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JR西日本、4度目の責任論蒸し返し
自身の重過失を過小評価
信楽事故補償の大部分を県・市に押し付ける裁判提訴

日経ネット関西版  2008/06/15配信
http://www.nikkei.co.jp/kansai/news/news000469.html

JR西、信楽鉄道などを提訴
──事故の補償負担増を要求

 滋賀県信楽町(現甲賀市)で1991年、42人が死亡、600人以上が重軽傷を負った信楽高原鉄道事故の補償を巡り、JR西日本は14日までに、遺族らへの補償費をさらに負担すべきだとして、信楽高原鉄道(SKR)と出資者の県、甲賀市に約25億3000万円の支払いを求める訴訟を大阪地裁に起こした。

 JR西日本などによると、補償は終わっているが、負担割合を巡り、同社が「事故の責任の大半はSKR側にある」として総額の9割分の支払いに応じるよう求めるなど調整が難航していた。

 総額は補償金や人件費などを含め約55億7000万円。当面の措置として、JR西が5割強に相当する約30億9000万円、SKR側が残りの約24億8000万円を支払っており、JR西は差額の支払いを求めている。

 負担の割合を巡っては、4者が話し合いを重ねてきたが決着せず、大津簡裁での17回の調停も不調に終わっていた。

 右欄、日経ネット関西版に依れば、信楽高原鐵道惨事の補償金分担を巡りJR西日本がその負担割合を10%とする様、信楽高原鐵道とその出資者である滋賀県、甲賀市(信楽町)に請求する訴訟を大阪地裁に起こした。総額55.7億円をJR西30.9億円、信楽24.8億円となっているのを、JR西に対して信楽側の自治体に90%負担となる25.3億円を支払わせて、JR西負担を10%の5.6億にするという請求だ。

 しかしながら、JR西日本のこの試みは刑事・民事2種3回の裁判で退けられた法的責任ゼロ論の脱法的な延長蒸し返しに過ぎず、極端に過ぎて世論の支持は得られず、JR西自身の信用を貶めるものになるだろう。
 元々国鉄赤字信楽線の譲渡を承けた信楽高原鐵道には無い袖は振れない相談だから、訴訟の実質は地方自治体:滋賀県と旧信楽町(現甲賀市)に、自らの重大なエラーの責任までをも押しつけて住民の税金からむしり取ろうといういささか見苦しく図々しい裁判だ。
 JR西日本自身が利潤のみを追求して本来国民の財産である国鉄の儲かる部分だけを只同然で我がものとし、地域に必要な公営交通切り捨てた穴埋めとして、第3セクターを介して自治体が運行を引き受けたもので、入手した膨大な国鉄財産はそのままにJR西日本自身の重大なエラーの責任分まで自治体からむしり取るスタンスは住民感情からも許されない。どうしても「形式」を整えたいのなら信楽高原鉄道の全資産を差し押さえて再びJR信楽線として運行したらどうだ。信楽線のままであれば領域外制御にはならず操作者の亀山CTCセンターが信号固着異常を検知出来て、元々事故にならなかっただろう。

 JR西日本の主張の中心は、技術論で、信楽高原鐵道が信号故障時の代用閉塞の手順をきちんと踏まずに対向列車の抑止前に誤出発検知機能に頼って赤信号で出発させたことに総ての原因があり、JR西日本には賠償責任はない、とするものだ。
 しかしそれは刑事、民事地裁高裁の3つの裁判で否定されて、最高裁は憲法違反及び重大な判例違反以外は争えないから提訴を断念し、1事不再理原則から他に争う方法がないことから、その脱法的蒸し返しとして今回補償費用分担交渉の場で10%責任論(=JR西日本には責任がない)を持ち出して不調として4度目の責任論裁判に提訴しているものだ。

 しかもその請求金額構造を見ると、取り敢えず折半で補償費用負担してきたはずなのに、それとは別の「諸経費」を積んだ上で10%:90%に案分しているから、請求の実質は滋賀県に100%以上支払わせる請求になっている疑いがある。SKR側が折半で24.8億円払っていたとして、それなら総額49.6億円だが、4次訴訟でJR西がSKRと滋賀県に請求した25.3億円を足すと、50.1億円になって半々支払いの総額を超える。あれこれのダミー支出を載せることで90%分担に見せかけた100%以上請求である。こういうのを指して盗っ人猛々しいというのか!こういう会社が尼崎事故以降の「安全性基本計画」など本気で実施するとは到底思えない。(10/05/14追記)

