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国立天文台一般公開
見てきました! 2012/10/26〜/27

 国立天文台、旧東京天文台が三鷹市大沢にあり、その一般公開が10/26金〜10/27土に行われて、両日を覗いてきました。場所は西調布−武蔵境を南北に結ぶ天文台通りの国分寺段丘崖上にあり、調布側からは野川先の坂を登り切るちょっと手前西側に正門があり三鷹駅より調布駅からのほうが近いのです。

 前回の天文台見学(BBS)は個人ルートで申し込んで、ボランティア説明員が付いて要所を回ってくれたのですが、今回の一般公開では各所にたくさんのミニ講義が準備されて、それを聴講するだけでも2日間の半分は埋まってしまい、様々な現物公開を見て回ると時間が足らないのかも知れません。

     See→国立天文台見学記(2006/04)

 6年前2006年4月の見学と大きく違って感じたのが、高性能観測システムの台頭により既に退役した歴史的観測装置を単なるガラクタとして放置するのではなく、照明、解説板などを設置して一般向け見学コースとして整備して積極的に公開していることです。s43年頃以降は観測には使われず、いつの間にか野生の狸の巣になっていたアインシュタイン塔+分光棟には真新しい電気配線パイプが通って使わなくなった古い観測装置を集めて展示していましたし、半分がガラクタ倉庫化していた65cm主望遠鏡建屋は、ガラクタを処分して一種の天体観測博物館化していました。
コロナ観測望遠鏡
コロナ観測望遠鏡@国立天文台
 観測研究自体は、リアルタイムで地球の裏からも送られてくるデータ(八ヶ岳山麓野辺山45m電波望遠鏡とか、ハワイ島マウナケア4200m高の8.2m(323インチ)口径スバル望遠鏡とかチリ・アタカマ高地5000m高18km等価開口径のミリ波サブミリ波干渉計ALMAや、諸観測衛星のデータなど)で行われていて、旧設備が全く要らないのは確かですから、当面の必要だけで見れば旧設備の放置は止むを得ない処ですが、「金にもならない研究」と攻撃して、「一番じゃないとダメですか!2番3番じゃダメなんですか!」と権力を嵩に、野蛮が文明を叩き壊すかの衆愚パフォーマンスが席巻している時代に学術研究を護るには、その価値を理解してくれる国民世論を醸成して味方につける努力が不可欠で、たゆみない様々な一般公開の取り組みや情報発信が求められます。
 その意味で、旧観測設備の文化財としての価値をも訴える博物館化(天文台歴史館、天文機器資料館、分光機器展示館など)や星座ペーパークラフト配布、工作教室、天文教室・50cm市民公開望遠鏡などの試みは大いに結構。さらに各研究者に一般人に理解してもらえる解説を工夫させることは、日常研究開発の客観化、原理的整理を迫って逆に高度化のきっかけにもなるものですから一挙両得の措置です。一般の職場・現場でも、毎年一定数の新人を配して教育していくことは、教育を担当する構成メンバー自体の再教育と実力の深化に大変有効です。「合理化」で新人採用を控えて世代ギャップを作ってしまうと、その技術継承がされず、リフレッシュもなくなってヒドイことになるのが普通です。

 研究者・学生が担当した展示説明をそうした目で振り返りますと、一般門外漢向けの総原理解説が抜けて、中間特性の良さだけを説明しているため、総合的に何が素晴らしいのか判らないとか、まだまだ生硬で修業が足りません(w。もっと見学者を募ってボランティア解説を重ねて解説の質を向上させる必要があるでしょう。

 また一般公開の宣伝範囲はまだまだ狭くないでしょうか。私自身は某区立児童館ではがき大のチラシを発見して押しかけたのですが、調布市にある大団地の街区掲示板では見かけませんでした。町内会レベルには働きかけが無いようです。演劇公演のチラシのような光沢紙にオフセット印刷したような高級チラシでなく、コストの安い孔版印刷2色刷り程度のチラシを広範に配布し、勧誘するルートをもっと開拓した方が良いと思いました。文明破壊の野蛮人、蓮舫女史などの御活躍で、まともな対抗輿論も起こって、たとえば教職員組合・教研集会ルートなどに乗せて貰えれば東京三多摩だけでもチラシ8000枚余は入るはず。生徒を介して家族連れ見学を期待できます。

