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主目次

太陽観測用機材の製作


金環日食 (時刻誤差−2分:修正済み) LV=21.2
2012/05/21 07:36:53 T=1/100 F=154 f=1000mm ISO-400

金星日面通過:金星は4時方向の黒点(明度補正済)  LV=12+18=30
'12/06/06 12:57:50 T=1/4000 ISO-100 F=500(D=2φf=1000mm)

下弦の月 月面撮影試験 '12/07/11 01:32:27 T=1/100 ISO-3200(5EV) F=21.9
∴LV=6.6+8.9=15.5(ASA100換算10.5LV)
(観測写真集はそれぞれ上の3葉の写真にリンクしている)

 5月21日朝に「金環日食」、6月4日夕には部分月食、6月6日午前を中心に「金星日面通過」と、肉眼で見える天文イベントが重なって、日食眼鏡が足らなくなったことから、太陽観測用に投影望遠鏡と望遠レンズを作成し、厚い曇天下に運良く撮影に成功。製作内容につき以下に整理する。
p52101p52105
簡易日食望遠鏡とその像:f=1000mm、F=143(=1000/7.0)
p52106
太陽撮影用望遠レンズ:f=1000mm、F=154〜後日追加F=512(=1000/6.5〜1000/2)
p52108 p52107
 排水用塩化ビニールパイプ&キャップに光穴を開け、レンズを貼り付ける。
カメラの接続はW1/4ネジ止めで、境界部を黒スポンジで埋めている。

[INDEX]  <Index>


観測機材基本情報   <s1>


[焦点距離測定作業]     <s2>
 入手できるレンズの誤差・収差など実特性が判らないので、先ずは焦点距離を実測する。

凸レンズでの像

凸レンズで実像を結んでいる場合

L:光源ースクリーン間距離、

 La:光源ーレンズ間距離、

 Lb:レンズースクリーン間距離、

f:焦点距離 とするとき

 L=La+Lb、  1/f=(1/La)+(1/Lb)  より

 f=(La×Lb)/( La+Lb)  となる。

同一焦点距離の凸レンズを2枚重にすると、焦点距離は1/2倍になるから、2枚重ねで測定した場合は上式×2。
(∵凸レンズが実像を結ぶ最短距離が焦点距離の4倍∴焦点距離1mのレンズの測定に光源−スクリーン間距離が4m必要。See→s12最小長=4f計算)

焦点距離測定全景

被測定レンズとフィラメント電球

光源とスケール始点

電球フィラメントの実像

レンズ焦点位置

[焦点距離実測値] +1度、老眼鏡(遠視眼鏡)   <s3>

 La=1470、 Lb=760、
∴ fs=2(La×Lb)/( La+Lb)=2×147×76/(147+76)=100.20[cm] (=0.9980度:意外な高精度!)
[老眼鏡の焦点距離測定]
+1度には5m以上必要

100円均一店の老眼鏡

電球フィラメント像
(コイルが少し見えている。
画面下の黒円板は1円玉)

焦点距離測定配置
白線は5.5mコンベックス
(スクリーンはエアコン整風板:#279)

焦点距離実測定(夜間)。右から、
光源、レンズ、フィラメント像
 レンズは100円ショップで売っている老眼鏡から外して利用。焦点距離f=1/度数[m]なので、1度〜1.5度、2度が利用範囲。
 像に若干の球面収差が見られ、開口径は大きくは採れない模様。
 光源−スクリーン間の距離は、計測する凸レンズの焦点距離の4倍以上必要で、以下に6個の遠視1度凸レンズの計測結果を示すが、この測定では5.5mで、像を結ぶ位置が2個所生じるので、それぞれ計測して焦点距離を算出する。5%余の誤差がみられる。極端な不一致は計測エラー、読み取りエラーとして再実験する。表の例「1R」では「1365mm」と読み取るべき処を「1065mm」と誤読・誤記した模様。
焦点距離計測
a:スクリーン側結像位置、 b':光源側結像位置、L:光源−スクリーン間距離、f:焦点距離 とするとき、
f=a{1−(a/L)}=b'{1−(b'/L)}


[ 太陽・月の視直径 ]   <s4>


[撮像画面寸法] <s15>

種別寸法[mm] 焦点距離[mm]別
像直径比[%]
備 考
高さ 1000mm
=1度
667mm
=1.5度
500mm
=2度
APS-C2416 58.338.829.1デジタル1眼、 35mm値/1.5
35mm3524 38.825.919.435mmカメラ
6×66060 15.510.37.866版
 太陽や月の視直径は概ね0.5度余とされている。理科年表に依れば、視半径0°15’59.64”〜0°16’01.18”(2012年版天文部p78&暦部p1L−4行)なので、視直径換算で0.5340°となる。
 これは撮像素子(フィルム、MOS、CCD感光素子等)表面の像直径Φsunとしては、
   Φsun=F・θ となるから、1000mm焦点では、
   Di(F=1000)=1000×(0.5340×π/180)
          =9.3200[mm]
 すなわち、太陽像直径は35mmカメラのフィルム高24mmに対して38.8%、デジタル1眼カメラの撮像素子高16mmに対しては58.25%となり、構図的にほぼ画面いっぱいとなる。
 (デジタル1眼レフカメラ用として焦点1000mm=遠視1度眼鏡レンズを採用する。これは35mmカメラ換算で1,500mm望遠レンズに相当する写角である)
 焦点距離1mのレンズは、百円ショップの+1度遠視鏡(2玉\105.)のほか、眼鏡屋で未カットの+1度球面レンズ片玉を買うと約70Φで\2,100.、写真機用の接写レンズでは55ΦのCU−1が焦点距離1m(+1度)で、で\1,350.〜\2,000.程度〜62Φが\4,950.(CU−2=2度、焦点距離50cm。CU−3=3度、33.3cm)の模様。どちらも球面収差がかなり大きく、撮影には絞らないと使えない。太陽光の集光による発火事故回避のために絞りと離さない注意が必要。55Φレンズで焦点距離100mmでは実像直径が0.932mmだから、(55/0.932)2=3,483倍で直ちに発火!焦点距離1,000.mmでは集光は穏やかになるとはいえ、70Φレンズの実像が9.32Φに集光されては実に56倍(=(70/9.32)2)で油断できない。
太陽撮影
F=500(2φ1000mm),T=1/4000,ISO-100
LV=18+12+0=30  2012/05/27 13:34
p52103 ↑日食を覆う厚い雲    
p52703
投影型太陽望遠鏡写像↑

太陽面照度試算   <s5>

 夏の太陽直射下の照度が100,000[Lux]〜200,000[Lux]として、これを絞りとシャッターにより減光して、感度ASA100(=ISO-100)で撮影する場合に適する2.5[Lux・秒]に減光する場合、そのLV値は、
 LV=log2(100,000/2.5)=log240000
   =log1040000/log102
   ≒(4+2×0.30103)×3.3219
   ≒15.3
 となるが、これは太陽に照らされた景色のLV値であり、太陽そのものの撮影データではない様だ。現実の撮影データは夏季晴天日中の順光でのLV値が13〜14であるから、「LV算出値−1」とは心持ち大きめ。

 「太陽面を直接撮影するデータ」を得る考え方としては?地表面照度を基準にして、光源を試算し、見掛けの太陽面照度=輝度の算出が考えられ試算する。が、許容誤差範囲の実用的な値を得られるだろうか?

