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羽越線強風転覆事故
指令の送検は妥当か?

羽越線強風脱線転覆事故

   【 羽越線転覆事故記事 】
06/01/31 羽越線強風転覆事故概要
05/12/26 帰還制御か予測制御か    (日記92)
08/12/23 JR東日本羽越線事故対策報告(日記208)


日本経済新聞(夕刊)2009年12月21日(月曜日)

羽越線脱線
 JR東社員を書類送検
運行担当の3人・業務上過失致死容疑

 2005年12月、山形県庄内町のJR羽越線で特急列車が強風にあおられ脱線転覆し、5人が死亡、33人が重軽傷を負った事故で、山形県警は21日、業務上過失致死傷の疑いで、当時のJR東日本新潟支社輸送課の男性指令室長(54)ら運行担当者3人を書類送検した。

 県警は事故当時、暴風雪警報が出され、付近の別路線では強風による被害が多数出ていたことを重視。列車の運行を続ければ、重大な事故を引き起こす可能性があったことを予測できたとし、運行の見合わせで事故は回避できたと判断した。

 送検容疑者は、事故当時は悪天候だっだのに、指令室長らは運転を一時中止するなどの措置を講じずに業務上の注意義務を怠り、列車の運転を継続させた過失によって事故を引き起こした疑い。  ほかに書類送検されたのは、総括指令長をしていた指令室の男性副課長(52)、指令長だった男性主席(47)。

 送致書には起訴すべきだとの「厳重処分」ではなく、起訴の可能性を残す「相当処分」の意見を付けたとみられる。

 一方で、国土交通省航空・鉄道事故調査委員会(現運輸安全委員会)が08年4月に公表した報告書では「局地的な突風は周辺風速計で観測できず、速度規制をしなかったJR東日本に問題はなかった」として突風の予見は困難だったとの見解を示している。

 自然災害で事故は避けられなかったとの見方も根強く、県警と事故調委の判断が分かれたことから、山形地検は関孫証拠を慎重に調べ、立件の可否を検討する。

「予測は可能」、「自然災害だ」
 被害者・遺族の反応
 JR羽越線の脱線転覆

事故で山形県警が業務上過失致死傷容疑で運行指令担当者らを21日に書類送検したことについて、けがをした被害者や遺族は「予測は可能だった」「事故は自然災害」などとさまざまな反応を示した。

 ある遺族の男性は「予測不可能という事故調査委員会と予測は可能という県警の判断は、どちらも本当だと思う。事故以来、毎日悩み、必死に立ち直ろうとしているが、どうすればいいのか分からない」と胸中を明かす。

 「事故は予測できた。JR東日本に過失がある」と怒りをあらわにするのは、事故で骨折した男性。事故直前、強風で電車に雪がたたきつけられるたび「大丈夫かな」と不安になったという。「朝から天気が荒れ、ダイヤが乱れた。その中で電車を走らせたのは納得できない」と語る。
 一方で、軽傷を負った新潟県の40代男性は「自然災害による事故。事前に防げたとは思わない」。 また、30代の会社員男性も「仕方なかったと自分の中では区切りがついている」と言い「過失を証明するのは難しいだろう」と推測する。

強風に備え厳重
風速計を増設・積乱雲で事前予測
JR東「二度と起こさぬ」

 JR東日本は羽越線の脱線転覆事故を受け、「二度とこのような事敵を発生させない」として、さらなる安全性の向上に取り組んできた。強風による運行規制を厳しくしたことで「JRはすぐに止まる」との批判もあるが、「安全な輸送が第一と理解を求めている。
 最大瞬間風速を計測する風速計をJR東日本は事故後に毎年増設。強風が吹きやすいとされる区間には複数設置し、管内含めると事故当時の2倍以上になった。
 気象情報を利用した新たな研究も始めた。積乱雲の発生などにより強風を予測し、事前に運転規制する試み。これまでに3回運行を見合わせた。
実際には、強風は発生しなかったが観測範囲を拡大して有効性があるか検証している。
 2007年には、積乱雲を高精度で観測でき、一部の空港で地的強風の観測に活用されているドップラーレーダーも鉄道会社として初めて事故現場近くに設置した。

