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1段制動ATCのため氷雪中追突事故!
過走先行車と同位置で非常制動!
東急東横線元住吉雪中追突事故

    【 衝突列車と先行列車のTIS記録図 】 by 事故調報告書RA2015-3-3 p7〜8
(マーカーA〜M &補助線はTIS速度データ読み取りのため付け加えている)



★上記速度グラフに着目点A〜E、M・・・を設定して瞬時加速度、瞬時減速度を計算

★減速度は衝突列車1.3km/h/s弱、先行列車当初1.3〜1.4km/h/sでほぼ同値!
★制動位置は衝突列車11.709km地点でEB、先行列車11.745km地点でB2投入
★図のD点から先の低速域で制動力が回復しているが、後続列車は制動がまだ効かないまま35km/h余で追突
★先行列車も衝突列車と変わらない減速度!過走した先行列車とほぼ同位置でEBでは衝突必然
★衝突後の減速度は、速度が等質量の完全非弾性衝突で1/2になるから、6.353/2=3.18km/h/s程度と思われる。粘着制動として妥当値。
★起動加速は2.0km/h/s弱と酷く落ちている。常時なら2.7〜3.3km/h/s
※算出方法は、報告書の速度グラフを「絵」として作図ソフト「花子」に貼り付けて、着目各点を別レイヤーから花子中の座標として読み取ってExcelに布数、絵の座標が実領域でのパラメター(速度、時間)にどう対応するのかも書き込んで、後は式を各セルに埋め込んで一括変換して、上掲の表にしたものである。 上表はPDF出力から画像データに落としている。
 過日2014/02/15未明の大雪で東急東横線元住吉駅に停車中の列車に後続列車が追突した事故についての運輸安全委員会による事故調査報告書RA2015-3-3が公表されて、事業者の対応としては、(1).最高速度を60km/hに落とす、状況により更に45km/hに落とすこと、運輸安全委員会の勧告としてさらに、(2).車輪踏面点検清掃の頻繁化が加えられていた。

 当面は、この措置で再発予防抑制できる見込みではあるが、まだ穴は残り 運転バックアップとしての保安装置:一段制動ATCの防御のらち外で、運転士の注意力に頼るものとなっており、安全設定の原理原則に立ち返れば、ATS/ATCの車上演算減速度を、列車が実際に制動できる値以下に抑えるべきで、実際の制動力が演算値を逆転して小さくなってしまっては防御の意味をなさなくなる。それはオペレータに信頼感の大きいシステムほど動作異常を疑わずに指示に従ってしまうから深刻である。

 本件では、ATCの演算パターンが3km/h/s余程度なのに対して、通常なら定格で3.5km/h/sである列車の制動力が豪雪で雪噛みして0.87km/h/s〜平均1.26km/h/sまで低下して、停めきれずに追突したものである。
 降雪中の追突事故としては、西武田無駅追突事故と名鉄新羽島駅過走激突事故があり、新羽島事故の事故調査報告書では、対応策として耐雪ブレーキの使用基準を明確化するとともに、事故当時の減速度を1.0km/h/s程度と推測・報告していた。今回の元住吉事故では初めて運行記録装置TISに追突事故の詳細が残されていて、原因究明を楽にした訳だが、豪雪で減速度が1km/h台に大きく減少することが明確になった以上は、人の注意に頼るだけで無く、それを安全装置=保安装置に取り込んで、誤判断やうっかりを防ぐのがスジだ。
 事故調査報告書RA2015-3-3によると、先行列車運転士は、早め制動として着線表示板(渋谷起点11.745km)付近でブレーキを投入したが効きが悪くて停止目標を約30m過走して誤出発検知を過ぎて停止とあり、この過走分を戻すために司令に連絡、全列車に非常停止手配が取られた。
 後続車は指令からのこの非常停止手配で、渋谷起点11.709km付近で79.5km/hからEBを投入したが停まりきれずに12.333km付近で先行列車に35.8kmほどで追突!すなわち
   制動距離624m=(初速79.52−衝突速度35.82)/制動定数K
     制動定数K=(79.52−35.82)/624=8.075 
            =8.075/7.2=1.1215km/h/s=0.3115m/s2 ・・・・豪雪中の平均実効減速度
となる。
 先行列車の「早めブレーキ開始地点」が11.745km、後続追突列車の「EB投入地点」が11.709kmということは、28m過走した先行列車の僅か36m手前で非常ブレーキを扱ったことになるが、列車長さが8両編成160m余だから、先行車より差し引きで96m短い距離(96m=160−36−28)で停まりきれないと追突することになる。共に目一杯の制動だったからもはや衝突を回避できない。 TIS記録のグラフや減速度試算に見るように、両列車の減速度はほとんど変わらないから、必然的に激しく衝突した訳だ。

