鉄道事故史とATS・ATC概説(2)

《 小目次 》
  (04/08/29追加)

[[ 事故史 ]]

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【 車両の基本性能に関わる事故 】

 ATS・ATCは、車両側の減速性能が正常で、取扱が妥当なら安全に停まれることが前提の装置。従って、故障や、元々の欠陥、氷結など想定外の異常はカバーできない。積雪時の事故だった西武田無や名鉄新羽島はこの型の事故だし、重なる初期型新幹線100系過走事故も常に滑走防止装置が絡んでおり、制動よりもフラット防止を優先させた「国鉄型滑走防止装置」に基本原因(論理設計エラー)がありそうだ。

<kassou>(04/01/27)

国鉄型「滑走防止」装置=フラット防止装置=過走助長装置!
       =(0〜100系の粘着力問題)

  前後台車の速度が違うと「滑走とみなして」ブレーキを前後とも緩解して再粘着を図る「フラット防止装置」が国鉄型滑走防止装置。制動距離を保証するアンチ・スキッド装置ではない。衝突防止には車輪が3角になっても制動を続けなければならない場面が想定されるのに、国鉄型は、2つの速度センサーが違う速度を検出すると「滑走発生」とみなして遅速両方を緩解!これでは、条件次第で大滑走も無理もない。
  この装置は103系試作車(1963年後半)と201系試作車に採用されたが、量産時には共に取り外され在来線では量産移行後使用されなかった。しかし初期型の新幹線車両系と100系では全車に装備されている。
  重大な欠点は、ブレーキが有効な高速回転側の軸も一緒に緩解すること。ATS・ATCによるブレーキでは、再粘着後の制動は一旦滑走したからと云って、ブレーキ段階は弱められないから制動→滑走→全緩解→再粘着→制動→を繰り返して制動距離が大幅に伸びる危険がある。現に新幹線では1〜1.3kmもの超長距離を含めて過走事故を繰り返している。手動運転では一旦滑走に気づけば、閉そくの制動余裕などを念頭にブレーキを弱めて滑走直前の最適な制動が可能だから、運転操作で吸収でき、過走してもそこそこだが、この時の自動制動式では再粘着後も一定ブレーキ力で加減できない.
&#spc!!#今のVVVF車の滑走防止装置は滑走側台車だけを緩めるアンチスキッド制御の様である。JR北海道高速車両に採用された鉄道総研の「マルチ・モード・ブレーキ」などは4軸独立制御で、各軸の速度変化率が大きく+に振れるのを再粘着とみなしてエアーを込めるなど、降雪氷結高速時の制動距離を保証する微妙な制御を行っている。

[ 新幹線大過走事故 ]

ひかり号名古屋380mこだま号岐阜羽島1〜1.3km過走事故
 '65/5名古屋駅で380mもの過走事故発生、'67/7&/11豪雨の悪条件下で岐阜羽島駅停車のATC制限でブレーキが掛かったが、この国鉄型「滑走検知装置」では滑走を検知すると高速回転側(滑走していない側)の台車のブレーキまで緩解して、再粘着すると再びATC制限超過で滑走限界を超えるブレーキが掛かって再度滑走検知、ブレーキ全緩解を繰り返して1〜1.3kmもの大暴走に至った。
 対策として、'65年の名古屋での380m過走では一旦滑走検知後は、列車先頭の速度計軸にはブレーキ力を50%減らしたが、'67年に岐阜羽島で再度大過走が発生し1000m以上も過走したので更に油圧をゼロにした。しかし滑走してない軸のブレーキを弱めてしまう弱点は無視され、そのまま温存されて、後年'98年の名古屋駅での2度の過走事故に至る。速度計軸非制動の措置で過走距離が少なくなったから若干効いてはいるが、主原因を放置だから相変わらず過走するのだろう。

鳥飼事故も滑走検知装置絡みか!

