新幹線障害 導入16年 安全管理に穴
2011年1月19日 朝刊
JR東日本のすべての新幹線がストップした十七日朝のトラブル。原因は、新幹線の運行管理システムの能力不足と、それを改善してこなかった同社の姿勢にあった。システム導入から十六年。この間、秋田、長野新幹線の開業などで運行本数は四割増。それなのに処理能力は向上されず、現場にはシステム上の制限が伝わっていなかった。同社は「予想外の事態」と釈明したが、トラブルはハードの問題より、むしろ人為的ミスの側面が大きそうだ。
「(システムの処理能力は)相当の余裕をみた数字だった。これまで同様のトラブルもなかった」。本社(東京都渋谷区)で開いた会見で、宮下直人常務はこう強調した。
だが、現実には、そのシステムはもろくも崩れた。しかも、調査で判明したのは、指令員に運行状況を示すモニター表示を除いては、システムが正常動作していたという不可解な事実だった。
システムは、ダイヤ変更などに伴うデータ処理案件の数を、一分間に最大六百件とし、これを超えた場合は、表示をストップする設定になっていた。
当日朝、雪の影響でダイヤが変わり、一時的にデータの件数が(毎分)六百を超えたので、システムは“正常に”表示をストップ。だが、現場の指令員にはそんな設定になっていることは周知徹底されておらず、状況が把握できない現場は運行をストップするしかなかった。
システムは一九九五年に導入されたが、その後に状況は大きく変わっている。秋田と長野新幹線の開業をはじめ、五新幹線の運行本数は二百三十本から三百二十本へと増加。
二〇〇八年、指令員に表示する予想ダイヤの範囲を、従来の四時間先までから二十四時間に終日に変更。これもシステムへの負荷を高める結果になった。従来の(毎分)六百件が十分なのか、検証もされてこなかった。
宮下氏は「経験的に(毎分)六百件で大丈夫だと問題意識はなかった。甘かったと言われればそうかもしれない」とシステムを過信した可能性に言及。「指令員が上限を知らなくても作業できるようにとの考えだった。設計上の配慮が足りなかった」とも述べたが、失った信頼はあまりにも大きい。
新幹線の運行システムに詳しい千葉工業大学情報科学部の富井規雄教授は「恐らく設計者の意図と違う使われ方をしたのが最大の理由ではないか。ソフトウエア全般に言えることだが、設計者と運行側との十分な打ち合わせが重要だ」と話す。
東京新聞 http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2011011902000027.html
「(毎分)」は誤解回避に記事に挿入
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