[280]

BBS
BBS
mail to: adrs
旧
新
Diary INDEX
Geo日記
戻る
LIST
主目次

津波高予報は誤差込み「6m×÷2.5」はどうか?
対数表記の±0.3979≒±8dB=×÷2.5相当

 東日本大震災での大津波予報第1報が「6m」で、実際が10m〜15mだったことで安全地域と誤解して人命被害を増やしたと非難する論議がありますが、可能な予測精度を無視した論議は大変有害です。間違いがあるとすれば予測誤差を報じなかったことでしょう。昨年3月のチリ地震津波では3mの予報に対して実際は1.5mだったことを以て、バッシングが巻き起こり、気象庁が現段階の予測精度を説明するのではなく安易に謝罪してしまい、誤差問題の整理を先送りして+側の誤差となった今回に遭難者増となって現れてしまった。
     (See→日記#243: 妥当だったのでは?チリ大地震津波予報精度/ 謝るな!気象庁。不詳重大事には特に慎重さ必要)
 津波の予測で困るのが、高さは的当て確率とは違って0以下が存在しないこと、計測値が検潮器波高、浸水波高、遡上波高と被害に直結する数値がいくつもあるのにきちんと区別されて認識されてはいないこと。

 今回の報道で脚光を浴びた「射流」というのは原理的には水流の「速度水頭」そのものです。
   水位H換算で
  速度水頭H=速度V2/(2g) [m]  g=9.8 m/s2
  流速を 5 m/s、 7 m/s、 10 m/s、 15 m/s で試算すると
   H(5)=5^2/20=1.25 m
   H(7)=7^2/20=2.45 m
   H(10)=10^2/20=5.0 m
   H(15)=15^2/20=11.25 m
となります。
 問題は津波波高で、電波、音波、震動のようにdB(デシベル)などの対数表記でなら直線で良いのですが津波高は実スケールでないと理解されがたいとなると、その解決策としては対数スケールを実スケールに引き直せば良いのでは。すなわち
  ±1.0 dB = ×÷1.1
  ±2.0 dB = ×÷1.2
  ±3.0 dB = ×÷1.4
  ±4.0 dB = ×÷1.6
  ±5.0 dB = ×÷1.8
  ±6.0 dB = ×÷2.0
  ±7.0 dB = ×÷2.2
  ±8.0 dB = ×÷2.5
  ±9.0 dB = ×÷2.8
  ±10.0 dB = ×÷3.2
という誤差表記にすれば、現状の誤差状態を適切に表すことができます。

誤差表記「推定値×÷2.」表示で解決!

すなわち予報例は
 3 m ×÷2.0(=±6dB) → 1.5 m ・・・・・・2010/3チリ地震津波
 6 m ×÷2.0(=±6dB) →12.0 m ・・・・・・2011/3 東日本大地震津波
どちらも、現状で予測可能な誤差範囲だったということになります。
 津波の第1波来襲タイミング予報は良く合致していましたから避難開始には適切でした。

 「誤差が2倍で、6m推定」という予報なら12m高以下は危険地帯と認識されて避難を続けていた可能性は強いでしょう。研究者が誤差の理由が分かっているのにそれを説明せず、バッシングするマスコミに迎合して謝罪してしまうのは2重に間違いだと言うほかありません。昨年3月の津波の後に根拠のない謝罪ではなく誤差範囲も発表するように改めていたら、誤差範囲の予測による逃げ遅れは減っていたでしょう

狼少年型警報は有害
気象庁は予測精度(誤差)の説明を!   (気象庁予報方針批判) <2>

 気象庁が津波警報第1報6m高、2報10m以上で遭難者を増やした反省から、今後予測最大高を発表するというニュースが7月28日付新聞にありましたが、それでは狼少年になって今まで以上に逃げない人が増えてしまいます。絶対にダメです。対数的な誤差表示を付けて、「津波予報6m誤差×2÷2、最大12mの大津波!避難は12mを想定して行って下さい」とすれば、実際の津波が3mに収まっても、予報技術の限界として理解され、矛盾は小さくできます。昨年のチリ地震津波予報で、3m予想に対して1.5mというのも予報精度の範囲で、あれで謝ってはいけません。やはり現在の予報技術の限界で、精度を上げるための研究費・設備費を下さい!とキャンペーンすべきでした。根拠のない謝罪は、世論の不正確な批判の風除け感覚であり、予報の技術者、科学者のものではありません。(11/07/28追記)
    参照→謝るな!気象庁!日記#243
指数函数減衰
 (どの時点から見ても同じ関係になる。↓以下参照)
 指数函数 V(t)=A・exp(−t/T) の 任意の点t1での接線方程式を求めて、t軸との交点t2を求める。
 座標と勾配で接線方程式が決まり、その Y=0 の点t2を求めればいい。
 点P(V0,t0)を通り、勾配αの直線を現す方程式は
v−V0=α(t−t0) であるから、t1での函数の勾配と座標を求めれば接線方程式を求められる。
勾配 d/dt(V(t))=−(A/T)exp(−t/T)、
∴d/dt(V(t1))=−(A/T)exp(−t1/T)

