[200]

BBS
BBS
mail to: adrs
旧
新
Diary INDEX
Geo日記
戻る
LIST
主目次

似通った事故発生条件、函館本線過速度転覆

駒ヶ岳−姫川−森計測点
[図-1]駒ヶ岳−姫川−森計測点一覧図
(画像をクリックで拡大)
駒ヶ岳−姫川−森標高
[表-2]駒ヶ岳−姫川−森標高
 函館本線大沼付近では3度に亘り300R60km/h制限曲線に100km/h〜120km/h超で突入して脱線転覆する事故を繰り返しているが、3件に共通するのは機関車列車が峠を越え降り始めた20/1000余程度の下り坂で発生していることである。標高表を元に縦線形を描いたものが図1〜図2。転覆事故は急な下りに入って直後に起こっている。
 地形データが分からなくて詳細を掴めなかったのだが、Google Earth にカーソルポインターの経度緯度と標高が表示されていることに気づき、位置-標高データが読み取って判断可能かどうかを確かめてみたが、図1〜2に見る限り異常点は有っても結構行けそうだ。

[表1]函館本線大沼付近過速度転覆事故
DD51牽引300R60km/h制限
発生年月場所状況と対応
176/10/02駒ヶ岳→姫川機関車と車掌車以外の全41両(換算93両4781)脱線転覆115km/h
288/12/13駒ヶ岳→姫川高速コンテナー21両中19両脱線転覆20/1000勾配100km/hで進入
396/12/04大沼→仁山高速コンテナー20両全車脱線転覆、120km/h。大沼付近下り急勾配に曲線速照設置(ATS-SN即停)
大沼付近
( 尼崎事故調報告検証委報告添付資料p76/97付録−2−2 p16右図より)
 右[表-2]が地形データ採取結果でそれを図示したものが[図-2]だが、時刻表の距離程による平均勾配ではなだらかに見える大沼−仁山間が、大沼湖畔の小峠までは緩い登りでそこから逆落としの急坂になって、事故線(上り函館方面行き)とは別の登坂線(下り札幌方面行き)を別に設けているほどの難所で、駒ヶ岳−姫川間と同様の線形であることが判った。駒ヶ岳先も2kmほどは平坦で、その先が急勾配で一挙に海岸線に降りている。大沼付近の約15kmは平坦に近く、片峠地形が背中合わせに繋がっている。
 読み取り値を眺めると、本線山間地の最大勾配が25/1000と決められているから、40/1000を越える計測値は曲線端しかデータを読んでないことで半周曲線などで相対距離に特に大きな誤差を含んで概算法の相違により姫川側で総計1.1kmほど短くなったり0.4kmほど長くなっているが、勾配による速度試算上は標高差が正確に得られれば良く、奥羽本線板谷峠越えの40/1000勾配の実例もあり概ね信頼できる数値と思われる。
 大きな読み取り誤差要因としては切り通しや盛土・高架区間で分解能や位置決めにより読み誤ることと、駅名検索だと駅前広場にジャンプするものが見られることであるから、線路を横切って標高のピークやディップを読み取って誤差を減らす注意が必要だ。

 国鉄JR本線の全国的基準として勾配について概括すれば、平地での勾配は10/1000、山間地で25/1000、電車区間でも35/1000となっており、それを越える急勾配は電車地下鉄専用区間や特に急峻な峠道などの40/1000などに限られて極めて稀である。曲線も山間地や山手線内は300Rが標準といって良い。福知山線尼崎事故現場の304Rは曲率半径としては大都市の標準で特に急カーブというわけではなく、それに120km/hという直線を直接繋いで安全装置を設置しなかったことで発生した事故だ。都内では最高速度がせいぜい80km/h〜90km/hの運行だから同じ300Rでも103系転覆限界の105km/hに対してそこそこの余裕があるのだ。

