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長周期地震対策工事開始
振動吸収で増倍度抑制 <1>

 高層ビルの長周期地震対策工事実施の記事が新年1/16朝日新聞に載っていた。記事によると防災科学技術研究所振動実験施設「Eディフェンス」での21階ビルの1/4高ほどの模型振動実験で重大な損傷が起こることを示して、03年十勝沖地震での長周期振動被害データの集積を承けて04年には日本建築学会が調査委員会を立ち上げて100m高以上のビル24棟について検討し07年12月に報告書を出したが、設計基準を超える変形を生ずるビルが複数有り「長周期地震動による入力エネルギーは、これまで設計に用いてきた地震動を大幅に上回る可能性があるから、個々の建物で安全性の検討をすることが望ましい」とした。
 大阪ワールドトレードセンタービル(95年完成256m高)は設計に長周期地震動を考慮しておらず、5.3秒〜5.8秒付近に共振点があることが推定され、東京都庁(91年完成243m)も検討入り、新宿センタービル(223m)は昨年10月、制震工事を開始し全55階+塔屋3階のうち15階〜39階(27階を除く)に各フロア12基×24階=288基の制震装置を取り付けている。

    <2>

 「十勝沖地震以前にもシミュレーション研究からの警告はあったが、十分には信用して貰えなかった」とは、文系の予言並みの扱いをされた様だが、建築学界全体の見解表明を求めるとか、当の設計者自身や、重鎮の言を求めて世論として、監督官庁を動かすなどあの手この手の仕掛けが足らなかったのだろう。具体的に国交省(防災科学技術研究所)が動いたのは、昨年1月だった。

 65年3月竣工の霞ヶ関ビルを皮切りとする超高層ビル群が、当初長周期振動を全く想定しておらず、関東大震災の振動波形でシミュレーションして設計して「柔構造」として共振周波数を低くして地震波との共振を避けるだけで振動吸収は考慮していないため、当時想定されなかった長周期地震動に共振して破損する危惧があるが、霞ヶ関ビル完成から30年を経た95年落成の大阪市街のビルまでが長周期振動未対応だとは驚きだ。See→(長周期地震)

 この記事は昨年08/1/12付け毎日新聞で「3月に実験」としていた記事(日記177)や、一昨年のサンデー毎日07/4/15号記事(日記155)のフォローになっているが、毎日記事の「4階建ての上に、ゴムを挟んだ特殊構造のコンクリート板(約600トン)を載せて高さ21メートルで超高層ビルの下部を再現」という肝心の部分を落としているため、シミュレーションが現物の分布定数型ではなく解析としては簡易な集中定数型近似であることを見えなくしているのは残念。具体的対応法が最適方法からブレてしまう可能性もあるからだ。屋上の錘の取り付け方で振動波の反射を抑制したにしてもゼロにはできず、振動の様子が変わってしまう。
 しかしながら長周期振動震災問題が世論にアピールされて緊急対策を求められる効果はあって、大局的には有用な記事である。

分布定数共振  95年1月の阪神淡路大震災直後、大成建設研究所の模型シミュレーション実験が度々放映されていたが、あれは1階毎の集中定数モデルを数階繋いでの振動実験であり、自動車業界がサスペンションの振動解析にアナログコンピュータを用いて2階の微分方程式を構成していた時の解析モデルであるが、今回の防災科学技術研究所の実験も基本的には同様の考え方である。

 それに対し分布定数型、あるいは定在波(進行波+反射波)型というのは、振動波が地表面とビルの先端で反射・重畳して大きくなるモデルで、電気回路の無線通信分野で八木アンテナなど同調型アンテナや空洞共振器、同調型給電線で古くから使われている計算・測定・解析法である。楽器の共鳴管も全く同じで、右図自体は和音・ハーモニー・定在波の説明のために作図したものからの流用である。
 日常現象として皆が身近にみるものだが、その数理的解析としては2階の連立微分方程式を解く必要があり、高校の授業では工高電気通信科の教科書には「無限長伝送線路の波動インピーダンス」「反射波」「定在波」等の形で掲載されていたが、電気科教科書には記載がなく、主には学部の有線通信関係教科やマイクロ波関係(導波管や空洞共振器、ストリップライン等)の教科書に載っているものだ。

 だから解析法が基本的に同じだとはいえ、電気通信以外の他分野に分布定数型解析が浸透したのはかなり後で、鉄道分野では東海道新幹線の架線設計も当初は集中定数型解析で高速時の集電改善に「網目式架線」を予定しながら特許として先に近鉄に押さえられたり、「合成架線素子=架線ダンパー」を設置したが、強風時を中心にトラブルばかりの逆効果となり早期に撤去して、架線張力を大きくすることで集電が改善されたことから、分布定数型解析が提唱され、架線の波動伝播速度を基準にその70%以内が走行速度になるよう設定して単純な架線構造でパンタグラフの離線を防ぐ様になった。鉄建公団開発の整備新幹線用の高張力架線もそれである。建築関係では柔構造の超高層ビルの地震波振動解析で分布定数解析が導入されるかどうか微妙な所である。というのは、土建屋さんはすぐにかなり大き目の安全係数を乗じて解析不適合の危惧を埋めてしまうからである。