 「絶対停止」の3区間を過走して本線を支障し脱線、衝突寸前の危険な事態となった鳥飼電車基地脱線事故(1973/02/21)も、油垢汚損が基本原因とされ、3区間の延長で幕引きされたが、事故詳細経過を読み直すと明らかに滑走防止装置絡みで制動距離が伸びて絶対停止区間に収まらず発生した事故であり、その本質はATCの責任ではない。車両側制動特性の問題である。

cf. 鉄道業界・無かったことにしたい出来事#696 http://hobby3.2ch.net/test/read.cgi/train/1063372922/696n 04/01/11 14:34

[ 滑走の絡む過走事故 ]   (この6件に共通性がないか?!)

1965/05/04 名古屋駅ひかり17380m過走事故.(奇数番号は下り).
  対策は滑走検知後停止まで速度計軸の制動空気圧を50%弱くする.
1967/07/23〜/11/ 岐阜羽島オーバーラン事故。1300m、1000m過走.(新幹線事故、柳田邦男。
  但滑走距離は出所不詳)。対策は滑走検知後停止まで速度計軸の制動油圧をゼロにする
1973/02/21 17:30:40 新幹線鳥飼電車基地過走本線支障脱線事故.
  対策は3信号区間延長、噴出油量の適正化
1998/08/05pm 新幹線名古屋駅でこだま414号&418号とがオーバーラン!
  それぞれ約80m50m。(偶数番号は上り:東京方面行き:金沢工科大論文)
  対策不詳。国鉄型滑走防止装置搭載車を老朽廃車か?

HP:鉄道を斬る
新幹線名古屋駅における「こだま」号オーバーランの意味するところ
  http://www2.kanazawa-it.ac.jp/knl/nagase/comment6.html
overrun.gif   (98/08/15金沢工大永瀬教授記)
  永瀬論文はここで過走原因としてJR東海公式見解の線路への油の付けすぎと、教授の独自見解として、確認扱いの待ちボタンで、高速のまま緩解されることを挙げているが、国鉄型滑走防止装置の弱点には全く触れてない。しかし、その初速はATC分岐制限の70〜80km/hであり、それは在来線の進入速度と同等以下の値(∵ホーム長420m16両/在来320m15両)で、減速度の無理はしていない。滑走で誤緩解すれば再粘着して直ちに30km/h照査で常用制動が掛かるのだから、それだけでは大幅な過走は説明しきれないと思う。'65/5名古屋過走380m、&'67/7岐阜羽島駅過走1,300m〜1,000mは、対策として先ず滑走検知後の速度計軸の制動空気圧を50%弱め、それでも1,000m過走したことから、さらに制動油圧をもゼロに制御しており、加えて名古屋駅過走380mでは70km/h制限と30km/h制限の境界点であるB点100km/hで通過したが、'98/8名古屋駅過走では制限値が80km/hに上がった他は、そんな過速の痕跡は無かった。従って名古屋は回の滑走検知緩解だけで80m過走とは考えがたい。

<knowhow>

[ ノーハウの敷衍で防げた可能性のある事故 ]

【 ATSの基本性能に関わる事故 】

<ATS_ERR>
04/10/16追記
  「基本性能」に関わるかどうかの判定基準を述べた別紙:「ATS−Pとは」を見て頂きたい。この論議が抜けると、ともすると悲劇のATS−Sxの様に、現物があって、個々の機能の比較に留まってしまい、現象面の防止策を泥縄式に継ぎ接ぎして苦闘する基本的原因にもなってしまう。

「停止位置基準速度照査方式」はなぜ優れているか! <P_WHY>

なぜ ”ATS−P方式”なのか!

別紙「ATS−Pとは」参照

ATS・ATC:現状での機能不足は?

<mi_kairyou>
  下記の事故一覧をみて、1)ATS-Sx,2)ATS-P,3)ATC,4)私鉄仕様ATSに現在残る安全保障上の課題は以下5項目が考えられる。
冒進許容防御であること  1), 4), 私鉄も小事故は少なくない
信号の速度照査がないこと 1),  Sx速照付加改善案
連結時の速度制限が無い 1),2),4), 目視と感の連結作業
入替系にまだ不投入扱いが残る模様4),
曲線・臨時速度制限が組み込まれていない 1),2),3),4), Sxはロング地上子1個で可

  以下、事故略歴(前頁にて詳細既出)

mail to: adrs
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