高徳線誤出発脱線事故検討試算@オレンジタウン駅

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 【 高徳線オレンジタウン駅全景 】

北側出発付近

北側出発付近

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<3> 北側出発前面展望
駅北出発View
(手前に直下地上子、先に突入した安全側線砂利盛りが見える)

【位置関係推定】

四角い白い箱が出発信号機か?踏切スロープの付け根付近に直下地上子があるはず。
直下地上子−信号機間距離は20mが標準だが、画面スケールでは13m前後。
乗越分岐先端−信号機間距離は規定の20m以上はない模様。5m?
乗越分岐先端−砂利盛り間距離は20m程度か?
写真から見る制動距離は規定の60mよりかなり短く、40m前後か?
 ホームの屋根から上り線停車位置が尻合わせであることは推定できて、その配置に対応した「誤出発防止地上子」設置の不適切があることは疑われるが、位置精度が低すぎて数値解析には適しない!もっと位置精度の高い情報が必要である。 かってはGoogle Earthが比較的精度の高い緯度・経度情報を画面に表示していたが、現在は拡大率を揚げると「ストリートビュー・モード」への自動切り替えが行われて読み取り精度を大幅に落としてしまった。これがまだ使えるのかどうか、確かめてみる必要がある。 Google Earthは元通り、手動切換に戻すか、せめてストリートビューデータの無い場所では切り替わらないようにして貰いたい。鉄道沿線でのストリートビューなど無いだろう。ついでに標高表示の精度も上げて貰えると有り難い。条件により±20m余も違うのだ。

試算用定数の選択・決定 <4>

 地上の状態と、車両性能について以下の通り仮定する。

Google Earth 経緯表示による
JR四国高徳線オレンジタウン駅上り出発推定 

地球周囲=40,001 km:(相対距離算出基準寸法)

緯度経度座標相対経緯座標 距離[m]備考
緯度°経度°緯度差°経度差°経緯差スケール
ホーム南端34.302090134.1808440.0007860.000313−91.940 −93.910(4.825m空き)
尻合せ位置−87.115
1両停目34.302299134.1809950.0005770.000162−65.815 −66.950
加速距離
?2両停目−44.500−51.320
?3両停目−23.200−30.320
ホーム北端34.302860134.1811350.0000160.000022 −2.690
?直下地上子34.302876134.1811570.00.0 0.0000.0
短い
出発信号機34.303031134.181226−0.000155−0.000069 18.35017.450
?乗越分岐先端
砂利盛り端34.303289134.181256−0.000413−0.000099 46.78163.980
安全側線終端34.303350134.181479−0.000474−0.000322 60.39495.950
 JR四国1000型1200型の長さが連結面間で21.3mとして、3両目停止目標からホーム先端まで20.51m、列車後尾とホーム後端が4.825m〜6.125m(20m車)。先側がやや広めだが許容差のうちか?
 Google Earthには2点間の距離計測機能が有り、それによっても距離計測してみたが、肝心の砂利盛りまでの距離に目視とは大きく違う矛盾が有り、今回は不採用とする。 最も現実離れしている数値は「砂利盛り長」で、経緯差計算で13.6m、Google測距で32mと大きく違うが、車窓展望や航空写真併示の寸法線からは32mは過大げ13.6mよりは心持ち長そうに見えることで経緯差方式での値を採用。 経緯絶対座標方式は従前、鉄道の曲線半径読み取り作業に一定の精度を実現していて、その実績への信頼感もあるが、ストリートビュー自動切り替え機能採用は読み取り精度を落として大変残念。
停止目標(2)(3)は、(1)を基準に新型気動車の連結面間長21.3mを取って仮定し、停目(2)=44.5、停目(3)=23.2と仮定する。

 距離計算方法は2地点間の南北距離・東西距離の3平方の定理により、エクセルなど表計算に以下の式を埋め込む。
    =IF(経度差="","",地球一周距離*10^3*SQRT(緯度差^2+(経度差*COS(緯度/180*円周率π))^2)/360)
 緯度差、経度差も同様に、 =if(経度="","",緯度−基準緯度)、及び =if(経度="","",経度−基準経度)で求める。
 式の内容は、地球円周との角度の比例計算で、東西距離は更にcos(緯度)を乗じている。(函数の末項が入力されるまでは無計算、非表示)
1mの当初定義が赤道−北極間距離10,000kmとしてメートル原器が作られたが、その後の精密測量に拠ると、地球の円周で40,001kmとされているのでそれを採用する。
表計算ソフトの三角関数の角度単位が弧度法:radianであるため「度」に(円周率π/180度)を乗じて単位変換している。

