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Geo日記
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[102].宿毛事故1周年
  国交(運輸)省は必要充分な指導をしてきたのか?

      土佐くろしお鉄道宿毛駅全速突入事故から今日で1周年.暴走の原因は不明ながら,ATS-SSで激突を防げなかった明確な原因は2つあることが各種報道資料と国交省の対応からハッキリしている.それは,
  1. ATS-Sロング地上子設置基準が最高速度を想定して居らず,橙現示制限速度45km/hの+5km/hを基準に51km/hで設定されていて,警報しても全く停まれなかったこと.
  2. 過速度防止装置,過走防止装置がまともに設置されて居らず,設定制限速度遵守に対しては全く無効だった.
 この宿毛事故後,国交省が出した勧告は,途中の最高速度が100km/hを超える行き止まり駅についてのみ最高速度対応を求め,ATS-SN系は警報だけのロング地上子設定変更で可,ATS-ST/-Sx系には速照設置を求めた.国交省の対応で見る限り防御できなかった上記原因指摘をほぼ全面的に認めた形である.
 この通達の不足部分は,高速進入可能な行き違い駅や急曲線,安価な速度照査のないATS-SN系への速度照査だが,直後といえる'05/04/25に福知山線尼崎曲線過速度転覆事故の多数の犠牲でそれを証明してしまった.

  この鉄道は,国鉄が工事途中で開通を断念したものを地元が第3セクターとして開通させたもので,鉄建公団の設計で運輸省の許可審査を経て施工し完成後土佐くろしお鉄道に引き渡している.算出エラーの責任を言えば直接にはくろしお鉄道だが,設置計算基準自体は国鉄JRそのままであり,運輸省認可の算定基準で鉄建公団が設計し運輸省の認可を得て施工したものを引き渡されている.また過走・過速防止装置は設置義務がなく,標準計算基準もなく,有効かどうかの審査をするところすらない.
 事故後くろしお鉄道は「過走防止装置の設置費用は100万円弱で,国交省の指導があればすぐ設置していた」と述べている.弱体な中小私鉄が自己責任で安全装置の開発整備を行えという無制限の規制緩和路線には実際上無理がある.
 これはどう見たって運輸省/国交省に指導・認可責任があるだろう.

 速度照査(速照)地上子設置状況を下図に示すが,過走防止装置に必要な速照地上子対は,「常用制動に支障しない」という条件で設置すれば下図の赤点●の位置になるし,低減速度とすれば設置数を減らすことができる.宿毛事故後に過走・過速度防止装置として設置した速度照査地上子対は緑点●で示している.分岐直前の25km/hのみ一致で,過速防止部はかなり低めの設定,過走防止部は手前に移動で1対で済ましている.これは低速進入低減速度で設置数を減らしたものだ.
宿毛ATS設定
 ついでに,衝突経過の推定図を再度掲載しておく.一番左上の赤線グラフが衝突経過推定である.100km/h弱で車止めに激突している.二番目は停止限界曲線.ロング地上子設置距離は最高速度120km/hからATS-Sとして警報可能な距離で,ATS-SN/-SnのJR北海道,JR東日本当該区間に適用されるものである.過走・過速度防止装置を設置するATS-Sx区間では中間現示速度のままだから宿毛駅のロング地上子は位置変更していない.
宿毛事故推定


 ATS-SS/-Sxには速度照査専用機能(108.5kHz地上子)があるが,JR北海道とJR東日本に採用のATS-SN/-Snには存在しない機能で,代用として強制停止(123kHz)と地上タイマーを組み合わせて構成するがそのため高価になり,尼崎事故'05/04/25までは過速度転覆を繰り返した函館本線大沼付近の急曲線勾配区間以外は分岐器過速度防止装置としてのみ使われたものだ.それ以外は警報のみのロング地上子(129.3kHz)で済ましている.

 労災防止(労働省)の立場でみればそもそも安全装置とは,操作者のエラーを前提に致命的事態に至らないための装置だから,宿毛事故の場合,どちらもあり得る最高速度で無効なATSだから共に論外の設定である.
 加えて赤信号のATSへの速度照査の義務付け=私鉄ATS通達復活が'05/5/16の民主党の稚拙な追及で却って固定され放置されており,実際には高速度冒進を比較的安価に防止する方法もあるのだから,労災予防の立場から厚生労働省に噛ませる必要があるかもしれない.
 永田議員が嵌められた,あの程度の謀略メールくらい日時設定を過去にして自分宛にメールを打てば簡単に作れてすぐ匂うだろうが!思いだけで自爆質問して四点セット追及の蓋をして悪政を助けるなんて話にならない.かって野に下った自民党議員たちが野党としての質問技術を仇敵共産党弁護士議員を講師に頼んで学んでいたが,そういう図々しいほどの必死さが民主党議員たちには足りない様だ.菅直人氏も前日の赤旗スクープの説明を求めて問題点を正確に理解してから質問すれば役人もトボけられなかったのに,あれでは東工大応用物理学科出身が泣いてしまう.
 ……と書いてupしてコンビニに出掛けたが,週刊誌にはなんと「学会陰謀説」,捏造札付き記者の弁護士は筋金入りの創価学会員,前原代表自民寝返り準備説!ばかばか!捏造メールも,学会陰謀説も有り得るストーリーだから広がるが,論評にも値しない!

  どっちに転んでもばかばかしく,国民には迷惑なことは放り出して,重ねて指摘しておくべきことを貼っておきます.
 各ATSの安全度比較を事故破損度に直結する冒進エネルギー比≒停止距離比でいえば、速度2乗比例だからATS-Sx:私鉄通達:ATS-P=36〜42:1:0 という決定的な差になっている。'05/05/16国交省政府委員答弁,それをなぞった北側国交省答弁は虚偽である.(=×「国鉄型も私鉄通達型も赤信号の手前で停止させるから安全性に違いはない」)

 この事故発生の様子を大変的確に報じたのは現地高知新聞.
こういう報道をしてくれると物理的に何があったのかが正確に伝わってすぐ事故解析図に焼き直せた.その原図(上)と修正図(下)を示す.もう少し正確だと良いのだが不足分と若干のミスで80点の優評価.どこがまだ不足か不正確かは上下を比較して見て戴きたい
高知新聞05/03/05

[事故状況図]  (上図高知新聞記事の補正)
事故状況図
 事故原因となった地上子位置不適切は上図中指摘の結線ミスではなく,設定規則そのものに問題があったことは冒頭指摘の通り.
2006/03/02 20:40
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