信号現示の制限速度や、多段速度ATCでの各速度段階毎の制動曲線は、基本的に一段制動減速曲線である放物線を速度段階毎に切り取って該当制動箇所に貼ったものになる。
しかしながら、初級テキストに示される略図ではどれも停止付近の速度曲線を、途中減速曲線としてそのまま貼ったものを用いていて、それはこの「電気鉄道ハンドブック」の記載でも踏襲されていて、「鉄道業界お約束の説明図」になっている。(p682図8.130, p684図8.132, p687図8.136等)
しかし、本当の減速曲線は1本の放物線を分配したものが基本。過速度防御の解析・設計などへのシームレスの適用を考えれば現実に合った図の方が初学者ほど理解が楽になる。ここは改めて欲しかった。下参考図の段階的減速図の方が正確な表記である。
('07/03/28)
減速曲線は1本の放物線を分配したもの (p682図8.130, p684図8.132, p687図8.136等)

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国鉄型ATC解説は名称と経過があやふや! <JNR-ATC>
「山陽新幹線用改良型がATC-1D型」という記述に象徴される様に、新幹線ATC史とその名称があやふやだ。山陽新幹線ATCといえば-1B型や-1W型であり-1D型ではない。この解説を落とせないのではないだろうか。個々の動作説明には誤りはないが、新幹線ATC絡みの4大事故との関連と切り離したまま執筆するからこのような省略エラーになり、技術的な説得性まで無くしてしまう。このJNR-ATC解説記事「新幹線における多段ブレーキ制御方式ATCの例」(p682C2〜p683)ATC-1A/ATC-1Dが本書中の目立つエラーだろう。
対照資料として共に鉄道電気技術協会刊、信号概論[7]「ATS・ATC」と[11]「新幹線信号設備」に個々の方式の記述があるが、それを総論的にまとめることがうまくいかなかったのかもしれない。当該8.3章の執筆者が「元東京都交通局」とあり、他に8.1章、信号システム一般や、列車防護の一部を担当されているが、新幹線の実務を担当した国鉄関係ではなく、経緯説明を外してしまったのだろう。この章はやはり新幹線信号関係者の執筆にして欲しかった。
新幹線ATC改良の軸としてのATC-1A/1B型コンパチ2周波方式で全国標準方式としたATC-1D型のポイントとその山陽バリエーションATC-1W型という形に整理すれば、ナマを述べている源資料「ATS・ATC」と「新幹線信号設備」も活きてきたものを、残念。
高速側制限は、上越や山陽で世界最高営業速度ねらいという冠上、あるいは営業上の都合で車両毎の最高速度の読替が行われたから、システムとしての基準速度と、読替例外速度を分けて表示して貰えるとシステムとしては整理されて分かり易くなった。
推定を述べても仕方ないが、ATC-1A,-1BからATC-1Dへの改良に際し、110km/h以上の制限速度が+10km/h〜+20km/hとされたのは、制動装置と速度計測の安定性向上で、基準減速度を高めに改訂できたためと考えられる。70km/h制限は#18番分岐の横Gからくる制限速度だから、制動性能には関係しないし、30km/h制限は、鳥飼電車基地冒進脱線事故対応で48mだった添線軌道回路03信号区間を50mに延ばした経緯もあり最後の冒進阻止線を35km/h制限に改めるほどには効かなかったということだろう。
('07/03/22)
ATC定義のあいまい性指摘は妥当 <DEF_ATC>
ATC定義について「法定」条文上の厳格な定義を主張する向きも多いし、運輸省鉄道局も青函トンネルATSにつき、車上信号式ATSは認められないなどの変なクレームを付けてATC-L/-1Fとさせた。機関車列車に採用されている自動ブレーキ特有の込め不足事故を防ぐには非常制動方式が本筋だから、「ATCのハードを使ったATS機能」が順当なのだが、監督庁の御威光で「ATC」にしてしまった。後の電車特急は文句なくATCだ。これを「ATCという用語は広く使われているが、その意味はかなりあいまいである」(p679C2L8)としている。技術屋の感覚では当然だ。ヨーロッパでATP(Automatic Train Protection)と呼ばれているとか、米でATSと云えばAutomatic Train Supervision列車監視機能ATS と紹介し内容の違う和製英語であることを指摘している。
('07/03/30)
爆撃とGHQ命令で費えた東海道山陽鹿児島常時速照ATS <Hi.spec.ATS>