 次々と展示を眺めていて気付いたのが、電波望遠鏡を中心に「カセグレン型」が主流になっていること。「カセグレン型」というのは主鏡が中心穴空きの凹面鏡で、さらに副鏡で反射させて主鏡中心穴を介して焦点を結ぶ方式一般の通称で、光学望遠鏡や電波望遠鏡ではその主焦点の位置にフィルム/撮像素子が置かれ、光学望遠鏡では主焦点の像を接眼レンズで拡大して観測するもので、副鏡は平面鏡とは限らず、凸面鏡として等価焦点距離を長くして高倍率とする構造が特に電波望遠鏡で採用されているようです。(パラボラアンテナの中央部に丸穴の開いているのはまず「カセグレン」構造です)。野辺山天文台の45m(反射式)電波望遠鏡など建設当初は主鏡だけで直接受光素子で受けていたものを、すぐに凸面鏡の副鏡を設けてパラボラの後面に導き、ヘリオスタット構造で一定方向に変換して地上に固定された大規模・高感度の受信設備に導いています。アインシュタイン塔が建設当時の光学望遠鏡から、カセグレン構造の望遠鏡に改造されていて、必要な塔の高さは半分で済む状態でした。時折、新聞での通信販売に載る超小型の「500mm望遠レンズ」は形状から見ておそらくこの「カセグレン型」構造をレンズ内部に含むものでしょう。主鏡が凹面鏡、副鏡が凸面鏡という構造は、焦点関係だけで見れば対物レンズが凸レンズで接眼レンズが凹レンズの双眼鏡と同じ配置です。

 なお、同天文台は博士課程だけの大学院の天文関係学科の主キャンパスにもなっているのだそうで、国内の野辺山天文台や水沢観測所などだけでなく、ハワイのスバル望遠鏡や、南米チリのアタカマ高地のALMA干渉計まで出掛けていって研究に参加するのだとか。大学卒業後6年以上も学ぶなんて親も大変!三鷹ならバイトが可能だけど!と思ったら、「取り敢えず入学してそれから研究者としてやってく決意を固めた学生さんが一番多い」との当事者アンケート結果が貼ってあって思わずニヤリ。博士課程に進学するのに取り敢えずなんですか(w。

 50cm一般公開望遠鏡脇のグランドで「協力会」が天体望遠鏡を設置して参加者に覗かせていましたが、そこに天体望遠鏡の補修部品屋台があり、ニュートン型反射望遠鏡の斜鏡とか、接眼部用の直角プリズムとかのバラ部品が積んであり、写真の三脚に張り付けるつもりでコンパスを2個買ってきたのですが、これが2個ともN-S逆着磁で、第3者に流れると危険を呼ぶアイテムと判断して捨てることにしました。天文台のお祭りで夜店のカメみたいなトホホのインチキ商品を掴まされるとは!こんなインチキ業者を参加させてはいけません。

 ミニ講演をいくつか聞いたり、太陽フレア望遠鏡の観測像を覗いたり、広い構内をうろちょろしているうちに終了時間となり帰ってきましたが、国立天文台内の東大生協が図書販売をしていて、「デジタル天体写真のための天体望遠鏡ガイド」(西條善弘著、誠文堂新光社2012/8/31刊¥1800+税)という本を衝動買い。
 専門書籍やDeepな内容の本はなかなか一般書店にはなくて、神田書店街を廻るか、郊外の大学生協書店に潜り込んで中身を見て買っていたのですが、近所の電通大生協がIDカード精算になって外部からは買えなくなってしまい、不便になりました。回転の良い本だけ扱い専門書を置いてもいない一般書店が、良書も揃える大学生協の販売に圧力をかけないで貰いたいもの。
 高性能の天体望遠鏡に必要な様々な要素を概説していて「フィールド・フラットナー」とか「エクステンダー」「コリメート法」「テレコンバータ」「内部反射絞り(遮光環)設置法」「球面と色だけではない各種『収差』」「回折」「望遠鏡の軸や方向の調整法」などなどの実務的内容を述べていて、自分自身でどこまで実施しきれるかの疑問が湧くほどです。「経緯儀で追尾すると像が回転する」というのも初めて気付かされました。
 今年5月の金環食を機に焦点距離と開口径と露光時間だけで試作した太陽・月撮影望遠レンズでどうしても解像度が上がらなかったのは当然だったなぁと思いました。太陽撮影には絞りの関係で自作望遠レンズを使いますが、月などは、200mm望遠レンズで撮影した像を大きく引き延ばした方が解像度が良いくらいです。まぁ一夜で作った習作望遠鏡でした。