 勾配の実例では、超特例が旧信越線横川−軽井沢間の67/1000は特殊構造の機関車2両を補機に、特別仕様の車両で非常制動の急ブレーキによる脱線を怖れて非常弁も絞ったATSを断にして運行していた例外区間があるが、維持が大変な上、横軽特殊仕様でATSが使えないなどで長野新幹線の並行在来線として既に廃線になった。
 残る本線の例外急勾配箇所は奥羽本線板谷峠付近38/1000,中央東線笹子−初雁間約30/1000,総武線お茶の水−秋葉原間&総武快速線馬喰町−錦糸町間33/1000とかは、補機連結・重連運転か電車区間であり、
 山岳本線限界勾配25/1000は箱根越えの旧東海道線=御殿場線の標高460m、西の箱根=瀬野−八本松間の片峠地形200m、上越線清水トンネル越え200m〜500mなどがこれに当たり、標高差で200m〜500m程度を結んでいる。
 準ずる難所としては、関ヶ原越えの垂水線25/1000標高差110mがあったが、下り線のみ新垂水(現廃止駅)回りの10/1000登坂専用線(下り列車専用)が設けられて一般勾配扱いにはなった。しかしこの登坂で151系は発煙事故を起こしていて、全編成のモータ巻き線が黒化した程の難所だった。電車線で見ると小田急の新松田−澁澤間が約20/1000勾配の連続で120mの標高差があり、関ヶ原越以上の難所になっているが、目立ったトラブルになっていないのは151系が1両あたり200kWと小出力なのにギヤ比があまりに小さすぎたのかもしれない。モータや抵抗器への熱蓄積による温度上昇が出力の主たる上限になるのでなので一概には言えないが、標高差というのは難所の重要な要素である。

渡島大野−大沼・駒ヶ岳−姫川−森標高図
[図-2]渡島大野−大沼・駒ヶ岳−姫川−森標高図

駒ヶ岳−姫川−森曲線入口標高図 駒ヶ岳-姫川廻り/北側裾鹿部廻り比較
[図-3]駒ヶ岳−姫川−森曲線入口標高図     [図-4]函館本線大沼付近
駒ヶ岳-姫川廻り/北側裾鹿部廻り比較
Excel2007/Open Office→tif花子レタッチpng (08/08/18追記)
本線廻り/登坂線廻り標高比較 本線廻り/登坂線廻り標高比較
[図-5]函館本線七飯−大沼間本線登坂線標高図(最高地点上下逆)
 [図-5’]函館本線七飯−大沼間本線登坂線標高図(小沼湖畔位置交換
函館本線七飯−大沼間本線登坂線標高図(小沼湖畔位置交換
本線平均勾配=30/1000 (=145m/5km)〜37/1000 (仁山−最高地点)、
登坂線平均勾配=11/1000 (=125m/11km)

外房線大網−土気間連続25/1000勾配片峠標高図
[図-6]外房線大網−土気間片峠標高図(Google Earthより読取)

(標高は地表面表示で分解能が低いためなどで盛土・橋梁、切通区間で最大30m大誤差発生 & 小沼湖畔(=最高地点)トンネル出入口で登坂線と本線を地図が取り違えてデータ採取の可能性大。
 =登坂線がトンネルから出て湖畔に沿う直線で、その線から一旦南に振れて緩いSカーブで高速道下に入る方が本線なのかも知れない。右側[図−5'] の方が勾配が自然だし、上下線の相互位置としてもその方が湖畔平坦部で左側通行になり配線としては妥当:地図の誤りか?と思ってGoogle Earth の地図重複モードで確かめると、その通り!地図が航空写真から東方向に約50mずれているが広範地図の線形図が取り違えて居るのだ。標高計測法としては地図の誤りに気付く程度の精度は得られることを示している)
Excel2007/Open Office→花子13オブジェクト組込→html出力gif  (08/08/28追記)

 トンネルが有るような地形ではGoogle Earthの標高表示はあまり当てにならない様だ。外房線大網−土気標高図の赤線が生計測値、青線がその1点を省いて仮に比例中間値を布数したもの。鳥瞰図写真で見ると土気トンネル出口付近の線路が大きく波打って見える。そこは25/1000勾配の単調な登りの筈だからデータ採取誤差というよりもGoogle Earthの高度データ自体に問題があるようだ。(下記<Earth>項も参照)
 七飯駅−小沼間登坂線でも鳥瞰図に切換えると併走自動車道が波打っているなど同様の異常が見られたが線路自体では分からなかった。しかしながらわざわざ登坂線を別に設けるのだから、そこに敢えて急勾配を残すとは考えられず、峠と麓を直線勾配で結んで一様勾配とするだろう。その直線が真値である可能性が高い。[図-5]の駅と湖畔の標高は概ね正しいが、山岳地の標高はまるきり当てにならない。
     ('08/11/21追記)