抑止梃子か、方向優先梃子か?
'90/09/13打合せの合意内容


 JR西日本と信楽鉄道が信号関係についてJR西日本本社でH2.9.13に打ち合わせた内容について、微妙な相違を発見。
 この経過はJR西日本が信楽鉄道に無断で、信楽制御領域内の小野谷信号所上り出発信号に対する方向優先梃子を設置したのかどうかの重要な判断材料になるものだ。

 京都新聞Webページの記述のみが「信楽の抑止ボタン設置について打ち合わせでの合意はなかった」という内容で「亀山CTCセンターへの方向優先梃子設置を説明して了解があった」とするJR西日本の弁明に近い。
 しかし、他は同社出版センター刊の「検証信楽列車事故」鈴木哲法記者著p82〜84も含めて、網谷りょうぞう著「信楽高原鐵道事故」、遺族会・弁護団編著「信楽列車事故」p110下半(現代人文者刊)、SKR側信号設計会社部長の証言内容を掲載して、「信楽駅制御盤に抑止ボタン設置で合意した」と供述調書で述べている。

 これに対するJR側担当者運輸管理課主席の法廷証言は、京都新聞刊に併載されており「……SKR施設課長さんのほうは、そんなことされたら困るなというような発言がありましたので、………そんなんやったら、信楽さんのほうで勝手にしたらええわというような発言、売り言葉に買い言葉的な発言だったですけど、それをしたのは事実です」と、評価は別として言葉上の合意の存在は実質的に認めている。
 両者の証言を併せ読めば信楽駅制御盤への抑止ボタン設置の双方合意があったことは明らかで、以降その合意内容で製造が進んでいる。先出京都新聞信楽事故サイトの「打ち合わせの後日に提案」という記述がエラーなのだろう。打合せ後にその内容での正式図面を渡したこととの混同ではないか。普通、製造会社は図面化しないままには動かない。

 その後、JR西日本は亀山CTCセンターへの方向優先梃子設置強行を決め、JRから製造会社に「抑止ボタン撤去」の連絡が行われて、既に開けた穴を残してボタンが撤去されたことは争いがない。
 双方合意があったからこそJRから製造会社に撤去指示が飛んだもので制御盤製造完了後出荷直前に取り外されている。
 その連絡のときに「JR側からの方向優先梃子設置を伝えた」かどうかで主張・証言としては水掛け論になっている。
 また、方向優先梃子を実際に操作したときに、専用連絡回線から信楽側に連絡していないことは双方の主張に争いがない。

 結局、'90/9/13打ち合わせで信楽駅の抑止ボタン設置の合意が成立して制御盤が製作され、その後のJRからの撤去指示で出荷直前に抑止ボタンが取り外されているから、「信楽駅の抑止ボタン設置の合意はなかった」とするJR西日本の主張は到底通らない。合意があったからこそ、それを前提にJR西日本自身から抑止ボタン撤去指示が出されている。方向優先梃子設置で合意していたら抑止ボタンは無用で設計当初から存在せず、製造会社に対して存在しない抑止ボタン撤去を指示するはずがないだろう。抑止ボタンを設置する方式、すなわち方向優先梃子不設置の合意が一旦はあったのだ。簡単な論理だ。

領域外制御禁止は絶対的重要原則

 これまでの判決で言及が見られない論点が、管理領域外制御のシステム的な危険性、不当性だ。
 民事訴訟弁護団の主張としては別会社としての指揮命令系統違反の観点から重大な違法性が指摘されているが、システム的な危険性は重大な実害だからこれを取り上げれば違法性評価が大きく上がる。