理科年表誤植前の正常記載発見!
1968 1969年版から現年度版まで45年間誤植のまま!?   <H>

 「理科年表」は国立天文台(旧東京天文台)が編纂する権威ある科学データブックですが、出版物である以上「誤植」は避けられず、特に昔の活版印刷時代には随時に(ほぼ毎年)活字を拾って版組して出版するわけで、その都度誤植の危険がありました。
 その中で、ずっと気になっていた誤植が、音響の部の「音名b」に相当する欄がず〜〜っと「」になっていることです。日本の小中学校・高校音楽で普及している音名としてはA〜G±(♯♭)(イ〜ト、T〜Zとその±♯♭)ですから、なんて音はありません。どこかで誤植をしています。 ドイツ式音名だと「H」(ハー)というのは有るようですが、音楽教科書が一貫して「」表記なのでピアノの専門教育のごく一部にドイツ式の例外があるとか、ギター等の高調波演奏(ハーモニクス)がフォークソングの楽譜では英米表記の「Harm」であるのが、クラシック・ギター用楽譜の表記でドイツ式の「arm」となっている程度で、普通は音名「」という表記は見たことがありません。 (「ハーモニクス」の例としては映画「禁じられた遊び」のテーマ曲の末尾和音など)。物理/化学部「楽音の基本周波数」の表「」、及び楽譜部の「」「h’」を、それぞれ日本での一般的表記の「B」「b」「b’」に訂正する必要があります。(2012年版でp物理76(438)。
 ※補足:1968年版の理科年表(第41冊)を発見!そこには音名は正しく「b」と書かれています(p物理96「楽音の基本周波数」)。東京天文台保存の1968年版とは版が違うのかも知れません。(2017/01/15追記)

 対数律での音程、ハ長調の音階

周波数 fn=fo×2((n−9)/12)
基準周波数 fo:880Hz=A,(n=9)・・・・・・音名A(イ)
   (NHKラジオでの時報の末尾の音。楽器調律基準
    先頭は440Hz:国際標準)
(算出結果:n=0〜12(理科年表に一致))
n音名周波数Hzハ長調階名
n= 0523.25
n= 1  C、D 554.37  ド、レ
n= 2587.33
n= 3  D、E 622.25  レ、ミ
n= 4659.26
n= 5698.46 ファ
n= 6  F、G 739.99  ファ、ソ
n= 7783.99
n= 8  G、A 830.61  ソ、ラ
n= 9880.00
n=10  A 932.33  ラ、シ
n=11987.77
n=121046.50

 基準音程Aの推移
  440Hz←(戦争)←435Hz←410Hz(バッハ)

・・・・。戦争を挟んで、調律の基準となるA音のピッチ(音高)が、435Hzから440Hzに上がった・・・・。
・・・・バッハの時代はもっと低くて410Hzほどだ。

   日本経済新聞2012年11月22日(木)40面
     「音作りはオーダーメード」より
山田宏氏、調律師。メルパルクホール(東京港区)、埼玉会館(さいたま市)など専任、ピアノ調律60年。ニッセイ・バックステージ賞受賞。

[435Hz/440Hzの根拠は?]

