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有視界飛行着陸での着陸断念判断の遅れか?広島空港事故
8秒のタイムラグ!ターボ・エンジン、またやったか?アシアナ航空

 


進入灯(西側)
[Wikipedia:広島空港(新)]より

【広島空港】(新):

 広島県三原市の山上を切り拓いて設置した空港。滑走路標高331m(320m〜331m前後)、東西3000m幅60m、事故発生側の空港東側は山肌ですぐ2km先の標高12mの谷(川)を経て丘。西側は東広島市街で標高300m弱〜250mの平地が八本松付近まで15kmほど続き、進入灯約800m長、ILSVb等が完備。(事故発生の東側には設備無し)。

 山陽自動車道が直近を通るが広島中心街連絡には渋滞目立つ。鉄道連絡はJR山陽線白市駅がバス15分。空港公式アクセス案内HPの対象外となっているが毎時4本あり。
 JR在来線は広島から東上して瀬野−八本松間11km弱で標高差250mを登る「西の箱根」と言われた難所を登った台地上。その約19km幅の高原東端の山付近を堀って整地して平らにして新空港を作った。

【ターボ・ラグ】

 ターボ圧縮機を使っているエンジン特有の出力上昇の時間遅れを「ターボ・ラグ」と言い、ジェット・エンジン、ターボファン・エンジン、ガスタービンエンジン、及びターボ過給器を装備したレシプロエンジンなどにみられる現象。数秒〜航空機エンジンではアイドル状態から全出力まで10秒近くの応答遅れを生ずる。
 アシアナ航空A320が14日夜、広島空港着陸時に滑走路端ILSアンテナ設置台(ローカライザー)を引っかけて滑走路を外れて停止、あわや大惨事の事故を起こしましたが、「またもアシアナか!」「韓国は大丈夫か!?」というのが第一印象でした。 (See→日記#341アシアナ航空サンフランシスコ空港事故)
 雷雲が近付く不安定な天候で、地上観測の視程は1.8km以上で着陸可、風速は2m/s以下のほぼ無風状態、ILSの設置されていない東側からの着陸で、着陸の瞬間には視程が300m程度に落ちていたとされます。
 霧の沸きやすい山上空港で東側は山の斜面で電波高度計の表示値が着陸には使えず、ILSも無い状況で、積乱雲が接近しているなかで、ほぼ無風状態だったというのに、
  1. ●管制塔はなぜ西側からの着陸を勧告しなかったのか?
  2. ●着陸断念判断高度までに滑走路が見えなかったらしいのに機長はなぜ着陸断念復行しなかったのか?
  3. ●山上空港(アプローチが斜面)の場合の復行判断条件の検討。(平地と違い対地高度読み上げ方式が使えない)
  4. ●ターボ・エンジン増力時の応答遅れ最大8〜10秒!(ターボ・ラグ)
 といった問題が見えます。

 特に、4番目のエンジンタイムラグ(ターボ・ラグ)の問題は一昨年'13年7月アメリカ・サンフランシスコ国際空港で滑走路手前防波堤に接触、着陸に失敗した同じアシアナ航空機ボーイング777型機の副操縦士が接地7秒前に「進入高度の低すぎに気付いて『加速が必要』と叫んだ」(ボイスレコーダ記録@NTSB:国家運輸安全委員会発表)が岸壁接触事故になり3名亡くなった事故で、ターボ・エンジンがアイドル回転状態からフルパワー推力に変わるのに最大8秒〜10秒掛かって7秒前に叫んで3秒前に復行操作を開始してもまだ無効で間に合わなかった「ターボ・ラグ」≒最大10秒の存在はなぜか指摘されませんでした。出力をどの程度絞っていたかにより応答遅れは変わりますが、着地時に失速速度を大きく下回る200km/h未満に速度低下していたことからも言及が必要な事項です。
 さらに着陸直前の失速寸前の低速で推力の無い状態のまま機首だけ上げても却って高度を失うから、高度低下に気付くのが遅すぎて復行できずに墜落したことになり、再びその事故をなぞっていないか?!という思いが真っ先にしました。
 さらに加えてアシアナ航空は1993年にも木浦空港でボーイング737-500型機が悪天候中の2度の緊急復行を繰り返した後山林に衝突・墜落して60名が亡くなっていていかにも着陸事故多発の印象の航空会社です。(クアラルンプール、ニューデリー、モスクワと連発させてしまった日航も威張れたモノではありませんが)

