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領域境界無視設計が
  根本原因では?

    信楽高原鐵道正面衝突事故

参照記事
日記 [170]. 方向優先梃子の影響に気付いたのは誰?
[138]. 「検証信楽列車事故」を読んで(京都新聞刊)
[193]. JR西自身の重過失を過小評価4度目の責任論蒸し返し
赤信号で走った列車 (京都新聞web)
[185]. ヒューマンエラーは結果であり原因ではない

 福知山線尼崎転覆惨事は昨年初夏に事故調査委員会最終報告書が発表されていま3周忌を迎えるが、その間のJR西日本の対応を見ると、一貫して素人だましの責任回避の世論工作に終始し、運転士個人のミスのみでの集約を図っていた。それは信楽高原鐵道事故91/05/14の捜査に当たった滋賀県警が他に類例を見ない会社ぐるみの非協力・真相隠しの姿勢で悪質だと厳しく非難したやり方から16年間以上も一貫している訳である。それが文面上は180度方針転換の積極方針というべき新安全基本計画を斜に構えて半ばマユツバで眺める原因になっている。

 当日記ページでも関連本の紹介として信楽事故に2度触れている(右上欄リンク一覧)が、JR西日本が信楽衝突事故補償の分担を巡って信楽鐵道に対して民事訴訟を提起し、ここでまた信楽鐵道現場の代用閉塞手続き違反のみに原因を絞り、そのパニックの原因となった一方的な措置を事故当日から3回もマニュアルを改竄するなどして隠蔽を図っており、また現在もいくつかの匿名スレでJR西日本の責任回避と、根拠のない被害者攻撃の煽り行為が続けられ、JR西日本の責任に及ぶ話題には極めて執拗な論点ずらしが図られる異様な状況がある。それに対し同様の当事者事故調査に終わって追求不十分な鶴見事故と参宮線事故の再評価記事には全く反応がない。どうもこれは信楽高原鐵道事故の民事・刑事両裁判判決の事実認定を超えた問題点がまだ埋もれていて、関係者が必死の話題逸らしを図っている可能性がある!と感じて、信楽事故関連記事を改めて読み直して整理してみた。   See→[事故報告再検討]

<1>

代用閉塞の誤扱いが直接原因

 直接の事故原因は、報道では「赤信号無視」だったが、実際は、停止信号固着を信号故障として人力による代用閉塞方式に切り替えて運行継続を図り、そこでの「代用閉塞の手続き違反」を重ねて発生したものである。衝突事故前にも違反を繰り返していてJR側乗務員が少なくとも8人その違反を現認しているが、注意も報告もされていない。元国鉄JR線である3セク鐵道の特に小野谷信号所設置に伴う指導を引き受けた筈のJR西日本が、最初の偽代用閉塞運転をした5/3時点できちんと誤りを指摘し指導していれば5/14の事故は防げた可能性がある。それにしてもパニックの先頭になった殉職業務課長氏は元国鉄機関士ではないか。違反現認のJR乗務員も含めてそのときの基本教育が有効には働かなかったということか?

パニック誘発構造は

 信楽鐵道側がパニックに陥る赤信号固着の原因として、信楽側の列車検知点変更および反位片鎖錠化の無届け改造と、JR西日本側の小野谷信号所上り出発信号への方向優先梃子無届け設置と、その設計不良で、方向梃子を倒した状態でないと方向優先梃子が有効にならない欠陥があって、貴生川駅を出発した先行下り列車がまだ小野谷信号所到着前の早い時期に方向優先梃子を操作することとなって、これが赤信号固着現象を惹起した。方向梃子とは独立に操作できる正常な方向優先梃子であれば、抑止対象である上り列車が小野谷信号所到着までに操作すれば良く、赤信号固着は生じないで済んだ訳である。
 裁判や報道では双方無届け改造両成敗論に近い扱いだが、障害原因発見可能性を見た場合、自社区間をいじったのであれば比較的たやすいが、無断で他社から制御されていたら発見は困難だから、その点だけでも他社を無断、無連絡で制御する改造の方が責任は重大だ。裁判ではJR西日本が方向優先梃子設置を信楽側に連絡したかどうかが裁判で争われていて双方証拠不十分としてどちらにも認定されなかったが、実際の操作を新設の直通回線で連絡していないことは明らかで、方向優先梃子操作の都度連絡していれば、信楽側も異常現示との関連性に気付いた可能性は高い。(ここまでが従前の記事のまとめ)