カンマー・トーンはつねに高くなっていき
1820〜問題視
1858-1859 ピッチに関する会議。
      科学アカデミー提案a=435Hz採択。於パリ。
1859/02/16 435Hzを法律としてフランス全土を拘束。
1862    当時権威あるヴィーン宮廷オペラが435Hz律採用で定着。
    ・・・・・・
1939/05 ロンドンでの申し合わせでa1=440Hz とするオクターブ12
     対数律周波数を用いると決定。(理科年表「楽音の周波数」)
     現決定機関はISOと思われる(執筆者補足)

純正律音楽研究所 2006/01/27版
標準ピッチ考-音合わせの社会史
故玉木宏樹氏「純正律研究所」

日米音名定義
日本音名に英米音名を並記
「中学生の音楽1」教育芸術社1993年2月刊p58
裏表紙裏に主なギターコードフォーメーションを英米名で掲示。
 英米名で49種の基本フォーメーションと楽譜を掲示する教科書もあり、小中学校教科書にドイツ音名表記「H」は全く見られない。更に古い教科書はカナのみでアルファベット音名の記載はない。

 それが今回の天文台公開でアインシュタイン棟分光機器室の展示に1965年版頃からの理科年表展示があり、誤植版年次を捜したところ、1967年版(s42年版)以前には正しく音名「」、翌年の1968年版(s43年版)から誤植「h」となって、最新2012年版まで45冊にわたって誤植が続いていることが判りました。執筆者自身による正しい記事が出てきましたので、これを根拠として記事を訂正できます。

 一般公開当日27日の分光棟(アインシュタイン塔)での説明員になっていた研究職員の方に正データと誤植を示しますと「早速連絡して直してもらいま〜す」とのことですが、例年は前年11月末ごろには発売される翌年版2013年版に訂正は間に合うでしょうか?作業工程から考えてかなり微妙なところです。「音は専門じゃないもんで判らないんですが・・・・・・」とおっしゃるのですが、義務教育たる中学校音楽は「専門」ではありませんで、興味のない学習内容はお互い忘却の彼方なのでしょうねぇ(w。誤植のまま45版も重ねるということは、誰も見ない要らないページであることの反映なのかもしれません。
 周波数表を載せることよりも、平均律≒対数率であることを述べて、基準音に対する数式表現を加えたほうが理科年表らしい記述の気がしますし、世界の地域ごとに微妙に異なる音階の存在や、ギターなどで使う対数率ではない、2:3整数比のピタゴラス律などや、整数比をさらに進めて全音階の協和性に重きを置いた純正律の存在や、著名オーケストラ毎に基準音程が微妙に数ヘルツほど高く異なること(「ラジオ技術」誌、創刊時季の音楽鑑賞コラム)など、地域ごとの歴史や感性により微妙に異なる音階の存在に触れるとか、和音、和声の物理学的解説とかを加えた方が親切なのでは?バッハ提唱当初の「平均律」は、「対数律」とは微妙に違っていて、後から数学的な対数率に整理されたという話もあるくらいです。音楽表現は物理学側が従で、流通する諸音楽の実態を数量的に解説するものですから、あたかも理科年表の数値が音楽を規定するかに採れる表記にならないよう留意した方が良いと思います。See→A音周波数の推移

 この誤植を発見したとき、大昔に借りて使った古い理科年表では正しく「」と表示されていた記憶がありましたから、旧版を調べましたが、千葉市の中央図書館には年度が飛び飛びに10年分ほどしかなくて誤植前の年度版は捜せませんでした。
 当時、余計なお世話は承知で編纂者である東京天文台に連絡してみますと、「『音』は天文台の担当分野ではなく、理科年表の編集実務は丸善書店が引き受けている」ということで、そちらの担当に連絡しますと、「執筆者が既に亡くなっていて、代わりの執筆者がまだ得られず、編集担当では根拠なく訂正できない」ということでそれ以来10年近く放置されてきたものですが、その後、新執筆担当が得られても気付かれずスルーされていました。
 しかし、古い版を調べれば誤植前の正しい表が見つかりますし、西洋音楽での「音名」については音楽の授業で小学4年生あたりからト長調(G:♯一つ)やヘ長調(F:♭一つ)の唱歌の楽譜が現れて、中学音楽では「楽典」章で音階名(ドレミ・・・・・・)と音名A〜G(イ〜ト)とその♯♭を教えていて「義務教育での一般常識」化しているわけですから、誤植の具体的な指摘にそうした確認もせず、「亡くなった執筆者の責」で放置してきたのは最高権威、理科年表の編集部としてはかなりの怠慢。三文PC雑誌でさえ編集者は原稿内容の裏取りをして記事にしていたというのに。(編集者が著者に確認せず勝手に書き換えて逆に間違えるというヒドイのもありましたが、少なくとも編集者が内容確認作業をしていたことは間違いありません)。
 理科年表は高校生あたりから使い始める科学データ集ですから誤植は特に避けたいものです。2013年版から訂正されるといいのですが、ごく専門的・例外的で知る人も少ない「ドイツ方式だ」などと頑張らないでもらいたいもの。