 また着陸のアプローチは、平地や海上空港ですと、電波高度計の高度表示の読み上げで着陸の飛行状態の適否が直にチェックできますが、山上空港で途中地形に起伏がある場合は適切・正確な高度チェックが出来ませんから、有視界飛行では視程が特に重要で、滑走路や特に着陸誘導灯が見えないままの着陸はできません。その山上空港での特有の運用制限と機長がチェックする方法の厳格な規定は必要でしょう。
 GPS誘導方式は航路案内としては極めて正確ですが、着陸高度指示としては誤差が大きいはずで判断条件は厳しくなります。 従って不安定な天候など視程に不安のあるときには早めに有視界飛行を断念しILS方式での着陸=広島空港西側からの着陸を指示すべきでしょう。この点は操縦者・機長も管制塔も問題があった可能性が強いでしょう。 今回、ローカライザー設置台のチャンネルを引っ掛けて車輪に巻き付けて着陸しながら死者が出なかったのは、堤防に接触して着陸し機体から放り出されて死者3名となったサンフランシスコ空港着陸炎上事故と比べても紙一重の大変な幸運です。羽田でのカナダ太平洋航空事故1966/03類似でもあります。

 なお、利用者の多い広島空港に鉄道が入っていないのは標高331mの山上空港で、近傍を通る山陽線が標高70m〜180mの勾配付近(15km離れた最高地点八本松で標高250m余)であって平地に比べて乗り入れ困難なのとJR西日本にとっては新幹線競合だからでしょう。 海沿いや平野にある空港なら利用者が多ければ鉄道が直接乗り入れています(Ex.羽田、成田、新千歳、福岡、関西、名古屋、仙台、那覇)。 逆に利用者が多くても山上空港の鹿児島空港(新、標高272m)には広島空港同様鉄道の便はありませんが、こちらは高速道路を通しています。広島も山陽高速道路から中心市街地に直結の高速道路を建設中ですが。 海から比較的近いのに東京高尾山標高599mの半分より高い位置の滑走路で、山に吹き上げる風で突然の濃霧の発生しやすい=今回のような事故気象状況の起こりやすい空港です。山上空港である青森199m高、静岡132m高には広島と同じ上昇霧リスクが考えられます。
 松本空港658m高は盆地の平野が拡がっていますが周辺の山が飛行を邪魔して積載量が制限されたり、着陸時の沈下率を大きく採れる短距離離着陸性能の良い機材と視程あるいは着陸誘導装置が求められます。 安全な着陸のために着陸速度はなるべく低く、失速速度+余裕速度に抑える必要があって、沈下率は増速しない範囲に抑えなければなりませんから、スポイラーや高揚力装置(前縁スラット&フラップなど)を備えて急角度での離着陸が可能な短距離離着陸性能の高い機材が特に求められます。


2013/04/17 15:35

糖質制限療法有用論、週刊ポストも!
「否定的見解」の糖尿病学会内に支持意見多数    <2>

 糖尿病、カロリー制限では治らない

  1. ● ガイドラインの食事で患者が増えた調査公開
  2. ● 世界では糖質制限法が主流
  3. ● 学会が否定しても止められない糖質制限
  4. ● 糖質制限で死亡率は上がるか?
by 週刊ポスト2015.4.24号p144〜147
 週刊ポスト2015.4.24号(p144〜147)に、糖尿病管理方法として世界的には糖質制限療法が主流となり、それを否定している日本の方針は患者を増やしてしまうことが指摘されています。
 見出しや記事は週刊誌流にかなりセンセーショナルですが、その実質は一昨年3月の日本糖尿病学会の糖質制限療法に付いての見解の読み取り方の問題で、発表当初のマスコミ各社は見解の中味を詳しく読み込まず、2重像表現の否定的部分だけを取り上げて「全面否定見解」と誤報したのを、翌年秋に日本経済新聞が有効性を指摘する修正報道をしていました。
 今回の週刊ポスト記事は糖尿病学会見解の2重性を掘り下げるのではなく、当初報道「全面否定見解」だったことを前提にして、 諸外国は逆の糖質制限療法有用見解とか、 現栄養基準の徹底で罹病率が増えた地域調査結果とか、 薬で糖分回収を抑える処方をしながら食餌指導で糖質摂取量を多く指定している矛盾とか、 治療の現場で既に糖質制限療法が採り入れられているが、名前を出してはそれを言えない状況の存在を報じています。
 開放的でストレートな論議ができない体制が糖尿病学会に有り、患者そっちのけでの「2重像見解」となりましたが、報道側には文書の真意が伝わらず、各紙一斉に「糖質制限療法全面否定見解」として報じられてしまいました。それが1年半後の日経新聞がようやく糖質制限療法の有用性を伝えたモノの大勢は変わらない中での真相追撃報道が今回の週刊ポスト記事です。

