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長周期地震増倍率地図公表

日経NET、日経新聞09/07/03夕(1)
http://www.nikkei.co.jp/news/main
/20090703AT2G0100103072009.html

長周期地震動、東京で揺れ2〜3m
30階建てピル、共振で

 国土交通省系の建築研究所や日本建築防災協会などは、遠くで起きた地震でも高層ビルを大きく揺らす「長周期地震動」の危険度を示す初の全国地図を作製した。列島沿岸海域で大地震が起きた場合、ゆっくりした揺れに30階建て程度の高層ビルが共振し、最上階の揺れ幅が東京で2〜3m、大阪で1m以上になると予測。建物内で重量物の下敷きになるなどの被害を防ぐ対策が急務とした。

 長周期地震動は地震波に含まれるゆっくりした揺れで、その周期と共振する建物が被害を受けやすい。
特に周期3秒の地震波は30階建てビルを揺らし、容積規制の緩和で急増した高層ビルヘの影響が懸念されている。
 地図によると、地盤が弱い堆積(たいせき)地ほど危険度が高く、関東平野ではゆつくりした揺れが5倍以上、大阪平野でも1.2〜3倍に増幅され、高層ビルを揺らすことが判明した。

 東京では100km以上離れた駿河湾で東海地震が起きると、通常の建物は震度5強(棚の食器や本が落ちる程度)にとどまるが、30階建てビルの最上階は2〜3mの幅で揺れると予測。大阪でも紀伊半島沖で東南海・南海地震が起きると、30階建てで1m以上の揺れ幅になる。いずれも重いコピー機などの下敷きになるといった被害が想定されるという。
 危険度地図は建築防災協会の研究委員会(委員長・西川孝夫首都大学東京名誉教授)が中心に作製。
2007年7月までの約20年間に起きたマグニチュード6以上の65地震のデータから、日本全国を10〜20km四方に区切って地盤の増幅率などを割り出した。
(17:41)
長周期振動増倍率
日本経済新聞'09/07/03夕刊(1)

 長周期地震での振動増倍全国地図が作られたということで、その条件を読み込んでみたが、その条件は30階(約100m)のビルで、周期3秒の揺れに対する増倍率というだけで、振動吸収機構によるQの抑制や、共振モードが1/4波長なのか、3/4、5/4、7/4波長・・・・なのか、建物全体を1/4周期とするさらなる長周期振動応答などへの言及がなく、かなりもの足らない記事だった。また振幅が大きくても超高層ビルでの長周期であれば横Gは大きいとは限らず、振幅だけを云うのは妥当ではない。構体の最大応力と強度の関係とか、少なくともGに触れなければあまり意味はない。ブランコの振幅が3mあってもどうって事ない場合と同様だ。100m高ビルについての耐震危険度警鐘と採れば良いのだろうか?

 記事にはない加速度だけでも算出しておこう。
位置Xの時間tに対する変化率が速度V、速度Vの時間tに対する変化率が加速度α、すなわち位置Xの2階微分が加速度αだから
X=A・sin{(2π/T)t}
V=dX/dt=A(2π/T)・cos{(2π/T)t}
α=dV/dt=d2X/dt2=−A(2π/T)2・sin{(2π/T)t}
 =−3・(2π/3)2・sin{(2π/3)t}
αmax=(4π2/3)=13.2 [m/s2]=1.34 G
 この振動加速度は約1,320gal=1.34Gの加速度であり、震度5強上限付近の250galの5倍余、震度7下限の概ね400gal以上の揺れにはなるから、記事後半の状況解説に合致するが、途中の解説はどこへ行ってしまったのか?発表内容の整理が悪いのか、記者が要点を理解できなかったのか、どちらだろう。一々数3と高校物理を思い出して試算する必要のある新聞記事というのは、あまり褒められたものではない。


主たる振動モードは何次?
地盤:基礎側が固定端、最上階が
開放端の片端固定進行波型共振
 従前の剛構造の建物の共振周期が1秒前後〜2秒弱に対して、柔構造の建物の共振周期が3秒という設定は共振周期が近すぎる気がするが、記事にはその辺の明確な説明もないのだ。
 新たに発見された長周期地震波と、柔構造により共振周期を長くして旧型地震計(=長周期振動記録採取不能)に残された関東大震災地震波には耐えられる様に設計した超高層ビルとの共振による破壊の懸念の話だから、「超高層の夜明け!」霞ヶ関ビル147m高の共振周期と、振動増倍率、応力安全率の話をしてくれないと、噛み合わないではないか。
 約100m高の高層ビル耐震性の弱点を明らかにする実務的意義は大きい。だが柔構造の「超高層」とは147m〜250mだから、比例的に考えても周期6秒程度までは追う必要があり、全体像は示していない部分的結論と見ておく必要があるだろう。超高層ビルで地震を体験して「遠く離れた地震なのに、長時間にわたり大きな船で揺られているようなゆっくりした揺れが続いていた」という話は、基本共振周期が3秒よりかなり長いことを伺わせており、3秒周期は1/4波長基本周波数共振より短い3/4波長共振、5/4波長共振である可能性を否定できない。横浜ランドマークタワーや新宿エンパイヤステートビル、大阪WTCビルなど皆250mクラスであるし、WTCビルなど長周期地震動を考慮した振動吸収構造が全く考慮されていないことが明らかにされており、そこに防災センターたるべき大阪府庁を移転する案など何を考えているのか!思いつきのTV惚け頭!と思うが、長周期地震にはもっと究明すべき課題が横たわっている。
 報道すること自体は重要問題への世間の関心を維持する上で価値あることなので大いに支持するが、一般読者にも分かりやすい、もっとスッキリした記事にして貰いたい。

cf.(こちらの資料が長周期地震問題の参考に)
長周期地震動と超高層ビル(耐震NET)  08.07.17


2009/07/04 23:55

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