 さて、高速貨物列車が20/1000〜25/1000勾配を下った場合、どの程度の下降で100km/h〜120km/hに達するかを試算してみよう。峠の頂上付近に平坦線があるので下り始める初速V0を25km/h、45km/h、65km/h、95km/h、牽引力加速度αpを0〜10/1000Gとし、平均勾配加速度αsを20/1000・G(姫川側)〜37/1000・G(仁山側)各300R曲線入口付近での降下高度、到達速度V1を求めてみよう。

[表3]駒ヶ岳-姫川 勾配下降速度

 簡易計算では「位置エネルギーが速度エネルギーに転換する」と考えて、すなわち
   V12−V02=2GH
   V1=sqrt{V02+2GH}  となるから、
 試算を表3に示すと東山信号所付近の左第5カーブあたりで100km/hとなって姫川事故88/12ではここC5で転覆していそうだ。第1姫川事故76/10/02で120km/hというなら第2カーブで転覆しそうなものだが、発生状況はどだったのだろう?大沼−駒ヶ岳間の緩勾配部で仮眠して高速化、片峠の急坂に入って早い内に転覆脱線したと考えられる。
 仁山側本線の下り急勾配はその入口からトンネル区間が多く試算困難だが姫川側同様に早い内に120km/hに達して転覆しているはず。
駒ヶ岳先勾配加速
[表4]駒ヶ岳-姫川 位置-標高/方向角

地形データ採取にGoogle Earth          <Earth>

小田急新松田−渋沢間連続25/1000勾配片峠標高図
[図-7]小田急新松田−渋沢間
連続25/1000勾配片峠標高図
御殿場線山北駅西側連続25/1000勾配標高図
[図-8]御殿場線山北駅西側
連続25/1000勾配標高図
(次駅御殿場までの間は航空写真の精度
が悪い領域で、線路を追えなかったがほ
とんどが連続25/1000勾配で最高標高462m)
 Google Earth航空写真画面の左下に緯度、経度、標高、距離スケールが表示され、角度分解能は1/100分、標高分解能は1feetか1mであるが、一旦終了して再起動した場合の再現性には若干問題があるようだ。また、登録済み地名が起動毎に微妙に違っていたり、単位指定が初期設定したmからfeetに変わっていたり、地名に英文表示が混じってきたりと、まだ不安定の残るアプリケーションではあるが、予め計測点を決めておいて一挙にデータ読み取りを行えば起動毎の誤差は避けられ、各読み取り点の相対位置関係は比較的正確に計測できるようだ。函館本線駒ヶ岳−森間の曲線出入り口点XYZ座標と方向角を計測し、各点間距離と距離程を計算したものが上記[表4]である。山岳凹凸地の高度の精度には[図-5]〜[図-8]とその注記のようにかなり問題が有るようだ。鉄橋とトンネルとか築堤など計測点の廻りに平坦地の無い地形で30m〜50mもの標高誤差が見られるが、読み取り誤差以上に原データに誤差を含んでいる。駅付近には概ね平坦な広場があって、そこそこの標高精度で読み取れている。

Google Earth からの省力式DATA採取法

 Google Earth に表示される経度、緯度、高度〜20桁のカーソルポインタ座標を取り込むに際して、ペーストバッファーは使えず総て手入力となるが、その読み取り値を取り敢えず固定する方法としては、データを入力するソフトを重畳表示しておき、その表示境界線が目標点を通過する様に設定し、カーソルポインターを地図画面から目標点を通って入力ソフト領域に移動させると目標点の座標表示が固定化されるので、その値を直接、入力ソフトに打鍵すると、一旦メモして改めて入力する2度手間を避けられる。
 経路を追う場合は、この度分秒データのうち秒は分解能1/100秒≒0.3mで必ず変わるが、分、度はあまり変わらないので最初に採取したデータを他にもコピーしておけばよい。
 前欄未入力なら「空白」表示、入力すればその入力値とすれば、入力以降は一括変更される。
 演算時には度分秒を10進変換した値を使う。これでデータ採取の手間を減らせる。

