日比谷線中目黒衝突事故   #98

 2000/03/08 09:01JST 頃、営団地下鉄日比谷線中目黒駅手前の160.1R左Sカーブを進行中の東急東横線乗り入れ(菊名行き)営団03系電車8両編成の最後尾車両前側台車が脱線し、脱線車輪が合流する保線用横取りポイントに誘導されて右側に押し出されて対向する列車、東武20000系側面に衝突、両車大破して衝突された東武車を中心に死者5、重軽傷63名の大惨事となった。脱線箇所は左カーブ出口の緩和曲線部=カント低減部で、そこではカント逓減の捻れの分右前側車輪の輪重が軽くなる。緩和曲線部レール30m7m走行位置に約7m長の乗り上がり脱線痕が残っていた。勾配は上限近い+35/1000。

 事故原因については運輸省内に設置された「鉄道事故調査検討会」の久々の仕事となり、22回の検討会を開いて
25の報告書を出しているが、最終報告書がその「3.9 脱線要因に関する検討」項で敢えて原因の特定を避けて「このように、今回の脱線は、各因子の影響が複合した結果により、最終的に脱線に至ったと推定される。」として直接には主原因を特定しなかった

 しかし事故防止対策としては明確に「輪重比10%以内管理」を指示し「5 事故防止対策」項で事故直後3/16の緊急対策指示「(1)曲線に続く緩和曲線部において、可及的速やかに脱線防止ガード、脱線防止レール又は安全レールを設置すること」に加え、緊急通達では「後日指定」としていた詳細を最終報告書内でガードレール設置基準を「推定脱線係数比」に求めて実施を指示したことで間接的に事故の主要因(=原因)を明らかにしている。すなわち
  • 主因が輪重バランスの極端な狂い(輪重比30%超)
  • 副因が急曲線とその緩和曲線での脱線防止ガードの設置省略(営団設置基準140R以下は極端に緩い)
    の2点だけを主原因・副原因と捉えて改善勧告をしていることが一目瞭然となっている。
  • また、脱線地点が曲線終了点から7mの緩和曲線内の捻れのある地点で、そこまで約7mの乗り上げ痕が観測されたとあり、これが緊急指示根拠になっている様だ。

     実は'63(s38)年11月の鶴見事故のワラ1型脱線地点が同様の曲線出口緩和曲線とされ、緩和曲線でのカント逓減の捻れが脱線の重要要因になっていることは専門家の間では常識化していた様だ。3/8の中目黒事故に対し直後の3/16付けで急曲線出口緩和曲線部へのガードレール設置を通達している。
     狩勝峠旧線での脱線実験で多数の貴重なデータは得られたが実験全体と総合結論「競合脱線」云々は結果として国鉄による予見可能性不存在キャンペーンになっている。後日明らかにされたワラ1型実車試験省略採用でその軽負荷時走行特性異常を見逃した事実と付き合わせるとその判断は微妙に変わった可能性はある。
     未曾有の大規模脱線実験と「競合脱線」のレッテルに隠された脱線の主原因は
  • 走行試験省略によるワラ1型の走行特性異常見逃しと、
  • ガードレール設置基準未制定だった。
     刑事免責証言でこの時真の原因究明内容が公開されていたらガードレール設置基準も明確化されて日比谷線中目黒惨事は避けられた可能性がある。


