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過速度ATS-Pの設定検討不足
   ではないのか?JR西日本

JR西、「急停車しないように」
   脱線現場に新たな仕組み

 尼崎JR脱線事故の現場カーブ付近で自動列車停止装置(ATS)が作動し、電車が急停車したケースをJR西日本が公表していなかった問題で、同社の佐々木隆之社長は17日の定例記者会見で「そもそも電車が現場で止まらない仕組みをつくる」と述べた。

 JR西によると現行のATSは、設定を超えた速度を感知すると直ちに非常ブレーキがかかり急停車するため、緩やかに減速する新型ATSを手前に設置し、現行ATSを作動させず安全にカーブを通過できるようにする方針。同社は新型ATSに対応する車両を投入する来年3月のダイヤ改正までに、こうした仕組みを整備するとしている。

    2010/12/17 23:00 【共同通信】

 福知山線尼崎転覆事故の現場カーブで過速度ATSが働いて非常停止したことを敢えて公表しなかったことを「内部告発」されて、「危険はなかったが、遺族の気持ちを考えたら場所が場所だけに今後は停止を公表する」とした後に「停止しなくする」とした報道があり、どういうことか良く理解できず混乱が残っているようですので、解明してみましょう。

 停止時の状態は既に日記#257#2に述べたとおりで、「曲線手前105mに設置したATS-Swの81km/h照査に85km/hで突入して非常制動が掛かり、69km/hで曲線に突入、160m進入して停止した」とあります。

 この数値から推定すると、安全装置(=ATS)設定条件としては、非難風除け政策として低減の「本則」規定60km/h制限、最高速度95km/hではなく、ハードとして線路を設営した通り「本則+α」規定70km/h制限、最高速度120km/hで設定しているはず。
 以上を実設定数値と比較すると
 以上の通り比較的良く一致しています。
 このデータから言えることは、制動距離を等配にするとSw速照の1段目2段目速照値が暫定制限値の95km/hを越えていて3段目81km/hだけ効かしている様なので、やはり政策的な60km/h制限ではなく70km/h制限対応です。
 安全装置であるATS設定は、線路のハード設定に合わせて設定するものですからこれは妥当な設定です。政策的で物理的根拠のない公称60km/h設定にしてはいけません。

 以上の図示に拠れば前述通り、ATS-Pに従って運転すると並行動作中のATS-Sw過速度防止速度照査設定(赤丸点)に当たり非常制動が働いて停止して、途中緩解可能なATS-P速度照査は実質有効ではありませんでした。

 非常制動停止が「内部告発」で問題とされ、想定通りの安全動作で心配ないという一般向けの説明が十分には理解されなかったので、ATS-P速度照査の基準点を、ATS-Sw速照設定より手前に設定し直したということです。事故犠牲者の気持ちへの対応としては支持しますが、本来なら第2緑線パターンのように最初から干渉しない設定にすべきでした。車上装置がATS-P/Sw単純併用の「拠点P」なら過速度ATS-Swの設置点には過速度ATS-P設置の必然性はなく、今回の是正措置でようやく活用できることになりましたが、それは尼崎事故現場だけなのでしょうか?全拠点P区間で設定替えを行うのでしょうか?設定替えすればこれまで死んでいたATS-P速照が生き返って、余分な停止が無くなる分、運行しやすくなるのですが・・・・・。

2010/12/24 02:20

事故現場速照設定に別情報!   <PS>

【詳細参照】
 冒頭解析項で採用したデータと整合性の悪い報道データを発見。「曲線105m手前で81km/h照査に85km/hで進入して非常制動」という11/28毎日新聞の報道はJR西日本の発表内容ですが、12/13日経夕刊4版15面の続報末節には「現場カーブ手前のATSは、設定速度(時速70〜115`)以上で通過すると作動する」とあって、速度グラフを見ても分かりますがJR西日本発表の81km/h動作とは微妙に違います。