 新宿センタービルの「制震装置」の写真をみると、変位を許容してこれに制動を掛けて振動エネルギーを吸収させるものとみられる。最近TV-CMで個人邸用制震装置が紹介され、そこでは筋交いの位置に振動吸収のダンパーを設置することで耐破壊性能を上げているが、それと共通する考え方である。筋交いは伸び縮みしないから剛性強度を増やし共振周波数を上げるが、同時に剛構造に転化させて、振動エネルギーを吸収することはないから柔構造に対する対策たり得ない。
 また、制震装置の設置位置については、全振動数に共通な状態は地表面か先端であり、ここに有効な制震装置を設置すれば全振動数に対応できるが、それ以外の場所は振動波長により節を構成して制震が有効ではない振動数を生ずる。それを避けるためには幅を持たせて設置する必要がある。それが15階〜37階への「分散設置」なのだろうか?
減衰振動
 一言に共振系の振動増倍度Qが100といっても、いきなり100倍になるのではなく、無限回数繰り返された究極の値であり、途中経過では振動の1波1波が積み重なって増倍するものだ。波動が1往復して再反射する率をαとすれば、無限等比級数の総和として
  振動増倍度Q=1/(1−α)
になる。See→(振動増倍度Q)
α=0.95 の場合で Qは丁度20倍(=1/(1−0.95))となるのだが、元もとの振動波数が少ないとQ倍に達する前に振動増加が中断してしまう。
 共振周期5秒のビルでは、5分掛かって60波の振動を受けるわけだが、元の地震動としては果たして何波あるのだろうか?地震動が収まってからその超高層ビルの固有振動数で何分揺れが続いたとしても、繰り返し荷重の強度範囲内であれば危険は生じない。この辺はどう見積もっているのだろうか。
 中越沖地震の振動波形(下記)をみると周期約1.3秒の大きな揺れが2分半余も続きその包絡線に周期約20秒前後の2波の干渉波形が見えているから媒質である地盤に非線形特性があれば差の周波数が生ずるし、なにより日本家屋の代表的共振周波数付近だから屋根の重い地方だと「キラーパルス」の主成分たり得るが、建物の共振周期が5秒〜10秒ということだと共振周期を含んでいて、条件次第で影響が出るかもしれない。また地震が収まった後の長時間の建物の揺れは制震不足を示す不気味なものだから抑えた方が良い。そういう建物は台風などの強風でもその固有振動数で大きく揺れている可能性がある。

2007/07/16 10:13:29中越沖地震本震(長岡)
中越沖地震
2波の干渉

2009/02/07 00:25

参考資料

日記#177:毎日新聞長周期地震実験
日記#155:サンデー毎日長周期地震記事評
日記#184:巨大地震と高速鉄道評
長周期地震問題: http://www.geocities.co.jp/Technopolis-Mars/8897/FIG/200/shindotb.htm#cho_shu_ki
振動増倍度Q: http://www.geocities.co.jp/Technopolis-Mars/8897/FIG/200/shindotb.htm#Q
   Q≡(W/A)=1/(1−α)   (振動増倍率:Q)
定在波の生成: http://www.geocities.co.jp/Technopolis-Mars/8897/FIG/200wave/wave_mov.htm
片端固定共振: http://www.geocities.co.jp/Technopolis-Mars/8897/music/harm/opnmov.gif
両端固定/開放共振: http://www.geocities.co.jp/Technopolis-Mars/8897/music/harm/strmov.gif
和声・和音: http://www.geocities.co.jp/Technopolis-Mars/8897/music/harm/harm.htm


薄汚れてしまった255系View <3>

 昨夜、丁度新宿発21:07千葉ライナーの発車時間に上り快速ホームに到着し、かなり久しぶりに乗ったのだが、列車内を5号車から空席を求めて先頭9号車まであるいて車内がくすんでいるのに驚いた。特にデッキとの仕切戸の色といったら一様に汚れっぱなしではないか。京王線だとステンレスの地肌そのままでも結構掃除されているのが分かる。ところが255系の色の印象は垢まみれなのだ。就航当時に千倉館山特急として何度か乗った経験があるがあまりの凋落振りに声も無し。室内清掃業者にでも相談して汚れが目立たなくなる清掃法でも聞いて、何とかできないのだろうか。到底特別料金を徴収する車両の水準ではない
 千葉ライナーは設定以来冷遇で、設定当初は幕張区回送のための津田沼止まり2本の後にようやく緩行に接続するダイヤとか、183系ポンコツを充当して、整備手抜きを思わせるキーキー云う大きな油切れ音をずっと出しながら走ったりと、小田急ロマンスカーの通勤利用などとはダンチの貧乏臭さで、あれではお客が逃げるだろう。終着特急車の車庫回送営業で良いから、掃除ぐらいはちゃんとして、ライナー券\500.に見合う車両にしてもらいたい。チト酷すぎだった。
 P.S.
 全面禁煙化は支持。かっては喫煙車に改札入口があり、喫煙車の減少と共にヘビースモーカーが集中乗車してまるで人間の薫製箱化して禁煙車まで息苦しい程だったが、それが無くなったのは良かった。煙草飲みの連中も、自分が食べてる間は煙が無い方が味が良く判って美味いという。だったら外で吸え!(笑。新幹線の喫煙車が今人間薫製箱化している。あれは室内空気の回転率を喫煙者密度に合わせて3〜5倍にする必要があるのだろう。そうすると夏冬はエアコンの能力も上げる必要があって、喫煙特別車両を配して別料金徴収になる。


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