     事故調査検討会がこんな騙し絵の様な勧告を出した理由は明らかにしていないが、周囲の状況に照らして考え得る理由は2つある。
  • 一つは、事故防止のため最も有り得る原因推定という性格で、刑事処罰の原因確定にはなじまない検討会勧告を、刑事処罰の証拠に使わせないため。事故再発予防の観点なら最も有り得る原因推定99%で有効だが、刑事事件では残り1%ではないことを証明出来なければならない。
     しかし警察の扱いはかなり乱暴で、事故直後の調査から事故調査検討会を排し脱線箇所の線路を早々に取り外して押収し再現試験を不可能にした上、線路の維持管理値を超えたことだけを以てその程度(=修正緊急度)を問わず保線労働者5名を送検する暴挙を行った。
     こうした警察・検察の現場を人身御供にするだけの暴挙として見ると、北陸トンネル列車火災惨事では、その3年前に起こった特急日本海トンネル火災で同トンネルを駆け抜けてトンネル外で消火作業をして物損で済ませた殊勲の乗務員を「運転規則違反」として処分して危険なトンネル内停車を強要した国鉄側の責任を放置して、何と火災から生き残った急行きたぐに乗務員を起訴し長期の裁判に晒した事件はその典型だ。
     この北陸トンネル惨事後、ようやくトンネル内など避難困難地点での列車火災対応規則が改められ、先の特急日本海乗務員の処分が撤回され、現場労働者に対する警察・検察の生け贄人身御供型処分の不当性を浮き彫りにするものとなった。その後の福知山線尼崎事故ではさすがに事故調査委員会に鑑定依頼したと報じられているが、報告書の性格が冒頭のように事故被害抑制主眼だから事故調報告書はやはり刑事処罰のための決定的鑑定にはなり得ない。
  • もう1点は、運輸省の指導責任追及回避である。従前は信号やATSの工事設計とか、路線や曲線の最高速度算式まで許認可事項としていたのに、事故防止に重要なガードレール設置基準を各社任せにしていたとは信じがたい事態だが、この行政指導が欠けたことで営団のみ突出して緩い基準に次々改められ200R→160R→140R基準が採用されて現場の160.1Rには開通当初からガードレールが無くこの惨事に至った。また主要因たる左右の輪重アンバランスについても管理していたのが東急1社だけだったというのは驚きだが、そのきっかけとなった東横線横浜駅脱線事故の対応として他社にも注意喚起することは必要だった。この運輸省としての指導監督責任を曖昧にしたかったのではないだろうか。

     この事故を機に法改正が行われ、航空事故調査委員会を航空・鉄道事故調査委員会に改組して従前は事業者調査で運輸省が組織して法的権限のない鉄道事故調査検討会が担当した鉄道事故調査を正式に公の航空鉄道事故調査委員会に委ねたが、残念ながらそれは監督庁である国土交通省傘下の機関で事務局など主要部を監督庁が握ることとなった。法改正時にも指摘されたが、事故調査委員会は事業者からの独立は前進だが、それだけではなく監督庁からも独立させる必要がある。

    コストダウンには貪欲!レール研削

    テーパー研削  このように報告書を分かりにくい表記としたため、脱線要因に寄与したとリストアップされたレール側面研削角をフランジ角である摩耗面に合わせることでレール摩耗を減らす試みが報告書での指摘以降放棄されるなど却って不合理な対応も現れている。斜め研削といっても右図のハッチング部分を削り摩耗斜面はいじらなければ、当たりが広いので減りにくく、ゲージやレール頭幅の限界までは使える。「経験工学の集大成」たる鉄道業で事故発生社の営団:東京地下鉄からこれを復活させるのは困難があるのだろうが、曲線外側レールの側面摩耗を減らす試みとしては復活させて差し支えないはずだ。
     このレール研削については0.1mm研削するはずが、誤って0.8mm研削を指示していたことをもって脱線原因ではないかという憶測報道が行われたが、実際は新幹線で開発され1999年度(H11)の日本材料学会技術賞を受けたレール延命措置を在来線にも適用する試験研削だったようだ。[参照→日記#140]。JR東日本も2000年初夏にレール研削車を複数台輸入しているが、在来線の保線現場には一切伝えられず、折損、シェリング、軋み割れ多発で「レールが危ない」(参照→日記123)と大問題となり、切迫した事態を公表した社員を2006年に処分する騒ぎになっている。営団はJR東日本の在来線より早い時期に実施試験に入っていたことになる。曲線部ガードレールの根拠のない極端な撤去といい、コストダウンには大変熱心だ。(この0.1mm研削節は'07/04/08追記)

     03系のボルスターレス台車枕バネの横剛性が東急車よりも大きくその分脱線横力を増したとの記述は後日の福知山線尼崎転覆事故では人気鉄道ライター川島令三氏により「ボルスターレス台車重大欠陥説」に増幅されて誤謬のベストセラーとなってしまった!川島氏の酷さは御自身で理解できない分野についてもベストセラーライターの御威光で誤った解説をしてしまい、様々な専門家から重大な誤りを指摘されても絶対訂正しない不誠実さにある。事故調査検討会指示としては横剛性によるモーメントと輪重の限界値を提起するとか、それに変わる管理値として輪重比の限界値を定めたとかの明確な対応をすべきである。(輪重比10%管理指示がそれに相当するとは推定できるが、突拍子もない誤解が広がって粗忽なマスコミ世論としては収束出来ていないのだから要因として上げた以上報告書内で明文の落とし前は付けて欲しいと思う)
     「要因」を云う限り、ほとんど総ての要素が脱線限界に影響する訳で、それぞれ危険度分担をして全体として最良パフォーマンスになるよう限界値を定めて運行している。原因を刑事的に特定しないための目眩ましとはいえ「各因子の影響が複合した結果」という表現は無責任に過ぎるように思う。

