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信楽事故責任割合訴訟
JR西3:7判決に請求放棄=5:5で決着
安全基本計画真っ向否定の誤方針を自ら正す妥当な解決

信楽事故責任分担訴訟

信楽高原鉄道事故:JR西に責任3割
 設備の無断設置一因−−大阪地裁判決

 滋賀県甲賀市(旧信楽町)で91年5月、第三セクターの信楽高原鉄道(SKR)とJR西日本の列車が単線上で正面衝突し、42人が死亡した事故で、JR西がSKRと県、市に補償費用などとして約25億円の支払いを求めた訴訟の判決が27日、大阪地裁であった。田中敦裁判長は、SKRに7割の責任があると認定し、約11億円をJR西に支払うよう命じた。県と市への請求は棄却した。

 遺族らへの補償金はJR西とSKRが折半して支払ったが、責任割合の交渉が難航し、JR西が08年に提訴していた。

 田中裁判長は、赤信号のまま固定された状態だったのに、SKRが安全確保を怠ったまま列車を発車させた点を「最大の過失」と判断した。一方で、JR西が「赤」固定の原因になったとされた設備を、無断で設置したことを挙げて「混乱に陥る一因になった」と指摘。出発信号に従ったJR西の運転士について「責任を軽視できない」とした。

 JR西は「SKRに責任の9割がある」と主張していた。判決はSKRの負担分を約34億円と算定。すでに負担した約23億円との差額で約11億円の支払いを命じた。

 JR西は「確定判決で認定されなかった要素まで、当社の過失として負担割合の判断に加味されたのは意外。しかし、判決を受け入れることとしたい」とコメント。一方、SKRの代理人、児玉憲夫弁護士はJR西の過失など判決の認定内容について「私たちの主張を聞いてくれた」と話した。【苅田伸宏】
    毎日新聞 2011年4月28日 大阪朝刊

信楽高原鉄道事故:SKR側が補償費受け入れ
  控訴はせず

 滋賀県甲賀市(旧信楽町)で91年5月、42人が死亡した列車衝突事故を巡り、JR西日本が第三セクターの信楽高原鉄道(SKR)と県、市に補償費用など約25億円の支払いを求めた訴訟で、SKRに約11億円の支払いを命じた大阪地裁判決について、SKRは10日の臨時取締役会で判決を受け入れることを決めた。JR西も控訴しない方針を示している。これで判決が確定し、同事故を巡る訴訟が終結する。

 裁判では、被害者への補償金など約31億円を負担したJR西が「当社の責任は1割」と主張したが、地裁は責任割合をJR西3割、SKR7割と認定。県と市への請求は棄却した。【柴崎達矢】

 ◇JR西日本、11億円全額放棄

 一方、JR西日本は10日、判決でSKRにJR西への支払いを命じた約11億円を全額放棄することでSKRと合意したとの社長談話を発表した。「SKRの地域公共交通機関としての重要性をふまえて判断した」としている。
    毎日新聞 2011年5月10日 13時05分(最終更新 5月10日 13時45分)

信楽高原鉄道事故:訴訟終結 SKR存続へ道
   JR西「債権放棄」、英断歓迎 /滋賀

 91年5月に信楽高原鉄道(SKR)で起きた列車の正面衝突事故を巡り、JR西日本がSKRなどに補償費などの支払いを求めた訴訟で、約11億円の支払いを命じた大阪地裁判決の受け入れを表明したSKR。10日開いた臨時取締役会と株主総会後、会見した北川啓一顧問は「大局的な見地に立っていただいた」と、11億円の支払い免除を決めたJR西の判断を歓迎。中嶋武嗣・甲賀市長も「英断で、SKR存続への道がつながった」との談話を出した。【柴崎達矢】

 SKRによると、判決翌日の4月28日、JR西に話し合いを申し入れ、数回にわたり交渉した。SKR側は累積赤字が17億円に上る厳しい経営状況を説明。「支払い能力がない」と理解を求め、地域公共交通機関としての重要性も訴えたという。