<2>

管理領域区分を守れば防げた事故

 ここで、亀山CTCセンターが信楽駅まで制御を引き受けていた場合には、その機能試験と試運転で貴生川駅出発信号の不具合だけでなく、信楽駅の不具合も把握されて対応が取られて事故にはならなかった。逆に信楽側の信号コンサルがそれぞれの領域内制御の原則を提起して信楽・JR西・信号コンサルの3者合意となったはずの、JRが信楽内信号を直接制御する方式を不採用として、亀山CTCセンターから信楽駅への直通電話で抑止を依頼し、信楽で小野谷信号場上り出発信号を抑止する方式であれば信号トラブルは全く発生しなかった。
 ということは、この「制御領域分担の厳守」というのは安全確保に絶対崩せない基本原則ではないだろうか。領域内に限って制御すれば、その結果は制御者に返ってくるが、領域外を制御してしまうと、何が起こっても返ってこず分からなくなってしまう。すなわち、亀山CTCセンターがその領域外の小野谷信号場上り出発信号に対して直接抑止を掛けて、その結果、領域外の信楽駅出発信号に異常現示を生じたのに操作者に結果が返ってこないから異常を認識できなくなってしまう。そういう状況の安全確保装置=信号システムというのは有り得ない。だから、信楽−JR西−信号コンサル3者打ち合わせで、信号コンサルから方向優先梃子では領域外制御になると指摘され、JR西もそれを認めて、亀山CTCセンター信楽駅間の直通回線設置と、信楽駅制御盤への抑止ボタン設置が合意された。
 下請け業者を交えた打ち合わせでは、多くの場合、発注者や元請けの決定の実現が主で、下請け業者がものを言ってすんなり通るのは原則違反、危険などよくよくの事態である。どちらも取りうる場合には下請けは下がって控えている。JR西日本がここで引き下がったのは信号コンサルの言い分(=領域外制御厳禁)が絶対的基準だったからだろう。(※)ここまでは正しく決められている。

安全原理違反の隠蔽に必死!JR西日本

 ところがJR西日本は、この3者合意の存在を否定して、最初から方向優先梃子設置と決まっていたと主張するが、一方で、信楽駅制御盤を製造中の会社に対しては「抑止ボタンは無用になった」と電話連絡をしていることは双方に争いがない。それは一旦3者合意があったからこそ変更連絡をしているので、「合意はなかった」という西の言い分は成り立たない。この連絡のときに「方向優先梃子採用を決めたから」と理由を述べ、発注者の信楽にも連絡したというのがJR西日本の言い分だが、製造会社は理由は聞いてないと言い、制御盤の発注者である信楽鐵道は何も連絡を受けてないと食い違う。
 しかし発注指示系統から考えれば、信楽から製造会社に指示があるべきで、全くの他社であるJR西からの指示が通るということ自体極めて異常な関係である。本来なら「発注者を通して、正式仕様書・図面で欲しい」と断られるべきものである。その辺のズブズブの曖昧関係があったのだろうか?信楽から製造会社への変更連絡が無かったことは言わずもがなだろう。製造畑の感覚で言えば、文書連絡無しの仕様変更など考えられないことだ。最低でもスケッチがFAXで送られるとか、確認のための修正図面が関係者に配布されるとか、自社の管理システムに文書登録するとかの記録の残るアクションは取る。それは倒産との境界領域を永らくさまよう苦境の会社でもきちんと追求されていた。いや、仕様違いで躓いたら余裕のない会社全体がアウトだから真剣だった。それがJR西日本では信号系の様な特に厳密を要する事項も図面や文書なしで作業が進むのだろうか?いくら何でも信じられない思いである。口頭だけでは勘違いや、失念が発生しても回復できない。
 JR西の抑止ボタン取り消し指示からみれば、明らかに3者合意が形成されていたから、それを取り消したことを示す。それなのにJR西が「合意がなかった」と強弁するのは、信楽惨事の基本原因がこの領域外制御の禁止原則違反にあるからではないか?JR西日本は事故当日から3回に渡り方向優先梃子の操作マニュアルを改竄している。その理由は先出の設計不良の不具合と回避策を隠し、その改修要求が放置されたことを伏せたいだけでなく、絶対的禁じ手の領域外制御という重大な違反に気づかせないためだったのではないだろうか。
  See→「貴生川駅の異常」と「信楽駅赤固着」は一体のもの:日記#193

「社内通告」扱いで、信楽訂正事項が浮いたのか?    <3>

 JR西日本内部の状況を推定すれば、信楽と信号コンサルとの3者打ち合わせの場を「協議決定・合意」の場ではなく、設計内容の「通告」の場として捕らえていて、そこで仕様・設計変更が行われるとは思っていなかった可能性がある。すなわち「国鉄JR信楽線」の扱いである。ところが3セク鉄道として他社線となり信楽駅独自の管理領域になったから、その領域に直接抑止を掛けることは安全上からも規則上からも出来ないことを信号コンサルから指摘されて、訂正に同意した。ところが、打ち合わせに設計内容通告のため出席したJR西日本社員には設計変更権限が無く、だから元々決定権限の無かった合意内容を上の実担当に上げても無視されて、信楽側製造会社に抑止ボタンを撤去する「設計変更」を指示して辻褄合わせをするほかなかった。JR西の裁判での主張も「3者合意は無かった」となったが、製造会社に対する設計変更指示があったことは認めざるを得なかった。という可能性がある。これは裁判ではまだ揉まれていないJR西日本側の重大エラーではないだろうか。