    輪重比定義式
    輪重比 =左右平均との差/平均
    =(左∽右)/(左+右)
     尚、報告書内で輪重アンバランスを0.70とか0.9とか述べているのは、中心値に対する軽い側の輪重の割合であり「輪重比」の定義に従えばそれぞれ30%と10%を指しており1から輪重比を減じた値である。国民一般が読む前提の公表文としては表記を統一して貰いたいものだ。また公表ファイルも1本化してくれないと、18本にも分けられたファイルはダイヤルアップ接続では何度も途中で落ちてしまって長いこと事故調査検討会報告書全文を入手出来なかった。

    報告書に触れなかった論点

  • 上下線の独立、線路間隔
     転覆しなければ線路幅以上は隣線に接近しない。現場は線路間隔がそれより狭かった。
  • サバイバルファクター
     オフセット衝突にあたって分解塊が車内に飛び込みにくい構造、分解しにくい構造の研究
  • 大事故の際の救急体制
     事故後7分も経っての119番通報!乗客が携帯電話から119番通報したのが1報!


  • 事故報道

     首都の過密通勤線での惨事で大変な「大事件報道」となり、根拠のない興味本位の憶測が並べられた。過速度暴走説、車軸折損説、滑走原因説、レール過研削説、ボルスタレス台車欠陥説(→→輪重比管理拒否原因説)、アルミ車体脆弱説などほとんど口から出任せに語られたが、日比谷線は新幹線より早くATCを導入した路線でそのため基本的に本線上での過速度は起こらない。脱線車両のジャッキアップ復線作業のため空気バネに空気が無かったことを事故調査検討会が営団に事情を確かめずに脱線原因と発表するエラーもあって益々警察から調査を妨げられる事態となり中目黒署捜査本部の脱線レール取り外し押収の愚行を許してしまった。

     報道が一渡りした後の最初のスクープ報道は11日朝刊で営団のガードレール設置基準が他社に比べ極端に緩いことを指摘した赤旗新聞報道だった。これを日経が夕刊で同内容で追い、翌朝12日は朝日が全大手事業者のガードレール設置基準を報じるなど流石人材の多い御威光輝く社!とは思った。零細新聞が各社に問い合わせたところで全社即座には回答は得られない。
     だが各紙の紙面を良く見ると、読売の当日8日夕刊写真などで脱線現場の両側を並行して走る東急東横線には全面的にガードレールが設置されているのに、営団線にはないことがハッキリと写っていた。それにいち早く気付いて関係方面を具体的に調査した報道機関が抜いたということだ。

     記者の勘違いでスクープが誤報になったと思われるのが鉄道の毎日新聞。3/14夕刊で「前部軸重1.5トン軽く、バランス欠き危険増す」とやってしまった。機関車の先台車とか展望車、交流トランス搭載など前後の荷重の違いは普通に見られる。これは事故調からの左右アンバランスのリーク情報を記者側が勘違いして誤報となった疑いが強い。

     翌朝3/15朝刊で、国会議員団調査「せり上がり92年にも」と銘打って、1992/10〜/12に発生した半蔵門線鷺沼車庫内での2度にわたる脱線事故を指摘、営団として「輪重バランスのチェックが必要と考えられ、輪重測定装置の導入を検討した」ことを報じたのはまたも赤旗新聞。左右の輪重の狂いだから前夕毎日が「前後の狂い」と勘違いして転けた内容でスクープしている。続報5/5朝刊では輪重計設置要求を営団が拒否しさらに5/14続々報で半蔵門線車両のみ3年毎検査時に輪重調整するようになったと事故の予見可能性に関わる重要事項を報じている。この一連の報道が送検された保線労働者5名の不起訴を方向づけた。各紙は同日3/15夕刊〜翌16日朝刊でこれを追っている。各紙社会部の多くは政党機関紙の社会面など見ていないということか。(夕刊で追った日経、毎日を除く:苦笑)共産党地下鉄委員会職場新聞92/11号などの指摘があるので、ソースは現場内部情報と思われる。濡れ衣を晴らして貰った営団保線現場は共産党地下鉄委員会に足を向けては寝られないということだ。「職場情報」を云うなら、学会・公明の方が多いはずだし、民主なら傘下の多数組合もあるのにそれらには情報集中されないのだろうか?現世利益で集まる集団が会社からの弾圧覚悟で真相を告発することは無いのかも知れない。
     4/18 に輪重比30%超の車両があることが一斉に報じられて4/15報道内容を具体化し、これが右の捻れのある左カーブ出口カント逓減部の脱線箇所と一致し、有力な脱線原因としてクローズアップされることとなり、実車運行試験を行うことが決まり、5/1朝刊各紙を実車試験での車輪浮き上がり写真が飾ることとなった。

