専用区間同様に軌道回路式列車検知による自動切換方式で方向性をなくさないのか?3線軌道に所々並列ジャンパーを着けるだけで行けるのでは?という疑問をさておいても、切換セクションのエア・ギャップ間距離が1400mもあるのだから、

[図6] 運転電流と信号電流の分離トランス
     線路は閉塞区間端で絶縁している
それぞれのエア・ギャップを挟んで両側に列車検知地上子を置いて、これを踏むと踏んだ側とは反対側の遮断器を遮断・解放してから踏んだ側のエアセクションを遮断器で短絡するようにすれば新在共用青函区間の切換セクションに方向性は無くなり逆行に特別の操作は要らなくなる。 車両検出地上子が4個と倍加するが、共用区間84km中に切換セクションは、わずか2箇所〜せいぜい3箇所のことで新幹線向けとしては微々たる費用の設備ではないか。(図1参照)

青函トンネル区間の信号「閉塞」には、無絶縁軌道回路方式が用いられていてトンネル内の線路は電気的にも一本に繋がっている。それに重ねての軌道回路方式採用には困難があるのかも知れない。すなわち、在来線・新幹線共用区間が問題なのではなく、その区間内にある青函トンネル内全部が1本に繋がったロングレールで区間を区切る絶縁がない「無絶縁軌道回路方式」であるための特別措置が車軸検出器に拠る列車検知なのだろうか?通常の閉塞区間では境界毎に線路は絶縁されていて、運転電流と信号電流を「インピーダンス・ボンド」(図6)で分離して通している。

【 周辺情報概説 】   <1.4>

 鉄ヲタ趣味本にもあまり解説がない事項を説明して先の青函停電トラブルの理解の一助とする。

切換セクション(自動切換異相セクション)   <1.4.1>

 「切換セクション(自動切換異相セクション)」というのは、日本(と台湾)の新幹線だけが採用している構造で、供給電源位相の90度異なる区間に突入する場合に、地上側で列車を検知し自動切り替えして運転士に負担を掛けずに加速を続けられるようにするものである。 (図1、図5)
位相の異なる電源切換に0.3秒間の停電を挟むが、車上装置は(冷暖房装置を含めて)その瞬時停電を連続として動作できる様にしている。 後に高速型新幹線として開発された300系車両では冷暖房装置がそれを停電として検出してしまい、その都度数分間の動作中断となって冷暖房の利きが悪かったエピソードが伝わっている。※
※近藤圭一郎教授(旧鉄道技研)の鉄道講座講義(工学院大)では、0系の冷房装置もセクション切換で落ちていて違いはないはずだが、0系では室内機が止まらなかったので乗客・乗務員に気付かれなかったのではないか、高速化した300形では動作停止時間の割合が無視できなくなったのでは?という話だった。 しかし近年の日本製エアコンはインバーター方式で一旦直流化して平滑するので0.3秒程度の瞬時停電では止まらないセットも大いに有りうる。(※2019/01/20追記)

なぜ電源を切り替える?   <1.4.2>

 異なった位相の交流を切換ながら使う理由は、各位相の電源毎の負荷の均等化で、発送電設備の設備容量を最大限利用するための工夫である。発送電は、動力モーターに必要な回転磁界をそのまま作れる3種類の交流電源群=「三相交流」で行われているのに対し、鉄道は単相交流だから、そのままでは1相だけの負荷になって2相が遊んでしまい送配電設備利用率を落としてしまう。 そこで多くの単相交流電化方式では、特殊なトランスにより3相交流を相互に90度の位相差をもつ2種類の単相交流に変換して、それを交互に使うことによって負荷の均等化を図っている。(図7 &図4参照)
 この2種類の単相交流電源の切換箇所が架線に設けられる「異相セクション」であり、変電所単位で設けられるから、BT饋電方式で概ね25km毎以内に設置、2倍圧AT饋電方式で50km毎以内に異相セクションを設置、さらに変電所中間に「饋電区分所」を置いている。
      See→AT饋電方式BT饋電方式 (=通信線などへの誘導障害低減対策)
 送配電設備利用効率は設備容量に大きく影響するので、自家用電力の契約では負荷の力率により基本料金を変えて、85%以上の力率にする様に需要家を誘導している。交流電化鉄道に対してはどのような誘導措置が有るのだろうか? 力率85%以上とは交流電圧と電流の位相差を約31・8度(=cos−1 85%)以内にすることであり、一般需要家では主に「進相コンデンサー」により遅れ位相電流を吸収させて実現する。 See→力率:日記#362§7.2.4<TBL-3>
 家庭用電源(電灯契約)は単相100V〜単相3線式200V(=100V+100V)だが、多数の単相柱上変圧器を高圧3相線に均等に分けて繋いでトータルで各相間の負荷の均衡を取っている。

