BBS
BBS
mail to: adrs
旧
新
Diary INDEX
Geo日記
戻る
LIST
主目次

[103].事故調査機関は監督機関と独立要
   中目黒惨事は何を示したのか?

  営団地下鉄日比谷線中目黒惨事からまる6年経過.国交省に事故調査検討会が作られ,1年半後に調査報告書を公表すると共に,この事故を機に常設の航空事故調査委員会に鉄道事故を含める法改正が行われた.事故調査を当事者ではない常設機関に移したのは前進だが,それでも以下の3つの問題が残る.
  1. 事故発生予防のための調査と,刑事訴追の犯人探しの調査は性格が違うこと.
  2. 監督責任を負う官庁の管轄下の組織では言えない部分が残ること.
  3. 専門的内容を全体像として捜査機関が掴めないまま,世論の処罰感情を満足させるためだけの生け贄処罰を現場の人達に加えてきた体制は変わらないこと.
 3.項に関して現地警視庁目黒警察署は3つの大きな失態を冒した.一つは事故現場のレールを勝手に取り外して押収し,厳密な再現試験を不可能にした.一つは車庫内での2件の脱線事故で輪重管理の必要を指摘され,職場から繰り返し輪重計設置要求を受けながら敢えて拒否して事故に至った会社の責任を放置,一つは管理限界値と危険値の違いを理解できず,怠慢による事故として保線労働者5名を見当違いの被疑者として送検し2年間に亘り刑事訴追の危険にさらした.幸い事故調査検討会報告書の結論で不起訴なったが,不当処罰の構造としては北陸トンネルきたぐに火災惨事(1972/11/6)での生き残った乗務員の不当起訴と同じ構図なのだ.どうしても業務上過失を言うなら,車庫内で2度も起きた脱線事故対策の輪重管理要求を拒否して事故を招いた管理部門の責任だし,また北陸トンネルから引き出して消火し物損事故に留めた特急日本海乗務員を規則違反として処分して火災発生の急行きたぐにに北陸トンネル内停車を強いた国鉄当局にこそ重大な過失責任があるだろう.保線係や乗務員の責任はほとんどない.警察・検察の扱いは極めて不公平で不当である.
 公共輸送機関の事故については西欧に準じて免責を定めて原因追求するとか,会社としての責任を問える様刑法を改めるとか,せめて安全対策に処分権のない現業に根拠薄弱な刑事責任を押し付けがちな現行運用を改めて貰いたい.
 さすがに昨年4月の尼崎惨事ではこの失態を承けて航空・鉄道事故調査委員会に鑑定依頼の形で誤送検のリスクを回避したが,1.〜2.項の問題はそのまま残っている.
 不公平だろうが冤罪だろうが目に見える処罰対象を作りさえすれば良いかの警察成績主義は願い下げにしたい.弁護士が付かない少年事件など未解決事件を寄せ集めて背負わせたり,バイクライダーを無差別制圧して負傷させたり,恐喝暴行集団先輩に抵抗した被害者をあべこべに傷害罪で処罰,直前の先輩恐喝屋の暴行を「別事件」と称してそちらは免罪したりの恣意的な取り締まりが罷り通っている.

 1.項については,疑わしきは罰せずが刑事裁判の原則だから,事故原因がミスであると確定できない限り処罰してはならないが,事故抑制対策は発生確率のより高い要因を潰せば有効で,それが極めてまれに起こる真因をマスクしても対策としては有用なのだ.だから最も有り得る推定で差し支えないが,刑事処分の根拠にはできないものがある.

 2.項は,中目黒事故の事故調査検討会報告書に典型的に現れている.様々な脱線要因を並べた報告書について,マスコミ報道では脱線原因の特定できずとして終わっていて,摩耗速度を抑えられるレール側面の斜研削までが「のり上がり易くした要因」とされて「自主的に」中止されてしまったが,検討会と国交省の事故防止対応指示から原因を読み解けば,
 ●主要因が輪重バランスの無管理
 ●副要因が脱線防止軌条設置基準を営団のみが極端に緩めたこと

に尽きている.東急以外の事業者が,まさか左右バランスを管理してないとは信じられないことだったが,何等かの台車組立調整工程で結果として保証されるのではないかという疑問がなくならないほど酷いことだ.通常はライナーという詰め物で輪重を調整しているのに,なぜ全社で放置されたのか??これらは最終報告書公表前から折々に公表されて事前に判っていたことだ.
 この対処からは,かっては路線の最高速度まで認可事項としていた運輸省が,安全の基本についてまで事業者任せにして,ガードレール設置基準を策定していなかった監督責任は明白だが,事故調査検討会報告書の書き方一つでマスコミ的には有耶無耶にされてしまった.事故調査検討会報告書自体をまともに読み込んだマスコミは無かったということだ.事故報告書が細分化された複数ファイルで公開されているだけでなく,エラーで停まりどうやっても一発ではダウンロード出来ないのは国交省擁護なのだろうか?と疑ってしまう.私はマスコミ関係者からコピーを頂いた.

 類例では,'68年前後の過速度転覆事故に速度照査通達を出していれば'05/04尼崎事故を防げた可能性は強いし,'87年国鉄廃止時に私鉄ATS通達を廃止してなければ'88年東中野事故や'97年大月事故は無かった.そもそも'67年私鉄ATS通達を猶予期限付きででも国鉄に適用していれば数々のATS-S改良を迫る事故は起こらないで済んだのだ.
 事故調査機関は監督機関とは別建てにすべきではないだろうか.

2006/03/08 23:58
旧
新