車両側諸定数


JR四国1200型気動車(事故車と同型)@同社公式ホームページ
房総東線大網−土気−誉田標高図
Google Earth 緯度経度読取り誤差検討[図6]

(ストリートビューへの自動切替えで上図作成時より読取精度が悪くなった!)
[非常制動減速度]=20/0.7(制動定数K)≒3.968 [km/h/s] ・・・・・ ATS計算標準
[ATS-Sx電車気動車空走時間]=2[秒]・・・・・ ATS計算標準

[当該車両]:JR四国、1000型、1200型、(1500型)、大出力軽量高加速車両
エンジン出力=400PS、変速機=流体変速機+直結2段、
車両の長さ=21.3 [m]、重量[トン]
ATS-SS車上子取付位置=先端0m、
要、加速度α推定

[対照国鉄型車両]:キハ40型
エンジン出力=220PS、変速機=流体変速機+直結1段、
車両の長さ=21.3 [m]、重量[トン]
要、加速度α推定

キハ28型 (同一車体のキハ58は2エンジン搭載型)
エンジン出力=180PS、変速機=流体変速機+直結1段、
車両の長さ=20 [m]、重量[トン]
要、加速度α推定

キハ10、17、18型(若干細めの車両。動力近代化のモデルケースとして房総用に新設西千葉気動車区配属、全国展開へ)
エンジン出力=160PS、変速機=流体変速機+直結1段、
車両の長さ=20 [m]、重量[トン]
要、起動加速度α推定。大網−土気上り勾配速度から推定(推定の基準車両)

 気動車の起動加速度は、定トルク起動のできる電車とは違い、初段が流体変速機に拠るため粘着力は大きいが速度依存性が極めて大きく、速度上昇ですぐに低下してしまい、根拠有る推定値の選定が非常に困難である。一つの試みとして登坂加速度との対応で、その平衡状態から平均的な加速度を想定する。
 ディーゼルカー時代にキハ17〜18が房総東線大網駅から土気(とけ)駅への登坂勾配が25/1000で、80m前後の標高差を登っているが、この時の平衡速度は15km/hそこそこであったと聞いている。また新宿発房総方面行きのディーゼル準急キハ28系がお茶の水駅先の33/1000勾配で標高差10m余を登り秋葉原駅に停車していた。その勾配抵抗を基準にすれば15km/h付近での加速力が分かる。
 この国鉄型ディーゼルカーを基準に、JR化後の新型気動車の加速力を機関出力比例、重量反比例で推算、JR旅客電車の2.2km/h/s〜2.7km/h/sとも比較して、起動加速度の仮定値を選択する。

【 全制動距離 】

種類制動定数制動初速[km/h]
空走時間
[秒]
減速定数
[K]
254555
気動車
電車
220/0.735.895.9136.4
客車列車32052.1138.8197.1
一般貨物61583.3210.0293.3
信号現示制限→YYY改良
キハ17加速=(25/1000)×9.8 [m/s2]=*****×3.6[km/h/s]=(*****×3.6)×7.2[K定数]
                        =0.245[m/s2]=0.882[km/h/s]=6.3504[K]・・・・・・・・・・ 80m高(基準)
キハ28加速=(33/1000)×9.8 [m/s2]=0.3234[m/s2]=1.16424[km/h/s]=8.382528[K]・・・・・ 10m高
キハ40加速=0.882[km/hs]×(220PS/160PS)×(45トン/50トン)=0.9702[km/h/s]
        =6.98544[K]・・・・(比例計算)

1000加速(17)=0.882[km/hs]×(400/160)×(45トン/37トン)=2.68[km/h/s]・・・・・・・・・ E231並加速
         =19.3[K]
1000加速(28)=1.16424[km/hs]×(400/180)×(50トン/37トン)=3.496[km/h/s]・・・・・・地下鉄並加速
         =25.2[K]