在来線&TGVは絶縁セクション(固定式)   <1.4.3>

 在来線やTGVなど西欧では、この異相セクションの架線は絶縁バーで作られて、その距離を惰性走行する。その構造には方向性はない。 在来線では8m長のFRP製バーでデッドセクションを構成している。この区間に唯一のパンタグラフが入って停まると起動出来なくなり引き出すための救援列車が必要になる。 絶縁セクションの短絡防止にパンタグラフ1基1基を独立で使う必要が有り、交直流両用機関車では直流区間ではパンタグラフ2基を使って走るが、直流−交流セクションの直前に片方のパンタグラフを回路遮断してパンタグラフ1基でセクションを通過して走行、次の停車駅で使っていないパンタグラフを降ろしているし、逆方向の直流に切り替わる場合は交流区間で降ろして遮断しているパンタグラフを手前の停車駅で予め上げて直流切換に備え、直流区間に突入後回路投入している。
 たとえば東北線を北上する寝台特急北斗星やカシオペアの機関車は、黒磯駅構内にある交直セクション通過直前で片方のパンタグラフの断路器を開き交流モードに切り替えるが、その使っていないパンタグラフを降ろすのは63.4km先の郡山駅停車時であった。この間に固定絶縁式の異相セクションは25km間隔としても2〜3箇所、BTセクションは5km間隔として10箇所前後は有ることが想定され、そこではパンタグラフの並列運転が出来ないから単独パンタが必須条件であるし、異相セクションは惰行運転で通過する。
 黒磯以北の交流区間では、直流区間と同様に電気機関車がパンタグラフを2基上げて走るのが見られるが、それは直流区間からの直通列車のもので、一方は電気的に遮断されて働いて居らず、次の停車駅で降ろしている。 在来線交流区間はパンタグラフ1基が基本であり、秋田山形新幹線車両も高速度での集電性能を特別に良くしたパンタグラフ1基である。パンタグラフ先端の、架線と接触する摺動板を細かく分割して、取付の船との間にバネを挿入して高速応答を改善する特殊構造が取られている。摺動板は通常では船に直付けである。
3-2変換結線:3-2cvt.jpg
[図7]   3相2相変換諸結線↑

