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そこそこ良くまとまっているコンビニ本
「鉄道車両メカニズム図鑑」
  内容のしっかりした市販本がソース\600.

 深夜にビールを買い増しに近くのコンビニ・ストアに出掛けて「鉄道車両メカニズム図鑑」\600.というのを発見、ざっとみに詳細をそこそこ正確に書いてあり、鉄道総研の「鉄道用語事典」でも改訂版で間違えてしまった「高圧タップ方式電気機関車」の少数派:正しい結線図をもちゃんと掲載してあって、読み下すには良い本と、ビールのつまみに衝動買いしてきたのであります。しかしながら下記Index中の数項目はちょっと表現が違い、不正確なんじゃないでしょうかねぇ。1項目、1点違いがあるだけで全面否定され絶版に追い込まれるような文系本(※a2)とは違い、理工系の本は「幾つかのエラー」で済んで、大きく価値は喪わないのですが、中には結構気になる項目もありました。意外!トリビアと修正点を下記Indexのとおり整理します。
    「鉄道車両メカニズム図鑑」川辺謙一著2012/05/29学研パブリッシング刊\600.

修正Index

 なお、最近の日記を辿ってみますと4月4日付け以降、まる3ヶ月間も書き込んでないのは初めてのことですが、実際は日記ではない「本文」記事やBBSをかなりの分量、書いていて、しかも太陽表面撮影関係は基本解析、設計、製作、実運用、改良、製作図面&写真付きでしたからお休みだったわけではありません。列挙すれば、「5/21金環日食観測」、「6/6金星太陽面通過観測」、「太陽拡大投影望遠鏡と超望遠レンズの解析と製作」、「84年の山陽電車誤出発衝突事故」、「写真教室参加」、「アナコン写真」などをアプロードしてゲストブックBBSにも書き込んでいますから、絶対量としては却って多いくらいです。太陽面・月面撮影の絶対露出データ算出などの課題は広く他分野にも潰しが効くでしょう。直の鉄道ネタではありませんが、本稿とともにそれぞれ是非ご一読を。この間の鉄道ネタは消化しきれずまだ幾つか抱え込んだままでして、なるべく夏休み前に整理します。


§1.ATS-Pは「ATS-Sの改良」か?  p30  <ss1>

変周式発振回路図  ATS-SxとATS-Pxに具体的動作上の共通点などないのだから「ATS-Sの改良」という表現には妥当性がないでしょう。物理層でみるとATS-Sxは地上子をLC共振回路として、その共振周波数(一部は周波数の組合せ)にコマンドを割当てる方式で、そのうち-Sは前方が停止信号であることのみ車上に伝送して無条件で警報するだけで、制動タイミングや進入限界を伝えられず、失念などから繰り返し事故の元になっています。
 それに対してATS-Pは地上から各種データを伝送。車上では伝送された停止点までの距離と平均勾配に、自車の減速特性と受信以降の走行距離を加えて地点毎の最大許容速度を車上で刻々算出し、必ず限界点内で止まれる制御をしています。
 全くの別構造・別方式であり「改良型」という表現は妥当ではありません。
   See→※変周式ATSとは、  ※ATS-Pとは