Y座標 V(t1)=A・exp(−t1/T)
∴接線方程式:y−Y座標=勾配・(t−t1) すなわち
y=−(A/T)exp(−t1/T)(t−t1)+A・exp(−t1/T)=0
(t2−t1)=T となって、t1から時定数経過した点t2t1での指数函数の接線とt軸の交点になる。

半減期と時定数   (雑情報) <3>

 自然現象がそのポテンシャル比例で発生してポテンシャルが失われる場合は、発生量が指数関数的になり、自然対数の底eに対しての減衰時間定数を「時定数」(T)と呼びます(時定数:「じていすう」が正式、「ときていすう」は話し言葉での誤認回避に使用。Time constant)。CR回路、LR回路、放熱などがこれに当たりますが、放射線の場合は一般向けの常用単位として2を底とする対数で現した「半減期」(H)が特に使われています。一般的な理論解析であれば自然対数の底e(電気工学でε:電圧eとの重複回避)が適切で「時定数」が使われるのですが、原子力・放射線関係では先に「半減期」が普及してしまい国際単位SI化でも補正できず、デファクトスタンダードというわけです。
 両者を数式で現しますと
   V(t)=V0・ε(−t/T)  ・・・・・Tは時定数
   V(t)=V0・2(−t/H)  ・・・・・Hは半減期
という違いになって、半減期H経つと1/2となり、時定数T経つと1/εに減衰する、同一の指数曲線です。
 函数曲線の着目点での接線と横軸との交点までの距離が丁度時定数になります。(グラフ&算式参照)

 THの量的関係を求めるには先ず上下の式の対数を取りますと
   (−t/T)=(−t/H)・ln(2)
   H=T・ln(2)=0.693・T≒0.7T、 T=1.443・H
という単純な関係になります。
 半減期25,000年の放射性物質を100,000年保管した場合、
 1/2(100,000/25,000)=1/24=1/16
にしかなりません。有史数千年で築かれた文明・技術が100,000年で全く収束できない技術、ダメと分かっても元には引き返せない技術の利用に勝手に踏み出して良いのでしょうか?

「半減期」の思い出   (雑談) <5>

 毎年1,000人前後採用していて定年退職者もいないのに社員数が増えないとぼやく某社人事部幹部氏に、自然発生的退職率の凄さを理解して貰うために学歴別男女別在籍数を一旦対数変換して回帰分析による直線を求め指数函数形を示したのですが、基礎的な解析通りに「時定数」と言っても文系人にはピンと来ないでしょうから、「半減期」に換算して、大卒15年、高卒男子7年、製造の中核、高卒・中卒女子1年半という驚愕の数値を示して「社員を引き留められない労働条件の酷さ、人事政策の不公平や一部経営一族のセクハラなど社内の雰囲気の悪さ」を指摘したのでありますが、「半減期」という言葉を聞いたとたん激昂されまして、「言うに事欠いて『半減期』とは不真面目!揶揄が過ぎる!」といたくご立腹。
 一般的な「平均勤続年数」では特徴点が全体で均されてしまって見えないことも多いものですから、逆に一様自然発生で見て特異点を検討したら見えるかも知れません。そうしたら残存分布が指数函数上に良く乗った訳で、それは一様発生率の偶発事象ということになり、誰もが一様に辞めたくなる会社!時間パラメターは「時定数」か「半減期」、指数函数表記の重要定数で、理論解析直に「時定数」で言っても良く分からないから「半減期」で言ったんでしょうが!と思ったのですが、「印象」、「語感」は怖いですねぇ。

