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かっての鉄道技術研究所が国鉄分割民営化に伴い別法人とされ「鉄道総合技術研究所」=JR総研=RTRIとなってその運営費は主にはJR各社の分担金135億円、補助金94億円、各種委託研究や開発製品で130億円などで運営されている組織だが、JR東や西、倒壊が独自の研究開発部門を持ち始めており、研究部門としての自立もなかなか大変なようで公開イヴェントなど様々の情報発信に努めている。有償講座も多数準備している。
鉄道総研の地域融合行事として毎年「平兵衛祭」としての一般公開があり、ここには所員もGFを連れてきていたり結構和やかなお祭りで一般向けだが地域密着イヴェントという位置付けでサイトには公開されない。そのほか、プロ向けは9月第1木曜金曜の「技術フォーラム」が開かれ、そこではたった今売りたい技術中心の展示が行われていた。
これに更に東京か大阪で「月例発表会」が行われ、こちらは基礎技術発表も行われて参加費無料で公開している。東京の月例発表会では新宿西口の工学院大学階段教室が主に使われるが通常は座席数273のうち空席が150〜200もあるので、ヲタが大人しく潜り込んで聴講しても山の賑わいで迷惑にはならないで済みそう。最近出来た西口から見える巨大なつくしの様なビルの交差点を隔てた斜め向かいが会場の校舎で、北入口から入り校舎北西隅のエレベータを三階で降りると階段教室の後側に出る。去る9/17は「鉄道のダイナミクスに関わる最近の測定技術」として各種計測方法を中心に発表が行われ、パンタ、架線、個々の枕木とバラスト、構造物の振動の無接触計測などが担当研究者がパワーポイントを使って説明していた。計測関係技術は潰しが効く内容なのでのぞきに行った。次回10月の月例発表会は「車両技術に関する最近の研究開発 」とあり車両関係で面白そうだ。事前公開の概要を見て何とかなりそうだったら聴講をお勧めする。が会場は大阪毎日新聞オーバルホールB1にて開催で、関西圏向けの開催だ。東京からそこまで出掛けるほど酔狂じゃない(w。発表後の質問の遣り取りを聴いているとなぜか仕事としての割り当て動員臭い消極性が匂う。型どおりの「讃辞」から始まる浅い内容のテンプレート型質問を聞きながら、興味があって集まったらもっと熱っぽい応酬になるんじゃないかと思って聴いていた。興味をもつ参加者を集めるには……?
鉄道総研特別高圧受電線 特別高圧線メンテ作業 |
技術フォーラムの発表課題がたった今売りたいもの中心というのは、既に実地試験に入っているATS-Xとか、貨車用のアンチスキッド機構とか、北海道は過去の実績・栄光の261系などのマルチモードブレーキとかの製品は展示されていないのだ。開発現場である実験・研究棟にたまたま解説パネルが残っているのがある程度だ。逆に羽越線の突風転覆事故を承けて地形を分析して強風個所を抽出、風速計設置個所選定システムとかタイムリーな小技も展示されている。鉄道員からは絶大な信頼があって、当面の開発課題を売り込めば足りるというのも一つの考え方だが、かって東海道新幹線を実現させた様な壮大な仕掛けも必要なのではないだろうか。
9/13米加州ロサンゼルス近郊で通勤列車と貨物列車が正面衝突して多数の犠牲者が出たが、その原因としては通勤列車側の信号見落としだが、多数の鉄道事業者が乗り入れている地点のためATSを設置していなかったと伝えられている。運転士が携帯メール操作直後の事故だとか。まともに考えればそういう錯綜する地点こそ共通ATSで防御する必要があるだろう。
そこでRTRIとしてはATS-Xのキャンペーンで先進国都市周辺への普及と国内ATS-Sの速照化改良(=冒進速度抑制改良)を仕掛ければ良いと思った。一般向けに保安装置概説に取り組んで、日本では停止信号を目標に連続的に制限速度を算出して停止するATSが首都圏・関西圏に設置され、地下鉄は更に高度のATCを設置しているとかの情報を広く発信した方が良い。特に海外特派員協会などに対しては別立てにしてでもよく説明する。無論密度の濃い通勤輸送需要があって遅れている米英台、工業化された東南アジア諸都市などに向けた情報提供である。すぐ記事に出来るような図表や資料を添え、何種類かの記事のひな型を添えればヒマネタ送稿する記者・特派員が必ず現れる。ロサンゼルス衝突の様な現実の事故にリンクして「日本では……」という特派員報になり、「Japが優れた安全装置を設置してるというのになぜ我が国にはない!」との世論が興り売るチャンスが大きく拡がる。ATS-Xが日本でイマイチなのは、既に普及しているATS-Pに対して、直通する幹線を持つ事業者が敢えて非互換でほぼ同一機能のATS-Xを採用するメリットが無いことだから、ATS-PとATS-Xは海外に対しては値段次第の同一スタートラインにあるのだ。