   E=I/r2 だから、光度I=E・r2
一方、光源の見かけの直径:D=r・δ
  見かけの面積=(π/4)D2=(π/4)・(r・δ)2
 ∴輝度P=I/S=E・r2/{(π/4)・(r・δ)2}
     =(4/π)E/δ2
      ・・・・・(光源距離rに無関係になる)
輝度を照度に換算する。被写界(体)の標準的反射率を18%として定義しているから、輝度P[lm/m2]の見掛けの照度EpはP/0.18ということになる。
   Ep=P/0.18=(4/π)E/δ2/0.18 ≒7.074E/δ2

[実例A] 太陽表面の見かけの照度 <s6>

 夏季日中快晴時の照度Eを 200,000.[Lux]:
視直径角δ=0.53度=0.53×(π/180)[rad]として、太陽面輝度は、
   P=(4/π)・200,000/{0.53×(π/180)}2
    =2,976,004,886.[cd/m2] ・・・・・・(P[cd/m2]=0.18E[Lux≡lm/m2])
   LV=log2(E/2.5/0.18)=3.322×log10(2.976/2.5/0.18×109)
    =3.322×( log106.613+9)
    ≒32.6 [LV] と推定される。(太陽面=輝点を平均的照度と仮定)

 ISO-100感度で、T=1/4000(12LV)、F=1000(1000mm、20LV)専用レンズ、計32LV 程度、あるいは
 ISO-100感度で、ND100,000フィルター(16.6LV)を装着し、T=1/64(6LV)、F=32(1000mm、10LV)望遠レンズ、計32.6LV 程度で太陽面の黒点などが撮れるはず。(実験では30LVで太陽面が白飛びしている。雲で減光されたもののみ適正露出'12/05/21)


[開口径とF数(絞り値)]   <s9>

開口径
[mm]
F数(焦点距離別[mm]) 備 考
1000mm
=1度
667mm
=1.5度
500mm
=2度
0.71414=21LV943701 (ピンホールカメラ)
1.01000=20LV667500
1.4714=19LV476357
2.0500=18LV333250
3(2.8)333=17LV222167
4250=16LV 167=15LV125=14LV (金環日食撮影時に採用)
6(5.6)167=15LV 111=14LV91=13LV
8125=14LV8363
1191=13LV6145
1663=12LV4231
2245=11LV3123
3231.3=10LV20.815.6 (未カットレンズが必要)
4422.7=9LV15.211.4
6415.6=8LV10.47.8

[LV補正値]   <s10>

+LV値 特性値 備 考
露光時間逆数
[1/秒S]
Film感度
ISO
−24”25
−12”50
0100 相対基準値
12200
24400
38800
4151,600
5303,200
6606,400
712512,800
825025,600
950051,200
101000102,400
112000
124000
138000

 撮影LV値=絞りLV値+シャッターLV値

 薄曇り下の実測でLV=19〜26.5、金環食時はT100-LV6.6とF154-LV14.5で合計21LVで感度ISO-400にて撮影している。
通常の太陽表面撮影では32.5LV前後が基準になるはず(本文試算参照)

[実例B] 満月表面の見かけの照度 <s7>

 快晴時の南中満月照度Eを 0.2 [Lux]:
視直径角δ=0.53度=0.53×(π/180)[rad]として、満月面輝度は、
   P=(4/π)・0.2/{0.53×(π/180)}2
    =2,976.[cd/m2] ・・・・(P[cd/m2]=0.18E[Lux≡lm/m2])
   LV=log2(E/2.5/0.18)=3.322×log10(2.976/2.5/0.18×103)
    =3.322×( log106.613+3)
    ≒12.7 [LV] と推定される。(月面=輝点を平均的照度と仮定)

 ISO-800(3LV)で、T=1/500(9LV)、F=8-11(6.5LV) 程度の12.5EV(15.5LV)、あるいは
 ISO-3200(5LV)で、T=1/64(6LV)、F=45.5(1000mm22φ、11LV) 程度の12EV(17LV)で月面の起伏などが撮れるはず。但し、月周辺の空の明るさ=空気の散乱光は捉えられず漆黒。

 なお、簡単計算としては、太陽:満月の地上照度比:200,000.Lux/0.2Lux=106に着目してLV値減を算出するのが簡単。すなわち
 ΔLV=log2106=6/log102=6×3.322=19.932≒20EVだから、先の32.6LVから20LVを減じて、推定適正露出12.6LV≒12.5EV、ISO-800(3EV)使用で15.5LV と相対計算で算出して良い。満月表面照度も地上での晴天日中の適正露出13LVと同程度という値だから、試算値として妥当なようである。

実際の太陽面直接撮影データ   <s8>

 絞:2 [mm]、焦点距離:1000 [mm]→F=500、シャッター:T=1/4000、フィルム感度:ISO=100 をLV換算すると、
LV=log2{5002×4000×(100/100)}=18+12+0=30LV。太陽面が露出過剰で白飛びしている。
算出値32.6LVに対して、実撮影値が30LVというのは、輝点を+2.6EVで撮影したと考えると、算出の考え方としては概ね正しいようだ。太陽表面の黒点などを撮影する積もりなら、算出値に接近させ露光量をもっと絞る必要がある。(最速1/4000秒、最低感度ISO-100、試作太陽撮影望遠レンズF=154〜500。せめて普及機に具備の1/500秒で撮影するには2mm×1/√8≒0.7mm、ピンホールカメラ同様の開口径が必要である )
 先の金環日食観測では絞り6.5Φ(F=154=14.5LVa)は、日食と曇天で減光されたことで撮影に成功したもので、デジカメの性能限界一杯(T=1/4000,ISO-100)で撮影したことになる。
 日食観測用としてND100,000.減光フィルターが天文雑誌に宣伝されていた。一般撮影用では夏季快晴屋外撮影用でもND8(3LV)までしか売られていないが、この減光率はLV換算では
   log2100,000=16.6 LVa
 シャッター減光がT=1/512秒 9 LVs、絞り減光がF=22∴LV=log2222=8.9 LVaで合計18LVとすれば、ISO-100感度ではND100000フィルターにより34.6LVまで減光でき、先出の太陽面の推定平均露光値32.6LVより2LV絞り込めることになる。
    (この項、2012/05/28補足追記)

[ 日食観測用 簡易投影望遠鏡の製作 ]  <s11>

 焦点距離長の棒の両端に投影スクリーンと凸レンズ付き遮光板を取り付けるだけで日食用簡易望遠鏡になり、日食フィルターより疲れないで観測できる。しかも安価!(下図&写真参照)
簡易太陽望遠鏡簡易望遠鏡簡易望遠鏡像
太陽投影望遠鏡、5・21日食投影像↑
拡大投射式簡易太陽望遠鏡拡大投射太陽像
     [ 拡大投射部増設 ]     See→拡大投影式簡易望遠鏡:s11の試作。      太陽投影像↑