騒音対策・集電対策でパンタグラフ並列運転:自動切換セクションが必須に   <1.4.4>

 新幹線では、高速運転中に地上標識や信号での運転操作に無理があるとして、全面車上信号を採用、異相セクション通過も手動に拠らず、自動切換セクションを設けてここで列車を検出して自動的に給電切り替えするようにしたのが始まりである。
 さらに日本の場合は人口密集地を高速度で通過することから振動・騒音公害問題が起こり、また高速時の集電不安定の解消策として、パンタグラフの並列運転を採用、東海道では最大16両編成で8基のパンタグラフを上げて走行していたものを、最終的に2基並列として架線騒音大幅減少と、パンタグラフ相互干渉による集電悪化に対応した。離線率10%のパンタグラフ2基を並列運転すると合成離線率は単純計算で1%(1/10×1/10)になって、離線による放電騒音が激減することが大きく効いている。数の減少効果だけではない。
 交流電化区間でのパンタグラフの並列運転=特別高圧母線式には、自動切換セクションが必須で、母線で短絡してしまう絶縁セクション、BTセクションは使えず、上下線の渡りには上下同一饋電が必須となり、東海道新幹線は輸送力増強要求からも開業時のBT饋電方式から、給電容量の大きい実質2倍電圧給電のAT饋電&方向別饋電方式に切り替えられた。方向別饋電は駅構内同相饋電として渡り線に異相の絶縁セクションを置かないためである。上下線別饋電であり構内渡り線が異相セクションである台湾新幹線ではパンタグラフの特別高圧引き通し線を自動遮断してセクション通過させている。 (直流電化区間ではパンタ並列運転可。但しエア・セクションでの停止は厳禁で、パンタグラフを降ろす必要がある)
 TGVなど西欧高速鉄道は新幹線ほどシビアな騒音・振動条件は課せられていないし軽量だから自動切換セクションは不採用で、車上にセクション接近警告は出して惰性走行を促している様だが在来線並みの簡易で運行している。

竜飛海底駅セクションは異相セクションか   <1.4.5>

 残る細かな疑問としては、トラブル現場、竜飛海底駅の切換セクションは、変電所のもの=90度位相差のものか、区分饋電所のもの=ほぼ同相で、切換時には一瞬、並列給電になるものか?報道にある「いざというときに両方どちらからでも電力供給できる」だと、両側の変電所から給電を請けられる区分饋電所か?とも採れるが、「M座、T座両電源を切り替えて選べる」意味だとすれば変電所直近の異相セクションだ。 先は海底トンネルで、外から275kV等の特別高圧送電線で電力供給する変電所を置く場所と考えると陸上にしか設置できないから、両海底駅は変電所設置の適地ではある。トンネル内を特高ケーブルで引いても意味ないのだから両海底駅付近が変電所と方向別給電方式の自動切換異相セクションだろうと推測する。短絡して確実に停電するのは異相セクションであり、基本的に同相の饋電区分所では落ちない可能性が高い。その辺は報道やプレス・リリースを見ても一切触れられてないところだ。

スコット結線を越える超高圧受電3相2相変換回路   <1.4.6>

 3相2相変換回路として、その動作が一目瞭然であるスコット結線(図4)には、三相の中性点を取れない、&高調波を短絡させるΔ結線(環状結線)の機能がないという欠点がある。 Y結線であれば中性点による地絡検出動作や送電線に誘導される高圧静電気を直接あるいは抵抗器などを介して接地することが出来るし、Δ結線であれば三相をすべて加算すれば総和は基本周波数ではゼロになるが、ゼロにはならない高調波成分を短絡して波形の乱れを抑えて、送電線路に高調波成分が流れるのを抑えることができる。 (基本周波数で120度位相差は3倍調波からみると360度相当=同相で3電源が直列となりΔ環状結線だから短絡される)。 中間変電所で1次2次ともY結線の場合にΔ結線の3次巻線が設けられて同期調相機が繋がれる。
 鉄道は最終的に整流負荷だから高調波成分は大きく、また位相制御を用いると遅れ力率となるから、同期調相機の進相電流で遅れ電流を吸収して発送電設備の利用率を上げたいが、スコット結線ではどちらにも対応できない。 特別高圧送配電網の末端としては若干機能不足のものである。この結線は受電電圧154kV以下の電鉄交流電化変電所でのみ採用されている。