     また、最近のマスコミの報道振りをみると、土佐くろしお鉄道宿毛事故05/03/02では地元紙高知新聞が、福知山線尼崎事故では神戸新聞、羽越線いなほ転覆事故では山形新聞が詳しく正確な記事を載せており、必ずしも記者が文系だから報道内容がぶれる訳では無く取り組む真剣度の違いのようだ。現場のサポートという有利な条件はあるにしろ政党機関紙が全く互角で噛んでいるし、文系とは言え記者に超一流大学出身者を集めた大手紙が高校物理水準の記事を正確に書けないはずはないだろう。
     個々の記事をみれば東京新聞とか日経新聞などに印象に残る記事もあるが、デスク側が川島デタラメ本を1面コラムで持ち上げてしまったり、ATS-P換装では過速度転覆を防げないことを訂正報道した後にATS-P換装論説を出してしまったり、社説で「無人駅への地上職配置・気象情報集中」批判ではなく運転者に風の息を読めと説教してしまい第1線の努力を蹴散らして信頼感を墜落させている。これでは第1線の取材記者はやってらんない。この辺りは情報共有や専任グループ形成でそのチェックを義務付ける等の垂れ流しにしない工夫が要るのだろう。(地上側が「風の息を読む」のは無人駅化前はやっていたし、運転士も自分で判断することはあった。今は独自判断を禁じられている)

    現場の声は?

     鉄道の労働者・労働組合が継続的に技術的見解を述べているのは、183系導入高速化時の安全闘争を闘って当該線の線路改良と全国のダイヤ見直しをさせた動労千葉と、この共産党地下鉄委員会くらいのものだ。原発反対!と真っ向から会社施策に立ち向かった東京電力争議団はとっくに解消しているし、国労は全職種に渉る総合組合で技術的見解での意思統一がなかなか困難で、まだ継続した技術的専門部を組織していないのだろう。だが日本で最初の労働組合である活版工組合のオルグたちが活字拾いの腕は職場で一目置かれるよう必死に頑張って労働組合非合法下での影響力を保ったように、活動家たちが仕事でも一目置かれる様にならないと、職場の強い団結はなかなか得られない。暴力集団中核派擁護行動で地域のまともな労働組合からはまるきり浮いている千葉動労が、一般組合員からは支持があるのは、かっての安全闘争で各地点の妥当な独自制限速度を執行部が制定指示できるほど仕事には精通していたことと、解雇争議を抱えて、組合員の要求には注意を払い内部に対しては東労組ほどの無理押し強要はしてないからだろう。新型車導入拒否でポンコツ113系ばかりにされたのは組合員感情への迎合に過ぎて自ら首を絞めてしまったのだろうが、電機子チョッパー車201系導入で拠点の検修から大量退職を出した経験から定年まで仕事を続けたい要求にはマッチした。この辺りを世論誘導できる力が要ると思う。組合組織であれば労働組合法で一応は守られるが、そうではない組合内グループで、組合役員立候補についてまで会社と御用組合の不当干渉を受け不当労働行為救済の提訴を重ねる状況で技術的にも独自見解を出し続けるというのは大変なことだと思う。判例としては日産厚木部品事件などで個人、グループに対する不当労働行為が認定されているが、少人数で会社と御用組合幹部の相手をしながらというのは作業量だけでも並大抵のことではない。   [ヘッドライトHP]

     各種情報提供を少数派の告発法としてみると、国会議員団の調査や新聞報道の形を採って会社からの不当な攻撃や組合のサボタージュを巧みに回避しながら職場労働者としての必要な主張を記事中で述べて告発して、しかも会社が不当労働行為まで冒して擁護する頼りない労働組合に対する打撃的批判はしていないのだ。時々あることだが組合機関の怠慢を棚に上げて「許可のない告発で組合の顔を潰した」という難癖は職場には通らず組合機関が浮いてしまうから闇に伏せず職場の明るみに置くことだ。

