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Geo日記
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緊急冷却装置の一部を外していた!?って、
自分で吹いた「安全神話」に自身が酔う、
あきれた東電&原子力安全・保安院!

 炉心自体の熱で発した蒸気を電源不要の熱交換機で冷却する「蒸気凝縮系機能」系が緊急炉心冷却装置ECCSの多重防護の一部として各原子炉に付いていたものを、中電で関係配管が水素爆発で損壊したことでこれを外し、東電も追従したが、原子力安全・保安院はいずれも中電・東電の言いなりに申請を認めて撤去されていて、全電源喪失に対応できなくなっていたとの報道に、開いた口がふさがらない。ECCSを構成する蒸気凝縮系とか緊急冷却タービンなどは「多重防護」のキーになる装置ではないか。
 日記#269で、原子炉は即座に止めるが、主タービンは動かし続ける余地は検討されてよいと書いた(送電系と同期運転に入る必要があるので、接続時の無負荷状態での運転が可能なはず)が、実際には設計段階で緊急冷却法として小型の冷却タービンも設置されていて、その系と併せ蒸気凝縮系機能も働いて自力で冷却が続く筈のものだ。素朴直截な安全装置ほど取ってはいけないのだが、ちょっとした故障で撤去してしまうとは、儲け優先の大改造が行われたと云うほか無い。
 加えて、原子力推進側と安全監督側が同じ組織では、有効な監督ができないことを具体的に示すものとなってしまった。さらに、原子力安全・保安院と原子力安全委員会は安全審査監督などできる能力はなく、電力会社のやりたい放題のイチジクの葉に過ぎなかったということだ。(週刊文春6/9号p25〜)

「工程表が作文」は最初から見えていたのに・・・・・    <1>

 この記事の「大スクープ」として原発事故処理の工程表が、現場指揮官の吉田所長のあずかり知らないところで方針が決められ、日程が作られたことが報じられていた。
 方法は実務者に良く相談すべきだが、具体的日程は初めての事態では読み切れないことも多く、その辺は努力目標として日程を捕らえるほかないのは、最初から分かって居るではないか。標準工数:スタンダードタイムとして管理できるのは既に流れている大量生産品とか、技術的に確立したものだけである。たとえば多くの情報が得られて技術蓄積のあるトンネル工事でさえ予期せぬ異常出水や特殊地盤などで工程表が大きく遅れ、上越新幹線と東北新幹線の開通日時を逆転させている。世界で初めての重篤な原子力事故に、予期せぬ障害が次々現れることは当然予想されて、日程を守れるかどうかで煽るのは、何ら利益にならない。そのへんこそ現場ではないところが受けて緩和し必要な作業工程を守るべきである。「発表したものは守れ!」だなんてバカな煽りをするものではない。

 体を張って工程を進めるものを大事にして、具体的処置については相談して進めるべきところを、社長会長や首相など上が勝手に決める様なことについて厳しく批判したらいい。また、金に糸目を付けず、可能なら別案を並行実施して良い課題なのに、国内技術での高効率浄化が提案されている元で、仏系アレバ1社発注というのもどうかと思う。
 かって私自身、開発予定が大幅に遅れ、マネージメント係にず〜〜〜っと言い訳を頼みながら作業を続けたが、かなりのピンチ状態からは抜け出せず、他現場が重大事故を起こして同種の現場が2ヶ月以上も止められたことで追いついた苦い経験があるが、既製品の切り貼りではない「開発」を含んでいる場合には、正確な工数は予測困難で、常に実際より短く予測しがちである。開発担当者が皆逃亡してしまうほど特にきついとされる担当者から「いくら製品品質が良くても、儲からなくては商売ではない!」と散々にとっちめられたものだったが、唯一逃げずにいくつもの仕事を完成させた実績はちゃんと評価して貰いたいと思っているうち、不採算部門のリストラでトホホの事態に、、、(w。商売上は納期は絶対的であるのだが・・・・・。

ナトリウム冷却炉の緊急冷却はどうする!?    <2>

 福島原発の燃料棒崩壊熱の冷却を失っての過酷事故で未だに大量の放射性物質を垂れ流しながら収束の目途も立たないが、それでも注水冷却で事態のそれ以上の悪化をギリギリに防いで発熱量と放射線量の低下を待っている。
 だが、これが熔融ナトリウム冷却炉で起こっていたら、設計想定の自然放熱冷却では足らない異常事態でも、吸熱力の桁外れに大きい水を使えないことで冷却さえ十分にできずに事故の深刻度が増していく大変な事態になっていたかもしれない。
 冷却材に熔融金属ナトリウムを使わざるを得ない危険度の高い原子炉というのが高速中性子炉/増殖炉=シロートだましキャンペーン名「高速増殖炉」である。

 ナトリウムNaの自然発火実験は高校化学や中学理科で見学した方も多いと思うが、金属ナトリウムは普段はガラス瓶の中に灯油に浸けられて理科実験棟床下のコンクリートロッカーなどに鍵を掛けて収納されており、ここから取り出してカッターで1ミリ角前後に切り出したものを、直径30cmほどの水槽に投入すると、金属ナトリウム片は水面を白煙を上げながら走り回り、やがて自然発火してオレンジの炎を上げながら燃え尽きてなくなる。それは、金属ナトリウムが水と激しく反応して大量の水素ガスを発生して反応熱で発火するもの。ナトリウム自体は水酸化ナトリウムとして水に溶けている。

 原発の冷却材が熔融金属ナトリウムだと温度が高い分反応速度はさらに速く、緊急時に冷却効率のよい水を掛けることは即水素爆発に繋がりかねず、錫だとか鉛の粒を投入して先ずその融解熱で冷却し、熔融して出てきた冷却金属を自然放熱など水以外で冷やすしかない危なかしいことになるわけだ。普段、緊急冷却用の金属粒を大量に保管しておくことは水に比べて困難が大きく、しかも固体では注入ができないのにどう対処する積もりだろうか?

 ナトリウム冷却を必要とする理由はSee→高速中性子炉:日記#248
    増殖炉=高速中性子増殖炉=高速中性子炉(×高速増殖炉)

 を原子炉の冷却材(・減速材)に用いるのは、
といった理由がある。

 「自己平衡性」というのは、制御せず放っておいても安定点に戻ってくる性質を言いう。福島原発でいま問題の沸騰水型では、核燃料の周辺が沸騰して水蒸気の泡になると中性子の減速材:水が泡の分存在しなくなって低速度の熱中性子が減少して核反応を抑制するという訳だ。
 ところが、熔融状態など高温の金属に触れると分解して金属を酸化し、水素ガスを析出して、これが空気中の酸素と一定割合で混じると「水素爆発」を起こす。今回の福島原発事故は、津波により冷却が途絶えて冷却水が減り核燃料棒が空焚き状態になって熔融、水と反応して大量の水素が発生、(ベント時に建屋内に放出され)水素爆発に至ったものだが、当面の対策は放射性物質を大量に撒き散らしながらも、ひたすら水で冷却するほかない状態。今後、汚染物質濾過除去で再循環系が構成されれば放射性物質の放出を抑えられる訳だが、放射性物質を浄化して貯蔵水を減らさないと汚染水が増えて、保存容量超過で水冷却停止となりかねない。冷却作業は従前の使用済み核燃料と同様に何年も続くとされている。


2011/06/03 20:30

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