【 蛇足 】音名表記の推移   <Name>

 日本で一般的に使われる「音名」を辿りますと、明治維新以降の学校教育で音楽が取り入れられて、文部省唱歌が制定され、その元歌にヨーロッパ系のスコットランド民謡とかアイルランド民謡、ドイツ民謡などが含まれていて、英式、独式どちらかに限られることはなく、純日本式に「ハニホヘトイロ」と命名され現在に至ります。
 絶対音程(周波数規定)として
と定めていて、曲の呼称も以下に示すように嬰・変を加えた日本式音名による調名を冠していまして
 (但し、嬰=♯=半音上げ、変=♭=半音下げを意味します) ドイツ式や米英式の音名は、ピアノ教育など専門分野を除いては使われていませんでした。A♭(Aフラット)、E♭(Eフラット)、C♯m(Cシャープ・マイナー)という英米式の呼び方はしませんでした。

 そこで敢えてドイツ表記を探しますと「古典ギター:クラシックギター」の教則本として「カルカッシ・ギター教則本」があり、その日本語版に「最も教えよく,最も学びよい改訂版カルカッシ・ギター教則本」(溝淵浩五郎編著、全音楽譜出版刊で1968年ころ市販されていたもの)にギター練習曲名としてドイツ読み(C Dua ツェー ドゥアー、G ゲー、D デー、A アー、E エー、a moll アー モル、e、d、(大文字は長調、小文字は短調))がフランス表記とともに併記されていましたが、B/Hの練習曲は在りませんで、古典ギター教則本からは判りませんでした。
ドイツ音名H
「女子音楽」(堀内敬三ほか編、
音楽の友社刊1972年改訂p154表)

 同時代に刊行の女子高・女子大音楽教科書副読本「女子音楽」(堀内敬三ほか編、音楽の友社1960年刊1972年改訂p154右下音名表)の末尾一覧表にようやく、日本式(ハ〜トイロ、TABWXEF)、英米式(C〜B)、独逸式(CDEFGA)、伊・仏式(ドレミ・・・)が載っていて、日本では「階名」として扱われるドレミ〜がイタリー・フランスでは音名であることを掲げていました。

 我が支配者の遠い記憶では女子短大保育課の必修としてピアノ実技があり「(ピアノ教則本)チェルニーを詰め込まれたときにはドイツ語読みでツェ〜だのア〜だのと読まされたけど、ベ〜だったかハ〜だったかなんて、まるで記憶がない。もしかして各調練習曲のタイトルだとしたら、ベ〜/ハ〜練習曲は存在せず、そのため読んだことがないのかもしれない。義務で詰め込まれた面倒なことはとっくに覚えてない」。だ〜めだ!こりゃぁ(w

