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型ハメ型検事調書で説得力減殺か!

 尼崎事故で山崎鉄道本部長の刑事責任を問う裁判が証人尋問に入り、検察側証人として出廷した直接の設計者が検事調書とは異なる証言をして非難を浴びています。
 その部分の記事を読むと、どうも設計者である証人自身の表現ではなく、検事主導による「評価」中心にまとめ上げた調書に違和感があるようにも感じました。

福知山線事故
カーブめぐる証言矛盾

JR西前社長公判 遺族「真実を」

 2005年、兵庫県尼崎市のJR福知山線で列車が脱線し、乗客と運転士107人が死亡した事故で、業務上過失致死傷罪に問われているJR西日本前社長、山崎正夫被告の第3回公判が14日、神戸地裁で行われ、検察側の2人の証人へ尋問が行われました。

 当時JR西日本建設工事部土木課で、事故現場のカーブの半径を半分に変更した工事を設計した岩本幸夫氏が証言。工事について運輸省(当時)近畿運輸局は法令違反の有無などを審査するだけで、カーブの危険性やATS(自動列車停止装置)設置の必要性などは審査しなかったとのべました。

 一方、岩本氏は、カーブ半径の半減により制限速度が時速95キロメートルから70キロメートルに変更された際に制限速度標識を設置した理由について、検察調書と矛盾する証言をしました。調書で岩本氏は「運転士が制限速度の変更を忘れてカーブに進入すれば列車が遠心力で脱線し、乗客に危険が及ぶかもしれないと思った。そのため、標識を設置したほうがよいと考えた」などとのべ、カーブの危険性やATS設置の必要性を認識していたことを明らかにしていました。

 ところが、この日は検察官の尋問に対し、標識設置の理由を「わからない」と繰り返し、調書での自身の発言については「いっていない」「記憶があいまい」とのべ、検察官から、調書の内容に同意の上署名・押印したはずだと指摘されました。

 続いて、福知山線が東西線と直通運転を開始し、列車本数が大幅に増発された1997年春のダイヤ改正に向けて輸送計画を策定した西岡泰樹氏が証言。改正の内容は当時鉄道本部長だった山崎被告に報告しており、それを把握していたはずだとのべました。

 事故で娘を失った大阪市の女性(71)は「岩本氏が真実を語っていないことは、傍聴席から失笑が漏れるほどしどろもどろの様子を見ればわかります。自分で速度標識を立ててその理由がわからないなんて話が通りません。JRから圧力を受けたのかもしれませんが、岩本氏には事故の真実を語ってほしい」と話しました。

福知山線事故/カーブめぐる証言矛盾/JR西前社長公判 遺族「真実を」
     - しんぶん赤旗'11/01/15社会面第2トップ

 具体的な設計では、定められた法規や技術基準に則って淡々と行われるもので、記事にあるような「運転士が制限速度の変更を忘れてカーブに進入すれば列車が遠心力で脱線し、乗客に危険が及ぶかもしれないと思った。」などと、一々おおもとに遡って考えながら具体的設計をする方が極めて不自然です。それはおおもとの法規や規則、設計式制定時の総論的検討時に行われるもので、そちらの担当者に聞くのであれば妥当ですが、具体的数値決定者の作業経過として聞くことには無理があると思うからです。

 国鉄JRでの曲線速度制限標識というのは、主に標準制限とは違う制限設定をする場所に設置するもので、建前としてはその路線を運転する運転士は曲線毎の半径とそれに基づく制限速度は宙で覚えていて敢えて表示する必要がないはずのものです。

 現場カーブの半径304R、カント97mm、制限70km/hというのは、「本則」なら60km/h制限、高速型の「本則+α方式」では最大カント105mmに設定して許容不足カント60mmの車両の場合に75km/h制限となる処、現場は高速道路の立体交差などで線形が制限されて緩和曲線の長さを十分には取れずカントが低めの97mmとなってしまい、それにより速度制限が304Rとしては特別の値である70km/hに抑えられたことで制限標識設置義務を生じたのだと思います。設置規則そのままの設置であり特別の配慮ではありません。それは脱線転覆の怖れ云々ではありません。これは手順の問題ですから、客観資料と証言は得られるはずで、例え検面調書がどうなっていようと裁判官に理解力があれば是正されてしまいます。