 187kV以上での受電では中性点直接接地が日本では義務付けられて中性点のないスコット結線は使えなくなり、特に新幹線では超高圧180kV〜275kV受電となったから、それら弱点を解消する3相2相変換結線として、1次側Y結線、2次側2Δ結線+昇圧変圧器の「変形ウッドブリッジ結線(図7.138)」や、近年はより単純な2次側Δ結線+逆V結線の「ルーフ・デルタ結線(図7.141)」が採用されている。 「ルーフ・デルタ結線」も2次側の1相にはΔ結線を配して高調波の吸収が図られている。
 1次側にΔ結線を配して高調波吸収を図る「ルブラン結線(図7.140)」は台湾鉄路管理局線で実用化されているが、Y結線ではないので日本の政令では超高圧受電には採用できない。
 ヨーロッパでは無変換の単相トランスやV結線も用いられている(図7.142)が、日本では負荷力率で基本料金に差を付けて力率改善に誘導するほど特に逼迫した電力事情もあって、鉄道の交流電化には3相2相変換が定着したものだろう。(「鉄道技術ポケットブック」p241-242同編集委員会オーム社2012/03/20刊、「電気鉄道ハンドブック」p543−544同編集委員会編纂コロナ社2007/02/28刊)

中性点接地式スコット結線は可能か?   <1.4.7>

中性点付きスコット結線: np-scott.jpg
[図8] 中性点付きスコット結線の提案
YΔトルク特性比較
[図9] 2極3溝モータYΔトルク特性比較
 ただし、ヲタ的に言えば、スコット結線のトランスもT座巻線を3等分して、その1/3位置に「中性点タップ」を設ければ理論上は中性点タップを接地可能である(右[図8]「中性点付きスコット結線」構造図(案)参照→)。 それなら、巻線回路を複雑化しないで超高圧受電が可能になり長距離低損失送電となるのだが、実現していないのは何故だろうか? 必要な巻線精度が得られないのか? 高調波電流の短絡にΔ結線が欲しくて、Δ結線だけの無負荷3相トランスは採用したくないからスコット結線は避けたい、ということなのか?ただ単に実施してないだけなのだろうか?
 不平衡負荷時の地電流を絶対的に避けたいのなら、自己平衡作用のないスコット結線での中性点接地はダメというのは判るが、それなら抵抗接地で地絡検知にのみ使えば保護が確実になるから今後採用の目はあるだろう。 超高圧送受電での利用が仮に認可されなくても、従前在来線の変電所は圧倒的にスコット結線であるから、老朽化交換等で中性点が導入されて接地可能となると、地絡検出などの保護動作がしやすくなって安定動作を期待できるはずである。この手の非量産品の改良は特別のアナウンスなしに実施されていることも時折あるのだが、スコット結線の場合はどうだろうか?

 右の3相2相変換結線[図7]を眺めていて、ルーフΔ結線もルブラン結線も、高調波が架線に現れにくい様、打ち消すか短絡していることに気付いた。ルーフΔ結線のA座、ルブラン結線のM座T座はいずれも3次高調波電圧を逆相加算して打ち消す接続になっている。ルブラン結線のM座の3巻線は、巻線比1:1:2であれば丁度3次高調波を打ち消している。トランス鉄芯の磁気飽和で奇数次高調波は発生するので、絶縁破壊に繋がる無用の尖頭値電圧の抑制や、通信など他に悪影響を与えないための措置としてかなり気を遣っていることは判る。

 東海道新幹線開業直後に、近隣の紡織工場で不良品が頻発し、原因を追求すると新幹線がフルパワーで通過したときに電源電圧が揺らいでこの影響で紡織機の動作が影響され不良が発生するものと判明。国鉄は黒部水系の電力を国鉄専用回線で超高圧180kVを変電所に受電する大改良まで、京都近くのこの区間を走行するパワーを抑えて対策したとされている。
 ところが名古屋駅南東の軟弱地盤地帯の人家密集市街地で新幹線騒音振動公害が問題となり、国労・動労は同区間の160km/h減速運転で応え他区間で埋め合わせして被害緩和を図ったのだが、国鉄当局はその1段減速運転を許さず、不当処分を以て210km/h運転を強要し、同所の新幹線公害裁判に負けてもなお強行運用した。
 国鉄当局のその取捨選択判断の差は何なのだ?国鉄JR系には、東日本大震災全面不通時の乗客追い出し措置に繋がる一般国民敵視感覚がずっとあるのではないだろうか?
 新幹線名古屋騒音振動公害訴訟に敗訴後、公害防止に一定の予算措置が取られるようになって、品鶴貨物線の旅客線転換・横須賀線化により在来線が高速化されたことで新幹線との二重高架・鉄橋を含む沿線が激甚騒音に悩まされるようになって騒音公害反対運動が起こったのだが、その騒音抑制解決策としてその新幹線公害対策費が使われて決着した。 国鉄と住民たちとの交渉に一緒に入った区議氏(共産)は「さすが世界に冠たる新幹線は(品鶴区間では低速で)静かなもんで、ものすごくうるさいのは横須賀線(騒音で悪名高い113系15連)だったが、『同じトコを通ってるんで何とかしろ!新在両方から被害だ』って話に国鉄側が乗ってきて上手くまとまった」とのこと。