 この時代にアルファベット音名だったのはチューニング用の音叉に「A」440Hzと「C」523.25Hzが売られ、ギターの調子笛(=ピッチ・パイプ)で1E、2B、3G、4D、5A、6Eと刻印されていましたから、2「B」というのは英米式音名ですが、「東京古典ギター協会」などがクラシックということで敢えて政策的にピアノなどに倣いドイツ式呼称を使っていた様です。
 ギターがポピュラーになるのは盛り場の流しあたりで、印象的なイントロの「湯の町エレジー」(古賀政男曲、近江俊郎歌)を弾きたくてギターを買って1曲覚えて打ち止めとか、次の世代では映画「禁じられた遊び」のテーマ曲に使われたナルシソ・イエペス演奏の「愛のロマンス」を弾いてお仕舞いとかの1曲演奏アマを大量生産したものですが、ドイツ読み併記のカルカッシギター教則本の表記は実は少数派で、機材は英米表記だった様です。(今はギターピース自体がなかなか見つかりません。バンド・ピースにピアノ・ピース・・・・・・J-Pop有名アーティストなどの全集本はありますが、今、商売になる楽器のものばかりです)
 伴奏の和音としては、音名ではなくT(主和音)、W(下属和音)、X(属和音)、X7(属7=属和音Xに基音から7番目の音を加えた4音和音。長調ではソシレファ和音。ファは基音ソから7番目の音)、といった階名番号で呼ばれ、長調和音はギリシャ数字の大文字、(短調和音はギリシャ数字の小文字:大文字もあり)というのが中学・高校音楽教科書での扱いでしたから、アルファベット音名の出てくることはありませんでした。(音楽の教科書・教則本には「7」の由来とか「dim」ディミュニッシュとはとかの基本的定義が述べられておらず門外漢を惑わせていますが、実際は大した内容ではないようです。)
 さらに、各種音楽用語は主にイタリア系だというのに、クラシックの人達が何故ドイツ呼称音名に拘るのか?という問題があります。イタリア・フランス系音名が日本では階名(ドレミ・・・・)というのでは、そこは混乱を生じて採用できませんが、クレシェンド、デクレシェンド、アンダンテ、カンタービレ、レガート、ダルセニョ、ダカーポ・・・・・等々音楽表現指示はイタリア語なのに、音名だけ広く普及した英米表現を排して独逸表現に拘るべき統一的根拠がないのです。この辺は翻訳文化で複数ルートでの輸入による齟齬が基本原因で、実務の場で先に必要を生じた事柄が断片的に導入されて統一性を欠いたところへ翻訳の本家古典思想が割り込んだのでしょう。我が電機業界を顧みても当時の先端技術用語としていまだに残る「ブスバー」とか「B級直線増幅器」とかの不可解な術語が席巻したのと同じ翻訳文化由来の混乱でしょう。「交流電圧の上半分しか増幅しないB級増幅動作なのに、何で『直線増幅器』なんだ?!」とは高校時代にGG(全格子接地)ブースター回路(アマチュア無線のSSB違法増パワーに多用)の解説を読んでの重大な疑問でした。
 理科年表がこの時代s30年代〜1960年代前半までに音階音程表を掲載していたら音名は日本式のイ〜トになっていたでしょう。
英米式和音名
器楽では英米式和音名が主
「中学生の器楽」教育芸術社1993年2月刊p30

 第2次世界大戦後に米占領軍とともにどっと入り込んできたのがJAZZ、タンゴ、ハワイアン等でこれは楽譜としては英米式で、ロカビリーも同様。ミッチーミラーとかブラザーズフォー、今年の夏に亡くなったアンディー・ウイリアムズなど流入米系が席巻。さらにアメリカが、ヴェトナムに対してトンキン湾事件をでっち上げてハノイ、ハイフォンなど全面北爆を開始し軍事介入を強めて、その侵略政策の非道さに介入反対の与論を生じて徴兵忌避が目立ちはじめヒッピーなどが生じて、反戦運動の一部として弾き語りのフォークソングが生まれました。ピートシガーなどが先頭で、若干雰囲気を変えてジョーン・バエズとかPPM(ピーター、ポール&マリー。百万分率ではありません)とか・・・・・・、これが必ずしも背景としての社会性や思想性を伴わない”流行”として日本にも入ってきて、J-Popの源流となり弾き語りでギターコードで打楽器のようにギターを鳴らす簡便なストローク奏法や分散和音アルペジョ奏法で弾かれるようになって、コード名としても音名としても英米式のA〜Gが席巻してBm(Bマイナー)コードとかが常用されましたから、ドイツ式の「H」が一般に広がることはありませんで、60年代後半以降は英米式音名のA〜G表記となりました。
 小中高校の音楽教科書もそうした事態に追随して、イロハ〜トの日本式音名に加えA〜Gの英米式音名を併記するようになり現在に至ります。(英米和の音名併記例:「中学生の音楽1」教育芸術社1993/2刊p58左図に英米音名表記、p59にコードネームの英米式と日本での番号式を併記。教育出版kk1981年刊p40では英米式和音名(Am等)のみを特に「コードネーム」としている。教科書が世間一般より概ね10年余遅れで採用)

 従って、一般に西洋音楽を普及する原動力となった小中高校の音楽教科書・音楽教育を基準に捉えれば、ロ音:B音がドイツ式にH音とか、フランス式にSi 音とされたことはなく、日本語の科学データブックに掲載するのであれば、古くは「ロ音」、現在では圧倒的に「B音」表記が妥当だということになります。