§2.BTセクションと、給電セクションを混同
   高圧電源全車引き通し可能の理由も誤解  p60右  <ss2>

BTセクション  交流電化区間の架線絶縁部:セクションには、「異相セクション(給電セクション)」と、帰線電流を線路から帰線に吸い上げるための「BTセクション」があり、新幹線では、異相セクションについては開業当初から切換セクションを設けて地上の断路器で供給電源を切換る方式を採用して、架線とパンタグラフの摩耗損傷を抑えていましたが、AT饋電方式に切り替えることで、残るBTセクションを廃止して、パンタグラフの並列運転を可能にしたとされていますが、実は、駅構内の渡り線でのセクションを無くさないと、高圧引き通し線で25kVの√2倍35kVの高電圧が短絡されてしまい並列運転できません。パンタグラフの並列運転で騒音と離線を減らしましたが、そのためには、AT饋電化だけではダメで、駅構内同一饋電化改造が必要でした。
 同書の記事にはセクションの種類、駅構内の同相饋電、どちらの説明もありません。
 給電セクションを無くせない理由は、3相送電線から単相の電力を得るのに際して、3相各相になるべく均等な負荷を負わせて、発送電設備利用率を下げないで利用するために、「スコットT結線変圧器」などにより相互に90度位相の異なる2種の単相交流に変換して、それを交互に利用するための区分点だからで、敢えて「異相セクション」と呼んでいます。M座T座2種の位相の単相電力を作る変電所からの給電点にはこの異相セクションが設置されて両方向へはお互い異なる位相の単相交流を給電しています。新幹線ではこの給電切替箇所を切換セクション構造として、地上で供給電源を切り替えています。新幹線で加速中に一瞬加速が止まる瞬間があるのは、切換セクションでの自動電源切換で0.3秒の停電が有るからです。TGVでは切換セクションはなく、運転士が目視でノッチオフして給電セクション部を惰性運転で超えます。
 なお、変電所同士の中間にも切換セクションが有りますが、給電位相としてはM座T座方向を交互に切り替えることで、変電所中間の給電セクションの両側は開業以来同相で給電されていて、近年、切換動作時の0.3秒停電を止めて両線を接続して、駆動トルクの中断をなくしましたので、切換セクションによる瞬時停電回数が半分になりました。
 パンタグラフの並列運転で集電状態が改善される理由は、離線タイミングが一致する瞬間が大幅減少することと、パンタグラフ間の距離を十分に取れて相互干渉による離線が減るからです。単独では離線率20%のパンタグラフ2基を並列運転すれば、合成の離線率は0.2×0.2=4%に減少するわけで、8台のパンタグラフが独立に大きな摺動音とスパーク音を出して走っていた0系時代に較べると、パンタグラフの数以上に騒音が減っていることになります。

§3.トリビア!481交直両用電車は北陸線デビュー!
   九州乗り入れ151山陽特急代替は次
   「30Hz」は誤植  p82左L13、L4  <ss3>

 当時の在来線151系こだま型特急電車が非常に好評で、東海道新幹線開通時1964/10には直流1500V専用の車両なのに、大阪圏から山陽道を下り交流20kV区間の門司から九州福岡県博多駅まで機関車で牽引して特急「つばめ」「はと」として乗り入れました。機関車牽引される交流区間では電源車が必要で、モハ420予定車を座席付きのまま一時流用しサヤ420電源車として間に挟んで運転していましたが、これを自力運転するためには瀬野−八本松登坂用にパワーアップした交直両用特急電車が必要で、新開発の481系交直両用特急電車が充当されましたから、それが北陸本線交流電化延長開業区間で先に運用されていたとは思いも拠りませんでした。481系の開発試験で西の箱根と言われる山陽線の難所、広島県瀬野−八本松間の標高差250m上り急勾配でのユニットカット発進試験も行われ、151系特急などに対する後補機推進運転、走行中切り離しといった実にマニアックな運転を解消する必要性が有りましたから、481系が北陸線金沢先交流電化で「雷鳥」等として若干先にデビューしていたとは!

 しかし交直流特急車の開発経過として、481系の次が、いきなり3電源車485系というのは省略しすぎで、50Hz用の483系が存在したことは触れた方が良いでしょう。後日、481、483は一括して485系として扱っているのは基本的に電動車の電源周波数の違いだけで両数も少ないからでしょう。60Hz交直流寝台特急電車581系は、その次の形式583系が直流と50/60Hz両用で、早くから発注仕様として考慮されたことが推認されますが、基本的に50Hz用トランスは60Hzで使えますので、周波数共通化には冷却ファンとか、妨害対策とかの周辺機器の配慮で済み、交直流電車開発当初に周波数毎に形式を分けていたのは発注側:国鉄の整理不足ではないでしょうか。

 「30Hz」交流電化p82は明らかな誤植。他の個所では正しく60Hzと書いてます。
 「メカニズム図鑑」を名乗って、例外・マニアックなアプト式や協調運転、電機牽引電車特急を記事から外す選択はありですが、それだと廃止から久しい蒸気機関車解説もかなり消えそうな気もします。

「鉄道車両メカニズム図鑑」
 オイルダンパーの働き
p93表右蘭記事

 バネは、車体の振動を低減するために使われてきたが、バネそのものの単振動(※1)は減衰するまでに時間が掛かり、かえって不愉快な揺れを発生させることがある。

 上図のようにバネと油圧ダンパーを併用すると、バネで発生する単振動(※1)を油圧ダンパーが小さくしてくれる(油圧ダンパーは高い周波数の揺れに対応できず(※2)、逆に振動を妨げる動きをするため)。
 このように、バネと油圧ダンパーを台車に併用することで、車体に不愉快な振動が伝わりにくくなる(※3)(※脚注:振動が小さくなる)。