 政治的妥協に「玉虫色」というのがあって、どちらにも都合良く採れる表現が横行していますが、病気療養・治療法という人の生命に関わることで分かりやすい科学的論議ができないで、様々なしがらみを慮った「玉虫色」は大変困った話で、しかもマスコミこぞって二重像表現に気付かず全否定と解釈してしまった!成人の二割は糖尿病を疑われる深刻な事態にそれはいけません。
 かっての医学界には勢力争いの絡んだ非科学的ながん原因論争があり、刺激説とウイルス説が学会を二分して激しく争い、門外漢としては当面両方原因で良いではないか!相互に相手を否定するデータは得られてない!と思い、「白い巨塔」型医学界への信頼感を大きく落としたモノでしたが、現在では細胞の固有情報を司るDNA損傷説に落ち着き、医学界支配勢力圏を掛けた醜悪な抗争の歴史だけが残りました。 糖尿病対応指針で再びその愚を繰り返さないで貰いたいモノ。但し非科学的な不毛の対立一方だった癌原因論争とは異なり、見解本文・各論には具体的な事実指摘・主張があって各マスコミがそれを読み落とさなければ突破できている可能性が高いことが前例とは違いますが、マスコミ各社が揃ってその騙し絵に託された真実のメッセージを見落としてしまった!社会の木鐸はどうしたんだ!という話です。

そもそも「糖尿病」とは

 何を以て「糖尿病」とするかは、
  1. 体の血糖の調整能力が落ちて
  2. 過栄養、糖分取り過ぎが続き
  3. 食後血糖値が高い状況が続き
  4. 他臓器、血管、網膜などを蝕む状態
と考えれば、1).項で血糖調整能力が落ち、3).項の食後血糖状態が通常より長く続いたとしても、2).項の栄養&糖分摂取過剰がなければ、4).項の他臓器損壊の致命的な障害は起こらなくて済むわけで、血糖調整能力の落ち方の程度次第では、飽食でなければ健康に暮らせることになるのでしょう。
 血糖値調整能力には当然個人差があり、肥満等でインシュリンは分泌されているのに効かない場合もあって、連続分布のどこを境に「病気」と「健康」を分けるかとなると、生活習慣が絡んできて、食後最高血糖値だけではなく、糖分吸収に見合う血糖処理が間に合わなくなった状態を発症と捉えるのか、一定の血糖処理能力低下を以て発症と考えるのか等、定義に幅が出てくるのでしょう。HbA1cは前者累積打撃、糖負荷試験は後者処理能力を調べるモノ。
 「発病」というレッテルは別として、各自の糖処理能力に合わせた食事が取れていれば問題ない訳で、不足する分を投薬や注射で補う、それをみる数値指標としては瞬時値である最高血糖値よりも累積値であり影響結果を示すHbA1cで管理すれば良いことが分かっていることから、食餌療法が進められている訳で、ここに糖質制限療法導入の可否が論じられて、学会としては全面否定見解だと報じられている訳です。
 注射、投薬の必要なくなった状態は実質「治癒」と考えて良く、状態が維持されているかどうかの点検に通うのは若干頻繁な定期検診でしょう。

 さらに食事の取り方として、血糖値の急上昇を抑える食べ方を意識して、
ブドウ糖、蔗糖は速効性で害を為しやすいので摂取を避けるか厳しく制限し、
過栄養を避け=カロリー制限は守って
まずは野菜から順に食べ、ドカ食いは控える
総計では栄養バランスの良い食事を心がける。総量を減らすのだから必須成分が不足しない様留意
と言うことですが、加えて
栄養素中唯一直接に糖分に転換される炭水化物(糖質)を少なめにするという「糖質制限療法」が「有効」なのか「有害」なのかが争点というわけです。
 従来の日本の食餌指導ではこの炭水化物摂取量が多すぎる。現に大学が食餌指導した地域で糖尿病罹患率が著しく増えているデータがある。腎臓での糖分再吸収を抑える薬を処方しながら諸外国よりかなり多い炭水化物摂取を勧めているのは明らかな矛盾、というのが週刊ポスト記事が今回提示した内容です。

