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新幹線の除雪にジェットエンジンの噴射を利用しようとしてジェットスノーブロアー実験セットを試作、軌道破壊と暴騒音で僅か一晩の現地試験で断念した話が齋藤雅男著「新幹線安全神話はこうして作られた」に述べられていた(P185L−6〜,P168L9米原保線支所'67冬、松原次長提案)が、実はそれより大幅に早い1961/3/9に北海道稲穂工場が自衛隊からジェットエンジンを借りてトキに取り付けて札沼線浦臼駅で試験し、「砕石やポイントの踏み板など、線路の周辺にある付属品も片っ端から吹き飛んで」しまった!という本を発見。北海道では人家もまばらだが、東海道新幹線での実験では深夜の暴騒音に住民達に詰め寄られて2度と実験できる状況ではなかったとか。
それは専らPCの重箱の隅をつつきたいときに参照した秀和システムが'06/12/25刊行した鉄道トリビア本「仰天列車・鉄道珍車・奇車列伝」の冒頭のエピソードがこのジェット除雪車で、この失敗から「国鉄技術陣も正攻法に戻って、ディーゼル機関車を活用した除雪車を開発することになったのである。」(同書P10L4)としている。
もう少し読み込むと、#139で引用の齋藤新幹線本にスプリンクラーによる降雪飛散防止実験を'66/3に同じく北海道稲穂工場に依頼して結果を得る件がある(P140L−5)。この時「ジェットスノーブロアー」の話をしていたら北海道での失敗の経験を知って重ねて失敗実験をすることは無かったかもしれない。
しかし、当時は羽田空港のジェットエンジン試験場の深刻な騒音問題が報道されており、人家からは4kmも離れた海寄りでの試験で大問題になっているのを考えれば、街中を走る新幹線でジェットエンジンを起動する無茶に気付きそうなものだ。関係者は誰も新聞も読まなかったのか?!当時使われていたターボジェットというのは暴騒音で有名な米空軍のF105サンダーチーフ(=雷の親分)機など超音速の戦闘機に今も使われるものだが、現在旅客機など輸送機に使われているファンジェットに比べ15dB以上(約30倍余〜100倍)騒音が大きいのだ。
[参考]ジェット噴射で噴射で吹き飛ぶ空港作業車(<U-tube>)
'61/03の北海道稲穂工場での試験結果が東海道新幹線には全く伝わらず6年後の'67年冬に再び同じ失敗実験を繰り返すとは、国鉄という処は不思議な処である。
つい笑えてしまうのもあるが、なんとか職場の風通しを良くして適切な対応が取れる体制を考えて貰いたいものです。
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