 以上の試算より、標高差10mは平衡には少なすぎて、2.68km/h/sが、JR東日本通勤電車E231の加速度2.7km/h/sにほぼ等しいので、この値を採用する。
制動距離解析
国鉄型気動車の防護設備に3倍近い高加速車を投入して
必要になった誤出発防止地上子を設置しなかった!
経度緯度差・経路 どちらの計測でも同じ結論

制動距離解析
 以上の計算結果を図示すると、大枠の結論は、非力で加速度の低い180PS旧国鉄型気動車(160〜220PS)にはギリギリ対応している過走安全設備に、軽量高加速400PS気動車を投入して、誤出発地上子を設置しなかったことで砂利盛りに突っ込んで脱線したことが推定できる。 ATS即時停止コマンドを受けての空走時間は、国鉄のSx型ATSの規定で2秒だが、実動作として1秒でも到底間に合わない。 新型投入時の検討の手抜きだが、こんなにあからさまな絵になってしまうとは!

 解決策としては、誤出発防止地上子を停目(2)と停目(3)の間に一基設置することで一挙解決。列車の停止を検出してから時素だけ経過したときに出発信号に連動した即時停止機能を有効にすることで誤出発防止装置を構成する。

 なお、Y現示速度45km/hで冒進して直下地上子に当たった場合の制動距離+制動距離は図よりもかなり大きく、「過走余裕」は確保されていない。配置としては、電車・気動車で30km/h弱までしか防御できず、YY現示25km/hまでしか過走余裕内には停まれない。
 YY現示25km/h制限のない駅では上下線同時進入を禁止していることとは符合するが、それでも一般貨物には不適合である。確実な防護にはATS-Pの様な自列車の減速度を設定した車上演算方式ATSが必要ということだ。

【 作図ノーハウ 】

 解析結果を比例的に図示すると非常に説得力を増して、本質が良く見えることも多い。当サイトの図はほとんどが「花子」に拠っているが、各自が慣れている作図ソフトを使用する方が能率的だ。それをHTML用データに変換する。花子の場合は「他形式による保存」で直接画像データ(jpg、gif)変換できる。プリントアウトできれば、一旦PDFファイル化して、更にイメージデータ化すれば良い。(PDF化ソフトは、プリンターの1機種として登録されている。PDF表示ソフトのイメージデータ化機能で画像データ化。Windows付属閲覧ソフトでは変換できないがジャストシステムやアドビのPDFソフトには変換機能有り)

 描画は要素毎に層別して(レイヤーを変えて)描くと修正・調整時に相互干渉が少なくて楽にできる。たとえば、
   A層:スケール、XY軸と単位。表示文字は各層毎
   B層:固定物情報、駅ホーム、信号機、地上子、砂利盛り、停止目標1・2・3、ポイント、等。
   C層:動作図、検討図。加速と減速を別層に分けて、C層=付与条件と、D層=解・・・・・・
      と層別をしても良い。(この層に主タイトルを置くのが関連性が高い。B層も同格だが・・・・)
      本件作図では砂利盛り位置が2通り有って棄て難いためそれぞれ別層で描いているが、同一結論だったため一緒に表示した。
   H層:補助線、補助点、参照画像。描画後は層(レイヤー)表示のチェックを外せば見えなくなる。描画補助。
 標準的な曲線を含めて「部品」として準備しておき、表裏、縦横変換と、縦横倍率変換すれば使えるようにしておく。放物線は、その頂点から半分があれば総て自己相似的に対応可能、直角双曲線も同様。
 加速動作、減速動作は、「等加速度運動」であれば必ず半分以下の放物線なので、先ずは表裏・縦横方向を決めて、頂点を基準に、必ず通る点P(x,y)に合わせて図形をマウスでドラッグしてX倍率・Y倍率を設定するだけで描画できる。実態は座標スケール変換である。