降雪・結氷制動パターンは必要.一段制動ATCでは絶対に!    <1.2>

 保安装置:ATS/ATCの車上演算防御パターン減速度は、車両の実効的な減速度より緩やかで無いと制御不能に陥る。それは絶対的な条件だ。豪雪時の耐雪ブレーキ投入指示に続く衝突防止措置は、耐雪パターンK=8への切換で、衝突防止に意味ある早めブレーキを強制することである。この措置が取られていれば先行列車の過走は起こらなくて済んでいた。また、指令が緊急停止を指示した地点では既に停まれない場所だったのに、通常運行のパターンのママだったから高速80km/hのまま突っ込んでいて追突事故になった。
 東急東横線で採用している「一段制動」ATC方式では、信号の中間現示速度制限が従前の固定値ではなく絶対停止位置基準で決められていて、目一杯の速度で進んで停止信号である次閉塞入口手前に停止できる、位置毎の速度を車上演算して速度照査するから(∵必ずしもリアルタイム演算は要しない)、日常的には車間距離を一杯一杯に詰め込んで線路容量を増やすことができて、しかも停止信号の冒進は基本的になくなり、信号現示段階毎の段階的減速も無くなる優れものなのだが、今回の追突事故のように、「制動距離の3倍化」といった、その高度運転支援の前提となる制動力が保証されない事態では、安全余裕がほとんど無いためエラー挽回できなくなり、保安システムが逆に事故を作ってしまうのだ。
 これは、優れた保安装置である「一段制動ATC」の重大な穴と言って良い。全幅の信頼を置ける装置と思っていた高機能ATCが、豪雪下では制動距離が3倍余にも伸びて停まりきれずに衝突を誘発するのだから。

 車上演算方式での減速度設定は、従前必ずしも固定値では無く、ATS-P、D-ATCでは下り勾配補正コードがあり−35/1000までは地上からのコマンド・パラメターで補正されている。それに豪雪結氷条件を加えることに何の問題も無いはずだ。東武TSPは完全固定値だが。
     See.→日記#357-2 「一段制動欠陥」元記事

 ATS-Pや、小田急D-ATS-Pでは、運転規則や装置の機能として中間現示速度制限があって、もし橙色など中間現示の信号(閉塞入口)までに減速しきれなくてもその先の停止信号までは制動距離があって減速できる余地が残っていた。 一段制動ATCはこの中間現示閉塞区間を奪ってしまうので制動力低下が追突事故に直結する訳だ。事故列車のTIS記録に拠れば30km/h以下では制動力が平均3.754km/h/s、制動定数K=27、と正常値に回復していて普通に停まれるようだが、制動距離は速度の2乗比例だから、低速域は影響が少なく中高速域での減速力低下が大きく効いてくるから降雪結氷パターンは必要なのだ。 設定パターンより良く効く分には問題ないし、低速域では制動距離誤差は大差にはならない。 東横線は全列車にTIS装備の筈だから、当日降雪時のデータを集めて中高速域の減速度がどの程度になるかを集約したら良い。事業者たる東急は当然に収集しているだろうが、運輸安全委員会もその権限でデータを要求すれば事故調報告ももっと深まって、少なくとも一段制動ATCでの減速度設定に降雪・結氷モードを加えるべきことは加えられたのではないか?

