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鹿島編「超高層ビルの仕組み」概説本!

 多数の超高層ビルを設計施工した旧鹿島建設が今年5月に理工系文庫本講談社BLUE BACKSで「超高層ビルの仕組み」という一般向け概説本を出版しています。このサイトで繰り返し取り上げた長周期地震対応とその構造、トップメーカーの見解を知りたくて衝動買いしてきましたが、トップメーカーが高度の技術を平易に解説してくれるのは大歓迎です。三菱電機がVVVFインバータ制御電車のしくみ本を出すとか、日本信号など開発部隊が中心になって具体化部を東西JRに振ってATS-P物語を刊行するとか続いてくれると面白いのですが、工事現場や工場見学が静かなブームになっている状況で今後どう展開するのか興味あるところです。

 長周期地震で真っ先の懸念は、初期の超高層ビルの地震対応の考え方が、関東大震災の地震波形を基準にして柔構造を取ることにより共振周期を長くして耐震性を持たせることだったので、それ以降の地震計の進歩で新たに発見された長周期振動と運悪く共振すると破損倒壊する可能性が否定できないことでした。
 共振というのは繰り返し振動を1波1波蓄積して大きくなるものですから、その振動エネルギー蓄積量を上回るエネルギー消費があれば共振現象は起こりません。この振動吸収装置を「ダンパー」と言いますが、初期の超高層ビルにはこのダンパーが無いのです。(See→[共振は無限級数の和])
 この本にも耐震性について「 超高層ビルは、もともと固有振動数が長周期にならざるをえないうえに、堆積平野に建つ以上、長周期地震動の影響は避けられない。このため想定外の地震動に共振して過大な変形を生じることが、まったくないとはいえないのが現実である。(p49L11〜)」と述べています。
 ただし同書の記事に拠れば霞ヶ関ビルなど初期の超高層ビルでは長周期振動の記録されない関東大震災地震波対応で建設されたが、要所に「スリット壁」を配して、これが壁全体にX型に大きなヒビにはせずに一応の形状を保つと共に、壁がスリット端を繋いで細かに破損することで振動エネルギーを吸収して共振を防ぐ制震装置としていて、全く無防備だったのではないことも述べられています(p60L3〜)。
 これにより振動エネルギーを吸収できる大地震1回は重大な被害を免れられる可能性はありますが、スリット壁の振動エネルギー吸収容量を超えた振動を受ければ大きく共振を始めて破損に至るでしょうし、2度目の大地震に備えての補修補強工事は可能なのでしょうか?それとも大地震周期80年とやらで、次の大地震の前に寿命解体されるから問題ないという想定なのでしょうか?

cf.長周期地震問題
年月日
08/07/17耐震ネット長周期地震動と超高層ビル
06/01/24定在波の発生(動画)
03/02/14張線の波動速度
04/11/09震度−加速度の推定
05/12/20長周期地震=共振と制動問題
07/04/06日記#155 日曜毎日誌 長周期地震記事は!
07/04/12共振のQ 共振は無限級数の和
08/01/13日記#177 長周期地震動:超高層ビルで実験
09/02/11日記#209 長周期地震対策工事開始
09/02/11キラーパルスの正体は
09/07/04日記#218 長周期地震増倍率地図公表
 肝心の振動エネルギー吸収方法については、「遮断装置」と「打ち消し装置」と「ダンパー(=吸収装置)」が何種類か紹介されていて、免震装置というのが土台と建物の繋ぎに鉄板入り積層ゴムなどを使った振動遮断、建物とは共振周波数の異なる重りなどで共振を抑える「打ち消し装置」、低降伏点鋼を「鋼材ダンパー」として使ってその変形に振動エネルギーを吸収させる「ハニカムダンパー」や「アンボンド・ブレース(筋交い材)」などの紹介があり、意外に思ったのは「剛構造」「柔構造」という設計法上の区分があるわけではなく、高層になるに従って共振周波数が下がり結果として柔構造になるのだという解説で、最近では超高層ビルも鉄筋コンクリート構造で、強度4〜6倍の強化コンクリートによる中実鋼管が使われているという解説でした。「柔構造」云々は霞ヶ関ビル出現キャンペーンだったのか!ゼネコンは世論を乗せる宣伝がうまいなぁ!と今頃気付きました。

 振動系の話をしていて、普段は振動現象解析には遠い普通の人に理解が難しいと思われる点は、バネや質量では機械的エネルギーが(運動エネルギー+位置エネルギーの形で)保存されるのに対して、抵抗成分では振動の往復でエネルギーが失われることの違いがピンと来ていない様に思われます。加えて理学部物理学科系などの線形微分方程式による運動方程式から来た人は、速度に比例する抗力を生ずる抵抗しか意識になく、摩擦抵抗のような速度には拠らない一定値とか、空気抵抗の速度2乗成分、片効きのショックアブゾーバというのは現場に来て初めて遭遇し、相似法解析法に苦しむという感じがありました。質量はバネによる加速分を減速で費やさないと停まりませんし、バネは加速分と同じ反対側のポテンシャルまでは変形する訳で、運動損失が無ければ、或いは運動損失以上の振動エネルギーが加えられれば、永久に振動を続け、損失を上回った分振幅を増やします。これに対し板バネの層間摩擦などは振動速度に拠らず制動を掛け、速度比例でも2乗比例でも常に速度とは逆方向の抗力を生じて振動を吸収します。「スリット壁の破損制動」というのは、破壊限界を超えるまでは変形に抗力を発して、破損後逆方向には反力が働かないことで振動を抑制するわけです。