 同一形状のものはコピーで作成。始点位置を変えた減速カーブ群とか、加速カーブ群などだ。 1点1点計算してプロットしグラフにしているのでは無い!それは部品を作って登録するときの1回だけだ。
 原点を基準に形を作ってしまってから、本来の位置に移動するのが能率的だ。
 今回の作図で使用した「部品」は、鉄道略図で繰り返し使用される「停止信号」と「放物線」。画面の放物線6本は同じ部品を呼び出して変形、コピーしたものである。停止信号の方は力業で作って拡大・縮小して使うが、放物線は、エクセルのグラフを透過の絵にして画像ストック部品とし、拡大/縮小して貼り付けるとか、作図内に取り出せるペジエ曲線で描いて部品登録するとか方法はあり、拡大縮小前提だから分かりやすい値で良い。データサイズは大きくなっても最終的にはjpg/gif/pngなど画像データ化するのであまり変わらなくなる。出版用等の高品質な画像はVisual BASICで函数をX-Yプロットするのも良いが、函数形を逆回り座標系に変換したりで手間が大変な場合がある。
   函数形としては、 x(y)=y2/8 ・・・・・・ (−2〜0 ≦ y ≦ 10) :左に凸の放物線で可!
 VB等による描画には、範囲を(0 ≦ y ≦ 10)として、座標系をスケール変換して適切な大きさの画像にする。変換コマンドを持っている言語もある。Y軸の正方向が下向きの右回り座標が多いが、放物線なら回転させるだけで良いので座標変換は必要無い。手書きであれば、座標面に10数点プロットして、それを目印に別の層(レイヤー)にペジエ曲線機能で描画する。歪みが見られれば補正して、完成したら Y ≧ 0 の範囲を残して、負部分は削除し、「放物線」として部品登録して準備する。これを呼び出し、左右反転、左右90度回転、頂点を基準の左右拡大縮小、上下拡大縮小でもう一点の照合点と合わせれば、求める放物曲線が得られる。位置違いの曲線はこれをコピーして配置、加工する。

 たとえば、非常制動減速度と空走時間は国鉄JRの信号ATSの標準規定(./../FIG/310/sxlaw.htm)により制動定数Kが電車・気動車でK=20/0.7、客車列車で20、一般貨物で15とされ、空走時間が電車・気動車でT=2秒、客車列車で3秒、一般貨物で6秒とされていて、(表参照↑)
   停止から、描画範囲の100m手前を走ったときの速度Vは、V=sqrt(L・K)=sqrt(100m×20/0.7)=53.5[km/h]。
 すなわち横に凸の放物線の頂点をO(0,0)に置いて、放物線が通るはずの点P(100m,53.5km)を見据えて、放物線図形の横軸方向をそれ以上に伸ばし、次に縦方向を伸縮して点Pを通るようにすれば形としては完成する。描画の凸方向によっては、Y座標を入れ替えてP(100m,0km)−O(0,53.5km)に合わせてXY方向を変形する。
この図形を、停止目標(1)とか、砂利盛り端などに頂点を合わせるなど、置くべき位置にドラッグすれば一応完成。
 同様に加速側は、加速度2.7km/h/sは、7.2を乗じた加速定数K=19.44であり、速度Vと距離Lの関係が、L=V2/K だから、
停止から、描画範囲の100mを走ったときの速度Vは、V=sqrt(L・K)=sqrt(100m×19.44)=44.1[km/h]
横に凸の放物線の頂点をO(0m,0km/h)に置いて、放物線が通るはずの点P(100m,44.1km)を見据えて縦横の大きさをドラッグで調整する。
 またATS地上子を踏んでから実際に非常制動が掛かるまでの空走時間Tに空走する距離は、空走時間に速度を乗ずれば良い。すなわち、即時停止地上子(出発信号機直下地上子、誤出発防止地上子)の位置からから速度比例で、36km/h=10m/sで気動車2秒後に10×2=20mを走っており。作図としては点O(0.0)−点Q(20,36)を結ぶ直線を作って必要なだけ延長したものを、左右方向を選んだ上で地上子位置に移動すれば良い。「規定」ではなく、実動作での空走時間はもっと早い!1秒だろう!と言う場合の図:直線も、36km/h(=10m/s)では1秒で10m走っているから点O(0.0)−点Q(10,36)で同様だ。
 各曲線の相互関係としては、加速曲線とATS非常制動始点直線の交点から非常制動減速が始まる訳で、これが砂利積みからの制動限界線=減速放物線より先に出ていれば乗り上げ事故となって脱線・転覆の危険を生ずる。すなわち加速曲線と減速曲線の交点より手前にATSによる非常制動線を置く必要がある。それが直下地上子では間に合わない場合に誤出発防止地上子が必要になる。各出発点毎に点検して、越えているようであれば、制動限界線を越えない位置に誤出発防止即時停止地上子を置く必要がある。
 本件の場合、停止目標(2)〜(3)付近に誤出発地上子を1基置くことで停止目標(1)(2)からの誤出発を防護することができる。JR西日本の福知山線宝塚駅のように、停止目標毎に設置しておけば、車両の加速度が上がって防御範囲から外れるという西鉄津福駅誤出発事故の様なことは起こらないで済む。
 一部を破線や色違いに変えるには、まず破線・異線との境界で切断して、図形の属性指定を破線・異線に変えれば良い。
 比較対照として国鉄型キハ40型がまだ全国のローカル線を走っていて、オレンジタウンの現場も最近まで走っていたので試算すると、推定加速度K=6.99であるから、出発から100m加速後の速度V=sqrt(100×6.99)=26.4km/h。すなわち、O(0m,0km/h)を頂点にP(100m,26.4km/h)を通る放物線を作り、頂点が停目(1)となるよう移動すると、限界以内に非常制動が掛かって事故にならないことが分かる。