CM-PRだと大変な資金が要るが、報道ならほとんどプレゼン費用だけであり、ニュースにするための仕掛けは要るが費用としては只に近い。敗戦直後に山陽・鹿児島・東海道線ATS設置の試験として幡生−門司間に設置された常時速照式ATSに対しGHQが中止命令を出したことで、巡り巡って国鉄は首都圏・近畿圏幹線をのぞき現状の欠陥ATS-Sに甘んじることになったが、敗戦国JAPの黄色いエテ公に高度のATSなど持たせない占領軍優越感覚が、今回の米加州ロス郊外衝突惨事に繋がってしまったか。「なぜ速度照査が必要か」が公正な立場で世論に発信されれば、安全確保に必要な条件を備えたATSが世界に拡がることになる。そのときに「栄光の実績」は大きな力になるのだからOER3000系ロマンスカー開発援助145km/h達成に始まり新幹線から現在に続く開発史をエピソード集など多層に提示しておくことは有効だ。(その辺をしっかり押さえてないと、功績の全部をメーカーに取られてしまいかねないだろう)
また鉄道事故関連での技術的見解の誤報が繰り返されており「鉄道総研に試算をお願いした結果」などと根拠なく引き合いに出されてしまった機関として報道記事添削閻魔帳を作ってサイトに公開し、時折はまとめて説明会でもやってはどうだろう。'97年大月事故でATS-Snを指して「最新型ATSを突破して衝突」(毎日記事)とか、'05年尼崎事故での「東海はATS-P並の安全度を誇るATS-STを設置」(日経が騙された!)や、「133km/h以上で脱線する。鉄道総研の試算」(JR西会見)などの不正確情報の補正を行うのだ。ことさらの打撃的非難を避けて技術解説に留めれば問題ない筈だし、事前連絡で確認・調整することも可能だろう。正確に理解できる層を日常的に養成して関係を作っておくことが妥当な報道と世論の醸成には大切だ。鉄道総研の絶大な信用性と権威から真面目な取材者とヲタとできっと満員の盛況になる。見解が実行されるには個々の主張が正しいだけでは足りず、世論への浸透とその積極支持が必要だから、銀座ヤマハホール講演を皮切りとした多様な新幹線実現キャンペーンのようなあの手この手は不可欠だと思う。部内の決定に際して151系こだま型臨時列車を仕立てて温泉宿で合宿研修をやって意思統一を図るなど実現させるための断固たる方針が感じられる。(温泉地での研修・会議は研修施設のなかった時代に宿泊と食事と会場を得るための妥当な選択だった。労働組合、民主団体の会議とか、争議団、患者団体の各種対策会議は熱海、水上、石和、伊豆長岡、湯田中など旅館の集中した温泉地で良く開かれている。夜に任務を放り出して翌日に差し支えるほど荒れるかどうか節度の問題であり、中には合宿会議中は温泉歓楽街が丸ごと臨時休業してしまうような大規模で真面目な取り組みもやられていた。警察官と教員の団体は特に乱れてドスケベ〜という伝説はかなりの根拠があるのかもしれない)
この鉄道総研が技術系鉄道員向け総論テキストとして「わかりやすい鉄道技術」3分冊を分野別に発行している。1.土木編、2.電気編、3.車両・運転編と別れ、レジメ的な「鉄道概論」8ページを各巻共通部として分冊共通に冒頭につづっている。個々の分冊の内容は省令や旧国鉄基準に基づいて詳細で深いからプロ向けと病膏肓のヲタ向けであり、一読はお勧めだ。著者は鉄道総研鉄道技術推進センターと、1.土木編が日本鉄道施設協会、2.電気編が日本鉄道電気技術協会、3.車両編・運転編が日本鉄道車両機械技術協会と日本鉄道運転協会で、それぞれ'03/05、'04/05、'05/06初版発行となっている。が、もっと鉄道の全体像を見たい一般人には昭和鉄道工高編著の「鉄道の仕組みと走らせ方」(かんき出版07/09/21刊)を読んでからの方が分かりやすい様に思う。その執筆者の一人である大渕利一同校鉄道科主任がこの「………鉄道技術」の「技術教材検討会」メンバーの筆頭に挙げられている(順不同)。記述内容が実作業に即して詳細だからプロの現場教育用を目指した本だろう。「のり面防災十訓」なんて絵付き箇条解説記事は現場詰め所にそのまま貼るものだ。代金は3巻で6000円弱だが、会員企業とその従業員は3千数百円で買える。当方は「会員企業」名で見学に参加できたもので会員価格で衝動買いしてきた。