[蛇足の蛇足]
ハーモニクス演奏ほか

 雨を汚したのは誰:半音下げ調弦でのC調形:WHAT HAVE THEY DONE TO THE RAIN?〜♪東電〜〜!!とか各地の東電前・経産省・国会前などの街頭でやろうかと思って当地の主催者の一人に提案したのですが、団塊の世代以降ではまだ知らない歌だそうで、もっと上の世代のヒット曲だったようですねぇ。「英語は苦手だ」って保留扱いで、We Shall OverComeは歌ってるし、ジョーン・バエズのファンは結構居るでしょうに〜。あんなに静かに怒りを込めたプロテストソングというのはなかなか見かけない良い歌です。DAMカラオケには残念ながらまだありません。(元々は核実験による放射能汚染のプロテクトソングとして作られたのですが、原子力発電所過酷事故発生放射能汚染抗議のプロテクトソングにそのまま使えてしまいます)。

調弦用音叉(Tuning Fork)と刻印A:440Hz

 なお、ハーモニクス演奏(倍音演奏)の楽譜表記は、弦楽器だけ演奏可能ですが、さすがに初級譜には見つからず、ギターピース(ギター用楽譜)の中級で、前出、禁じられた遊び版の愛のロマンス(全音楽譜出版ZG-2:中級の上)の最終音(およびイントロの最終和音、イエペス演奏ではさらにイントロの中間節)の上に「ar.12」とあって、これはドイツ表記で、12フレット上の弦に指を軽く置いて弾いて直後に離して出す、2倍周波数(1オクターブ上)の音の意。「ar.7」ですと7フレットの節で3倍調波、「ar.5」が5フレットの節で4倍調波(2オクターブ上)となります。(右図参照)。
 「愛のロマンスの主題と変奏」(同ZG-22:中級)は第1テーマのみの編曲で若干簡易化、イントロで2か所、第1変奏と第3変奏の最後も「ar.12」。好楽社ギターピースG191「夢路より」S.C.フォスター曲の最後の音5A上にも「ar.12」で、これらはドイツ式表記です。
 「小さな花:Petite Fleur」(好楽社ギターピースG.398)の最後から2小節目の第3拍5A音の下の「Hrm.12」は同趣旨の英米表記。12フレット上の弦に指を軽く置いて弾いて直後に離して出す、2倍周波数(1オクターブ上)の音の意。2倍調波12フレットのほか、7フレット上で3倍調波、5フレット上で4倍調波(2オクターブ上)の高調波を発生させることができます。(高調波振動図参照)
 コード名を表示しているギターピースはごく少なく、例示すれば「酒とバラの日々:The Days Of Wine And Roses」(日本音楽出版G.355(アンディー・ウイリアムス))、Begin the Begin(同G.133)、「空に星があるように」(好楽社G.323)、「虹の彼方:OVER THE RAINBOW」など非クラシック系であり、通常のギター楽譜では運指に係り(人差し指で複数の弦を同時に押さえる)セーハのフレット番号を指定して、同一音程にある弦の選択を指示するとか弾く指をa m i p と指定する表記が主流で、コード名の記載はありません。

 なお、ギターなど弦楽器の調弦は、各弦の相対的な振動数比に留意した方が濁りのない美しい音を出せるので、まずは音叉で5A音440Hzを決めて、その弦との相対関係で3:4、 1:3、 1:4の高調波でピタゴラス律に近い調弦にする方が和音として澄んだ音を出せますので、私自身は1弦ずつ独立に調弦するピッチ・パイプではなく、もっぱら音叉とハーモニクスにより調弦しています。合わせ易いA音で絶対調弦をして、それを副標準にして他弦を高調波(ハーモニクス)を使って正確に合わせるものです。(この調弦方式はかっての早稲田大学ギター同好会で主流だった方式ですが、現在は接点がなく状況不明、ギターと一緒に入手したピッチパイプはとうに行方不明です)
 なお、音叉で大きな音を出すには、音叉の足を響版上の弦を止めるコマに接触させると十分な音量が得られます。
      See→高調波調弦=開放弦調弦:ギターの調弦    (2012/11/05 20:55追記)

2012/10/31 23:55

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