[簡易望遠鏡部品表]   ※は副資材、若干  <s11t>

#No. 部品名・摘要 数量 単価@
[円]
価格
[円]
備 考
1凸レンズf=1000mm 1/210553100円均一1度老眼鏡
2角材(木材)1820×45×12t 14004001000mm長に切断
3白厚紙A4判 12020写真印字紙の背紙可
4アルミアングル25×15×60L 1三脚固定金具
5W1/4ナット 177三脚固定
6木ねじ3Φ×12L 2100100三脚固定、1袋
7ボンド 接着・固定用
8ホッチキス
9セロテープ レンズ固定用
10写真用三脚 観測用、流用
11カッター・ハサミ 工具
12コンパス円カッター
13ドリル6.5Φドリル3.5Φ
14ホチキス
合  計 473
拡大投影アダプター部
15ルーペ15倍 or 6倍精密作業用 1105
490
105
490
f=18mm、収差大!
f=50mm
16角材(木材)1820×45×12t 1(余部)
17白厚紙A4判 2(写真プリント紙背紙)
18摺動コロ 2120240
19輪ゴム 若干
20ボンドなど副資材
合  計

三脚取付部
取付部補強
補強改造
収差
特高線が曲がって見える収差
(15倍ルーペ\105)
収差改良
接眼レンズを交換
「精密作業用6倍ルーペ\480」
凸レンズによる実像
(再掲載):凸レンズによる実像
F2×K
倍率L2=a+bab像径mm
F=1m
14.00002.00002.009.32
24.50001.50003.0018.64
35.33331.33334.0027.96
46.25001.25005.0037.28
57.20001.20006.0046.60
68.16671.16677.0055.92
79.14291.14298.0065.24
投影型太陽望遠鏡
コンパス・カッター
コンパス・カッター
 スポンジの切断には、養生テープ
など粘着力の小さいテープを貼って
そこに罫書きして加工すると楽
「鏡筒−カメラ接続スポンジ」
 投影スクリーンとレンズ保持遮光板は写真印字用紙の背当て厚紙を流用して、剛性強度を保たせるため縁辺部を10mmほどアングル状に折り曲げて2面で貼り付け、レンズ保持部はさらに面直角の板支承で補強している。
 レンズ開口径は取りあえず6.5mmΦとしたが、レンズの収差の許す限り大きく採りたい。(後日、収差をみながら開口径を広げ、22mmΦとして11倍明るくなった。

拡大投影型太陽望遠鏡の試作  <s12>


 対物レンズによる実像が焦点距離1000mmの場合に9.32mmφで、肉眼にはかなり小さめなので、接眼レンズで拡大投影して観察できる構造を検討・試作する。像の明るさ次第で制限されるが、4倍〜7倍くらいは欲しいところだ。
 対物レンズによる実像が、接眼レンズの実像、左図aとして、その投影倍率をM、
 M=b/a ・・・・・・・・・・・・・・・(1)
 L2=a+b ・・・・・・・・・・・・・(2)
 1/F2=1/a+1/b ・・・・・・・(3) の関係より、
(1)' b=aM →(3)
 1/F2=1/a+1/aM=(1/a)(1+1/M)
 a=F2(1+1/M) ・・・・・・・・・(4)
 b=aM=F2(M+1)
∴(2)に(4)a,bを代入
 L2a+b=F2(M+1/M+2) =F2{(M−2+1/M)+4}
  =F2{(√M−1/√M)2+4} ・・・(5)
 ここで、2乗項:(√M−1/√M)2≧0、従って最小値を生ずるのは、√M−1/√M=0、M=1であり、その値はL2 min=4F2:焦点距離の4倍である。

 M=1〜7 の場合のL2 (=a+b)は、「右表定数×焦点距離」参照。

 当初は接眼レンズと投影スクリーンを一体構造にして、本体とスライドさせる構造で試作したが、焦点調整がクリティカルに過ぎて使用不能。そこで、投影スクリーンを前後させて微調整を図ることとした。
 接眼レンズは百円均一店の15倍ルーペ(15=25/f+1、∴f=25/14cm=17.9mm)。
 球面収差が酷く、精密作業用に買い換えて6倍ルーペ(6=25/f+1、∴f=25/5cm=50mm)。

 対物レンズは百円均一の1度老眼鏡レンズを32mmφ穴に貼り付け、そこに22mmφ/16mmφ絞りを貼る。1レンズ型簡易望遠鏡のスクリーン中央に接眼レンズ採光の穴を開けて投影ガイド板とし、焦点距離分離れた直後に接眼レンズを置いて、ここの中心に第1画像を結ばせると、投影スクリーンに大きな太陽像が見られる。
 中央部で画像が見られるが、少し外れると大きな糸巻き歪みを生じている。それでも1レンズの簡易型よりかなり見易い画像。(See→s27.4写真)

重心計算(拡大投影式簡易望遠鏡)    <s13>

 取付中心は重心点だから移動が必要。45×12t角材で、主部が1,000mm、投影可動部が450mm、そのうち重複部が215mmとして、主部中央1,000/2=500位置を仮原点として(線密度で)重心計算すると
 モーメント:
   Σi(mi・ri) =1,000×0+(1,000/2−215+450/2)×450=229,500

 総重量
   Σi mi =1,000+450=1,450

∴重心座標:
  ∴ G=Σi(mi・ri)/ Σi mi =229,500/1,450≒158 [mm]

 主部先端からは658mm位置付近が重心点で、重量を無視した接眼レンズ関係とスクリーン分さらに後ろになる。(現物合わせでは672mmとなった。誤差14mm分が投影レンズ機構分)

 写真の三脚取付金具は、使用時の曲げモーメントを考えるとアングルを軸方向に捩っていて強度的に無理があり、直角方向に組み直す必要がある。(写真:「補強改造」に改めて木棒とアングル両方でモーメントを負担。W1/4ナットは木部内の穴に埋め込み)


太陽観測用 望遠レンズの製作 ]  <s14>

 太陽観測用望遠レンズの製作上、未知で確認実験が必要な定数は、絞り値F数→開口径Φ、レンズ交換式カメラのレンズ・マウント面−撮像素子面(フィルム面)距離、カメラ取付穴位置と光軸位置、マウント径に合うパイプ太さであるが、手持ちのコニカ・ミノルタα-sweet digitalに対してほぼ現物合わせで以下の通り採寸した。
項   目寸法
[mm]
備  考 
カメラ取付面−光軸距離3774Φ Max パイプ外径
マウント面−取付ネジ穴中心間距離35カメラ底面長
取付ネジ穴中心−取付面末端距離25
マウント部外径63(パイプ−カメラ間にパッキン要)
マウント部内径50 50Φ Min パイプ内径
56Φ Min パイプ外径
マウント面−撮像素子面間距離50
対物レンズ焦点距離1,000(実測値:<s3章>
塩ビ・パイプ1,000×外75Φ内70Φ(実値:<s18章>