(土建業界とかソフト屋は何重にも所属会社の皮をかぶって出現する慣行があり、狂信オウムの出家専従活動家が防衛庁の重要業務を直接担当したのも無理からぬ状況だ。人間も土木機械のレンタルの感覚で調達してしまう。違法な偽装請負なんて、実態は「民間活力導入」の官公庁先立ちなのではないか!)。本代金の差額は名義貸し御礼の飲み代に消えてかなり足が出るだろう。鉄道技術者の裾野を拡げるキャンペーンと割り切って個人購入は総て会員扱いというのも採りうる政策ではあるが………。
更に内容をのぞくと、概論部交流電化BT饋電方式の結線図p3には変電所直近区間の直接帰線がきちんと書き込まれていて、ヲタに拡がってしまった国鉄小倉工場系筆者(ら)に拠る帰線記入漏れを補足していてサスガ〜っと思ったら、新幹線開業後逆効果としてすぐに撤去されてしまった歴史的架線構造の「合成コンパウンド式」が「ヘビーコンパウンド式」などと並んで現用構造として記載されていて(#2電気編p55)、鉄建公団が整備新幹線用架線構造として開発した高張力=振動高伝播速度方式による高速走行集電改善法には一切触れていない。大宮鉄道博物館の展示が未だに「合成コンパウンド式架線」(See→日記#181、やめてよ!「合成架線素子」=架線振動ダンパ)である根源はここ鉄道総研テキストにあったようだ。
ドロッパーに仕掛ける「合成素子」という振動吸収装置は集中定数型解析モデルであり実態に合わなかったからすぐに捨てられた。それを架線の振動伝播速度の70%を越えると離線率が大きくなることから、張力を限界近くに上げて振動伝播速度を上げて、集電限界速度向上を図ったものが整備新幹線方式だから、その設計に係る理論解析の進展についてはきちんと触れないと教科書としては不足である。「理論」というのは新しい理論に踏み越えられて行くものだからその歴史的経過として現象を説明しきれない旧理論を扱う必要がある。それを今も生きているかの扱いは研究開発機関を教祖化して殺す愚行になってしまう。
新幹線建設に当たっての列車運行による軌道破壊量の仮説算式提起でも当時の鉄道技研に与えられたデータは在来線の保線実績と列車通過データで、総て最高速度90km/h〜110km/h程度のものだったから、取り敢えずは直線比例で表現する他はなかった様で全く未経験の200km/h営業運転の保線作業量推定には元々無理があった。それは開業後の保線作業実績データで補正されるべきものだったのだが、その第一次仮説の推定式が鉄道技研のご託宣として一人歩きを始めて、保守計画など他項目にも引用されて動かせなくなってしまい、新幹線の必要保線作業量の過小見積もりを固定化して、半日運休を50回前後も繰り返しての大若返り工事が必要なほど新幹線の線路損傷を累積させてしまったのではないだろうか。しかしながら実際は修正に2乗項を導入しても在来線の算出値は基本的に変わらないのだからシラ〜っと算出式を補正すれば良かったものをと思う。補正のためのナマデータが入手できなかったのだろうか?(折れ線特性の予想される事象の仮近似をなぜ誤差を減らせる2乗近似にせず直線近似にしたのかは大変疑問のあるところ。予測判断依頼時のデータ不足はあるにせよ、理論屋としては若干手抜きではないだろうか。せめて「通トン」値理論は仮近似であり、その法則性の確定には新幹線運行開始後の実データでの補正が必要である旨の注記が欲しかった)