 また、風による運転規制を厳格化し、走行区間の設置数は新幹線沿線もによって運転を見合わせる最大瞬間風藩を30b以上から25bに変更するなどさまざまな再発防止策を進めている。

▼JR羽越線脱線事故

 2005年12月25日午後7時14分ごろ、山形県庄内町のJR羽越線砂越−北余目間で秋田発新潟行き特急いなほ14号(6両編成)が脱線し、1両目から3両目が盛り土から転落して転覆。乗客ら46人のうち1両目の乗客5人が死亡、運転士を含む33人が重軽傷を負った。

 山形県警は21日、4年前の羽越線485系強風転覆事故の刑事責任を問い、運行責任を負っていた運輸部輸送課所属の指令室長(54)、総括指令長(52)、指令長(47)の3人。書類送検したと発表した(右枠内日経記事参照)。
前日天気図
前夜天気図と前日朝の高層天気図
当日天気図
事故1時間前
レーダ画面
事故発生4分前の気象庁レーダ画面

 気象学的に見たら、当時の状況は広い範囲で強風と局地的な突風が起こりやすく、気象警報も出ていて予見可能性はあったから、転覆事故発生にJR東日本として重大な責任があることは疑いないが、それを現場の長である指令室長等のみに負わせることが出来るかとなると、異論噴出だろう。

 鉄道は公共輸送機関としてかなりの荒天のなかでも運行すべきものだから、新潟以北の広範に気象警報発令では足りず、場所と時間を特定する予報が必要だが、そういう観測・表示機材も設置せず気象専門家も配置していなかったのだから、その配置を決める権限を与えられてない彼等に直に責任を問うには無理がある。せいぜいそうした不足を上申しなかった責任に留まるのではないだろうか。特殊な天気図として「土佐沖低気圧」とか、羽越線事故時の通称「爆弾低気圧の発生」とかあって気象専門家には発生が読み取れて荒天予報が出され全体としては良くあたっているが、局地気象は分からず、まして門外漢には良く分からない。図に即して言えば、前日の天気図は気象の専門家が見れば翌日の爆弾低気圧発生が良く見えて非常な荒天の予報になっているが、専門外では事故1時間前の天気図でようやく大荒れが分かるが、どの辺の線区で止めるべきかは判断できない。その下に示す気象庁のリアルタイムレーダ画像でようやく危なっかしい個所が感じられる程度である。それでも列車抑止に値する積乱雲かどうかの判断は難しい。それなのに鉄道向けの気象専門家も配置せずに指令現場係員の刑事罰の理由にされたら過酷である。気象庁データのモニター設置権限や局地気象予報組織設置権限などおそらくなかったろう。「提案しなかった責任」と「予見して対応策を検討させなかった責任」と、会社の責任であることは間違いないが、どちらかに個人特定できるだろうか?従前通りの末端現場のみの生け贄処罰は不公平で再発防止には役立たない。(See→天気図05/12/25)

 事故当日の住民の証言では、体験したこともない烈しい荒れようの中を列車が走っていて心配だったとあるが、それはJR東日本の疎らな観測網には全く引っ掛からず、駅をほとんど無人化したことで駅長相当職など地上観測者が居なくなったことで異変情報が入らなくなった。有人駅時代の運行決定権は駅長相当職にあったから、局地気象の目視観測で抑止手配出来ていたのを無人駅化して運輸指令に集約し情報遮断することで列車を止められなくしていた。駅長相当職の気象観測も制度として廃止されてナマの気象観測点が極端に減っている。