[太陽撮影1000mm望遠レンズ外形略図]  <s16>

Telescope3

[絞り円板外形図]  <s17>

絞り円板
(未完成。簡易絞りで代用し観測)

塩化ビニール・パイプ
長さと内面の光吸収材  <s18>


黒の波紙: 波と直角方向に軽くローラーを掛けて鏡筒内径のカーブに合わせる。現物は漆黒、見易く画像処理

内壁(外側)が明るい
=不要光吸収が少ない

内壁が暗い=不要光吸収
黒波紙を内壁全面に設置
 パイプ長さは、前々項で計測した焦点距離fを保証することが条件なので、
   焦点距離f=パイプ長L+マウント・フィルム間距離
         +パッキン実厚み+レンズ・パイプ間距離
 すなわち、
   パイプ長L=焦点距離f−マウント・フィルム間距離
         −パッキン実厚み−レンズ・パイプ間距離
      ∴L=1000−50−2−3=945 [mm] である。(切断加工)

 鏡筒内壁は、黒塗装をやめて、右写真の黒波板紙を内側に貼って反射光吸収を試みている。波と直角方向に曲げた方が反射が少ないので、紙をロールして曲げた。現物は写真より漆黒、見易いよう暗い側を画像処理て端形状を見せている。

望遠レンズとカメラボディーの固定  <s19>

Camera取付部 カメラ取付部鏡筒構造↑
試験撮影
太陽観測用1000mmレンズ完成試験↑
'12/05/21 02:28:54
F154 ISO-3200 1秒露出
写真は横断歩道の赤信号灯&木の葉

試験撮影

試験撮影
 外径75Φパイプだと、取付ネジ穴のあるカメラボディー底面と、パイプ底面をアルミ・アングルを介して同一平面として固定できるので、パイプ側に手組みできる位置に2箇所の止め穴、カメラ側はアングル面がカメラ底面密着で1箇所1/4インチ止めネジで固定することとした。
 三脚への取付は、アングルとビス・ナット×3組で可能だが、特殊な部品と治具を作って、接着剤の力も借りて組み立てることになり、作業が間に合わず保留のママ使用した。撮影時は望遠レンズを塀などの構造物に接触させて手振れを防いで撮影する必要がある。

[太陽撮影用望遠レンズ部品表]   ※は副資材、若干  <s16t>

#No. 部品名・摘要 数量 単価@
[円]
価格
[円]
備 考
1凸レンズf=1000mm 1/210553100円均一1度老眼鏡
2塩化ビニールパイプ
75Φ×1000L×2.5t
1580580950mm長に切断
3同上用のエンドキャップ、
内径75Φ
1200200絞り穴を開ける
4アルミテープ 200光穴選択用
5アルミアングル
25×15×2t×180(1000)
2800800カメラ&パイプ間固定用
6アルミアングル
25×15×2t×−(余り)
1三脚取付固定用
7黒スポンジ板100×100×5t 1200200カメラ&パイプ密着用
8W1/4×20ボルト 625150 カメラ−パイプ
−三脚連結

ワッシャー類はM6用で可
9W1/4インチナット 71070
10W1/4インチ用ワッシャー 9545
11W1/4インチ用
スプリングワッシャー
6530
12塩ビ内径塗装用黒油性塗料 1580580 水性塗料は厳禁
∵塩ビには塗れない
13油性塗料用シンナー 1480480
14黒片波紙3.2mmピッチ
(段ボール紙@湯沢屋)
2190380(鏡筒内反射光吸収板
画材店で購入)
15写真用三脚 観測用、流用
16セロテープ レンズ固定用
17金鋸 工具
18円カッター
19電気ドリル
20ドリル0.7Φ、1.0Φ
1.4Φ、2.0Φ、2.8Φ
4.0Φ、5.6Φ、8.0Φ
21ドライバー・レンチ
22カッター・ハサミ
合 計 3,198
投影副鏡資材
23凸レンズ1000mm−α 1/210552焦点距離が短い方
24白厚紙A4版 レンズ取付,スクリーン
25大ラベル 投影スクリーン目盛用
合  計
バランスウエイト等
26業務用ハンダPb-Sn50:50 14,9804,980一袋10本
27L金具(ストロボ取付用) 11,8001,800
28アルミアングル30×20×2t×1000L 1500500(ラジオストア)
29W1/4ビス・ナット 340120+2座金・バネ座金
30アルミ板〜2t 若干
31クイックシュー 11,980(1,980)アダプタと1セット
32クイックシューアダプタ (980)(カメラ側)
33カメラ用ネジ(長) 1180180
バランスウエイト計 7,580
総費用 11,598+(1,980)
誤購入:水性塗料黒\580、M6ビスナット\240(∵カメラ取付W1/4のインチネジ)、計\820を誤購入し総計\4,018.を費消、さらにバランスウエイトを付加して総額¥11,598.+クイックシュー¥1,980だが、クイックシューは三脚付属の汎用写真用品として費用からは除外して考えてもよい。
日食撮影用望遠レンズ

取付位置決定(重心計算)  <G><s20>

 望遠レンズとカメラ本体の重心付近にマウント部を設置する。
重心計算定義は、
 重心距離GΣi(mi・Li)/Σi mi

 なので、パイプなど一様ものは中点が重心だから等価的に「重心点での集中荷重」と考えて重心位置を概算すると、仮座標として、パイプ中心に原点を置きカメラ方向を正モーメントとして、天体望遠鏡カメラシステムを構成する各部品の諸元は
総モーメントΣi(mi・Li)

  =
700gr×(950/2+35)+900gr×0
   −50gr×(950/2−40/2)
   +70gr×(950/2+60−300/2)
   =361,200.[gr・mm]
総重量Σi mi=700+900+50+70=1,720[gr]

∴重心距離GΣi(mi・Li)/Σi mi

      =
361,200/1,720=210[mm]

従って、カメラ側端からの重心位置は、950/2−210=265[mm] となる。
(三脚の取付ネジからネジ止めするので、受け側のナット部の強度をどう出すかが問題。2t厚のアルミアングルにW1/4ネジを切っても1m長の2kg近いものを止めるには強度不足なので、補強に一考を要す)