・・・・・・ 油圧ダンパーはこの原理を利用して、(※2)バネでは対応できない周波数の振動(周期の長いゆっくりとした振動)を低減するために用いられている。


【減衰振動解】
2階の線形微分方程式の解
( アナログ・コンピュータ演算写真)

単振動
[写真0]単振動
減衰振動解1
[写真1]減衰振動解1
減衰振動解2
[写真2]減衰振動解2
減衰振動解3
[写真3]減衰振動解3
負性抵抗
[写真4]発散(負性抵抗)

§4.MRK(LCR)減衰振動の理解不足  p93  <ss4>

 オイルダンパーの働きの解説が微妙に変です。質量Mとバネ定数Kによる振動を、オイルダンパーRが瞬時の振動速度に函して制動・吸収して自由振動を抑える基本原理を著者氏はよく理解しないまま執筆している様に見え、監修者によると思われる脚注と内容が違います!後付に記載の「東北大学工学部卒、同大学院工学研究科修了、メーカー研究所勤務」という経歴からすると、記述内容を自分自身で良く詰めなかったのでしょう。百恵ちゃんなどのように実は著者名義貸しで、実際はゴーストライターが書いて居たりして(w。

 右カコミに転載の記事では「(p93表右蘭)上図のようにバネと油圧ダンパーを併用すると、バネで発生する単振動(※1)を油圧ダンパーが小さくしてくれる(油圧ダンパーは高い周波数の揺れに対応できず(※2)、逆に振動を妨げる動きをするため)。
 このように、バネと油圧ダンパーを台車に併用することで、車体に不愉快な振動が伝わりにくくなる(※3)」などとしていまして、車体質量とバネによる自由振動をオイルダンパーが抑制・吸収していることが良く理解されていない記述になっています。その結果、以下のような微妙に外した記述になります。
 ステップ入力に対する振動波形で示しますと、単振動、連続振動が右端カコミ[写真0]、以下、抵抗Rを増やすに従って[写真1]〜[写真3]と振動の減衰が速くなります。オイルダンパーをバネと並列に付加するというのは、この写真のように質量とバネによる固有振動を吸収させることに他なりません。写真はアナログ・コンピュータ(アナコン)の演算写真であり、机上の紙と鉛筆で臨界条件をチマチマ解かなくても定数設定のポテンショメータを廻すだけで実用上の最適定数値を求められることが判ります。最後の[写真4]は発散、負性抵抗による発振の立ち上がりです。現物を作らず状態を模擬して設計できるので「アナログ・シミュレータ」とも呼ばれます。
 1960年代後半は日本の自動車業界が振動解析器として、走行振動だけでなく、車体の振動・騒音解析ツールとしてアナログ・コンピュータを利用しており、日本製自動車の性能向上・品質向上に大いに役立っていました。たしかオーム社などが「アナログ・コンピュータ」という本を出していましたが、どれもとうに絶版になっているでしょう。
もっと昔の第2次世界大戦後半で行われたロンドン市街空爆のV2号ミサイルに積まれた慣性誘導装置はこのアナコンの応用だったそうです。アナコンがかなり古くからのこなれた技術だったことが判ります。

 2階の線形微分方程式でのステップ応答の過渡解=減衰振動解というのは高校数学でこそ扱っていませんが、私の学んだ電気工学科では、学部の第1年次での「一般力学」講義中の物理数学の例題として速度比例R特性を前提に「eλ t」(eは自然対数の底)を導入した解法がテキストに掲載されており、MRKの定数次第で「減衰振動」、「臨界制動」、「過制動」、と状態が変わり、臨界制動、過制動状態では応答が無周期になるとかの結論が導入されており、実用的には臨界制動状態よりも、許容範囲の振幅でオーバーシュートする設定の方が整定時間が短くなるとか、基本的な運動解析として採り上げられて居ましたし、第3年次の電気の専門科目でもLCR(コイル、コンデンサー、抵抗)による2階の線形微分方程式でのステップ応答の過渡解として同趣旨の授業がありました。
 加えて工業高校3年後半の授業で某大学助手兼任の先生が「大学へ進学しない人はこのまま終わってしまって勿体ないから」と、ラプラス変換による微分方程式の解法、伝達函数、帰還制御理論とその安定判別法(ボーデ線図=現、ボード線図?)などを一通りの演習付きで正規の授業時間に教えていまして、そこで振動的な解になる2階の微分方程式を教わりました。当面最優先すべき大学の受験勉強をほったらかして聞き入った授業でした。 全く独立に3度も詰め込まれれば忘れないというのもあるかもしれませんが、理工系数系にとって線形の振動解析は基本レベルであり、超高度の内容ではありません。
    See→
アナログ計算機アナコン