 国鉄JR現場が制定規則についてどれほど融通が利かないかを示す例としては、JR九州鹿児島線宗像海老津事故'02/02/22の中継信号誤認対策があります。見えにくい信号機を手前側に中継するカーブミラーのような補助信号ですから、列車がそこを過ぎても現示は変わらず、続行列車が自列車に向けての進行信号と勘違いして加速して停止中の先行電車に衝突した事故ですが、中継信号と本信号の間に列車が居る場合には消灯できないか!という声に「規則で本信号を中継するだけのカーブミラーのようなものだから絶対できない」というのが本職側の解説で、そんなもの現実に勘違いでぶつかってるんだから規則を修正すればいいというのが外野の声で、揶揄を込めて「中継信号を列車が過ぎたら無効の×点を降ろせ!」とか散々盛り上がったのですが、実際の対応は、誤解して危険の考えられる場所の信号は移設するということで、判断は預かりになりました。

 また、赤信号区間に進入する「無閉塞運転」は、当初は現場長会議で継続が繰り返し確認されましたが、衆院委員会での共産党瀬古由起子議員の質問を機に、鉄道局は無閉塞運転継続のご進講をしたのを「今時無線が通じないからなんて理由は認められない!」という扇千景国土交通省の一喝で、「指令の許可のない無閉塞運転の禁止」が各社で定められてJR東日本などが採用していた「閉塞指示運転」に揃えられた経過がありまして、鉄道側、特に九州、東海、西日本の非常な頭の固さが目立つわけで、西日本の現場で規則にない安全策が各現場で設計者の個人裁量として任意に採用される可能性はほとんどありません。

 JR東日本の速度制限標識は原則よりも多く設置されていますがNEXなど例外速度で運転される列車対応のローカル規定があるのだと思います。西日本の福知山線はどうなのでしょうか?例外は個人裁量ではなく規則化されているはず。検事調書も裁判での聞き方も検察側がいかに判ってないのか!都合の良い作文調書であべこべに自滅!を示すものになっています。


 その設置規則から来るのとは独立に、「曲線の転覆限界速度以上から手動で減速して進入する場所に安全装置として過速度ATSを設置する必要があるかどうか」という問いに対する答えはどんなに正しくてもあくまで事実評価であり、具体的な数値設計の過程で現れる訳ではありません。

 検事がこのへんを敢えて混同させて調書の文面を作って威圧的に署名させて証拠だと主張すれば、口頭での証言では違う表現になるのは当然ですし、客観事実と、その事実評価の形に整理して証言を求めないと、イエス−ノーでは答えられなくなってしまいます。当日の公判では証人側の信用性が損なわれた様ですが、前述の通り、数値設計作業手順と速度制限標識設置基準が明らかにされると「調書は検事の作文」となって説得力が全く無くなってしまいます。

 どこの警察でも検察でも行われている不当ではあっても、警察・検察など捜査機関はいい加減に証人の言い分を尊重して、その事実評価を求めるまともな方式にして貰いたいものです。このような下らない歪曲で、規則規定を決める設計側である山崎前社長元鉄道本部長の過失責任をぼかしていることに気付いてほしいし、思い込み捜査による数多くの冤罪事件の原因にもなっているのですから、深く反省して貰いたい。捜査機関の捏造は郵政不正村木事件だけではないのですから、。
[補足]
 現場の具体的設計を行った岩本氏が、作業経過とは別に作業当時の概括的感想や、陳述時点での感想を述べている可能性はあるわけです。
 また、例外的制限値以外にも速度制限標が建てられることはあり得るので、陳述者の述べる決定経過に沿った供述調書にしていれば、事実経過とは独立の「事実評価」として同意されたかもしれません。それを検事が設計過程の話に構成して「分かりやすく」してしまうと事実経過とは違いますから立証意図とは逆に検事の作文として調書の信用性を損なってしまいます。捜査関係者の多くはそのへんが横着に過ぎ、不公正裁判、冤罪発生の下地になっています。

2011/01/20 20:35

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