1941年の山陽線網干駅急行列車追突惨事を機に、連続コード式ATSを東海道、山陽、鹿児島本線に設置する工事をして、運用間近に車上受信機が小倉爆撃で全損し計画放棄されたからATS取付「提案」ではなく、「設置工事」が行われた(p627).同書p669の解説表8.14「ATSの種類」(連続制御式/商用周波数軌道回路断続符号式)の解説文によれば………わが国で太平洋戦争中,自動列車制御装置として計画され,戦後,車内信号併用のATSとして車上装置4両,および山陽本線門司〜幡生間地上装置が完成したが,進駐軍命令で中止させられたというとして最終的にはGHQ命令で設置を断念したことが記されていて「提案」に留まらなかったことを示している。
('07/03/30 &4/16)
ATS-Bは1秒落下で警報 <B-TMR>
B型車内警報装置とATS-Bでの停止信号車上伝送法と強制制動について、信号電流を「約5秒間遮断」する(p670C1L8,L11)「この5秒以内に確認操作が行われなかった場合に,自動的に制動をかけるようにしたのがATS-B型である」と述べているのは、伝送法が1秒間遮断、その後の強制制動タイマーが5秒設定を混同した誤りだ。同一原理で現示を伝送する京成京浜都営1号型ATSでは0.8秒と3秒と∞(断)で伝送している。分かっていても時々混同する処だから注意を払って校正して貰いたいもの。
('07/04/16)
その式はポイント番数定義式! <Point>
図8.151のポイント番数定義図と定義式のうち右下の「θ=」の式は、ポイント番数#N=の間違いだ。上行との繋がりでは「θ=」を削除すればOK。
#
N=(1/2)・cot(θ/2)=1/2tan(θ/2)
('07/03/30)
cmの誤植!mm
架線の波状摩耗波長の原因を述べる章で、パンタグラフ集電シュー間隔20cmと、その1/2の10cmと書くべき処を、直前の摩耗値mmに引きずられてmmとしてしまった。現場の工学屋ならmm表記で統一してエラー発生を防いでいたはず。この辺は不良品の山に追い掛けられる経験のない研究者型の方が厳密ではないのかも知れない。(p473C1L6)
('07/03/30)
瀬野八は6,000kWフルパワー?EF200 × →
EH200:(中央線登坂で?)制限切替の模様 <EF200>
パンタ点電流制限切替はEH200か
【EF200】JR型電機を語るスレ【M250系】
http://hobby9.2ch.net/test/read.cgi/rail/1173068730/168n
168 :ama ◆2P6zxky1H. :2007/04/19(木) 01:15:39
>>166
>インバータ制御方式の機関車は,勾配区間の一部を除き,パンタ点入力電流を制限して使用している。
これはEH200のことじゃないですか?勾配区間で入力電流値の設定を手動で変えてます。
EF200で>>159のような改造は見たことも聞いたこともないですね。
|彡サッ.。oO(発言に重み、との事なので久々にトリップを)
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EF200はJR東海の給電容量から25N(ノッチ)6000kWの出力に15N制限を加え約3400kWとして運行していることが知られているが、p349C2L-11の記述に拠れば登坂部にノッチ制限の例外があるようだ。その場所は、関ヶ原は厳しい貨物制限を言い出した東海支配下だし10/1,000勾配の登坂線がありノッチ制限解除は有り得ないだろうから、標高差250mを登る西の箱根、瀬野−八本松間の23/1,000勾配300Rで6,000kWフルパワーを発揮している可能性がある!吹田・大阪貨物ターミナル以西専用機とか制限解除キーとかあるのだろうか?真相は?(p349C2L-11:一方,わが国の直流饋電区間では電圧降下の問題が大きく,インバータ制御方式の機関車は,勾配区間の一部を除き,パンタ点入力電流を制限して使用している。EF200型は出力を約3,400kWに制限して使用しており,EF200型の後に製作された電気機関車(JR)は,この制限も考慮し,1時間定格出力565kWの主電動機を標準使用している:07/04/03)
EH200に手動のパンタ点入力電流制限切替があり、それを指しているのではないか?EF200では出力を上げても起動牽引力は大きくならない。Ex.中央線登坂?(07/04/20)
鉄道屋さんは「無次元化」か <Norm>
数学屋に云わせるとたしか「正規化」、電気屋はそれを「量子化」と誤用する表現で、「離線率の無次元化速度特性」(p469図6.49)という特性グラフが、架線の波動伝播速度を1として正規化して掲載されている。鉄道屋さんは「無次元化」というのか!電気ではフィルターの折れ点周波数を1として正規化して解析し設計するなど良く使う手法だ。
('07/03/28)
速度集電(離線)特性は3山?! <Wave>
集電限界速度が架線の波動伝播速度の70%程度とは聞いて波動速度を試算していたが、この他に「複数パンタグラフの干渉・共振」と「パンタグラフのシューの振動」という2種類の速度で離線のピークがあることが紹介されている。それぞれの要因を文章としては読んでいたが、速度領域の異なる共振現象とは思い至らなかった。(p39図1.65)