 それでも、下り急勾配では、勾配加速度が降雪結氷最悪減速度を上回って演算不能になる事態は想定され、保安装置としては最低速度の10km/hパターン制限に固定で、運行側で駅間電話連絡により坂下の空きを確認しながらの運転となるのは現状と同じであるが、ATS/ATCから10km/hの速度制限が行われて野放しでは無くなり、ブレーキ自体が低速では有効なので現状より安全性が増すことになるだろう。

 ATS-P/ATS-Psの場合には、運転規則として中間現示速度遵守が定められていて、最低でも1閉塞区間の制動距離が保証されて45km/h〜55km/hに減速されはいるから、規則を守りさえすれば一段制動ATCに比べて安全余裕は大きいが、乗務員に信頼の大きいシステムとしては、それでも中速域の制動力減少は思わぬ過走を引き起こすので、できれば降雪結氷パターン切換の導入はしたほうが良い。 一時は超過密線区での隠れ一段制動運転による回復運転も噂されていて、そこでは一段制動ATCによる衝突防御と同じ危険性、改修緊急性を持ってくる。

降雪結氷パターン切換発動要件は?    <1.3>

 運営実務として、どんな条件で降雪結氷パターンに切り替えるかとなると、現在は枕木が見えなくなったあたりから、レール頂が隠れる前に「耐雪ブレーキ投入」が義務付けられている様だが、公表された2つのTIS記録データを見ると共通して加速度が半減し、中高速域での減速度が1/3化していて過走と追突事故を起こしている。 他の過走列車のTIS記録データも見た上でのことだが、加速化速度が鈍ったと感じたら(速度計を見ていたら数値として判る)降雪結氷パターンに切り替えれば耐雪ブレーキ投入の次段階の措置として足りるのではないか。 そうすれば指令から60km/h制限が指示される前に、遠くから制動が行われて安全が担保されて安全上の穴が埋められる。加速で実際に滑っているのに減速側を放置してはいけない。

倒錯の逆発想!「氷結パターンでダイヤを守れるのか!」
vs 衝突の危険から元々ダイヤを守れない環境で、衝突防止の最低限防御   <1.4>

 「降雪・氷結パターンでダイヤを守れるのか!」とは、実務面から出る素朴な疑問なのだろうが、降雪・氷結パターンを必要とする状況というのは加速も減速も落ちてきて元々ダイヤを守れる保証はない状況で、平時並みに走ろうとしても先が支えて進まず、平時のブレーキタイミングでは衝突してしまう状況。 無論ダイヤなど守りようがない愚問。そんな運転状況で、制動距離が3倍にも伸びていて衝突させないバックアップの手立てが「降雪・氷結パターン」の導入だ。

当初報道での事故状況解説図 (日記#357:click↑)

油膜影響説は若干コジツケ気味!?氷雪での制動力低下で良いのでは?
最新高度技術の「地上演算式一段制動ATC」の弱点に注目されたくないのか??    <2>

 元住吉追突事故調報告書を読んでいて気になったのが、減速力異常低下の原因として、車輪踏面・ブレーキシューの油膜汚れをかなり気にしているように見えるが、 降雪・結氷だけで制動力減少K=8化が起こるとして、何処に問題があるのだろうか?報告書の提示資料を素直に見る限りは、油汚れ副要因説の根拠は何処にも見いだせず、そこは30km/h以上の中高速域での降雪・氷結中減速力がK=8にまで落ちると割り切って安全対策を進めるべきではないだろうか。 TIS記録データでは、先行列車も追突列車も減速度低下の様子にほとんど変わりはない(右上カコミ参照)。
 それと表裏だが、事故調査報告書には現場の1段制動方式ATCへの直接の言及がない。僅かにATC車内信号現示として予告90km/h以下があるだけで、これは一段制動ATCでなければ緑:減速信号75km/hか橙:注意信号55km/hの筈。その地点から制動が始まっていれば、衝突は避けられている。平時であれば無駄となる安全間隔を一段制動ATC方式で除去することで輸送容量を増やしているもので、その前提となる安定した制動力が降雪・結氷で失われると、余裕距離は取り去っているから衝突するほかなくなるのだ。 ギリギリの条件を追っているシステムほど、その設定諸定数は実態値に合わせなければならない。 それが無く固定値であることが現行東急「一段制動ATC」の重大な弱点だ。