 以下、余談ついでに、Δ結線での短絡電流がモーター損失に大きく効いた話。 前任製造・技術部長氏のSONY転職に伴い某重電大手技術部長氏をヘッドハンティングして技術部長に据えて、その制御回路開発要員として新採実習中新入社員から私が見繕われてモータ技術課配属となったのだが、職場では誰も学卒新卒即戦力などとは考えて居らず、取り敢えずは課の技術資料集を読み込んであとは適当に遊んでろ!という不安定かつ、お気楽な立場になって、技術資料を見ながら様々遊んだ。
 主力製品のひとつである音響機器用のフェライト磁石式2極3溝モータの特性を眺めていると、Y結線よりΔ結線の方が無負荷損失トルクがかなり多いことに気付いた(図-9)。 動作電流増分が負荷トルク比例だから、その計測結果から電流ゼロ点を逆算したトルクである。
 音響機器用2極3溝モータの構造はY結線の2コイルに遠心ガバナー接点を挿入して2400rpmを維持するものだが、一般的な2極3溝モータの巻線接続は、生産性の点からも整流子に接続するだけで良いΔ結線であった。 様々検討して得られた結論が、「各コイルの誘起電圧が正弦波ではないため、Δ結線では、高調波成分が短絡されて一種の発電ブレーキになって損失トルクを増やしている!」だった。 巻線接続を変えただけで定損失トルクが増えるのだから原因はΔ結線の循環電流以外は考えられないのだ。
 大手M電機に納入して付き合いのある製造課担当者に聞くと「M電機では、自社製モータの着磁を正弦波になるよう調整しているそうだが、理由の詳細は判らない」というので、Δ結線での軸損失増大原因が、高調波成分の短絡によるものとの確信を深めたのだった。 量産的にはY結線構造が圧倒的主流で、しかも製造能力の問題でシャフト径を20%も太く設計仕直して定損失を増やしていたので全く問題にはならなかった(=顧客からは嫌われた)が、正弦波着磁と製造の組立加工能力向上はもっと追求されるべきであった。競合他社では問題ない2.0Φ軸で、我が某社のみシャフト曲がり不良を根絶出来ずに2.4Φ軸変更が行われていて、創業者社長直結の製造課が設計技術課に卓越する可笑しな職場支配構造に放り込まれたのだった。