 JR西日本が尼崎事故後に開館した安全展示館=鉄道安全考道館の信楽事故に関する解説展示を遺族の指摘で改めることになったと報じられているが、これもJR西の新たな「安全基本計画」からきちんと見直して納得できる展示内容にして貰いたい。その内容も今度の安全基本計画が本気なのか、極めて悪趣味なエイプリルフールなのかを端的に示す指標(=リトマス試験紙)となるだろう。

※[曾孫請けの元請け説得法]

 ソフトトラブルは工程の川下で末端の曾孫請けが対処するというのは最もありがちなパターンだが、元請け分担側に原因があり回避方法がない場合には、トラブル原因の可能性を言ってもまるでダメで、誰でもが納得するトラブル領域の切り分けが必要だ。元請け側は「もしかして自分の分担範囲のトラブル」とは思ってくれないからである。
 そんな時には簡単に手動・筆算で処理できる条件を探し出して実値と突き合わせを行い、どのレベルの処理から異常が現れるかとか、反論しようのないものを作って「意見を求める」ことになるのである。処理に選択の余地がある場合には、末端が文句を言わずに処理するのが多い。究極の合理性を追っても当面は意味がないからだ。
 異常結果を追い掛けてみると、元請け側が処理ソフトのデバッグに際して一時的に機能停止した機能を復活させるのを忘れていたとか、画面コピーコマンドを発行すると、シリアルポートに相手側シリアル通信ICをハングアップさせる異常コマンド電圧が現れるが、その自動復旧タイマーを制御ソフトに組み込んでなかったとか、ミイソBASICでは、インタープリータとコンパイラで「Rem」注釈と、「:」マルチステートメントの解釈が異なり、前者インタープリータでは注釈優先で改行0DHまでは「:」も注釈扱いだが、後者コンパイラーではCHAIN MERGE時にマルチステートメントの「コマンド境界」として解されてERRORとして止まってしまう特別「仕様」があって、数日その作業が止まってしまうとか酷い目にあったものだ。明かなミイソ側のバグなのだが、その言い分としては「マルチステートメントのエラーであり、個々のプログラムのデバッグは扱わない」というタカビーなものだった。「REM='」行内での「:」の機能についてはマニュアルばかりかどこにも情報はなく、しかも通常動作では注釈行内での「:」使用は注釈扱いで差し支えなく、コンパイラでのみトラブルになるのだから「言語仕様不統一の使用制限=バグ」だろう。こちらは酷く納期に追われていて反論どころではなかったが、実に横着な対応をされたものだ。
 PC-88では、インタープリータに式の先頭の固定文字列を読み取るアドレスを時々間違えて無関係のデータを拾うバグがあり、取り敢えずの回避策と平行して、式の先頭に空文字列を置いてそれを回避する根本的方法を掴むのに1週間近くも掛かったとか、末端はその都度睡眠時間を削っての出口の見えない悪戦苦闘に追い込まれるのだった。

 そういう立場の強弱を抱えている外注業者の指摘がすんなり通る条件というのは、大原則違反、タブー無視の設計仕様だろう。この場合、他社でCTC領域外の信楽高原鐵道小野谷信号所上り出発信号に対する直接制御=方向優先梃子設置である。その重大事が2つの裁判では全く顧みられていない。
(08/04/24 21:00追記)

※[詳しすぎるマニュアルは事故の素]

 前項をアプロードしてTVを見たら、丁度、尼崎事故3周年前夜特集で、「詳しすぎるマニュアルと標識・信号の確認操作で確認が形式化し肝心の確認が抜けて事故の素」という番組がNHK総合チャンネルから流れていた。当然だ!そんなもの(w。大原則と要所を押さえて、それ以上の詳細のチェックを無用にするのが図面登録やマニュアルの役目なのに、覚えきれないほどの膨大な縛りを掛けてしまったら、確認作業が平板になって、要所を押さえられない危険が増すではないか!必要以上の制限や確認動作の強要は管理側の責任逃れのアリバイ工作でしかない。本稿の趣旨の、領域外制御禁止の基本原則が設計時に貫かれていれば、方向優先梃子のあれこれの不具合の改修要求が強烈になって放置は無くなり、例外操作を細々とマニュアル化する必要は生じなかったろう。ポイントを押さえれば中間経過の制限は明示しなくても安全範囲に収まるとか様々のノーハウを駆使して整理してこそプロなのに、乗務員用の看板を全部付けるなんて害に転換するものも出てくる。曲線標のようにメンテ用の管理データを現場看板に表示して誤設定や狂いの進行を防止するのとは訳が違う。
 まぁ、懲罰的日勤教育に回されることなく乗務員の妥当な要求として取り上げられるようになったことはJR西日本職場の大きな変化と言うべきだが、従業員の意見を聞き出すための努力がなお一層必要であることを示すものだ。(08/04/24 23:55追記)

2008/04/22 22:55
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