 「加害者間の争い」が終わることで、事故を巡る訴訟は全て終結する。JR西日本の佐々木隆之社長は「ご遺族をはじめ、多くの皆様にご心痛をおかけしたことを改めておわびする」とコメント。北川顧問は「いかなる解決をしても、遺族にお許しいただけるものではない。本来業務に一層力を入れたい」と述べた。嘉田由紀子知事は「SKRの安全な運行が保たれるよう支えていきたい」とした。

 42人が死亡、600人以上が負傷した事故は14日で発生から20年を迎える。刑事裁判では、SKRの当時の運転主任ら3人が業務上過失致死傷罪などで有罪判決が確定。遺族が起こした訴訟でも両社に総額約5億円の賠償を命じた判決が確定した。

 ◇「配慮に感謝」−−SKR今井社長

 SKRの今井恵之助社長は「司法判断を厳粛に受け止め、話し合いによる早期解決の道を選択した。(債権放棄を決めた)JR西日本の配慮に感謝し、地域公共交通機関の使命を果たしていきたい」とコメントした。

    毎日新聞 2011年5月11日 地方版

 JR西日本が2008年6月14日に提訴した、信楽高原鉄道衝突事故責任割合訴訟の地裁判決が4月末に出されて、内容としては、先ずJR西による水増し請求分を否定、責任割合として3:7として、5:5との差額として、補償額等約55億円余の2割11億円の支払いを信楽高原鉄道に命じたが、甲賀市(旧信楽町)と滋賀県への請求は棄却した。

 その後、JR西日本が全額請求放棄することで決着、金銭的には補償分担割合裁判を起こさなかった状態での決着だが、JR西日本の請求内容自体が、尼崎事故を承けて推進するとした安全基本計画を否定し、その徹底に疑問を抱かせる様な内容だったから、判決金額の請求放棄によりようやく安全基本計画推進が非難の風除けではなく本気の方針だと内外に示せることとなって、JR西日本自身にとって良かった。
  See→[日記#193]:「4度目の責任論蒸し返し ・・・・・信楽事故補償の全額を県・市に押し付ける裁判提訴」

 判決後の当事者交渉で信楽側は17億円の累積赤字で支払い能力が無く、公共輸送維持は必要と訴えた。仮にJR西日本が判決の賠償金分の財産を差し押さえようと思っても、財産は鉄道施設しかないから、それを差し押さえても公共輸送維持の責任から元々のJR西日本信楽線に戻ってしまう。それを再び廃線合理化として無償譲渡して第3セクター「信楽高原鉄道」を発足させるのだとすると、その間の手続きを抜いて直接に現第3セクターを活かした方が合理的、すなわち、事務上も債権放棄が適切な手続きである。

 もし控訴して旧信楽町、滋賀県に肩代わりを請求しても、世論が厳しく許さない以上、「事実評価」や「責任論」狭義の「法理論」がJR西日本側に都合良く通る可能性は低く、今回、地裁判決勝訴とはいえ、その中味は散々で、JR西側が無断で方向優先梃子を設置したことが事故発生に大きく寄与していることが4度目の裁判にして初めて認定されて大きくショックを受け、運転士が小野谷信号所の出発信号に従ったことまで、事前経験を無視したという特殊限定付きではあるが問題にされていて、これ以上争っても好転は困難なのは明らかだった。

 そんな事情で、ここで裁判終結するのはようやく妥当な判断をした様だが、2008年6月の提訴時でも基本的事情は変わっていないのだから、安全基本計画の主旨に則り、その時点でこそ安全方針に反する内容の責任分担裁判提訴を止めるべきだった。
 あの提訴の発したメッセージは、オペレータエラー唯一論での責任割合請求だから、安全基本計画の「事故原因に作業者のミスというのは無くする」という重要な転換を全面否定して、厳しい世論にたいしては面従腹背で、本心は従前と全く変わってないというものだった。しかも、負担割合半々での支払い済み金額に様々な経費を上乗せ計上して名目90%で、倍の費用=全額100%を担わせようというトリッキーな請求で、公正と正義など眼中にないものだった。
 判決は、ほんの一部の損害評価を却下はしたが、請求90%と、現状50%の中央、足して2で割った70%というもので、第三セクターの出資者である旧信楽町(甲賀市)と滋賀県への請求は認めないと云うのだから、打撃のない早期解決には勝訴の名だけは取って請求放棄しか無かったのだ。




2011/05/31 22:50

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