 監修者は質量とバネとによる振動現象について著者(あるいはゴーストライター)にきちんとレクチャーして項目全文を自然な内容に書き直しさせるべきでした。

§5.「交直流EF66」は誤植  p205右  <ss5>

 標題通り、旧型電気機関車としては最大出力の直流貨物用電気機関車としてEF66が開発され、後にブルートレインも牽引するようになりました。記事中では「直流電気機関車」とあり、タイトルでの誤植です。
抵抗制御車過速度特性
電動車の典型的加速特性
メカニズム図鑑の図
これはヒドイ!科学技術解説の図ではない!
(同書p209下図)
 私自身も校正漏れミスを何度か経験しましたが、本文の較正は目をサラのように見開いて必死にやるものですが、大書きした主タイトル部は見落としがちで、これをやってしまうと実にミットもないことになります。炭坑王の愚息愚孫首相は「みぞうゆう(未曾有)」「ふしゅう(踏襲)」「はんざつ(頻繁)」でミソを付けて大転落が始まったわけですし、誤読・誤植許容度の大きい理工系書とはいえ誤植は避けたいものです。おぼっちゃまに面と向かって間違いを指摘する人が誰も居なかったのでしょうねぇ。・・・・・と書いていたら鉄道事故調査報告書RA12-5(成田線JRF脱線転覆事故)にも計測グラフのタイトルで12ヶ所の誤字をやらかしてました!p24〜29×継時変化○経時変化。要旨部では「経年劣化」と書いてますから典型的なタイトル校正漏れ。大震災前日で国民の注目を集めなかった事故では集中力が落ちるのでしょうか?

§6.出力とトルクの混同生む記述 p208 <ss6>

 記事では「出力」(仕事率)と「トルク」(偶力)が混同して使われて、正確な理解を妨げ、誤解の元となっています。電気機関車に対する蒸気機関車の非力は低速での出力が小さいからではなく、元々非力でパワーが小さいことに加えて、釜焚きの腕次第で蒸気発生状況が大きく違って不安定なことにあります。電気機関車なら起動電流比例でトルクが得られてフルノッチまで加速でき、再粘着制御など、乗務員のウデに依存する部分が少ないということです。「起動時に最大出力が出せる」p208は不正確につき全文却下!

§7.実特性を無視
  語感から特性図を絵にしてる
p209 <ss7>

 前項の語感をそのまま絵にした根拠のない図を掲載していて、なんだこりゃあ〜!状態。酷すぎです。せめて、代表的な車種の速度−トルク特性を並べて掲載して欲しかった。たとえばモハ103系と、キハ28、初期サニーかカローラの特性図の併載でしょう。

§8.三相誘導電動機断面構造図
  1次固定子と2次回転子の表示が逆、は誤植  p233  <ss8>

 これも標題通りで、断面図のトレーサーが解説文を取り違えたのでしょうか?それとも著者自身が一時混乱したのでしょうか?

2012/07/06 20:55

にせ資料写真1枚で絶版!
森村誠一著「悪魔の飽食」   <a2>

 生体解剖、絶命人体実験を重ねて悪名を馳せた731部隊のルポ本として森村誠一氏が「悪魔の飽食」3部作を上梓しましたが、インタビューした旧731部隊員の一人が、731部隊の病原菌散布実験時の写真だとして提供した1枚の写真が、実は法定伝染病発生時の消毒作業の写真だったと判り、出版社はその1点で刊行済み全2巻を絶版にしました。あまりに注目された731部隊のレポ本を葬りたくて嵌めたのでしょうか。第3巻は出版社を換えて角川書店から出版となりました。 See→森村誠一:東京新聞「この道」:森村誠一(49)〜(51)
その絶版基準ですと妄想執筆の少なくない某川島御大などは何冊絶版にしなければいけないんでしょうかねぇ。


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