 強風による転覆事故は山陰線餘部鉄橋転落'86/12/28だけではなく営団東西線荒川鉄橋78/02/28、同日に発生の三陸鉄道と石勝線特急おおぞら10号94/02/22など意外に頻繁に発生しており、客車を使った転覆実験も行われて事故個所には対策が施されているが、網羅的な対策は行われていないし、応答の良い風速計への換装計画は事故3ヶ月後の国鉄民営化と共に頓挫し、設置個所が逆に減らされた。

 JR東日本はこのいなほ14号転覆事故以降#208に指摘引用した様々な対策を実施し、鉄道運行に直結した局地予報技術の開発を始めた。当サイトで事故後に指摘した事項はほとんど採り上げられており、デミングサークルPDCAに象徴される「帰還制御」を乗り越えて「予測制御」を志向している。これは本来であれば荒川鉄橋転落事故78/02、あるいは餘部鉄橋転落事故86/12から始められるべきであり、遅くとも同日転覆事故94/02で対策が開始されていれば、その成果として羽越線事故を防げたか、被害を抑えられた可能性がある。その怠慢の責任は会社にはあり経営側の責任だが現場の輸送指令にはあまりない。

 事故後の山形県警見解として「死者も出た大事故で、立件しない訳にはいかない」という主旨の談話が報じられていたので、またも決定権のない末端現場職員を血祭りに上げた幕引き儀式として行われてしまうことを危惧していた。今回の送検が支社輸送指令関係の「長」ばかりになったのは人身御供処分に対する若干の配慮かもしれないが、全体の方針を定める本社部門を放置して、防止策採用の決定権のない現場のみを血祭りに上げている構図に変わりはない。
 せめて、明らかに事故発生責任が会社にあるが、それを総て現場の個人に還元する業務上過失致死傷という罪名では扱いきれないことと、マネージメント側の責任を明示する必要があるだろう。自動車輸送では、無理を強いた管理者側の処罰は行われるようになったし、製造業も製造者責任としてトップが裁かれるようになった時代に、現場や技術系など方針決定権のないところにのみ罪を押しつける鉄道事故型処罰は見直されなければならない。

2009/12/25 23:55


指令長らを不起訴処分に

JR羽越線事故

 山形県庄内町で2005年12月、JR羽越線の特急列車が脱線転覆し、5人が死亡、33人が重軽傷を負った事故で、山形地検は19日、業務上過失致死傷容疑で書類送検された当時のJR東日本新潟支社輸送課野男性司令室長(54)ら運行担当者3人を嫌疑不十分で不起訴処分にした。
 山形地検は、事故の原因は竜巻かダウンバーストなどの風速32mから50mの局所的突風であると断定。事故当時、暴風雪注意報が発令されていたが、三人が局地的な突風を予見することはできなかったと判断した。
 ほかに不起訴処分になったのは総括指令長をしていた司令室の弾性室長(53)、指令長だった男性主席(47)。

2010/03/20 東京新聞11版S28面

会社としての防止責任が刑事罰としては不問に

 羽越線いなほ14号の強風脱線事故で、個々の現場要員が業務上過失致死傷罪としては不起訴で決着するのは妥当な判断だと思いますが、個人には帰着できない会社としての責任、マネージメント側の責任について法体系の問題を含めての言及がないことで、物足りないものになっています。
 各個人に直接掛かることで不起訴のおうむ真理教関係者を警察長官狙撃事件の犯人だと名指しする公安警察のような無茶苦茶は絶対にいけないが、個人には帰着しがたい組織としての責任を糾明する規定のないことでサボタージュが免責されてしまう法体系の欠陥は明確に指摘する必要があります。いなほ14号転覆惨事までに何度も転覆事故は起きていて、再発防止のための研究と試行錯誤を開始する機会はあったのですから、。
 See→前記&Top右枠内#リンク
 JR東日本が羽越線事故後、予測制御型の突風対策を始めたのは、もしかして山形県警の何が何でも断固立件の表明が効いているのかも知れませんが、経営・マネージメント側ではなく現場を狙い撃ちにしたのでは的外れと言うほかありません。

2010/04/11 20:30追記

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