 曲線の弧長は、採取点数を増やして弦長による直線近似するか、姫川側のように方位が180度も変わると、曲率半径×回転角で求めるか、それを更に精密にするには「3点を通る曲線の半径算出法」を活用する。
 実際に試算してみると最も単純な直線近似でもそこそこの精度は得られることが分かった。姫川側標高図[図-3]の地点3,9,16後に見られる局所急勾配と森駅位置での累計1kmほどの距離誤差は方向の大きく変わるカーブで距離を弧ではなく弦で代用したために生じたものであるが、地形による誤差が少ないようで全体像を崩すほどの誤差にはなっていない。

[参考]
●地表面の接近した2点を結ぶ直線の距離を緯度・経度から求める方法は
経緯差から距離・半径を求む
[緯度、経度からの座標換算]記事参照。
●円周上の3点から曲率半径を求める方法は
[3点円半径の試算]記事参照。
●正矢と弦により半径を求める方法は
[R(L,d)={(L/2)2+d2}/2d ]記事参照
但し、R():曲率半径、L:弦、d:正矢
●半径と弦により弧長と回転角を求める方法は
θ=2tan-1[1/sqrt{(2R/L)2−1}]
    s=Rθ…………………(実θ<πの場合)、
または s=R(2π−θ)……(実θ>πの場合)
但し、θ:弧・弦を中心から見込む角、R:曲率半径、L:弦、s:弦長
180度未満の角度のみ算出。(=「補角+180度」は自動算出できないので分割など工夫が必要) [弧長(半径,弦)]記事参照。
経緯差から距離・半径を求む
日記[167].Google Earth で曲線半径計測,正矢と弦,軸距と車体長
 基準点としては駅位置を採用、これに時刻表の距離程を絶対基準として相対位置算出結果と合わせて絶対位置データを得て作図する。


作図法試行

 123、Excelなど表計算ソフトの活用で数値的な処理は容易にできるようになったが、それを図表化・グラフ化するには、表計算に添付の機能では不足することがあり、その場合には花子などの作図ソフトに頼ることになる。
● 当ページの[図-2]は花子による純手作り図をhtml/gifファイルとして直接に出力したもの、[図-1]はGoogle Earthより、他はExcelのグラフ機能により作成しプリント出力をMS Office Document Writerとして一旦tif画像としてトリミングし、ファイル形式を圧縮率の高いpngやjpg、gifに変換してから注記や軸を加えるなど手を加えてサイト用図形ファイルとした。色情報は失われる。自動生成グラフは設定の工夫で見易くはなるがWeb用ファイルに変換するとプロット点が大きすぎるとか、線がぼやけるとかして図の品質が手作業作図には遠く及ばない。
● [図-5]は、変換手順を変えて、花子13のオブジェクト挿入機能で表計算ソフト(Open Office)で作ったグラフを読み込み、それを「背景図」として花子13で必要な解説法事を書き込みhtml文書として出力しそのとき生成される640ドット幅のgifファイルを使うもので、文字の崩れが少なく、色をそのまま残せる。変換時に256色/16色と、透過/不透過設定が有るが、灰色の罫線が見える方(図-3,6,7,8)が256色である。総て不透過設定。
(花子図手→.gif)
● [図-6〜7]は、更に「花子フォトレタッチ」で不足情報を書き加えた上でトリミングしている。
● 花子に代わり一太郎を使って以上の操作を行いhtml形式でのファイル記録をすると紙面に応じたjpgファイルが得られる。640ドット幅以上の画像を得たいときは、一太郎に花子の図を取り込みそこからhtml形式でファイル記録すれば作成される。

png jpg
 駒ヶ岳の北西側峠を越えて急勾配で大沼に登る姫川廻り函館本線
(Excel→.png/.jpg+手)

函館本線七飯−小沼間本線&登坂線地図

(Googl Map→.tif:表示禁止→png)

2008/08/13 20:55
[Page Top↑] 旧
新
戻る