現場と切り離された「研究機関」というのは脆いもので、不適切な結果が現場から返されてこないと実力を発揮できず浮いてしまい、やがては各社自前の開発研究機関に取って代わられる。東海道新幹線開業直後に棄却済みの合成コンパウンドがそれから40年を経て未だに生きていたり、初期取り敢えずの仮説的算式が実施結果・実績で修正されることなく生きているフィードバックのない一方通行状態というのは、研究開発機関を殺してしまうが、実際はどうだったのだろう?開発研究をメーカーと事業者が直接行うことも増えて、元祖神としてあがめ奉りはするが「理論と現実は違う!」とか言って違う部分が返されることなく、全体が黙って捨てられている、信じられてないというのではかなり悲劇的だ。その点、先出の積極的仕掛けで動かした分は生きるのだが、あまり仕掛けてなさそうだから、今後、次第に陰が薄くなるのではと心配してしまう。
←直流(整流子)側/8極回転変流機/3相交流(スリップリング)側→ 鉄道雑画帳:回転変流機:JR西日本交通科学博物館展示 http://koedaka.cocolog-nifty.com/blog/2004/06/053.html |
【電鉄の整流方式】回転変流機 |
単相交流電化の場合、3相交流の各相の負荷を均等にするための工夫が行われて、架線に給電する変電所毎に位相差90度の交流が対で生成されて、それが変電所を境に供給されるため、給電境界では供給電圧の√2倍の電位差を生じる。在来線の2万Vなら2.83万V、新幹線の2.5万Vなら3.54万Vの電位差だ。それを在来線では絶縁体棒で繋いで絶縁セクションとしているが、新幹線の場合には前後をエアー・セクションに挟まれた切換領域を作り、列車の進入を検出して自動的に接続を切り替えて、停電時間を0.3秒間にしていた。新幹線に乗車していて時折加速時に一瞬間加速が停まるショックを感じるのはこのセクション切換に拠るものがある。
以上は教科書的内容そのものだが、加えて、現在の新幹線では開業時のBT饋電方式から、AT饋電法へ切換採用と共に「上下線同相饋電」として特別高圧引き通し線によりパンタグラフの集約と並列運転方式を採用して、離線率と集電騒音を大幅に下げた。
そして変電所からの給電位相は変電所毎に正逆正逆を繰り返すことで、隣り合う変電所同士の境界点セクションは相互に供給位相(無負荷位相)がほぼ一致する配置としていたが、従前はこのセクションも走行電流による位相差を生ずるということで開業以来0.3秒停電で切り替えるようになっていたそうだ。
これを双方の電位差などによる接続条件を見て停電ゼロで短絡切換をすることでセクション切換による0.3秒の停電回数を半減させるという発表が今回の技術フォーラム2008年で行われていた。
変電所毎の給電位相が互い違いというのはトリビアだったが、元々の給電位相は電力会社側で一致している訳だから、互い違い配置で形成される同相セクションでの位相差は負荷(=走行電流)により生じたものだから、同相セクションを一瞬短絡させても給電線の電圧降下が半減するだけで支障ないないはずなのに、律儀にチャンと停電させていたなんて………。分割民営化21年を経て、ようやく重箱の隅を突いての改良・コストダウン策で拾われたか!(w。もっと踏み込んで言えば同相の2変電所の平行運転なのだから日常は常時短絡で足り、異常時のみ切り離せば済むのかも知れない。ATS-Pの構成でも同様に思ったが、極限まであの手この手を比較対照してコストや機能をギリギリに追求した設計ではない様に感じられる。その辺は鉄道では「量産」の規模が桁違いに小さいからやむを得ないのだろうか。ソースが同相で、給電系の電圧降下に拠って生じた位相差なのだから、列車通過時に同相セクションを短絡して停電をなくすというのは極めて自然な措置だろう。(変電所直近のセクションでは基準位相が90度違うので給電切換のための0.3秒間の停電は無くせない)。
[[静止コンバータ・インバータによる3相負荷の均等化]]
スコットT結線や変形ウッドブリッジ結線などというのは電車線の単相負荷を3相になるべく均等に割り振るための工夫だが、位相差90度のT座M座2種の交流が生成されそれを方向別や、上下別に振り分けて使用するから1列車分の負荷不均衡は生ずる。それを均等化する試みとして「静止型無効電力補償装置SVC」で無効電力をゼロとして「電圧変動補償装置RPC」(=静止コンバータ+インバータ)でTM2相を結び平行運転することで3相負荷の均等化と電圧変動補償を行う様になった。(「電気鉄道技術入門」持永芳文編著08/09/20刊p152〜154) '08/12/05追記
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