 また、激しい降雪時には現在も駅同士で連絡を取り合って、前方の空きを待って「通知運転」方式で極端に間引いて走らせている訳だが、東急元住吉駅追突事故では、大幅な間引きはしていながら信号に頼って運転していて、制動力低下に見舞われて事故になったもので、田無、新羽島、新幹線岐阜羽島、同名古屋と、いつ再発してもおかしくない状況はそのまま残っている。 TISデータから加速状況を見ても、普段は3.3km/h/sの加速のできる東急車が、その時は1.9km/h/sがやっとという空転寸前の状況が見られているし、他の駅でも過走は頻発していた。 特に余裕のない一段制動ATC(/ATS)には降雪氷結パターン設定は必須なのではないだろうか。

 法定(省令)の制動距離600m制限については、一般貨物列車同様に減速力に応じて最高速度を規制すれば足りる。
 今。K=8で、減速距離600mなら、空走5秒+6秒は無用だから、その最高速度制限は V=sqrt(8×600)=69.3km となって、今回決めた60km/h制限措置より信号現示直結分、信頼度が向上する。
ATS-P車上子取付位置
Click↑拡大 @尼崎事故調査報告書RA2007-3-1添付資料[付図14]1/3

JR西日本尼崎電車区運転士懲罰的日勤教育自殺事件追及裁判報道

 あれこれの手立てを取っていることと、安全装置設置は対立させるものではなく、独立に追求されるべき万一の場合のバックアップ。 人為操作に明確な基準が得られずに漏れてくることもありうるのなら、そのフォローに氷雪パターン切換導入は合理的措置で、しかも新車には新たなコストはほとんど掛からない。

何が「パターン方式=ATS-P」を嫌わせたのか?    <2.2>

 国鉄JRに於けるパターン方式の元祖、ATS-Pの悪評伝説が未だに残っている原因は、一言で言って、マン・マシンインターフェースにありとよく言われるが、子細に見ると、実施方法に問題があったのではないだろうか。そもそもで言えば、正常運転をしている限りは運転には介入しないはずのもの。その通りなら障害になるはずがない。
 ATS-Pの車上演算パターン方式が最も優れているのは、危険度の高い高速度からの過走防御が行われて(停止信号)冒進の心配がほとんどないことだが、運転者に比較対象の少ない高速側は操作に全く矛盾を起こさないが、駅ホーム、停止目標、出発信号の接近する低速側で運転者の実感とはズレた振る舞いをして、報告を求められ、時に処罰を受けることで、本来はオペレータの味方として設計されているものが、その運用により底意地悪い監視人に転化してしまい現場に嫌われているのではないだろうか?

 大変気の毒だった事件は、エンド交換時の前後ATS-Pの切り替わりタイミングを教えられてなかったことで車掌からの質問に対応して数10秒延発してサディスティックな懲罰的日勤教育に送り込まれて耐えられずに起こされたJR西日本尼崎電車区服部運転士自殺事件が典型だが、あれは無人転動を防ぐために前後どちらかのATS車上装置が必ず生きている様に付け加えられた機能で、車種毎に微妙に異なり講義では教えない講師も居たという。 あの遺族からの損害賠償裁判は「自殺との因果関係の立証が不十分」と敗訴で終わっているが、明らかなパワハラであり代理人側の訴訟技術の問題が絡みJR西日本の無罪判決ではない。 あれはJR西日本も、実行行為者も共に有罪だ!ATS-Pそのものの責任ではなく、JR西日本の狂人的運用がオペレータの味方ATS−Pを凶器に転換させた。 JR西日本や東海の運転士の扱いは古代、ベンハーの時代の漕船奴隷を彷彿させる。 尼崎事故で故T運転士が過酷な懲罰に怯えて車掌の指令への報告に気を取られ減速を忘れて大惨事となった背景にもなっていて、JR西日本は尼崎事故の調査報告、第三者委勧告後に厳しい世論に追われて渋々ではあるが日勤教育から虐めパワハラを排除して実務的教育に改めている。 元々支配権力側からの不当判決でパワハラ日勤教育糾弾を止めてしまうなんて、何が「極左」組合だ!革マル派など仮面御用組合か!と思ったものだ。 公式ホームページから事件解説資料まで削除してしまっているとは!同僚に対する集団暴力退職強要事件で敗訴した大義名分の全くない身から出たサビの愚行を争うJR東労組革マル派とはまるきり問題が違うだろうが!