2眼レフ化と、軸回りのバランス  <2Ref> <s21>

 重心計算により水平位置でのバランスは取ったのだが、実観測では、夏の太陽高度が最大70度余にもなり、三脚の上下可動軸回りで重量モーメントが発生して観測調整の邪魔をする。これを打ち消すアームとバランスウエイトが必要だ。市販品では、三脚の補助部材として200mm長ほどのプレートがあるから、これを使えば仰角45°程度までは使えるが、夏至前後の仰角78°は苦しいし、今回の金星日面通過のように9時〜14時を追尾するには途中設定替えが必須になるので、天体望遠鏡(赤道儀)の様なバランスウエイトが望ましいが、市販の写真用品には無さそうだ。
計算表
バランスウエイト
バランスウエイト=
半田ウエイト+アルミアングル
+ストロボ取付L金具+2調整座金+ネジ
 実測では、三脚雲台取付面と支承軸距離65mm、アルミ取付金具高19mm、鏡筒直径75mmで、可動部等価質量が1.8kg余で、バランスウエイト長限界がエレベータ三脚のろくろっ首長以内の270mm程度だから、アーム長=65+19+75/2=121.5mm、∴モーメント=218.7 [kg・mm] 、∴バランスウエイト重量=218.7/270=0.81[kg]。材料密度はFe:7.874〜7.2、Cu:8.96、Pb:11.35、Pb-Sn50-50ハンダ:8.477、Al:2.6989(軽量で対象外)
 容積換算ではFe:112cm3、Cu:90cm3、Pb:71cm3、50-50ハンダ:95.6cm3・・・・・・4cm角で64cm3、5cm角で125cm3だから、円環の一部状の形態などで物理形状としては実現できそうだが、バランス・ウエイトの材料として、かっては廃棄活字や封印用鉛粒を熔かして鋳型に流し込んで作成していたが、今は入手困難で、ここが実際上のネックになりそうだ。

 「交換レンズへのストロボ取付用L金具」\1,800.三脚取付禁止、ストロボ座付レンズ専用という製品を発見。流用を決め、さらに、カメラをワンタッチで三脚に着脱する「クイックシュー」\1,980.を採用。アングルと併せ左の写真の様にバランスウエイトを構成した。(業務用Sn:Pb=50:50ハンダ1kg \4,980.)クイックシューとアングルの厚み分(〜37mm)重力モーメントが増したので再計算。アーム長=65+37+75/2=139.5mm、∴モーメント=251.1 [kg・mm] 、∴バランスウエイト重量=251.1/275=0.913[kg]となって、バランスウエイトを1本増やしてバランスさせた。ハンダ角棒はセロテープ止めでブロックとしてネジ止めした。セロテープ止めでも数年は保つのでリスクを冒して鋳造する必然性はない。(バランスウエイト費用:\7,400.+クイックシュー\1,980.=ハンダ\4,980.+L金具\1,800.+アルミアングル\500.+ビス・ナット・ワッシャー\120.+アルミ板。バランサーの材料費だけで3倍化!しかし高仰角撮影では必須で、大変扱いやすくなった。)

 三脚は着脱が不便で旅程に取り残されかねないため近年全く持ち歩かず、もっぱら免許証写真専用で自作天体望遠鏡の足に流用する状態(w)だったが、実寸で1mもある望遠レンズ付きカメラには必要になり、その三脚への取付が難しくて、ワンタッチ着脱は是非採用したく、一般撮影へ潰しも効くので採用。「三脚取付禁止」はL金具の強度制限と思ったのだが、メーカーはそれを遵守させるためにナットのネジ穴を浅くし、ネジのつまみ32φの締め付け面直径を16φと小さくして締め付け保持力を小さくして三脚取付には使えなくしていた。そこで2tで6.5φ穴と16φ穴のアルミ座金をそれぞれ1枚作って締め付けられるようにした。(工作時には怪我防止に必ずワーク(被加工物)を万力などに固定して作業すること!∵ワークが電動ドリル等に廻されて手に深い切り傷を負いやすい危険度の高い作業になり手持ち厳禁!

照準副鏡板形状   <sub_scop>

太陽撮影2眼レフ
2眼太陽観測望遠レンズ
太陽撮影2眼レフ
副鏡スクリーン投影画面
副鏡
スクリーンXY座標表示
副鏡スクリーンXY座標表示
(撮像面と較正して使う)
副鏡スクリーン
副鏡スクリーン

 加えて、鏡筒が急角度に上を向き過ぎてファインダーをのぞけない。対応策として「太陽撮影用2眼レフ」構造とする。具体的には、鏡筒脇にレンズと、中心表示をしたスクリーンを取り付けて、スクリーン上の太陽像で方向を決めることとする。この2眼レフ化で大変扱いやすくなった。
   See→[太陽撮影1000mm望遠レンズ外形略図](s16)

レンズ開口径の選択  <s22>

 太陽の見かけの輝度がつまびらかでない(See→<s6>試算値LV32.6)ので、径の異なる複数の穴を切り替えて、シャッター調整範囲に収まるものを探すことにする。太陽像の輝度が周辺より極端に高いので、マイナス露光一杯=−2LVでシャッター・オート(絞り優先で、リアルタイムのTTL光量のみで動作するカメラ)を設定して試験する。
【開口系とAv値】
焦点距離f=1024mm See→<s9>
開口径
D[mm]
F=
f/D
Av備考
1024201/1000s,ISO100
1.470419
251218
2.835217↑太陽撮影
425616
5.617615
812814
118813
166412↓月撮影
2244111/125s,ISO3200
323210
44229
64168
8811  7
102410(基準)
絞り板
絞り板とフード

 穴径は 1.0Φ、 1.4Φ、 2.0Φ、2.8Φ、 4.0Φ、5.6Φ、(6.5Φ←8.0Φ)、 として全部穴を空けて、動作試験する穴以外はアルミフォイル・テープで塞いでおく。これによる穴の切り替えで5.4LV減光可能である。
 日食直前の深夜の試験では、横断歩道信号現示が 6.5Φ=F148、ISO-3200、1秒露出で撮影できた。この場合の減光範囲は、ISO感度で100/3200=2−5:−5 LV、シャッター速度で1/4000=2−12:−12 LV 、総計で17 LV減光(=1/217=1/131,072)できるので、F(964mm/6.5mm)=14.4LVaと併せ26LVを調整可能と判断し、ぶっつけ本番の日食撮影を行った結果が冒頭の金環日食写真である。

 太陽観測用望遠レンズと簡易投影望遠鏡製作に\4,491.を費消。投影型簡易望遠鏡の材料費が\473.に対して、市販の日食フィルターは誠文堂新光社製が\480.の他、付録に日食眼鏡の付く本の値段は\800〜\1,600.余で、日食数日前には総て完売だった。

絞り切換  <s23>

 対物レンズの直前に絞り板を差し込む、See→絞り外形表&写真(右) =絞り板を差し替えて絞り調整する。
月撮影にはフードが有効なので、その根元の対物レンズに接する位置に絞り板を挿入して光量を調整する。
(太陽撮影ではまずフード無用∵太陽自体が最大輝度で他光源には影響されにくい)
 小径の絞り穴は厚手のキッチンフォイルを穴に貼って、そこにドリルで穴を開ける。∵紙に穴を開けたのでは毛羽立ちが強くて使えない。
    (2014/10/14追記)

