JR西事故前社長公判
安全対策費増を危惧
元室長が証言
2011/02/26 赤旗B版15面
2005年、乗客ら107人が死亡した兵庫県尼崎市のJR福知山線脱線事故で業務上過失致死傷罪に問われているJR西日本前社長、山崎正夫被告の第10回公判が25日、神戸地裁であり、証人尋問が行われました。
JR西関連会社社員の池上邦信氏(65)は、安全対策室長だった1997年5月に岡山新幹線運転所構内で運転士の居眠りで列車が車止めを突破した事故を受けた安全対策について証言しました。
それによると、山崎被告(当時鉄道本部長)、当時の井手正敬会長、南谷昌二郎社長(いずれも福知山線事故で業務上過失致死傷罪で強制起訴)が協議し、費用が増大しないよう運輸省(当時)と駆け引きせよと池上氏に指示していました。
同事故はATC(自動列車制御装置)の信号と車止めの距離が短過ぎたために起きたもので、類似の危険箇所5ヵ所にハード対策をとることが決まりました。しかし、3氏は池上氏に運輸省(当時)にそういわず態度を保留するよう指示しました。
池上氏は「(事故現場以外に)ここもやらんか、在来線も含めてやらんかといわれる恐れがあった。井手、南谷氏が危惧した」「山崎さんも同じ意見だった」と証言しました。
JR西鉄道本部運輸部運転士課長の林勝氏(52)は、2001年7月に当時の運輸部長から「ヒューマンエラー対策の基本はソフト対策(運転士の指導など)だがそれには限界がある。ハード(設備)対策を検討して枕を高くして眠れるようにしてくれ」と指示され、起こりうる事故とその防止のために必要な設備のリストを作成したと証言しました。
林氏は「曲線における速度超過とそれによる脱線事故が起こりうると考えたのでリストに加えた」「原因として運転士が運転不能に陥る場合や失念、居眠りなどを想定した」とのべました。
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意に沿わぬ署名「裁判に委ねた」
公判でJR元常務
2011年2月26日
朝日関西
JR宝塚線(福知山線)脱線事故で、業務上過失致死傷罪に問われたJR西日本前社長の山崎正夫被告(67)の第10回公判は、25日午後も神戸地裁で同社元常務の池上邦信氏(65)の証人尋問が続いた。池上氏は午前中の尋問で捜査段階の供述調書の内容を否定したが、意に沿わない調書に署名した理由については「裁判長の前で(信用性を)判断してもらえば良いと思った」と述べた。
池上氏は捜査段階で、1997年5月にJR岡山新幹線運転所で起きた新幹線脱線事故の対策を運輸省(当時)に報告する前日、山崎前社長から「(同省に対して)すぐに対策をやります、と言ってええかっこしてくるなよ」と言われたとする内容の供述をしたとされていた。
池上氏は証人尋問で「山崎前社長の指示で、同様の事故が起きる可能性のある5カ所を対象にした対策をとる方針を一度は決めた」と説明し、前社長が事故対策に反対したとする供述を否定した。この対策方針については、山崎前社長が当時の井手正敬(まさたか)会長と南谷(なんや)昌二郎社長(いずれも同罪で強制起訴)と話し合った結果、「在来線対策も求められる恐れがある」として運輸省にすぐに伝えないと決めたと説明した。(沢木香織、高野裕介)
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【続報】
2011/03/05赤旗B版15面第2トップ
JR西事故裁判
ATS 最優先すべきだった
安全部会長が証言
107人が犠牲となったJR福知山線脱線事故で業務上過失致死傷罪に問われているJR西日本前社長、山崎正夫被告の第11回公判(神戸地裁)が4日、ありました。
証人として国土交通省運輸安全委員会鉄道部会長の松本陽氏(62)が出廷。事故現場について「速度超過する危険性が高い例外的な曲線で、速度をチェックできるタイプのATS(自動列車停止装置)を最優先で設置するのが適当だった」と証言しました。
松本氏は
- (1).国交省令の解釈基準では、列車が安全かつ高速に運行できるために、カーブ半径はその路線全体の最高速度の80%で通過できるものにすべきだと定められ、福知山線では半径450bであるところ、事故現場カーブは半径304bと大幅に下回っていた
- (2).しかも、直前の直線区間の制限速度が路線最高の時速120`bに対し事故現場カーブは制限速度が時速70`bで制限速度差が時速50`bに上る「相当に例外的な曲線」である――と指摘。「速度超過する危険性が増え、特に注意が必要」であり、「ATSを最優先で設置するのが適当だった」とのべました。
さらに松本氏は、弁護人が「福知山線事故以前は、列車の運転は運転士の主体的な操作に委ねればよいというのが業界の常識ではなかったか」との質問に、「(ATSは)運転士が制限速度を超えてしまった場合にそれをバックアップするもので、運転士に委ねればよいというものではな」く、その考え方は事故以前から変わらないと指摘。「弁護人のヒューマンエラーに対する認識が違っている」とのべました。
注:松本陽氏はかって「運輸省安全公害研究所の研究員として信楽高原鉄道事故での信号システム調査・鑑定を行った方と思われる。事故発生直後に滋賀県警に応援派遣されて調査、解析をされているはず。by 管理人
See→松本陽鑑定の引用ミス
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