波動伝播速度の話は軌道構造にも出てきて、850km/h〜1,000km/hだから問題ないとあるが、そこに現在実験中の磁気浮上鉄道581km/h台の話が出てくるのは場違いな気がする(p76C1L8)。浮上により軌道の波動伝播速度は関係なくなるのではないだろうか。その代わり空気の波動伝播速度=音速の壁が効きはじめる。
('07/03/28)
明快解説!曲線速度制限基準 <Vr_max>
曲線本則の計算式
(水平位置での安全比率定義
R[m]、V[km/h] 図2.71)
適用区分 | 安全比率 a | | 軌間 [mm]
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| 1,067 | 1,372 | 1,435
| | | | | |
| 高性能列車 | 3.0 | | 3.70√R | 4.2√R | 4.3√R
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一般列車 | 3.5 | | 3.50√R | 3.9√R | 4.0√R
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---|
分岐曲線 | 5.5 | | 2.75√R | 3.1√R | 3.2√R
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---|
| 許容不足カント別制限
| 不足カントCd
| =均衡カントCb−実カントC
| (省令式)Vmax
| ≒√(127R(C+Cd)/W)
(省令式) Cd
| =W2/2aH=W2/8H
Cd=60mm普通車,70mm高速車,110mm振り子車
| W:
軌間、H:重心高、C≦105:1,067W
| | |
他書では具体的数値や定義式は記載されていても制定基準がはっきりしなかった曲線速度制限基準が、明確に述べられている。すなわちカントゼロでの安全比率から定義する国鉄「本則」型定義車種別2種+分岐部と、実カントを元に許容不足カント3種から定義して高速制限とする「本則+α」型定義を示し、それぞれの車種別は、前者本則は高速、低速、分岐部。後者許容不足カント+α式はその許容量規格別ということで、基本式→制定式→速度制限表が制定される道筋を示している(p76&図2.71)。他書ではこの記載がなく理解に苦労した。この辺りは研究者・学者の噛んだ本らしくて良い。
但し、車種別の許容不足カント規格は同図の70mm,95mm,105mmではなく、国鉄時代の高速化で制定した60mm,70mm,110mm(=普通、特急、振り子)の筈だが、この相違は何処から来るのだろう?その後改訂があったのだろうか?'05年の尼崎事故時点では変わっていない様だが?現場での許容不足カントのランク分けが研究レベルには伝わってないのかもしれない。
IGBTチップ構造図 <IGBT>
IGBT(Insurated Gate Bipola-Transistor)のチップ構造が解説されている(p238図4.44)。チップ構造が実質PNPトランシスターとそれを制御するMOS-FETの複合構造。どうせ和製英語なんだからIGCBT(Insurated Gate Controlled Bipola-Transistor)とでも名付けてくれれば様子が分かり易かった。特殊な大電力素子の構造はなかなか記事が見つからなかったが、素子自体のWebカタログには掲載されており、多用されている業界のハンドブックでその簡易図を発見だ。
('07/03/31)
思いも拠らぬパラメトリックアンプ!「低周波振動」
p540C1L-1, p636L8 <Parametron>
無負荷状態で変圧器に電源投入すると、投入タイミングの直流分から「分数周波振動」が発生るためBT饋電の帰線直列コンデンサ保護回路として並列に過飽和リアクトルと放電ギャップを挿入しているとある。なるほど言われてみればトランス鉄心の飽和があり、無負荷ではパラメトリック励振になりかねない。現実の損傷事故を解析して得られた知見だろう。
電気屋にとってのパラメトリックアンプは可変容量ダイオードを液体窒素冷却して使う超大型衛星通信アンテナのアンプとしてかってはお馴染みで、磁気利用のパラメトロンは博物館遺跡だと思っていたのだが、今も現役で信号用分周電源を大型パラメトロンで構成している(p636L8「分周軌道回路」)というのはトリビアだった。東大後藤先生発明のパラメトロンが鉄道の電力で今も生きていたとは大変意外。電気機関車の位相制御に磁気増幅器を使う件は制御出力に応じた寸法次第のもので基本動作の範疇であり、さほど驚きはないが、演算素子と思っていたパラメトロンが数kVAの電力用で使われていたとは!
