山陽電車六甲駅衝突事故検討
1984 年5月5日11時30分頃、阪急電鉄六甲駅で、出発待機中の回送車4両編成の山陽電車が赤信号を無視して誤出発し、そこに追い抜きの阪急特急電車が進入、ブレーキを掛けたものの70km/h前後で衝突、脱線した。
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現示 |
| 制限 km/h
| 照査 km/h
| | 表示
| | 備考
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阪急 | 山陽 | 阪神
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G | | 106km/h | 110km/h
| | F / N | | コ ー ド 有
| | 自動緩解
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YG | 65km/h | 70km/h | 70 | 65
|
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Y | 45km/h | 50km/h | 50 | 45
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YY | 25km/h | 30km/h | 30 | 25
| 確認
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R | | 0km/h | 0km/h | 20
| 15 | | ※(確認扱いをすることで15km/h)
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B1 | 155m | 30km/h | 70km/h | (Y現示時)
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B2 | 62m | 20km/h | 確認
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B3 | 30m | 0km/h | 危険域
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See→[阪急・阪神・山陽ATS]
8両編成の停車できる駅で、4両編成が誤出発して、阪急ATSの
B2点、
B3点を通過した場合の最も冒進した停止位置を検討する。
● 停止信号手前の速度照査点
B1点
(155m、30km/h)照査、
B2点
(62m、20km/h)照査、
B3点(
30m、0km/h)照査があるが、一旦停車後の誤出発で、最長が8両編成で、事故列車が4両編成だから、誤出発位置としては
B1点 は過ぎて停まっていて、
B2点照査には掛からずに加速し、
B3点照査で非常制動コマンドを受けて、その動作まで1秒間空走してから非常制動で停止。
B2は誤出発防止切換が為されていないものと仮定。
軌道回路方式のアンテナ位置を列車先頭から1mとする。
電車の起動加速度
3.3 km/h/s、非常制動減速度
4.0 km/h/s、と仮定すれば、
B2点、
62m、20km/h=V1から
B3点、
30m、0km/h照査までの加速距離
L1=32mで(
20km/h−Δ不感)が、
V2に加速される。すなわち
V22−V12=2・α・L
V2=sqrt{2・α・L+V12}
=sqrt{2・(3.3/3.6)・32+(20/3.6)^2}
=9.46208[m/s]・・・・(=34.06 km/h:B1点速度)
空走距離
L3=9.46208[m/s]×1秒=9.46208[m]
制動距離
L2=V22/2α
=9.46208^2/2(4.0/3.6)
=40.28888・・[m]
B3点から、空走
9.46m、制動
40.2888m走って停まる位置は、
信号を20.75m冒進している(=1.0+9.46+40.288−30.0)。
これが支障限界内であれば事故にならないのだが、阪急特急は誤出発した山陽電車の土手っ腹に突っ込んで運転室が大破しており、どうも
回送の山陽電車車上ではATSが働いていなかった様だ。
また、停車後の時素で速照地上子を停止に切り替えて(=誤出発防止機能を設定し)誤出発に備えていたら、ATSさえ動作していれば冒進は起こらなかったが、営業本線上なのに「回送」でATSを断にした重大ミスがあった模様。
大手私鉄は1967年1月の私鉄ATS機能についての通達(
昭和42年鉄運第11号)で、本線走行に当たっては必ずATSが有効であることを義務付けたのだが、「回送列車」ということで誤解して、ATSを断にして本線上1km余先の留置線へ移動を始めたのかも知れない。後の中央線大月駅誤出発スーパーあずさ衝突転覆事故(97/10/17)では、ATSをハンドル連動投入改造中に未対応車が起こした事故だった。
誤出発自体は、休日ダイヤと平日ダイヤを勘違いして出発信号を見ずに特急通過を待たずに出発したものかと推測されている。
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Last update: 2012/04/19
(2012/04/19作成)
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