円板回転式絞り切換  <s23b>

絞り穴配置表  絞り穴を円板の円周上に並べて回転させることで切り替えられるが、寸法上の制約を考えると太陽観測用と、月面観測用の2種類の絞り円板が必要となる。
 天体望遠レンズに必要な絞り値F数は、前出[開口径とF数(絞り値)]<s9>のとおり。
 隣の穴の光が入らないための絞り穴同士の最低間隔は、両側の穴の半径+遮光余裕距離Bを底辺として、円周半径Rを他の2辺とする2等辺三角形の頂角として、第2余弦定理を適用してcosθに換算。すなわち、
   a2+b2−2ab・cos θ=c2 を変形して、
   cos θ=(a2+b2−c2)/2abとなる。
   a=b=R、c=(ra+rb)+S ・・・・・・但しSは絞り穴外形同士の距離、だから
   cos θ={2・R2−(ra+rb+S)2}/(2・R2) =[1−{(ra+rb+S)/R}2/2] となる。
 これにより逆函数アークコサイン:acos(X/R)を求め、必要角度を算出すればいい。現在の表計算ソフトには添付されている。acos()函数がなくて、ATAN(Y/X)のみのシステムの場合は以下のように換算を行う。
   tan θ=sin θ/ cos θ
    三平方の定理(ピタゴラスの定理):
      1=(cos θ)2+(sin θ)2
   sin θ=sqrt{1−(cos θ)2}
  ∴tan θ=sqrt{1−(cos θ)2}/cos θ =sqrt{1−X2}/X
   θ=ATAN[sqrt{1−X2}/X]・・・・・・但しX=cos θ
 なぜか、一部の符号が逆になるのは参ったが、その絶対値は一致する。ACOS函数が添付されている方が安心だ。Windowsに添付の電卓を函数電卓モードに設定すれば、布数して[Inv] [cos]とキーをクリックすればACOS(アーク・コサイン)が求められる。画面に電卓ソフトのショートカットを置くと便利に使える。


 絞り穴の種類が多数あって、1枚の絞り円板に配置しては大きくなりすぎるので、分割を検討すると、太陽撮影用孔の0.7φを含むものと、月など、それ以上の直径の絞り孔の必要が予想されるものに分割して絞り円板の直径を抑える必要がある。
 さらにその切換には、円板交換方式と、小孔側円板の休止位置を定めて、そこに大孔側の最大孔を割当てて、大孔側を切り替えて使用。その最小孔を大孔円板側の休止位置として、この最小孔を基準に、 小孔円板に太陽観測絞りを割り当てる方式が考えられる。
 使い易くするため、両円板の定位置クリックに工夫が必要だ。

 以上により試算、作図した結果が下図と右表である。
 加工上の問題として、1φ以下の孔を空けるのが難しいが、これは先ず4φ〜6.5φの孔を開けてアルミテープを貼って塞ぎ、このアルミテープに改めて所定の孔を空けることで実現する。厚手のアルミ箔キッチンテープの利用で必要な強度は得られている様だ。
 太陽面と月面の同時観測はないので、絞り板を太陽撮影専用と、一般用(月面用)とに分けて目的により組み替える方が0.5φ、0.3φも採用できて現実的かも知れない。

カメラの動作モード設定  <s24>

 通常のカメラ動作では、
といった問題を生ずるのが普通だ。利用各機種の機能を事前によく調査しておく必要がある。
 コニカ・ミノルタα−Sweet Digital では、
 平均測光に近い値が求まるので、漆黒の背景を除いた太陽面照度に合わせた写真を撮るにはそこからさらに絞る必要がある。日食時は光る像の面積比がさらに小さくなって、今回も最大97%欠けるというので平均計測値からの決定が困難になるから、通常の太陽の撮影データを実験的に決めておいて適用する必要がある。(See→s8〜s10:試算32.6LV平均)
 α-Sweet Degitalでは絞り固定基準Aオートシャッターで動作するが、雲がないと太陽面は色調が飛んでしまう様だ。−2LV設定では無理の様だから、自動での撮影データを参考に、完全手動でS、ISO(ASA)感度、次項「F数」設定を加減して適切な減光を図ることで撮影可能となるだろう。

製作上の失敗など気付いたこと  <s25>

 2度に亘る太陽撮影の機会で、幾つかの不具合・弱点に気づいた。

Last UpDate=2012/06/17

参考書籍発見!  <s26>

 駅前の古本屋店先カートに藤井旭著「天体観測図鑑」河出書房新社1981年9月17日第1刷刊、第11刷1989年6月10日発行\1,200.というのが\200.で転がっていて、天体を目視観測するだけでなく、天体望遠鏡の選び方・使い方章、天体写真章、双眼鏡章、データ章などがあり、実践的な記事に埋められていて30年以上昔の古い本だが早速買ってきた。

 まず、太陽と月の撮影データはとみると、
月面撮影露出表  満月(p156表)をISO-100感度で撮影して1/500、F5.6の14.0LV(=9+5∵500≒29、5.62=25、)で、当記事s7での試算値12.7LVとは−1.3LV差、
 F5.6〜64にそれぞれ対応してのT:1/500〜1/4の組み合わせはすべてLV14である。
 なお、月面照度は反射なので光の入射角のcosで面照度が決まり、入射角の大きい三日月では大変暗くなる(満月の1/16、4LV減)のにたいし、太陽面照度では、各地点から全方向に一様発光なので、一部が隠れても発光面の輝度は変わらない。

 太陽(p162〜)をISO-32感度+D4(10,000倍)フィルターで撮影して1/1000合成F=10の31.6LV相当(=1.64+13.3+10+6.64∵100/32≒21.644、10,000≒213.3、1000≒210、F102=26.64)で、当記事s6での試算値32.6LVより+1LV差となっている。

[印画紙の選択]
#階調備考
5超硬調星空等
オリエンタル
4硬調

3中間調月、惑星
2軟調太陽等
1超軟調

天体写真のプリント
引きのばしの技法

↑印画紙の選択 印画紙は硬調(こうちょう)に表現されるものから軟調(なんちょう)のものまで5段階が用意されています。
 国産のものではふつう硬調4号,中間調(ちゅうかんちょう)3号,軟調2号の3種類で,オリエンタルからは超硬調の5号があります。

 もし,ネガ像が薄かったら硬調の4号で,太陽のように露出オーバー気味だったら2号にというふうに使い分けます。
 その点でふつう星座写真のようなものは超硬調の5号印画紙を使うと明暗が強調されます。
 反対に月や惑星などは3号くらいがよく,硬調のものを使うと粒子ばかりが目立つようなこともあります。