 当ページでは日記#0187でその指揮命令系統違反に加えて管理領域外制御禁止は絶対的重要原則と指摘した。それは技術論的にみて領域外制御をすればトラブルが発生しても操作者には直接伝わらず、原因究明対応が非常に難しくなって放置されやすいし、トラブルの起こった現場では理由が全く究明できず、パニックの引き金になり、信楽事故のような惨事を招きかねないからだ。現に、亀山CTCセンターの領域内であった貴生川駅出発信号関連の不具合は事故発生前に詳細に分かっており、改修要求と、当面の回避策がマニュアル化されて徹底していた訳である。この追加部を事故当夜から3回に亘るマニュアル改竄を行って隠したのは、信楽事故発生に至るJR西日本のエラーを明瞭に示すものだからである。
 人為ミスは必ず発生するもので、それを前提に異常を発見しやすい構成は義務付けられ、結果が操作者に返ってこない方式は認められるべきでない。

 何らかの理由で(ex.JR信楽線。全面委託等)亀山CTCが信楽駅も一体の管理領域として制御していたら同一制御盤面に信楽駅の信号が表示されその固着と方向優先梃子操作が一緒に見られて、その場で梃子を戻すなど応急の回避措置は取られ改修要求が強く出されており、「ドジな設計」という評価で済んでいた。JR西日本による2重に無断の方向優先梃子設置と操作が事故に直結したのだ。過失責任を問うのであればこの管理領域外無断設置・無断使用を逃すべきではないのだ。
 逆に、90/09/13打合せの合意通り、JR西日本が方向優先梃子設置案撤回を部内に徹底し、信楽駅から抑止ボタンを操作していれば、全くトラブルは発生していない。JR西が無断で強行した管理領域外制御の禁止は安全のために絶対的に重要な原則だった。

 小野谷信号所出発信号に対する方向優先梃子の無断設置と無断使用が裁判で問題になったが、領域外制御禁止原則はそれに卓越する基本原則で、誤って合意したとしても危険な設置原則違反には変わらない。'90/09/13打合せ内容を証言した信栄電業部長氏の調書が各書籍に引用されているが、同氏がJR西との打合せ会議で主張して通した骨子は領域外制御禁止原則であり、尋問者が敢えてその重要度評価を求めていたらJR西日本の方向優先梃子無断設置の重要性がもっと明確に説明され事実認定されていた可能性が強い。これは法律家である裁判所、弁護団、警察・検察の3者とも見落としてしまった設備技術的項目だ。

 滋賀県も旧信楽町の甲賀市も大任を果たした被害者側弁護団に裁判代理人を頼んで、JR西日本の横暴を食い止めて貰いたいものだ。同時に両側の代理人にはなれない規則だが、被害者との関係では裁判は終結しているから理屈の上では就任可能だ。まぁ、弱者救済指向で生き甲斐道楽裁判に情熱を燃やす先生方は尼崎事故被害者弁護団参加指向だろうが……民主的法律事務所維持の経済的側面もあるから被害者弁護とは違い、取りはぐれのない自治体の代理人も受ける可能性も少なくないとは思う。特別の事件を引き受けたくても、交通事故と相続の収入だけじゃ民主法律事務所維持は苦しいのだから。生き甲斐道楽指向とは言っても狂信おうむ教団の敵として殺害された横浜法律事務所の故坂本弁護士一家のような命がけの酷い犠牲もあって甘いものではない。

【 補足 】
  「方向優先梃子設計不良」の両側面!
   「貴生川駅の異常」と「信楽駅赤固着」は一体のもの   <both>

 事故後に滋賀県警が押収した4種類の操作マニュアルは、先ずは方向優先梃子関係の不具合を回避する取扱説明書として作成されたもので、JR西日本はその不具合が惨事に直結したことに直ちに気付いて事故当日中にマニュアルを改竄して証拠隠滅、改竄を重ねたことで4種類になったもの。

 記述内容は貴生川駅での不具合とその回避法に加え、信楽高原鉄道小野谷信号所上り出発信号に対する方向優先梃子操作が通常は無効で、有効になる特別のタイミングについて述べているだけで、信楽駅の状況は全く把握していない。そこは亀山CTCの支配領域外で操作結果が返らないからだ。