#329-3 積極導入部分も有るはず!  糖質制限療法全面否定報道 2013/03
#367-2 「糖質制限療法」の有効性を反転評価する日経新聞記事 2014/09
日本人の糖尿病の食事療法に関する日本糖尿病学会の提言.pdf :日本糖尿病学会2013/03

 適正値ゾーンを外れる片側が崖状の特性の場合の調整法は安全側から適正値ゾーンに接近するし、管理中心を適正ゾーン中心より崖側に遠い側にずらしておいて、何らかの揺らぎに遭っても崖に掛かりにくくするのは常套的な調整法です。 例えば
 工学的にはこうした「余裕」「許容誤差」「ガタ要素」を置いて、現実的な調整目標を設定して製品とするのですが、糖尿病の食事管理法は極めて厳密で、食事毎に完璧な栄養バランスを求めていて、体調自然調整能力に全くゆとりの無い重症患者には必要なのかもしれませんが、多くのゆとりのある層には厳密すぎて付いていけず、自覚症状もほとんど無いことから治療から離脱してしまうのは無理からぬところです。
 これが糖質(炭水化物)の摂取割合を下げて、カロリー制限に気をつければ、病状管理できるようになり、栄養バランスも毎食に限らず一定期間で辻褄が合っていれば病状を改善でき、少なくとも悪化させずに暮らせるのだとしたら大変な朗報ではないですか!

なぜ不正確?マスコミ報道
深く掘り下げる報道は追求していない?!

 マスコミ各社の鉄道事故報道の不正確さで気付いたのですが、記事が売らんかなのセンセーショナリズムに流れて真相究明の努力が極めて足りず、事故報告書の読み込みも浅く、何度かみられた二重像表現には気付くことなく当たり障り無くまとめてしまう知的横着さが目立って、今回の日本糖尿病学会の「糖質制限療法についての見解」でも読み間違えて全面否定と誤報してしまいました。

 2000年3月8日の営団地下鉄中目黒駅事故調査会報告書では、総論部では「原因特定できず」というニュアンスが強く感じられてマスコミ報道はそれに依っていましたが、各論部になるとかなり具体的で、鉄道事業者各社に輪重調整管理と、脱線懸念箇所への脱線防止ガードレール設置を義務付けていて、危険度指標の計算式を提示してその判定で、曲線出口緩和曲線部=カント逓減ねじれ部などへのガードレール設置を勧告していまして、鉄道事故検討会としては鉄道各社に一律のアクションを指示した部分が中目黒事故の原因と考えていることが明白でしたが、それに触れた報道はみられませんでした。

 2005年4月25日の福知山線尼崎事故でも、マスコミ各社は「ATS-Pなら起こらなかった事故」と報じ続けて、「過速度ATSの有無」が問題であることとはズレた報道を繰り返し、JR西がATS-Swにも過速度ATSが有って稼働中であることを発表した後も全く訂正しませんでした。
宿毛駅ATS地上子配置図
宿毛事故原因を確定させた宿毛駅ATS地上子配置図 2005/03/05「高知新聞」報道
事故調報告書はこれに迎合したのか、「ATS-P化ではなく、過速度ATS設置」が防止のキーであることには触れずに、やはり実アクションとしては鉄道各社に過速度ATS設置を勧告し、判別式として脱線転覆限界速度を算出する國枝の式の限界値の90%以上の速度での設置を義務付けましたから、それが脱線事故の主要因と考えたことは確かで、明らかな二重像報告書ですが、当初の誤報の訂正はどこからもありません。

 一発で原因究明できる報道をしたのが2005年3月2日の土佐くろしお鉄道宿毛事故でのATS地上子位置を報じた高知新聞。適切な過速度・過走防止ATSが設置されていないことで線路終端に激突するのを防げなかったことがその一地方紙の報道で確定したのですが、約一ヶ月後に事故調査委員会の中間報告が出されるまで高知新聞を後追いした報道はありませんでした。
 信楽高原鉄道事故では京都新聞が後追い取材で良いレポ本「検証信楽列車事故」('04/02/26京都新聞出版センター刊)を出しています。そういう能力がありながら、日常報道は日本糖尿病学会の糖質制限療法見解の実質誤報のように雑に過ぎると。
 その時その時の関心に追われた報道をするだけで、きちんと真相追究する意気込みと努力が足らないように感じます。

2015/04/20 18:35

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