 先ず70km/hという照査値は、60km/h制限の最終段最低速照査値ですから、対70km/h制限という算出仮定と違います。
 点速照地上子設定配置の考え方は幾通りもあって、現地調査の結果でも千差万別。宿毛事故時の分岐過速度速照は制動距離の設定が負で安全装置としての過速度防止効果が無く、運転士処分のための罠でしかない酷いものでした。(土佐黒潮鉄道ではJR東海とは違い乗務員処分には使ってなかった様ですが、国鉄宿毛線として鉄建公団が建設着手して3セクに引き渡した路線でSS/Sx準拠ですからJR東海やJR西日本には同様のネズミ取り設定が存在して侮蔑的日勤教育に廻していると考えるべきでしょう。位置寸法≒0m=194m−16m−122m−(25km/h片渡り:#8分岐:56m))。
 尼崎事故後の国交省の指導では進入速度が曲線転覆速度×0.9を根拠とする参考付表で、神戸電鉄の過速非常停止時にその現場で採用されていたことが明らかにされた設定ですが、JR各社はそれより厳しい制限速度強制遵守設定を選んで勧告の数倍の設置数となっています。
速照看板ATS-SF
ATS-SF速照30km/h設定

 国鉄JR型の場合、ATS-Sxが基準になりますから電車線区で減速定数K=20/0.7、旅客列車対象でK=20の制動曲線がそれぞれ制限速度始点の制限値に接する線が安全限界線になり、その限界線から過速度ATSの停止コマンドを受けてからの空走時間×速度=空走距離分手前に実際の地上子を置くことになります。電車と旅客列車の混合線ではATS-Sxの高減速信号を拾って減速設定を切り換えられる様になっていますが、残念ながらその現物に気付いたことはありません。東京在住では旅客はATS-P化済みで、近隣には併設の貨物用ATS-SFしかないので切換の必要が無く仕方ありませんが。

 更に点速照ですからある地点の速照装置への進入速度は、最大で1基手前の速照速度になります。逆に云えば次の速照点での停止可能速度を速度照査値とすることで過速度突入を防ぐのが点速照方式の基準設定です。
 多段速照を設けるのは無用な低速運転を避けるためですが、その設置法となると、速度差均等割型と、制動距離均等割が基本に見られながら、その値よりもっと間隔を大きく取っている様で、設定値の丸めもJRFは5km/h単位ですが京王小田急は1km/h単位で各事業者に任されています。

 物理的な合理性を言えば制動距離均等割が適切で、転覆限界基準の設営で良く、運転士が中間速度制限値を意識する必要のないシステムが優れているのですが、オペレータに制限速度遵守を徹底することに重点を置いて、制限速度基準で速度均等割型を選択することにも合理性があり、制動限界線を越えないことは絶対条件ですが、全体としての安全政策次第でしょう。JR東海のように東日本に倣ってATS-Pに全面換装してしまえば問題はなくなるのですが。最悪は安全は守らないで処罰するためだけのネズミ取り設置です。当サイト常連の黒潮鉄道氏も書いてますが安全装置をオペレータの援助者ではなく、敵対監視人にしてはいけません。ATS-Pや諸モニターの記録を引っ張り出しての処分などは絶対に避けるべきです。

 そういう周辺状況を下に日経報道値の70km/h〜115km/hと、毎日の81km/hを比較しますと、JR西日本発表直である81km/h照査が先ず信頼できる値と判断できますが、そうすると日経の70km/h〜115km/hは情報出所が違うのではないか?最高速度120km/hの路線で60km/h制限に対する3段速照の両側の設定値で、中央の速照の設定値は90km/h前後。日経はJR東海に騙されて「P並に優れたST」と報じてしまった後、時折踏み込んだ内容の記事が見られていましたが、その値など詳細を日経記者自身が計算してるとは考えられませんから、周囲にそういう意見を求められる専門家を得て一般的設定法の説明を受けて記事を書いた可能性が強いと思います。実際は80km/h、95km/h、〜110km/h程度の3段で設定して居たのではないでしょうか。81km/hは80km/hで位置設定した実際の結果だったと。より正確に報道するのなら一般的数値ではなく、当事者であるJR西日本に設定値を直接確かめて書けば良かったということです。