 貴生川駅での幾つかの不具合と、信楽駅上り出発信号の赤表示固着現象は同一機構の設計不良から生ずる不具合で、これが、亀山CTC領域内の貴生川駅については把握できて、詳細の回避マニュアルを作ったのだが、無断・無通告で設置・操作した領域外信楽高原鉄道内の不具合=赤信号固着については把握されず、誰も認知できず惨事に繋がるパニックの原因を作ったものである。
 (だからこそ領域外制御は絶対的タブーで、信号メーカー一部長氏の一言だけで一旦は撤回したもの。打合せでの合意を無視してこれを無断設置、無連絡使用したJR西の違法性は特段に大きいが、裁判ではこの重要点の主張・立証がなくて捨てられてしまった)

 加えて、方向優先梃子の正常な操作であれば、信楽発上り列車が小野谷信号場入口列車検知素子到着前までに操作すれば足りるものを、設計不良により対向の貴生川発下り列車が小野谷信号場入口列車検知素子到着前に方向優先梃子を引かないと有効にならない欠陥状態だったため、異常に早い時点で梃子を操作する必要を生じて、このため小野谷信号場での過走による正面衝突防止機構である反位片鎖錠を介して小野谷信号場下り出発のステータスが信楽駅に読み込まれてホールドされ、そのため信楽の上り出発信号が赤のままに固着されるに至ったが、信楽側ではそれらの外部介入の事情を全く知らないからパニックにいたって惨事になった。

 すなわち、JR西が最初の打合せ通り、他領域介入を行わず、直通回線で連絡して信楽駅から抑止梃子で自社ARCに介入して小野谷信号場上り出発を赤のままに留めるか、逆に信楽駅まで含めて亀山CTC支配下に置いて状況把握出来るようにしていれば、設置試験段階で異常を把握できて、その回避マニュアルが作られて事故になっていない。

 直接の事故原因は、信号故障として代用閉塞で運行するに際して、最も基本的な(不)在線確認前に列車を出発させたことで惨事に至ったのだが、運行現場をそういうパニックに支配させた根本原因は、JR西による他社領域無断制御:方向優先梃子無断設置、無連絡使用、欠陥方向優先梃子の使用であって、この法的責任は極めて大きい。
 それはJR西日本が事故当日中に操作マニュアルの改竄で証拠隠滅を図って、不自然・不合理な証言で組織的隠蔽を策したことからも裏付けられる。

( 信楽事故基本原因の論議をみていて、どうやら一般読者は「他領域制御厳禁」のシステムタブーの意味を良く掴めず、どちらでもあまり差し支えのない散文的理解に留まっているため、素人騙しの強弁が通る様に感じて、別の切り口からの説明を試みたが、意図的に注入され続ける謬論を抑えきれるだろうか。2012/09/22追記)
[参考リンク]
日記#0138:検証信楽列車事故」を読んで:京都新聞刊
日記#0170:方向優先梃子の影響に気付いたのは誰?
日記#0187:領域境界無視設計が根本原因では?信楽事故
赤信号で走った列車:信楽高原鐵道事故の真相:京都新聞
日記#0274:JR西3:7判決に請求放棄=5:5で決着 (決着)

[提訴についての滋賀県、甲賀市の見解]

http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2008062600161&genre=D1&area=S00

「補償負担割合、見直さず」
   信楽鉄道事故で県など

        Kyoto Shimbun 2008年6月26日(木)

 信楽高原鉄道(SKR)事故に関し、JR西日本がSKRと出資者の滋賀県、甲賀市にさらなる補償費用などの負担を求めて提訴した問題で、SKRなど3者は26日記者会見し、「JR西の事故責任は明らかで、負担割合を見直すつもりはない」と、全面的に争う姿勢を表明した。

 会見でSKRの北川啓一顧問らは、JR西が補償費用などの9割をSKR側が支払うべき、としていることについて、「刑事、民事裁判ともにJR西とSKR双方に責任があると指摘している。JR西の主張はほとんど事故責任を認めていないのと同じだ」とJR西を批判した。

 嘉田由紀子知事も同日、「被災者補償も(JR西とSKR側の)折半負担で終了しており、さらに負担することは県民の理解が得られない」とコメントした。

 JR西は、被災者遺族などに対する補償金など両者がほぼ折半して支払った計約55億円の負担割合を見直し、SKR側に25億円を支払うよう求め、13日に大阪地裁に提訴した。


