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JR西日本[安全基本計画]'08/4/1 p4〜5抜粋A リスクアセスメント「あり得ることは起こる」・・・・・との視点で臨むp5L10 なお、リスクアセスメントは、労災の世界で定着しつつありますが、鉄道運転事故への適用は 初めての試みです。 B 事故の概念の見直し 4. ヒューマンエラーは結果であり原因ではないとの観点から、従来の「社員の取扱い誤り」と いう事故区分を廃止します。 今回の事故の概念の見直しにより、これまでのヒューマンエラーを中心とした分析や対策を改 め、安全上問題のある事象に対する分析や対策をより幅広く行うこととします。 |
この個人責任論、発生箇所唯一責任論は信楽事故対応で今でも一貫していて、昨年6月、JR西日本は滋賀県と旧信楽町である甲賀市に対して信楽事故補償と諸経費のほとんど全部90%余を押し付ける訴訟を起こしている。(See→日記#193)。
信楽事故民事訴訟の中心的争点はまさに、この事故発生箇所のオペレータ個人と所属組織なのか、事故にいたる様々な要因をブロックする責任から直接関連事業者に賠償責任があるのかが刑事裁判で1回、民事裁判で地裁、高裁と2回、都合3回争われて全ての裁判で、事故直結のエラーを冒したオペレータだけでなく、事故発生状況を作ったものにも責任が及ぶ=JR西日本にも大きな責任が及ぶことを判示された。最高裁への上告は憲法違反、あるいは重大な判例違反以外は認められなくなって、民事事件としては高裁判決で事実上確定したから、その脱法的上訴として昨年「補償金負担割合訴訟」が提起されたわけである。この確定した民事裁判の争点解説としては信楽遺族会提訴団と弁護団が刊行した「信楽列車事故・JR西日本と闘った4400日」現代人文社05/05/30刊p131L7〜、p93L3〜p95に詳しい。安全が綻びて事故として顕在化した場所のみを問題にして追及するJR西日本の主張は通らないということだ。それはJR西日本自身が公表した「安全基本計画」の内容(右囲み欄)とも一致する。(「安全基本計画」は従前のJR西日本の姿勢に比べてコペ転の様変わりなのだ。)
それなのに画期的な「安全基本計画」公表の2ヶ月後には脱法的に4度目の個人責任論の裁判を起こして損害賠償費用のほとんどを実質滋賀県に押し付けるというのはどういうことか。安全基本計画の主旨に矛盾し、本気の実施を疑わせるものではないか。少なくとも本社の方針決定部・法規担当部門が「安全基本計画」に対して我関せずであることを示しており、ここに真っ先に強力な教育を実施する必要があるが、その方針決定が上層部一体では自発的に直されることはなく、本心ではない方針はやがて色褪せて元の木阿弥に返って更なる犠牲を貪るほかないだろう。
●領域外制御厳禁原則のハード的意義
加えて、JR西日本には、まだ裁判で指摘されていない重大過失がある。何度か当ページの他稿で触れたが、JR西日本が行なったCTCの領域外制御、信楽鉄道小野谷信号所上り出発信号に対する方向優先梃子設置の問題である。もし信楽鉄道が亀山CTCセンターの領域内であれば、信楽駅出発信号の赤固定現象はすぐに操作した亀山CTCに認識されてあれこれ対応が採られ事故にはなっていない。現に亀山CTC制御による貴生川駅での信楽線信号異常現象はその場で詳細に把握されて臨時の回避措置がマニュアルとして明記され、改修要求が出されている。信楽側に同時に生じた不具合だけが領域外であることで把握されず、事故に繋がっている。なにより事故発生当夜から3回にわたって操作マニュアルを改竄していることは、JR西日本側が問わず語りに重大責任を認めた「行動証拠」というべきものである。
尼崎電車区運転士自殺事件対応
尼崎電車区運転士自殺事件というのは、ATS-P車上装置の運転台エンド交換切換タイミングを乗務員にきちんと教育していなかったことで、折返し駅で車掌がATS-P表示灯が消えてないことに気付いて運転士を呼び、研修係を呼んだため出発が50秒遅れたことを以て、「業務知識不足」を採り無期限の懲罰的日勤教育という執拗で組織的なパワハラに晒して自殺に追い込んだ事件である。 |
尼崎事故調査委員会最終報告書('07/6/28)が示している事故発生の直接原因は、理不尽な懲罰的日勤教育を怖れた運転士が、直前の過走についての車掌と指令との列車無線交信傍受に集中してしまい、70km/h速度制限のあるカーブでの制動操作を失念した可能性の極めて強いことを、秒単位の交信タイムテーブルを示して詳述している。
これは最終の意見聴取会('07/2/1日記#145参照)でJR西日本丸尾副社長が懲罰的日勤教育有用論を強弁してその場で撤回を求められたが拒否して押し通したことに対する駄目押しの具体的指摘になっている。世論も尼崎事故調も乗務員教育一般を否定したのではなく、業務に全く無関係のパワハラ(パワーハラスメント)型懲罰の反省を求めているのだが、それを真っ向から否定して非条理で恣意的な懲罰を全面擁護する主張を行った。そういうJR西日本の姿勢に一般的な欠陥指摘では到底足らないから、異例の念入り指摘になっている訳である。尼崎電車区日勤教育自殺事件では、裁判官は騙し続けて労災却下判定を確定させても同じ立場で責められている職場の労働者は納得させられない。会社は懲罰的日勤教育に対する根本的反省とそれに基づく解決を提起すべきである。
尚、交信傍受集中説への異論として、元国鉄乗務員の金沢工大永瀬和彦教授が運転士異常発生原因とも取れる意見書を出し、2月の公聴会でも発言しているが、当事者が亡くなって確認試験ができないから、その可能性を全面否定はできないだけであり、事故直前に正常操作であったことを示す制動操作記録や解剖所見もあって、JR西日本幹部が「事故調はひよっこ」などとはしゃぐような内容には到底達していない。(See→日記#188:かなり言い過ぎ?永瀬金沢工大教授の尼崎事故調叩き)
JR西日本が馬鹿げた懲罰的日勤教育有用論にこれほどまでに固執するのは、オペレータエラー・個人責任唯一論から抜け出せず、社の方針としてオペレータエラーを前提に事故被害抑制を図る立場にはないことを端的に示すものである。現状では「安全基本計画」は社外向けの風除けのための目眩まし作文に過ぎない。本気の改革・改善であれば、現業だけでなく基本方針を決定する本社経営部門にもコペ転的新方針「安全基本計画」を徹底すべきである。
なんと1年半で7人!自殺者続出!
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