宿毛駅片渡り線の長さ試算 <L>

 片渡り分岐器先端と25km/h速度照査地上子の距離を算出するため、片渡り分岐器の長さを試算します。(下図の「ポイント」という部分で○C速度照査と分岐器先端の距離を試算します)。
宿毛事故
 軌間G=1,067mmで速度制限25km/hの分岐器→#8分岐→#8=1/tan(θ/2)/2 ・・・・・・・(θは分岐角)
    2#N=1/tan(θ/2) →  θ=2Atan{1/(2#N)}
 クロッシングから背向クロッシングまでは直線と仮定(=国鉄型設置)として、
 複線間隔D=3.5mとすれば、片渡り線の全長は約、2×分岐長L+直線cosθ として求められます。
 分岐長L=等価曲線半径R×θ
 R=G{1/(1−cosθ)−1/2}=2G#N2
 L=Rθ=2G#N2・2Atan{1/(2#N)} =4・G#N2・Atan{1/(2#N)}
    L=4×1.067×82×Atan{1/(2×8)}=17.05m
 直線部長Lsは、Ls=(D−G)/cosθ=(D−G)/2Atan{1/(2#N)} となる。
    Ls=(3.5-1.067)/[2Atan{1/(2×8)}]=19.43m
∴L+Ls=2×17.05+19.43>=55.54m≒56m が片渡り線全長になります。

 従って、25km/h速度照査ATSと分岐器先端の距離はほぼゼロで、制動距離どころか空走距離さえなく、過速度防止装置としては全く働いておらず、迂闊運転士日勤教育送りのゴキブリホイホイ(wという訳です。これは運転再開時に正当な位置に移設されました。
 なお、複線中心間隔は地上で折返し作業を行う駅では作業通路を置いて1〜2m広くしていますが、宿毛駅ではディーゼル動車のみで、通路設定がないようなので最小の3.5m(=最大車幅3.0m+間隔0.5m)としましたが、それでもATS設置位置ゼロでは仮定数値が正しいと思います。私鉄流の曲線クロッシングにしても島式ホームでないとほとんど効果がありません。

2010/12/28 06:20

単純な比例定数=制動定数K <K>

 等加速度運動の場合、加速距離、減速距離は速度の2乗に比例しますから、鉄道現場ではその距離の比例定数を「制動定数Kと呼んで重用し、信号機設置時の各列車の制動性能をこの「制動定数K」で定義してきました。非常制動での減速定数として、旅客列車でK=20、電車・気動車でK=20/0.7、一般貨物列車でK=15
 空走時間として、ブレーキ応答時間T1が、電車1秒、旅客列車2秒、普通貨物列車5秒、ATS応答時間T2=1秒、ATS-Sx動作タイマーT3=5秒、などと基本的に整数値で定め、
 停止距離B=空走距離S+制動距離L=速度V2/制動定数K
       =V2/K+V/3.6×T、 (T は全空走時間)と単純化していました。
 前節の試算は、SI系基本単位ではなく、比例定数Kで行っていて余分な単位変換がなく単純で済んでいます。

 ここに通産省が無限定な国際単位SI(≒MKSA有理単位系)使用を強制したことで、定義式はややこしい数値となり試算の両端での常用単位変換が必要となり却って混乱と困難を生ずることになりました。小学校でやっていた比例計算の文章題(旧応用問題)を通産省が禁止してどうする積もりでしょうか?取引や原理的、学術的定量解析に国際単位SI利用を呼び掛けるのは別として、現場の見掛けの法則の単位まで処罰付きの法で縛る必要はないのですが、目安で良い圧力計の目盛が5kg/cm2だったのが、直に490[kPa=キロパスカル]などと、曲尺鯨尺禁止問題と同じく実に意味のない悪代官的な強制が刑事罰をもって押し通されて分かりにくい状況があります。高速で走ってるときに約500kPa中の10kPaなど読みとって意味があると思ってるのでしょうか。目盛さえあれば絶対値は関係ない用途向けには曲尺鯨尺の様にSI以外の計測器の製造販売禁止を撤回すべきでしょう。(同じ法律:メートル法から起きている不便ですが、鯨尺とは違い制動定数Kには永六輔氏は居ませんでした)。制動定数Kは7.2(=2×3.6)で割るとkm/h/s、更に3.6で割るとm/s2(=K/(2×3.62))です。常用すればなんてことないんですが、念のため。

2010/12/24 02:20

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