 業界他社より良くない労働条件であることを職場世論に強調したい労働組合情宣部が特別の非難の意は無かった概念「『半減期』1年半」を引き継いでビラ宣伝、読者に大いに受けた訳でありますが、「時定数」で表現すべきだったのか、納得を得るまで「半減期」の物理的意味を説明すべきだったのか・・・・・・、受けてしまう表現だったのが内容ではなく感覚として失敗だったんでしょうな〜。文系では「半減期」の物理的意味と定義など学ぶ機会がなかったとしても、大量退職で、気持ちに負い目があったからこそ、理工学上の無色の言葉を誤解し、揶揄と捉えて激昂したのでしょうねぇ。


 既知の概念として記事中に意識せず使ってきたdB(デシベル)の解説がないことに気付きまして、自前で説明を試みます。工高電子など工学系専門科目でしか扱っていない様で、騒音・振動訴訟報道などで一般には内容を理解されないまま使われています。

デシベル[dB]とは   (解説) <4>

[デシベル概数]

dB
パワー圧・高
1
00
1.4
3
2
36
3
59.5
4
612
5
714
6
816
7
17
8
918
9
19
10
1020
100
2040
1,000
3060
10,000
4080

 主に振動的な物理量を現す際に、人間の体感特性が概ね対数的であることから、基準の値を定めて、そのエネルギー比の値を対数で現すに際して常用対数である10底の対数値で現してベル(B)とし、さらにそれを10倍したデシベル(dB)が扱いやすい値として広く使われている。すなわち基本定義式は
   G=10・log10(P/P0) [dB]
ベルは、電話の父グラハム・ベルを単位に取ったもの。
 実用の場、現場では、電圧比、電流比、振幅比で扱うことが多いため、エネルギー換算ではそれらの2乗になり、以下の定義式も用いる。
   G=20・log10(V/V0) [dB]

 加減算だけでよい扱いの容易さから、現場では振幅基準だけでデシベルの定義をするようになり、本来のデシベルと区別するためにdBに添字を付してあらわすこともある。
 人間の感覚で弁別できる量としてはパワーとして概ね2倍の違いになる3dBとされて「半値幅」などとして利用されている。dB表記に小数部を略すのは人の感覚の分解能から妥当な措置である。

dBm
600Ω負荷で1mWを消費する電圧を基準値0dB。実効値√(0.6)V≒0.7746V。音響機器関係。
dBv
=dBmの電圧のみで0dB。dBmも混用。
dBV
実効値1Vを基準値0dB。拡声器等。
dBμ
実効値1μVを基準値0dB。無線通信でアンテナレベル等
dB
2×10−5[P]:パスカル=0.0002 [μBar] を音圧基準
dB
振動レベル 1.0×10−5 [m/s2]

 [db]という表記は1950年代頃まで電気通信で使われたが、人名依拠単位は大文字表記とする国際的規約が浸透して[dB]表記に統一された。

 使用例としては例えば、レコードカートリッジの出力が4mVで、16Ωスピーカーを8Vで駆動=4W駆動だった場合の増幅度は2000倍66dBだが、これを、イコライザー・アンプで30dB、パワーアンプで20dB、プリアンプで30dB、VRで−14dB、総計66dBという形に各段の増幅度:利得を分担・分割して基本設計できる。パワーアンプ入力レベルは0dBとしている。(RIAAイコライザーとすれば、イコライザーアンプの裸特性は更に20dB以上必要)。

 他の対数の底としては光学系で2底が使われて、シャッター速度、絞り、フィルム感度などの目盛規格やライトバリューLV、EVなどがこの2底の対数に拠っている。気象庁の震度階は常用対数10底であるが、国際的に多用されるメルカリ震度階は整数底ではなく、10底換算の1.5倍(3段階で振幅10倍、エネルギー100倍)となっているのと、マグニチュードが1段階32倍(2段階で1000倍)となっているのが特別な定義である。
 数学表記的スマートさでは気象庁震度階の方が勝っているし10底対数の方が振動についての一般的定義であるから、合理性に乏しい「国際標準」メルカリ震度階には合わせない方が良い。役所が無用の強権行使で国民が迷惑した曲尺鯨尺騒動の二の舞は繰り返さないで欲しいもの。
   See→メルカリ震度階試算
     →気象庁震度階試算


2011/07/18 17:00

[Page Top↑] 旧
新
雑談
Geo雑談
戻る