 正弦波着磁問題の系として、経験則として導入していた(大型機や5溝7溝モータには見られない)謎の設計係数「0.95」が2極3溝モーターの波形率由来の「3/π≒0.9549・・・・」であることを突き止めるなど「遊び半分」のいくつかの動作解析と提案が大幅なコストダウンや設計技術的な解明に繋がると、防衛大卒任官拒否組技術課長氏が非常に興味を示して課員に命じて毎月1度、開発テーマの設計研究発表の場を設けてお互いに叩かせるようになって仕事が研究的に面白くなり、計測データを並べただけの「量産工程管理型」の技術資料は淘汰された(量産管理には必要なデータ。開発設計では淘汰)。 「きちんと理論解析して最適点設計を求める」「衆知を集めて開発」の建前は反対のしようのない基本方針で得たものも多かったが、反面、新人の遊び半分レポートを技術課全体の尻叩きに使う中距離射程型の方針に「流石、軍人出身!」と感じたものだったし、それらの技術解析資料が教育テキスト化して、後日、不当労働行為意思をもった会社側の攻撃を無効化したりして、任官拒否組課長氏には馬鹿な創業者社長一族の理不尽・恣意的攻撃からかなり庇って貰った様である。 「頼むから僕に『懲戒解雇通告書』を渡させないでくれ!慎重に!な。まだやって貰う仕事が幾つもあるんだ」と何度か懇願されたのは、全国金属労組と全商連による労働組合結成が両方とも問答無用の不当解雇で跡形もなく潰されて、時に争議団による抗議の門前配布ビラが、会社により半強制回収されている時期の入社だったから実に迫力あり、課長だから外形的には不当労働行為に問われるのだが、的確に当方の泣き所:弱点を突いた「友情?ある懇請」ではあった。 長期スパンは軍人ではまるで駄目!5.15&2.26クーデターによる生命の威迫で一切の反論を封じ、好んで対中国開戦、対米開戦を強行し、国民全体を破滅に導いたのは独占産業界の意を体した軍人たちであり、御用マスコミであった・・・・・・と、任官拒否課長氏が時折やんわりと仕掛けてくる論戦に乗ったのであった。
 電力トランスの場合はΔ結線が高調波分電圧を長距離送電線にはなるべく送り出さない阻止フィルターになる訳だ。


散歩の拾いもの    <2>

 体力維持に、意識して「散歩」を続けているが、右写真は「散歩」で拾った、実在しない列車のE233方向幕@京葉電車区一般公開[写真1]、京成100型用台車@新京成くぬぎ山車庫一般公開[写真2]、増結作業@千葉駅5番線ホーム2015/12/05[写真3]、千葉駅先総武線配線図[図10]である。 E233型と「通勤快速」に西船橋行きはない。 100型は成田山参りの京成開業興隆の基となった高性能輸入車両。そして久しぶりのクラス会開催打ち合わせ合宿に出掛ける途中の千葉駅外房線ホーム。 車両は京浜東北線から房総各線に都落ちしてトイレと電気連結器を付けて走っている209型電車である。

[写真1] 京葉線233系方向幕@京葉電車区一般公開

[写真2] 京成100型用台車@新京成くぬぎ山基地一般公開

[写真3] 千葉駅5番線連結作業2015/12/05

[図10]   千葉駅配線図

西側は房総線と総武線の合流立体交差があり西千葉分岐
「開催準備打ち合わせ」というのに毎度のクラス会全8回の平均参加数の7割近くが合宿に集まってしまって、締まらないことおびただしい仕儀となった。
 公式の同窓会名簿では3割前後が転居先不明になっているクラスが多い様だが、それは同窓会丸ごとが東京電力の民社党選挙の下請け組織として永年使われたことで皆嫌気が差して、元クラス委員が就任する連絡担当者まで繰り返しの連絡要求を放置しているためである。 全県1区の工業高校で片道3時間掛けての登校もあって元々バラバラなところ卒業後は関西から仙台・新潟にまで広く散って転勤も多く連絡不能に陥りやすいのだが個々のクラス会としては連絡が取れているようだ。 公的名簿には15〜13名の連絡不能者数だが、私的に調べているクラス会名簿での行方不明者は1名、隣のクラスで2名、学校には従順で優等生型だった隣のクラスと我が独立型クラスの連絡不能者数がほぼ同じだったから、他の卒業学年、学科も同様に名簿不備で、面倒見の良いのが居るクラスなら裏名簿として整備されているらしい。 故民社党、東電の形振り構わぬ会社ぐるみ選挙は酷かった!が、民社党が崩壊しても、崩壊した同窓会名簿はもう戻らない。 「隣のクラス」の非公式連絡先住所録は、卒業20数年後に1度だけ合同のクラス会を開いたときに隣クラスの幹事名を借り当方幹事で纏めて調べて不明2人にまで詰めたものだ。 それまでの20余年間、隣の優等生型クラスはクラス会を開いて居らず、誰も連絡先を纏めては居なかった。 住所録人数分の100部×2回近くは名簿を送っているが、繰り返し消息を求める同窓会事務局には誰一人その名簿を持ち込んではいない様だ。 占領軍民社党民主党東電労組も嫌われたものである。