番外解説: [個人vs共同vs合同:法律事務所とは]  <PS>

 弁護士がその業務を遂行するための事務所を「法律事務所」と呼ぶ。だから弁護士の在籍しない事務所は法律事務所と称してはならない。
 事務所には事務局員を置いて内部の単純事務だけではなく、諸申請、裁判記録・謄本などの取り寄せ、強制執行立ち会い、諸調査など様々な周辺作業をして弁護士をサポートするのだが、その事務局を複数の弁護士が共同で持つ形式を「共同法律事務所」、弁護士まで含めて共同体を作るのが「合同法律事務所」である。これらに対して弁護士一人で仕切るのを個人事務所と呼ぶ。
 大公害裁判とか、権力犯罪・弾圧事件とか、労働運動への攻撃、冤罪事件など、弁護の手間はひと桁以上多く掛かるが、安定した収入は期待できない課題の弁護を社会的・政治的必要性から引き受けることを目指す法律事務所の場合は、事務所全体の集団対応にして一般事件で事務所を維持する収入を得て、やりたい弁護を引き受ける。
 国鉄の横浜人活弾圧裁判を引き受け、おうむ教団の犠牲になった坂本弁護士の所属した横浜法律事務所とか、横田基地公害訴訟を引き受けた三多摩、八王子合同、武蔵野、町田などはこの合同法律事務所だ。
 合同方式だと、事務所全体で困難な事件を引き受け、担当者会議で裁判の基本方針を決めたら、細々の作業はまだ独り立ちの難しいヒヨコの弁護士にも任せて、稼ぎ事件も扱って運営できるから、運営方針次第ではあるが大規模事件を扱いやすいのだ。しかも主張・立証とも最も難しい案件でヒヨコ時代を鍛えられ実力派弁護士に育っていく。それに対し共同事務所や個人事務所では当人が日常食べる仕事と並行して取り組むしかないので引き受けが難しいのだ。満州引き上げ残留孤児の帰国就籍問題に取り組む法律事務所が共同・個人事務所なのは珍しい例だ(弁護士ご自身が紙一重で残留孤児になるところだった)し、山口ももえちゃんの夫君三浦友和氏扮する弁護士ドラマ「はみだし弁護士・巽志郎」がその辺の個人事務所事情を大変漫画チックに描いている。弁護士の普通の修業時代は「イソ弁(=居候弁護士)」といって先輩弁護士の事務所に置いて貰い手伝うことで仕事を覚え、顧客を掴んで独立していくものだそうだ。固定給はなし。
 横田基地公害裁判では、本質的解決はアジア侵略の拠点である米軍兵站基地撤去を展望した闘いが必要だから、新たな地域世論の盛り上がりを求めて第2次訴訟として6000人原告訴訟に取り組んだ。ところが短時日で金銭的成果を必要とする個人・共同事務所では、一般住民に闘いを拡げるよりも、確定した裁判では認められなかった将来補償分(=判決算定日以降分)を請求する裁判の方が手っ取り早く勝訴の名声も拡げられるから、未提訴住民は放置して従前の原告のみの裁判を提起するという易きに流れやすく、その結果、運動と世論の広がりを勝訴原告に留めてしまう。勝訴原告にすれば第1次確定判決後の騒音被害補償に絞った方が裁判としては楽だから、困難でも新たな原告を求めて闘い運動での基地撤去を目指し、中には個人で100万円を超す運動費用負担までして運動を支えた人たちや合同法律事務所とはかなり深刻な意見対立を生んで第1次訴訟団一部幹部原告らが6000人訴訟とは別裁判となってしまった。一次訴訟以降の損害賠償勝訴でもそこそこに撤去運動には資するし、第1次訴訟の弁護団がそれを引き受けていればまだ抵抗感は少ないのだが、長期大規模な運動で実現した勝訴の基盤だけを持ち去って別裁判とし、運動を大きく拡げる機会に水を差す結果となったことは否めないと思う。

2008/06/19 23:55
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