 印画紙の使い分けが最終段階での仕上がりを左右するので,使い分けに慣れるようにしてください。
    「天体観測図鑑」p172,藤井旭著,
    河出書房新社1981年9月17日刊'89年第11刷より
 −1.3LV〜+1.0LVというのは観測用推定値としてギリギリ許容誤差の範囲だが、公知の数値として、太陽光下での平均照度200,000.Luxと、満月光下での平均照度0.2 Luxを前提に、その光量差が20LV(=log2(200,000/0.2)=6/log102=19.93)だから、同書の記す31.6LV−14.0LV=17.6LV差というのとは2.4LV異なり、同書の記事に何等かのエラーや、特に明るく撮る習慣、感光の非線形特性など特別の事情が隠れている可能性が強い。太陽が明るく撮れすぎる。
 「天体写真のプリント/引きのばしの技法」(同書p172)で「・・・・・・ネガ像が薄かったら硬調の4号で,太陽のように露出オーバー気味だったら2号に・・・・・・星座写真のようなものは超硬調の5号印画紙を使うと明暗が強調されます。反対に月や惑星などは3号くらいが良く,・・・・・・」と述べていて、表の撮影データでは太陽が露出過剰気味であることを解説している。
 実際の太陽撮影像で白飛びを生じていることからみても、ダイナミックレンジ(フィルムで言うラティチュード)の狭い半導体撮像素子での太陽光適正露出としては、フィルム撮影時代のこの本の値より心もち少なめの露出の方が適するのだろう。
    See→太陽と満月の露出データ推定

 「(絞りすぎは像が悪化するのでいけません)。p162右下L−4」とあって、おそらくこれは光の回折現象による像の惚けを指していると思われ、当試作記事での2mmφ口径レンズというのが像ボケの原因だとの指摘であろうが、どこまで絞るとそのボケが目立つのかを具体的数値で示してもらえないと実用的ではない。

 「赤道儀」の解説(p102〜)と調整法が2ページ述べられていて、それは当サイト日記#291と同趣旨であり、内容OK!を確認。
 望遠鏡のメンテナンスとして光軸調整法(p100〜)と、清掃を述べていて、本来この内容は「望遠鏡の取扱説明書」として同梱・添付されているべきもの。徒弟的なプロばかりが扱うのではない一般向け製品とみれば、それは当然のことだろう。「ホームページに公開」というのでは必要なことも読まないからアリバイ工作にしかならない。

 なお、この本に述べられている天体イヴェントの日時は、2000年以降は実際と合わず、2012年の金環食、金星の太陽面通過などは記載されていない。月食一覧表(p185)は2010/1/1まで記載、日食一覧表(p184)が最新の理科年表2012年版(p83)とはまるきり違っていて、このミスは大きく、おそらくこの誤りが問題になる前の20年前頃に絶版なのだろう。

Last UpDate=2012/06/26

工作のヒント!    数少なくなった自作派のみなさんへ<s27>

罫書き作業 <s27.1>

 プラスティックやアルミ板など柔らかい素材へのケガキ(罫書き)作業は、高精度が必要なければ、ケガキ面に白い養生テープを貼って、ここに極細のマジックインクで書き込んで、加工終了後に剥がす方が簡単。この記事の望遠レンズだけでなく、拡声器のコントロールアンプの塗装済みアルミパネルなどもこの方法で塗装面を保護して加工した。
 塩化ビニール素材など柔らかい材質のケガキ線を仕上げ時に消すのは結構手が掛かり、消したところだけ艶なしになって面倒なもの。
大穴開け加工
ドリル列で切断、養生テープを貼ってケガキ、
2弦の垂直2等分線交点で心出し
穴開け工具
テーパーリーマーとシャーシーパンチ
穴開け工具
位置決め穴を空けてから16φ

心出し(求中心) <s27.2>

 円形部品の中心点を求める作業を「心出し」と言うが、これは2本の弦を引いて、それぞれの垂直2等分線を描くとその交点が円の中心になるはず。山勘で直径を描き、その中点を中心とするよりも精度は上げやすくなる。

大穴開け <s27.3>

 DIYクラスの電気ドリルのチャックは最大6Φ〜6.5Φまでしか噛めないので、それを超える大きさの穴を開けるには

小穴開け <s27.4>

糸巻歪収差/CASIO
眼鏡用+1度レンズ
糸巻き歪み収差
球面収差点検にレンズを介して網入りガラス像
製作会社
鯖江市神中町1丁目601サンエ−光学kk販売中国製


←目視では糸巻き歪みが著しいのだが、写真ではあまり目立たない。
 0.3Φ〜0.5Φ径のドリル穴を開けるのは錐が折れやすくて大変。ハンドドリルでは無理で、電気ドリルも大きすぎて辛く、時計用ドライバー様の「ピンバイス」を用いる。暫く超小型のハンドドリルを使っていたが、プラスティック製のギヤが経年劣化で裂けてしまい、もう売ってないのでアウト。その前は、昆虫採集用の注射針の針を抜いてそこにドリル錐をハンダ付けし、HO模型用モータの軸に電線被覆のビニールをかぶせて注射針のホルダーを挿して簡易電気ドリルとしていたが、最近はB型肝炎渦で交換式の注射針が入手できなくなり、採用できない。鉄道模型(HOゲージ)車両自作の伝統的手法でカワイモデル製L-3/L-5型モータが安価でトルクが強く持ちやすくてよく使ったが、もうダメ。代わる方法を考え出す必要がある。
 細い錐は、以前はDIYストアで2本セットで売っていたのが、今は同じ値段で1本で売っている。アマチュア相手にボリ過ぎではないかとおもう。(よく見たらナチ(新潟鉄工)製はまだ2本入りで売られていた!)

 望遠レンズの絞り機構として考えると、0.3Φ〜0.7Φの穴に対し、板厚が1.5mm〜5mmでは、光の回折だけでなく穴壁反射が問題になりそうなので、0.3tなどの薄板を貼って、そこに小口径穴を開けることにした。実験的には台所廻り用のアルミテープで足りる。そこ:アルミテープへの穴開けならピンバイスで足りる。

LV=2底の対数計算 <s27.5>

 理工系の人達にとって指数函数・対数函数は常用で、中学校での計算尺、高校1年「数学T」での対数関数と、その使用に障害はないのだけれど、純粋文系の人達ではそんなもの忘却の彼方というのも有り得ることと思い至り、勘違いトラブルの苦い経験(日記#0280#5)もあって、減光量比の2底の対数であるLV値算出法を記す。

 独立変数をx、従属変数をyとするとき
 y=f(x)=Ax   は「xの指数関数」である。
これをyから見た場合(=xとyの関係を逆にすると)
 x=f(y)=Ay   は「yの指数関数」であるが、xについて見れば
 logA(x)=y・logA A=y   すなわち
 y=logA(x)   「xの対数関数」である。この時のAを対数の「底」という。
指数関数と対数関数は互いに逆函数である。x-yのグラフにするとy=xを対称軸とする線対称の関係になる。

 loga(X)=logb(X)/logb(a)  (底変換a→b)

底はどんな実数でも選べるが、10底のlog10XをXの常用対数
自然対数の底(電気工学ではε:2.71828・・・・・・・・)を底とするloge(X) をXの自然対数
半減期計算のようにを底とすれば、log2(X) をXの2底の対数
と呼び、
底の対数乗がXとなる。
 e(ε)の定義はe=limt→0(1+t)1/t   である。

 底を省略した表記「log」は、通常の数学表記では10底の常用対数を表し、「ln」が自然対数だが、
Windows、Excel=VBAなどパソコン上では、「log」が自然対数を表すことが多い。