 ある日、昼カラオケに行くと、いつもなら10人を越える客なのに僅か5人で2倍余歌える状況。練習にカラオケ・ボックスは行くのかと聞かれてノーと答えると、女性たちから安いボックスの割引券を戴いてしまった。
 暫くしてそれは「ちゃんと練習してこい!」という意味だと気付いて、「そんなに酷かったのか!」とトホホ状態に。 近年、次第に音程が揺れてきて、ボーカル・トレーナーまで入手(日記#326-3)して音感崩壊を防いでいるのだが卓効なく不安定さを増している。 大変上手なサブ・ママさん格から言われるのは納得できるが、美しく歌うことには一切関心を向けないピンク・ノイズ型糸底こすり声のお姉さん(日記#386-3)からだけは言われたくなかったワイ! (注:周波数分布一様の「ホワイト・ノイズ」に対して、若干の卓越周波数分布を含むものを「ピンク・ノイズ」と呼び、「半減期」と同様、共に純技術用語 See→「半減期」の思い出:日記#280-5。アナログ・シンセサイザーの雄、冨田勲氏はホワイトノイズを狭帯域フィルターを介して「楽音」化し多く演奏に取り入れている。ヒュンヒュンいう感じの音はそれだろう。「ピンク」と言っても艶っぽい訳ではない。)

 すぐ次の休みにハーモニー指向コーラス系さんと連れだって中心市街駅近くのヒルカラに行きお邪魔虫込み3〜4人で歌いまくったのだった。これはチャンスと一気にン10年昔の中学生時代にワープして、♪荒城の月(瀧廉太郎)♪と♪春のうららの隅田川(同「花」)♪、そしてアカペラで女声コーラスの大定番♪花の街(江間章子詩、團伊玖麿曲)♪のコーラスをお願いしたのであったが、あまりの久々で残念ながらうまくハモれなかった!メロディーに合わせるべき当方低音側の音程が自在ではないためで、修行が足りないと痛感!楽しんであっという間の4時間だった!

 昨年末、久しぶりに調布国領のスナックに立ち寄ったのだが、常連、元ラサール東大・早稲田投石派の出張販売業社長氏から「男の嫉妬の方が強烈で、女よりタチが悪いもんだ。気をつけなさいよ。ぐふふっ・・・・・・」とご忠告。東大入試が封鎖で中止になって早稲田に流れた苦労人。 「勝手に俺の歌を取るな!事件」(日記#377-4)は、店にママしか居ないときにチラッとボヤいただけだが、その話に様々尾ひれが付けられて恰好のサカナになっていたようだ。 ママたるもの常連客の個人的情報を放送してはいけないっ!たって後の祭りであった。「社長氏みたくギラギラしてない、人畜無害型だから警戒されないんだ!」とカウンターの憎まれ口を噛ましたのだけれど、BF氏の激越な悋気と失当な誤解=「お前さんがモテる筈が無い」に店内は暫くの間、大いに盛り上がったのだった。 「俺の雌ザルに手を出すな!」的なボス・ザル行動を見せられた女性はまずカチンときて、当て馬くんとこれ見よがしにイチャイチャして見せて暴君にシッペ返ししたり、揚げ句は棄ててしまうのだ・・・・・・・・と思うのは、永年女性が多数の職場に居て揉まれてのカンである。 当方は人畜無害キャラとして、ず〜〜〜っと当て馬要員であった(w。

2016/02/20 03:55

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