 やたらパターンに当たって困ったのは、停止定位の駅で出発信号赤のパターンが停止時には残っていて、新たに地上子を踏んでコマンドを更新しない限りは加速できない問題があった。出発信号が停止目標から距離があればパターン速度が高いうちに地上子を踏んで更新されて問題ないが、直前の場合は更新のチンベルまでは10km/h以下で走らなければ突然の強制制動に見舞われる。JR西日本や機関車では車上子が先頭から15mも後ろにあるのが標準なのだ。機関車ではさらに空転しやすく速度計指示が急増してパターンに引っかかって無用の強制制動に遭った。
 しかも他の構造物との相対位置の掴みやすい低速域で、コマンドは距離分解能4m単位なのに、地上子設置規格が1m単位で、その正規化誤差に違和感を持つこととなった。 そのうえ放物パターンがイキナリ不連続で停止コマンドになっていたりと、他の構造物と比較対照できる低速域にこまごまの応答のバラ付きが見えて扱いにくいものになり、時に処罰の控える関西系で特に嫌われたのではないだろうか。
 TV番組「タイムショック」式に制限速度を表示すれば、心理的には非常に楽になるが、停止限界寸前での突然のゼロ・コマンドを想定すると、別のクレームになり、採用しがたかったのではないだろうか。ATS-Psにはパターン不連続の停止コマンドがないから「タイムショック」型表示を採用できた。その辺は、導入当初の教育での説明次第で、停止限界直前に不連続点があってもモニターできた方がフレンドリーだと思うのだが、どうも不親切だった。

 衝突防止装置として考えるときに、設置座標系原点を閉塞入口=信号機にとって、列車はその先頭基準で処理し、地上車上共に「設置点からのオフセット」として個々設定値にすれば、扱いが一番スッキリして総て統一的に扱えるのだが、どうも民営化前に開発と実用とを急がされたツケでテンデバラバラになって実務的にややこしくなってしまい、15mもの車上子取付オフセットも設定されていない様なのは残念。 ぶつかるのは車上子ではなく列車の先頭なのだから15mもの取付オフセットは当然に車上装置の設定パラメターだと思っていたのだが、どうやら違って、車上も地上も設置時に決めた固定値のようである。 かって私がトンネル工事測量に噛んでシールド掘進機「車上子?」には掘進先端からの取付オフセット座標を与えて前後左右傾斜角と方向角から掘進先端座標と掘進誤差を算出していたので、鉄道車両のように長いのは当然にオフセット設定があるものだとばかり思っていた。

 システムの開発には一人、数学屋かコンピュータ屋を付けて全体系の整理をさせた方がスッキリする様だ。マイクロCPUの8008/8080/8085 & Z-80 vs 6809/6800 に典型的に見られるように、オリジナル、判りやすさ、拡張的合理性と特長が出て、世界を席巻した制御用マイクロプロセッサーの命令体系は6809型が席巻したが、ユーザーの圧倒的に少ない鉄道では原初の8008相当のまま使うほかないようだ。 ATS-P地上装置のエンコーダーは、一般論理IC扱いで今も生き残っている8085で作られているそうだが、今後はどうなるだろうか?ユーザーの特に多かったZ-80くらいは「論理 IC」扱いで残せ!とは思うが、用途に適した高性能素子がクロス・アセンブラー付きで次々出ている現状では無理か(w

