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一億総懺悔方式の責任逃れは不当
  経営側に特別に安全配慮義務

6/9山崎正夫前社長本人尋問


JR西の前社長、ATSの社内基準「知らなかった」
     朝日.com 2011年6月9日13時44分

 107人が死亡し、562人が負傷したJR宝塚線(福知山線)脱線事故で、業務上過失致死傷罪に問われ、無罪を主張しているJR西日本前社長の山崎正夫被告(68)の第24回公判が9日、神戸地裁であった。過去3回の弁護側の被告人質問に続いて同日から検察側の質問が始まった。

 検察側はまず、「JR他社の事故情報を参考に安全対策をする考え方はあったか」と質問。前社長は「そういう認識はあった」と答えた。一方で、国鉄からJR時代にかけて起きたカーブでの事故が6件あったことを示す資料を検察側から示されると、「4件は記憶にない」と答えた。

 前社長が鉄道本部長だった1996年に函館線のカーブで貨物列車が脱線した事故に関し、検察側が「現場が曲線と把握していなかったのか」と聞くと、「あくまでも居眠りが原因だと思っていた」と回答。カーブでの事故ととらえていなかったことについて、「落ち度ではないのか」と問われた前社長は「思っていない」と反論した。

 一般的なカーブへの自動列車停止装置(ATS)の設置目的については「制限速度をオーバーして乗り心地を悪くしないためだ」と説明。急カーブにATSを整備するとしたJR西の社内基準に関する報告は「聞いた記憶はない」と述べつつ、「(基準を)知らなかったことは恥じなければならない」と語った。

  http://www.asahi.com/national/update/0609/OSK201106090062.html


「全社員に責任」質問に山崎被告
     赤旗11/06/10(15)面埋め記事

 乗客106人が死亡したJR福知山線脱線事故で、業務上過失致死傷罪に問われたJR西日本前社長山崎正夫被告(68)の公判が9日、神戸地裁(岡田信裁判長)で開かれ、被害者参加制度を利用して遺族5人が初めて被告人質問を行いました。次回に遺族の意見陳述などを行い、7月29日に検察側が求刑、9月30日に弁護側が最終弁論を行う予定。

 公判で遺族らは「危険の認識がなかったと言うが本当か」「運転士だけでなく、 自分に責任があったと言うつもりはないか」などと質問。  山崎被告は「危険は認識できなかった」と従来の主張を踏襲した上で、 「刑事責任は別にして、社会的道義的責任はJR西の全社員にある」と述べました。

 遺族に先立って行われた検察側の質問で、山崎被告は自動列車停止装置(ATS)のカーブへの設置基準について「恥じなければいけないが、知らなかった」と述べました。

2011/04/16毎日 http://mainichi.jp/kansai/news/20110416ddn012040053000c.html

JR福知山線脱線:JR西前社長公判
カーブにATS、必要性認識せず 元役員ら証言

JR福知山線脱線事故で業務上過失致死傷罪に問われたJR西日本前社長、山崎正夫被告(67)の第16回公判が15日、神戸地裁であった。JR東海とJR四国でそれぞれ安全対策を統括した元役員2人が弁護側申請証人として出廷し、「カーブへの自動列車停止装置(ATS)整備の必要性は認識していなかった」などと述べた。

JR東海は事故前、直線との速度差が40キロ以上などのカーブ8カ所にATSを整備していたが、元安全対策部長は「乗客の乗り心地のためで、脱線事故を考えたことはなかった」と証言した。

 6月9日のJR西日本山崎前社長本人尋問で、訴訟参加した被害者遺族から事故の責任を問われて、「刑事責任は別にして、社会的道義的責任はJR西の全社員にある」と答えて、一般社員並みの「道義的」「形式的」責任しかない=具体的には全く責任はないと言い放つに等しい証言をした。この肝心の部分を赤旗新聞しか報じないというのはどうも変だ。JR西に遠慮の報道規制ではないのだろうか?

 鉄道事業者には事故情報や専門的知見をもとに安全を追求する義務はあり、まして技術系幹部としては、直接の解析力があって、決定権が在るうえ、キャリアとして特別に採用されているのだから、一般社員より重い責任があって当然だ。地位が下になるに従い単純作業になって解析したり意見など言う余地のない職場実態だったのに、山崎前社長の責任認識は酷すぎて、犠牲者遺族は到底納得できないだろう。

過速度転覆は、分岐とカーブで発生   <1>

 1996年12月発生の函館本線仁山事故を「居眠り運転と認識し、曲線過速度事故とは思わなかった」はウソ。居眠りの結果、何が起こって事故になったかを追わなければ物理的対策を取れない。仁山事故では、115km/hに達する過速度で60km/h制限箇所に進入して転覆しているが、「本線の速度制限で60km/h」といえば、工事や災害絡みの特殊事情が無ければ、普通は「300R曲線制限」だ。山間部の本線の標準的曲線半径が300Rであることを、技術系の星:山崎氏が知らないはずは無いだろう。3度の転覆事故を起こした函館本線大沼駅両側の登坂部は300R曲線の九十九折りであるし、旧東海道線である御殿場線も、西の箱根と呼ばれる山陽線瀬野−八本松間の片峠区間も、みな300Rの連続九十九折りで、大都市ではない平地の本線になって600R、800Rが現れる。
 尼崎事故直後に「133km/h以上で脱線の可能性を生ずる」という誤情報がJR西日本から出されて、一時は「133km/h以下では転覆しない」と言う形に変形されて一旦は報道を席巻したが、すぐに函館線姫川事故88/12の300R100km/hでの脱線転覆の資料が示され実例として報道されてデマ宣伝を粉砕した。いくら何でもこの山崎証言はダウト!だ。See→曲率半径算出例
 96/12/04函館線仁山事故 :JR貨物97/02/07速照設置を発表