半導体IC〜LSIによるメモリーが席巻するまではフェライトビーズアレー〜磁性薄膜メッキ線編組メモリー、ときてパラメトロンだったはず。
('07/03/28)
直並列制御解説図は電流基準図が必要 <SR_Cont>
抵抗制御の概要解説でp140図3.35主電動機に加わる電圧と抵抗損失(b) 直並列組み換え(2組電動機)略図の縦軸が「入力電圧」軸で描いているが、これは電圧関係は示せるが抵抗損失は示せない。電流の重み付けをして考えれば結論は出るが直感的表示にはならないから、抵抗損失が半減することを示すには少なくとも縦軸が「入力電流」であるグラフを併記する必要があるだろう。(下図右図必要)
('07/04/03)
直流2モータ起動
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内容にふさわしい写真の質が欲しい。ピンぼけ(p310図4.188a,b)や一部欠ける写真は残念。 <Photo>
- 「京王新宿駅#3番線の15地上子過走防止装置」写真(図8.123)には地上子が12個しか写っていない。取材なら三脚を置いて撮れるのだからこだわった丁寧な写真を求めたい。28mm相当広角レンズ(デジタル18mm)なら全部入るが35mm(デジタル24mm)では掲載写真しか撮れなかったかもしれない。地上子が若干欠けても技術解説には影響しないがあくまでこだわりだ。
- 激しいピンぼけの原因はもしかすると原版をパンフレットなどの網掛け印刷物に求めて再度網掛け原版を作ったために双方の網掛けピッチが干渉して差周波数の解像度に落ちたのかも知れない。こうした画像を扱うことに慣れた編集者と印刷職人が作業してくれると解像度の落ちを最小限に留めてくれるのだが、この2枚はちと酷すぎ。カタログからのコピー印刷で解像度を落としたと思われるのがヤマハEC-02型バッテリーバイク写真(p867表11.40)。これを見てピンぼけ原因に思い当たった。これはどうやら印刷版下職人の腕を引き出す編集者側の問題で撮影者の腕ではないかもしれない。雑多なソースを扱う報道関係印刷で鍛えられていると避けられたように思う。
('07/04/01)
ここまでは一気読みでメモした内容だが、以降はかなり読み込まないと書けない中味の様だから、しばし休憩とします。疑問としてほじった内容のほとんどが記載されており、物好きヲタとしても損のない買い物だった。国鉄型ATCの解説に不足があったのと、ATS-Pの地上子位置決定の考え方とかは記載があっても良かったカモ知れない。
('07/03/31)
「補極」の働きに勘違い
直流電動機の整流改善の機構としては「補極」と「補償巻線」があるが、その動作は微妙に異なり、「補極」がブラシにより短絡される電機子コイルの起電力を、逆方向励磁で打ち消して短絡電流ゼロを目指す、主極と主極の間に置かれる直巻き磁極であるのに対し、「補償巻線」は、電機子電流が作る磁界により中性点がずれて整流が悪化するのを電機子電流とは逆方向の励磁で打ち消す巻線で、電機子電流による様々の影響一般を「電機子反作用」と呼ぶ。これをハンドブックp227C2L1では「電機子反作用を抑えるための補極コイルと補極鉄心」と混同している。同ページ図4.16切開写真では補償巻線が示され図4.17固定子写真では補極が良く見えているから、解説文で「補償巻線」の説明のつもりで飛ばして「補極」としてしまったうっかりエラーの可能性が強い。
('09/03/31)
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Last Update=2009/03/31
(07/04/10,/03/31, /26)
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