[補足]: 車上演算 vs 「地上演算」   <2.3>

 ATS-Pのデビュー当初は「パターン照査方式」とだけ呼ばれて具体的な動作が見えにくく齟齬をきたすこともあったので、パターン照査(目標位置基準逆算照査)などと書いていたところ2007/02/28刊の「電気鉄道ハンドブック」(電気学会編著、コロナ社刊)で「車上パターン連続速度照査式(ATS-P)」、「車上主体ATS/ATC」、現行方式について「トランスポンダ式ATS-P」とあり、「車上」がキーワードで、列車毎の減速性能に合わせた位置毎の限界速度で速度照査することを明確に表せるようになり、さらに函数演算だけでなく速度表内蔵方式をも含めて「車上演算方式」とも呼ばれるようになった。

 その「車上演算方式」の単語的な対として、「地上演算方式ATC」という、停止閉塞入口直前に一段制動で停まれる様地上設備を配置した方式が現れた訳だが、それは制動特性のほぼ揃った車両を要求して、しかもリアルタイム演算をしている訳ではない「机上演算固定設置(無演算)方式」がどうも実態のようで、各列車の制動性能に合わせてダイナミックに現示設定を変えるような機能は準備していない。「・・・・演算」と呼ぶにはそぐわない方式の様である。机上演算パターンならATS-Sの昔から想定していることである。

 この「地上演算方式」に、設置の大前提である列車減速度が1/3にも落ちるような事態が襲ったら、安全担保の対応は極めて困難である。東急東横線がこの「地上演算方式」による「一段制動ATC」だった場合に、地上装置への指令コマンド一発で減速度設定を切り替えられる機能は有るのだろうか?なければ運転士の注意力に頼りながら低速運転で怖々進むしかないが、衝突防止は担保しきれない。
 普段は無駄な安全余裕を極限まで切り捨てる「一段制動方式」に、なぜ自由度に欠ける「地上演算方式→≡机上演算固定設置方式」を認可してしまったのだろうか???制御でのエラー発生防止原則である「一対一対応」に照らして、各車両の減速度と位置は各車両が持つ、「車上パターン方式」でなければ異常条件に対応できないのだから「地上演算」に「一段制動運転」は本来許容できないのではないだろうか?

[補足2]: 豪雪に人側の対処は?   <2.4>

 雪国では降雪・氷結は日常になっていて、端から電制停止とか、頻繁なブレーキ・テストで制動力を維持するとか、義務付けられた耐雪ブレーキを投入するとかに加えて早めブレーキを扱うので、降雪が原因での大きな問題になる過走事故は起こしてはいない。田無、新羽島、元住吉は総て雪が珍しい都会の平野部である。雪中運転の実地訓練ができれば無くせるというのはその通りなのだろうが、大都会の数多い運転士たちに、どうやって列車本数の圧倒的に少ない雪国での雪中運転訓練に就かせられるかを考えると、座学が限界で「尻で覚えろ!」というブレーキ感覚体得までの訓練は現実的では無い様に思う。無論、注意喚起と座学も一定の効果はあるだろうが慣れないことは徹底できない。それは絶対優先事項である事故毎の列車防護がいくら言っても徹底されずに事故拡大の切っ掛けとなっていることからも明らかだ。精神主義だけでは抑えきれない。
 街中での車やバイク・自転車の豪雪中・豪雨中運転の経験に照らしても、制動面から水分がなくなるまではブレーキが効かず、水分がなくなって突然効き出すのは降雪毎に良く経験しているから、鉄道でも運転士が自由にテストしながら運転できれば無用なブレーキ力減少は注意喚起だけでかなり避けられるはずなのに、運転室内にお札までベタベタ張っての運転士不信のお猿電車化規制では試す機会を奪われてしまう。