 物理学科卒グループは、工高電気科系に比べて抽象的な文字式の扱いに非常に慣れており、線形微分方程式での運動方程式は教養課程でも学んでおり、電気機械の詳細をまだ学んでないだけと思えましたので、電気機械テキストを大学講座用ではなく、
実教10-1027電気機械2
実教出版kk「電気機械2」
「−1」はそのまま未返却(w
近年の希望退職で実力ある人
から順に技術課長まで退職済
直接的な表現で分かりやすい工高電気科用を掘り出してきて使ったところ、非常に理解が早く、流石に一流理工科大卒!と思いました。工高卒優秀どころでは実務計算は巧みで速くても、根本に関わる解析が入ると大学課程できちんと基礎を積んだ人達には追い越されてしまう。いや雀荘浸りのなんちゃって大卒者よりはかっての工高卒優秀者の方が実力はありましたが「ちゃんと学んだ人」についての話です。工高卒といえども自学自習で線形微分方程式やラプラス変換、ORなどをマスターしていた人達は居ましたが、学生時代のような、たっぷりの時間を得て充分にこなすまでは身に付けられなかったのかもしれません。

 物理学科組は職場に配属直後に製品設計を任されて「超小型2極6溝モータ」を作っていたので「製品の作り易さから2極6溝構造を選んだのなら構わないが、電気的には2極3溝構造と変わらないのは理解して作ったの?」と尋ねたところ、かなり焦って再点検、設計計算式なども微視的解析からきちんと定積分を試みて建て直して、特殊な電機子構造でも大型機と変わらないことを確かめたりしましたが、既にユーザーから引き合いが来ていて、そこは小型モータ設計の教科書を出版しているようなしっかりした会社。そんなしっかりした「ユーザが選んだのなら構わんイケ〜〜ッ!」と、組立に少々のコツは要るものの、結構長期に売れる安定した製品となりました(w。超小型民生用となると電気子巻線法もクソもありません。FDDのプリント基板一体型モータなども廻れば文句なし結果オーライの、理屈上は実に酷いものでした(w。逆に電気機械屋だったらあんな突拍子もない構造設計は出来なかったかもしれません。

 恣意的な人事が長期に問題になっている会社で、にっくき組合活動家の作った教科書的技術資料に書庫からの閲覧配布禁止を掛けるほど恣意的な差別意識は酷いのに、その人たちは閲覧禁止資料も先輩などからコピーをもらって読み、作成者に直接話を聞きながら仕事をこなし、ほぼ順当にそれぞれの製品開発の責任者になっていきました。正規の版下が書庫に登録されているというのに、書き込みのある技術資料のコピーをその社の技術者が使うというのは、会社の烈しい不当労働行為意思と恣意的人事管理を思わせる、なかなか衝撃的なものでしたが、それは同時に会社や御用組合の「第一組合=極左生産阻害者」といった中傷を完璧に吹き飛ばし、小数第一組合と組合員への信頼を大きく拡げるものとなりました。裁判での会社側証人として組合と争議団に悪口雑言を浴びせた製造部長が、争議団に「ウチの技術課の新人の面倒をみてくれ。そっちに行かせるから。会社は裁判に負けて君らに給料を払ってるんだから良いだろ」って、実に虫の良い要求(w。

 大変優れた技術者ながら、本社工場の会社盲従派からは無能力の権化のように中傷されていた人は、その職場の御用組合・会社派の主力となっていた創価学会の勧誘を断固拒否して小数第一組合に移籍した上で、移籍以前も長期に技術者らしい仕事に戻して貰えないことから、出身校の教授の紹介で電機大手に転職し、花形製品の最大の売りになる重要機構部の設計を担当・製品化して、創価学会系会社盲従組合敵視派の讒言を具体的事実を以て粉砕しました。この構造は何処かの国の使い捨てにされるリアクション芸人たちのあがきに丁度重なります。強引な勧誘の広告塔タレントはTV画面に背景が見えて不愉快なのと、元々大して面白くない芸なのでその洪水露出を避けていましたが、いつの間にか見かけなくなりました。あれは折伏やり過ぎの自爆です。本社工場では「組合費は払うけど、居られないことになったから脱退させてほしい」という学会員の組合員が目立った頃でした。他県の新鋭工場には学会員の脱退はありませんでしたから会社とその地域の学会組織の問題だと思いました。
 企業の巨大化に伴い、役職者が工高卒者から次第に大卒・院卒者に切り替わる中で自分の能力の限界に怯えて職場の学会組織にも引きずり込まれ、労働組合攻撃により必死の忠誠をみせて保身を図ったのでしょうが、あまりに酷いインフォーマル組織の要求に付いていけず、組合攻撃の成果が上がらなくなると、御用組合支配が同盟直系に乗り換えられ、学会系御用組合リーダまで含めて多くが辞めていきました。

2010/10/23 23:55

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