    ATC下の衝突=引き上げ線無防備で人任せ

    引上げ線にもATS
    京王線桜上水駅引き上げ線の地上子
     92/06/16中目黒駅引揚線で回送車が衝突事故を起こしている。直接原因は運転士の第2入替信号の見落としの模様だが、当初の信号システムでは中目黒駅折返しの引上線は同時出場・進入を許容しなかったものを、折返し時間の短縮を図って許容に改めて冒進防御のない第2入替信号で待機としたときに、客扱いをしない引上線入線部を理由にATC防御を設置せず、信号から支障限界まで僅か10mだったため衝突事故となった('06/11/照会)。これは低速で無乗客箇所での政策判断だが、相対速度最大50km/h以上を放置で良いのか、運転関係者から衝突の危惧が出されていたのに従前の防御のある信号での制御に戻すとか、チェックは入れられなかったのだろうか?各社とも停目直後には入替信号でもATS/ATC停止機能を配置して防御していることが多いが、一歩引上線に入るとJRを含め無防御だそうである.(これは京王電鉄桜上水駅など引き上げ線の過走防止装置まで設置の会社もあり、情報が古いのだろう.標題の事故とは独立原因、設置基準と点検体制の問題)   [当該事故記事]


    2006/09/19 23:30

    mail to: adrs
    戻る HP 目次 元頁
    Last Update=2006/11/05   (2006/09/19)

    <UNION>

     最近、真面目な組合ルートがあるのにそれを敢えて無視して個人名で線路状態を告発して案の定の処分を受けて、セクトが一斉に「不当処分反対闘争に取り組まない国労は御用組合だ!」と攻撃を始めた事件がある。これと比べると、何のための告発かがハッキリ見えて来る。たとえ養殖御用組合という側面があってもまともな方向に改質強化する方針と展望をもって行動するのか、極左セクト拡大キャンペーンとして、組合を叩いてセクト唯我独尊を演出するものかという根本的な方針の違いが見える。動きがまだるっこい組合機関への打撃的評価を避ければ職場の声に押されて組合機関として主張しやすいし、そうなれば成果も上がり本来の労働組合機能が見直され、それ以上に言い出しっぺが信頼される。

     職場の労働組合の団結を闇雲に攻撃・破壊するだけの方向が通れば職場改善の要求闘争どころか労働条件の維持すらできなくなってしまう。こうした極左集団を扱い慣れた職場では無益な論争の相手をせず打ち切って逆に浮かせてしまうのだが………。団体行動や方針の不足を組合員の理解と納得で埋めるのではなく、打撃的攻撃のみで自セクトへの結集だけ訴えるというのは最初から勝利するつもりのない挑発争議だからそこを反省して支援要請をしてくるまでは徹底して無視したら良い。理不尽な内ゲバ殺人の世界に自分の組合機関と同僚を引きずり込む大義などないのだから。従前も勝った争議というのは動きの鈍い地域共闘組織や産業別労働組合を、その争議を勝利させる支援行動で再生させ強化できたものが勝利解決しており、あべこべに頭から叩きまくっての勝利など無いのだ。千葉動労も1047名争議勝利解決を第1に望むのなら身から出た錆(=中核派内ゲバテロ擁護、暴力容認)の釈明と、鉄道業界には知られた安全闘争の実績を下げて支援拡大に打って出たら良い。地元千葉で暴力集団との断固絶縁を主張している組合は20年以上昔から地域の未組織労働者の労働災害を採り上げて、民事裁判数件分もの手間の掛かる過労性労災の認定手続きや、職場復帰にも取り組んで実績を上げていることが神奈川や三多摩にまでも知られる真面目なところだ。そこに対して事実をもって身から出た錆の釈明を行い理解を求めることを否定し、非難・攻撃するだけでは争議勝利解決を投げ捨てたセクトの草刈り場確保の所業と思われて無理ないではないか。「反対するには命がけ」の内ゲバ路線を事実上擁護し続け、明確な否定をしていない様だから、それで充分威嚇になりうる。中核の裏テロ部隊が対革マル・革労協で多数の襲撃事件を起こし犠牲者を出しているのだから、。民主運動・労働運動を標榜する限りそこ:テロ・殺人集団との絶縁を明確にする必要はあるだろう。