印象操作!「乗り心地で曲線速照設置」   <2>

 過速度ATS設置理由が「乗り心地保証」というのも「設置基準」と「設定基準」をスリ代え誤解を誘発させての争点隠しである。
 安全装置は元来事故防止のため設置するもの。曲線過速度ATS=曲線速照はこの脱線転覆防止の安全装置であり、山崎社長証言がそれを否定するのは全く妥当でない。
 山崎前社長が「乗り心地保証」と強弁するのは、JR国鉄系の過速度速照設定基準が転覆脱線限界からではなく、それぞれの地点の制限速度を守らせるための「制限速度+10km/h」という速照値設定を指して「乗り心地で設置」と証言した訳で、設置するかどうかの「設置基準」の話ではない。この曲線速度制限値は転覆限界より厳しい乗り心地限界から定めている。だから安全限界を乗り心地限界で定めたというのは当たらない。この辺は神戸電鉄の過速度ATS事故で述べたとおりである。See→日記#191神戸電鉄過速度停止事件→日記#190→日記#189
 第一、ATS-Sxの速度照査では警告無しにいきなり非常制動だから、減速G変化は大変大きく、乗り心地どころではない。運転士に総ての場面で規範性を徹底するという政策なら、安全基準よりずっと厳しい「乗り心地基準」を設定値に採用する合理性はあるのだが、それが本来の事故防止目的設置を否定することにはならないから素人騙しのすり替え説明である。

過速度ATS設置基準40km/h減速は、計算書提出命令で一発確定   <3>

 山崎前社長弁護団は、JR東海が過速度速照設置基準を40km/h以上の減速箇所として、転覆懸念箇所8箇所全部に設置済みだったことを「転覆防止対策ではなく、乗り心地だ」と証言させたが、それに対する反論としては、JR東海証人に「では何を基準に乗り心地を算出すると『40km/h以上減速箇所』という基準になるのか、具体的な宣誓計算書を示して欲しい」と要求すれば、それが転覆限界基準以外の原理を示すことは不可能である。裁判所が職権で宣誓陳述計算書の提出を求めて公開、世論の点検に曝して斯界の権威の鑑定証言を求めればもう誤魔化しようがない。乗り心地基準というのは口先の評価であり、転覆させないことが乗り心地保証という結論になるはず。国鉄JR基準の0.08Gなどという乗り心地基準は出てこない。
 鑑定の金看板性に難点があり、解析内容を自分で直接たどれる方しか説得できないが、内容は高校物理水準ということで、以下の当サイト試算も目を通して頂きたい。設置基準が乗り心地云々という証言が事実に反することだけは理解して頂ける。同記事中の尼崎事故後に国交省が過速度ATS義務付け通達を発した際に、JR東海の義務付け箇所70箇所に既設8箇所として取り上げられていることは、転覆防止設置説の金看板になりうる事実である。ロングスパンでは自前解析の解析ヲタを増やす(See→解析ヲタ入門列車制動衝突解析法)ことが有効だろう。マスコミも優秀な新入社員たちを駆使して解析結果を得て報道のための金看板を探す様になると世論操作に流されにくくなる。少なくとも技術的問題に、非技術系鉄ヲタ売れっ子ライターの不確かな見解を求める愚行はなくなる。
   参照 →過速度ATS設置基準考

過速度で曲線進入すれば転覆は常識   <4>

 素人が考えても、過速度で曲線に突入すれば、脱線、転覆事故に至るのは分かる。鉄道事業者は安全確保に留意して、過速度ATS設置基準を定めて懸念箇所に設置するのは当然の注意義務だろう。それを全く検討したことはなく、他事業者も検討してないから責任はない、処罰は後出しジャンケンだとは、酷すぎないか。仮に他社も気付かなかったとしても、現実に惨事になったところが責任追及されるのは、無理がない。
 後出しジャンケンではない、普通の検討内容だというのは、尼崎事故7日前の日記#57にも「カーブを忘れて突っ込むと脱線転覆になる」と述べている通りである。この記事は土佐くろしお鉄道宿毛駅全速力突入事故の検討結果として書いている。重なる事故に遭遇しているキャリア組のプロが、必要な解析をしなかった怠慢でずっと見過ごされて来たというのは少々情けなさ過ぎるのではないか。
   See→日記#58:実証してしまったか!「カーブを忘れて突っ込むと脱線転覆になる」!

 JR西日本は尼崎事故までの間に111箇所の曲線に過速度ATSを設置していた。これだけの量の設置工事をしていながら、その設計技術者たちが設置基準の解析・検討をせずに山勘設置を続けていたとは考えられないのだ。限度計算など規則に残る解析は喜んでホイホイ作業してしまうのが技術者の常。信号同業同士の、あるいは国鉄時代からの繋がりで、JR東海の40km/h以上減速箇所とか、様々の情報交流は予測され、自前の設置基準案が作られてはいたが、何等かの障害で制式採用されず退蔵されたのか?「技術資料」の形で登録しておいて、事故のトカゲの尻尾切りの対象にされ掛かったら、実施を阻んだのは上部だと暴露して糾弾するつもりとか・・・・・・・・きっと何かまだ隠されている。日比谷線中目黒事故でも、検修職場が輪重計設置要求を繰り返し出していたのに経営側に拒否したことを共産党国会議員調査団が暴露して、保線労働者5名を生け贄に幕引きを図ろうとする筋書を粉砕した(≒おそらく職場から情報提供がある!)。技術屋は上からの命令の範囲だけで働くのではない。

2011/06/16 20:30

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