 まずは、耐雪ブレーキ使用時には、電制を全く解放して頻繁にブレーキ・テストしながら走るようにするか、あるいは常用最大制動を非常制動に読み替えて電制を生かしたままにして突然の制動力低下に備えるくらいは必要だろう。但し、2つのTISデータに見る限りは、常用制動で電制と併用した先行列車と、非常制動で初速80km/hから空制のみの非常制動だった衝突列車と中高速での減速度に決定的な差は無い。それはレールと踏面との粘着力が豪雪で約1/3に低下したことが本件の主因であったことを示している。

 今回の元住吉事故での先行列車の運転士は、早めブレーキを取るなど結構慎重な運転をしていたようだが、元住吉駅進入で大幅な制動力低下(約1/3の1.3km/h/s前後)に見舞われて慌てたものの、分岐制限65km/hにはギリギリ間に合って、ここで一旦ブレーキを緩めてしまって、再びの制動でもブレーキが効かず「約30mの過走」(報告書28m)に到っている。ここでもっと減速してからブレーキを緩めていたら、国電区間でよく見掛ける35km/hとかに落としていたら過走には到らなかった。それなら指令からの一斉停止指示は出なかったから、後続列車も常用制動で止まることになり、衝突が緩和されたか、上手くすれば避けられた可能性がある。既にブレーキ異常を感じながら分岐制限までの減速に留めてしまった約8秒間が実に惜しい!

 運転士の経験蓄積に、様々な操作を無用に縛って禁止しないことは必要だ。普段使ったこともない操作を「緊急時にとっさに行え!普段扱うのは厳禁」という体制では実際には使えなくなってしまう。平時の直通予備ブレーキ使用厳禁!とか非常制動使用厳禁!など、操作としては一種制動ノッチに過ぎず、オペレータ任せの自由度を残して日常的に体験できる様にすべきである。主たる使用を控える「勧奨」は良しとしても、お札で封印をして始末書を書かせる体制は愚の愚というほかない。国鉄JR系は運転士を猿並みにしか見ていないのではないか?


パソコンがオシロスコープに変〜身〜!    <3>

 ロートル・マニアが口角泡を飛ばす「オシロスコープ」すれを覗いていたら、「パソコンの「オーディオ入力」を使ったソフトウェアオシロ」というのが書き込まれていて、ダメモトの無償ソフトなのでダウンロードして使ってみた。



ハンディオシロスコープ
 ダウンロードはこちら↑
  
    [歌声波形例]Click↑
 ♪「あ−」夢一夜〜♪(南こうせつとかぐや姫)と歌った「♪あ−♪」の部分。FFT機能あり。 右端はcsvデータよりExcelでグラフ化波形再現


美声@サブママ格

美声2@源コーラス
(ノイズ成分は楽音の1/160〜1/250=−22dB〜24dB以下が特徴。澄んだ歌声)

楽音の高調波が11次まで綺麗に並んで見える。
290.4Hz≒d1 293.66Hz(−3.215Hz:−1.059%)
魅惑の低音!細身のおじさん@稲毛駅前

超硬音声糸底声:音程とリズムはしっかりしてる
(歌謡大会上位入賞者だが音質に問題!
ノイズ成分が楽音の4倍余:+6dB)
 たいがいのノートパソコンならマイク入力ジャックは有り、さらにマイク自体が内蔵されているパソコンも少なくないから、その場合には無償ソフトのダウンロードだけでオシロスコープに変身してしまう。音声波形を見るだけなら中々便利なツールだが、掃引が遅くて高音域はチト守備範囲外。 付属機能の、ワンショットと、そのcsvデータ化では、画面横軸1ドット毎に2チャンネルの数値データファイル記録してくれてそこそこ使えるが、較正、発振器、FFT解析機能は余り当てにはならない。観測だけだから新たなおもちゃにどうぞ。
 csvデータから描画もできる(右端)が、パソコンのスクリーンプリントキーでバッファーに取り込んで画像ソフトに貼り付けた(左端)方が早い。写真撮影(中央)では画質が落ちる。ワンショットで得た波形は、記録ボタンを押すたびに何度でも記録されてしまって混乱を呼ぶのは残念。一旦ファイル記録したら再記録できなくして貰った方が有り難い。
 マイクを持って居なくても、イヤフォーンで代用できることが多いので、マイクジャックに挿して試してみることはできる。若干ノイズが増える程度で使えることが多い。
 プログラム本体のパスは"C:\Program Files (x86)\HandyOscillo1.2\HandyOscillo.exe"であり、これのショ−トカットキーを作ってDesk Top に貼り付け、「最大化」などの初期設定をしておけば良い。