 この辺の解析計算と作図作業は、瞬発力と体力勝負で、描画に必要な情報を漁って絵にできるようにして、基本数値を求めて描画するが、10歳台20歳台の処理速度には到底及ばず、数分の一化していて若者にはもう絶対に敵わない。各種試験で鍛えられていた高校生時代とは全く違うのだ。 様々ノーハウを公開して、若い解析ヲタが増えると、ロートルが作図しながら真相究明することはなくなってくるだろう。
    See→解析ヲタ入門!(日記213)
       列車制動衝突解析法

【 実務的留意事項=車上子取付位置偏差0m or 5m〜15m! 】

 本記事の試算では総て、ATS車上子が列車の先頭に有るものとして計算している。写真を見たが車上子が写っているものは見られず、取付位置は特定できなかった。 実際の車両では鉄道事業者によって異なり、JR東日本などの運転室直下ばかりでなく、前側台車の後ろで先端から5m位後ろとか、後ろ側台車の直前で先端からは14m〜15m後ろに取り付けている例があって、事業者毎にそれら車上子取付オフセットを考慮した設定にする必要が有る。 支障するのは先端だが、停止コマンドを受けるのは車上子なのだから、5m〜15mの狂いは大きい。
 1両で走れる両方向運転台気動車の場合、床下のエンジンからの駆動のプロペラシャフトが車軸のギヤに直結されていて、片側の台車の内側には設置困難である。 しかしもう一方の台車の内側には設置できるので、前後の運転室でこの地上子位置を共用しているのか、それとも両方の運転台の直下に設置しているのか、分からない。ATS-SS車上子取付位置は軌間の左半に寄っていて上下線方向の干渉を避けているので前後共用にはできない。蒸気機関車D51では炭水車の台車の間に上下それぞれ用に2基のATS-S車上子を取り付けている(右端写真→)ので、同様かもしれない。

ATS-SN車上子取付状況@JR東日本205系P/N併用車(Click↑)

運転席付近のP/SN搭載表示

クハ204のATS-SN車上子

ATS-SW/-P 車上子取付位置@JR西日本207系

D51炭水車台車間のATS-S車上子×2(上下線用)
電車と綱引き!@京葉電車区一般公開(2015/11/07) 福知山線尼崎事故調査報告書 @千葉県船橋市薬園台公園展示(S48.廃車)

 寝台特急電車285系サンライズが就航するときに、そのATS-P車上子取付位置が、JR西日本基準の後ろ側台車の直前の約14m位置にあって、運転室直下設置が前提で設置されているJR東日本区間で停止制限パターンに当たってしまい、先頭車運転室直下に付け替える改造を行って営業運転を開始した。上の図面は207系(JR西日本)のATS車上子取付寸法であるが、ATS-Swが前方台車直後、ATS-Pが後方台車直前に設置されている。285系の当初取付位置もこれと同様だった。それを上左写真のJR東日本と同様に前方台車直前・運転室直下に移設したもの。
 JR四国の気動車のATS-SS車上子の場合、実務計算ではその取付オフセット分を移動して考える必要がある。しかし解説記事でこのオフセットを含むとその処理で主部がぼやけてヒッチャカメッチャカになりかねないので、オフセットゼロのJR東日本ATS-P方式で記述している。JR東でも併用するATS−SN車上子は先頭台車直後に取り付けていて5〜6mのオフセットがある(左上写真←↑)。


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Last update: 2016/01/09       (16/01/03作成、/01/06)