Windows添付の関数電卓は例外的に数学表記でlogが常用対数、lnが自然対数である。
  (左下)スタート→すべてのプログラム→アクセサリー→電卓をポイントし、右クリックしてショートカットをデスクトップなどのコピーしておくと利用しやすい。
  電卓ショートカットをクリックすると電卓が起動。その「表示」をクリックすると、普通電卓、関数電卓など切り替えメニューが表示されるが、対数・指数計算をしたいのだから「関数電卓」をクリック。当然10進モードを指定。以上で計算準備完了。

2底対数は底換算式を使う。
[例1].焦点距離f=1024mm、開口径D=16mmのレンズのLV:Avを求む。
Av=log2F2=log2(f/D)2だから、   Av=log2(1024/16)2=log2(64)2=log2(26)2=log212=12[LV]

[例2].焦点距離f=1024mm、開口径D=22mmのレンズのLV:Avを求む。
  Av=log2(1024/22)2 =log2(210)2−log2(22)2 =20−2・log1022/log102=20−8.92=11.1[LV]

[例3].焦点距離f=1024mmが固定長なら、開口径Dと計算を分けて
  Av=log2(1024/D)2 =20−2・log2D =20−2・log10D/log102  とする方が簡単。

 関数電卓のキー操作は、
    布数D、log、/、2、log、=、+/-、+、20、=   でLV値が表示される。
オマケの電卓とはいえ、機能は十分で「INV、tan」などの操作がチト厄介とか、3桁単位の「EE」表示がないとかの非工科系弱点は在っても、ペーストバッファーと遣り取りできるとかのPC上ソフトの優位な機能は備えていて、手許の電卓を操作するよりはスマートである。

間違え易い塩ビパイプ規格 <s28>

 カメラの寸法が、鏡筒を75Φパイプにすると取付部がツライチになって取付台が不要になることが判り、1m長の75Φ塩ビ(塩化ビニール)パイプを買いに行ってのだが、規格表示の「VU-CAP75」をパイプ外径寸法75Φと勘違いして、実測89ΦのCAPを買ってきてしまった。外径75Φの規格名は、VU-65、VU-CAP65のほうだ。コンベックスを持たずに買いに出かける方が不用意なのはたしかだが、アマチュア相手のDIY店では、具体的な寸法表示がほしいところ。商品ラベルを、小口径の塩ビパイプには「配水管」大口径には「排水管」と分けている気遣いよりも、実質的な内容表示の方が親切なのだが、。

?なぜ違う、目視と撮影   <s29>

 眼鏡用レンズ+1度65Φ\2,100.&クローズアップレンズCU-1(+1度、55Φ\2,800)と、100円均一店の+1度老眼鏡\105./2玉(有効42Φ)を比較して、焦点距離の精度では差が無く、目視の球面収差では100円均一の老眼鏡が優れていると感じて、糸巻き歪みを示す収差画像を撮影したのだが、カメラのレンズを通すと糸巻き歪みが感じられず、差が出ない!何故だろう?その前に、焦点距離外の物体の、レンズを通しての虚像はどの位置に得られるのか?(実像なら簡単に算出できるのだが、)

 なお、100円均一老眼鏡のレンズは、光学特性としては優秀だが、表面のコーティングが無い模様で、さらに各個人の瞳孔間隔に合わせた設定をしないので、寸法が合わない人は目の調整に無理をすることになり、長時間作業には適さないことに注意。重負荷で常用しないこと。

 僅か105円の老眼鏡用に、精度の良い部品を供給している、世界中の眼鏡の本場、福井県鯖江市の会社名を掲載して敬意を表しておく。(写真参照)
   サンエ−光学kk(中国製を販売)鯖江市神中町1丁目601。
 1964年東京オリンピックイヤーの日本の大発明、新幹線と、電卓というsharpのTV-CMがあったが、その年の高卒初任給は\1万で、電卓の定価は\55万だったから、高卒新人給料の55ヶ月分だったのが、高卒初任給14万5千円の時代に売価105円電卓では月20日稼働で7分18秒分の給料にまで下落した製品を扱うわが電機業界から見て同病相憐れむ切なさやりきれなさが滲む無茶苦茶な売価ではある。せめて瞳孔間隔と位置で調製して売るべき「医療用品」などとしての規制が必要なのだろう。生活価値比率で75,952倍{=(55万/1万)/(105/145,000)}というのは驚愕の数値ではある。かってビルの1〜2フロアを占めたコンピュータシステムよりも高性能、高機能のPCで当サイトのような個人的駄文を打っているという「驚愕の事実」もあるが、・・・・・・

追加:2012/07/01

組立ミスか?解像度低下  レンズ取り違えか?!  <s30>

 太陽の画像がボケ気味なのが気になって、小口径絞りでの回折現象と、過剰露出だけでは説明しきれないと思い、検証方法を考えていたのだが、実測が一番だ!と思い至り、絞りを外した開放44mmφで太陽画像の結像位置を調べることにした。その結果、焦点位置が1,000mmではなく963mmと37mm短いことが判り、どうも計測サンプル#1と#3を取り違えて組み上げてしまった様だ。下は鏡筒を37mm切り縮めた913mm(+カメラ50mm)として撮った写真である。2φ〜6φ/1,000mmなら焦点深度内となって若干の狂いは支障ないとの予想は、開口径44φ時には違っていたが、2φ時には正しいようだ。

 結論としては、太陽撮影には影響せず、月面撮影に若干影響。金星の太陽面通過は100年以上先だから確かめようがなく、水星の太陽面通過では撮影が大変難しそう。月面と部分日食か大黒点の撮影で様子をみよう。

焦点距離ミス分
 鏡筒切断分37mm長。レンズを#1←→#3取り違えてか、焦点距離分より鏡筒が長かった!
(See→s3)。2012/07/03
 画像のボケは絞りの回折現象より、
ピンぼけや、露出過剰が主だったか?!
地上テスト
180m先の信号機。(トリミング無し)T=1/320秒、F=21.9(f=964mm/44φ)、ISO-3200 ∴LV=8.32+8.9=17.2、(ASA-100換算15.2LV)
地上テスト
600m先の信号機。(トリミング無し)T=1/320秒、F=21.9(f=964mm/44φ)、ISO-3200 ∴LV=8.32+8.9=17.2、(ASA-100換算15.2LV)
太陽撮影テスト
太陽像。(トリミング無し)T=1/4000秒、F=482(f=964mm/2φ)、ND−/C4、ISO-80
∴LV=12+17.8+0+0.3=30.1 1160dot幅 2012/07/04 11:36:50
太陽撮影
鏡筒切断前比較対照像:
1240dot幅×(963/1000)=1194dot:3%大きい?
F=500(2φ1000mm),T=1/4000,ISO-100
LV=17.9+12+0=29.9  2012/05/27 13:34
太陽撮影テスト
 なに?この目玉は?(左端写真の部分拡大)。太陽表面とは無関係にランダムに出現しているから撮像系のトラブルか?

追加:2012/07/04

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