 そしてダウンロードサイトから誘導されるサイトは「無料」とは書いているが実は無 償ではなく試用サイトで予めの設定数を加工すると動作停止で、購入を求められるとか、大道香具師並みの商売をしているので、次段のリンク先サイトには要注意。PCや通信業者は得てしてアコギである。

 で、行きつけのカラオケ屋にノートパソコンを持ち込んで収録した音声波形がこちら!
    2016/1/26波形&/01/29
 店のサブ・ママ格の波形は流石にきれいな三角波基準!演歌爺の波形も意外に整った鋸歯状波ベース、バイオリン型波形である。かすれ声は1周期の途中に高周波ノイズが乗っている、いわゆる「風邪声」気味か?圧倒的に美しい波形は1/29の4).Ms.NZ!おそらくハーモニー指向のコーラス系で鍛えてる。 高周波ノイズだけしか見えない人は、ここ1年ちかくで心持ち柔らかくはなったのだが、茶碗の糸底をこするような固い声で納得の波形。その人は音程とリズムは正確なのだから、共振現象を活用して「響かせて」メロディー周波数を強調すれば良いものを!勿体ない!と常々思っていた通りの波形が現れている。 歌とは人声を楽器とする音楽演奏だから、美しい音色を工夫して捜すのも演奏のうちであるが、音色の追求を放棄している。 演歌爺氏は意外にきれいな波形と言われて喜んでいたが、糸底音さんには、定在波の発生と分布定数型共振(記事)とか、新幹線を脱線させた50倍振幅の共振(日記325)とかの記事を持ち込むとか、アナログ・シンセサイザー・マニピュレータの雄、冨田勲氏がよく使うテクで、ホワイトノイズを狭帯域フィルターに掛けて楽音にする共振手法採用などで音質改善を勧めたとしても「余計なお世話!」と強く嫌われるだけかも知れないなぁ。 物理的な実質の問題ではなく、オシロ画面でカラオケにフィードバックする当方側が常識を外れてる様だから。
ミラー積分器
ミラー積分回路(原理図)


 電子系ヲタの持つオシロスコープの起源は、おそらく戦後の秋葉原などに出回った「米軍放出品」部品を組み立てて作った自作機だろう。 TV放送はまだ始まって居らず、高圧整流管すら入手困難な中で、米軍放出品の観測用3インチCRTと、サイラトロン管に、電極間距離の大きいST管の整流管を高圧整流につかい、B電源用センタータップトランスで高電圧を得て350V×3=1050〜1400Vdcを得るとか涙ぐましい工夫でオシロスコープを構成していた。 熱陰極ガス入り制御放電管であるサイラトロンでは数kHzが時間軸の発振限界で、基本的にオーディオ周波数用だろう。 それが真空管式のマルチバイブレータに替わって高速化したが、 ミラー積分回路の時間軸方式が出てきたのはそこから10年余を必要としたはずで、トリガード・オシロ=シンクロスコープとして段違いの高級品だった。 シンクロスコープや写真撮影アダプターは高校にはなくて、大学で初めて手にした観測機器で、トリガー掃引回路などはトランシスタ化して試作したものだった。 その当時のレベルのオシロスコープよりは、ソフトウェアーオシロスコープは有用に使えそう。 もちろん観測範囲を拡げるためのアッテネータの自作は必要だが、単掃引のcsvファイルが得られるというのは圧倒的な優位である。 しかもロハ! うちの亡くなった爺様がTV試験放送受像用のTVセットの試作にその自作オシロスコープを使っていたのだとか・・・・・・・・本体は見た記憶がある。

2016/01/30 23:55

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