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JR西日本、山崎元社長刑事裁判証人尋問抄録

JR西日本、山崎元社長裁判証人尋問抄録

   (Y読売、A朝日、M毎日、K日経、T東京、H赤旗)
  • 事故報告再検討:信楽事故:目次
  • <信楽事故民事訴訟高裁判決文抄>2004年12月26日
  • <信楽高原鉄道分担訴訟>2011年4月27日負担割合7:3:MSN産経
       <信楽事故補償分担訴訟判決文>2011年4月27日
       JR西3:7判決に請求放棄=5:5で決着:日記#274=2011/05/31
  • <公判3回、証人尋問1>福知山線事故
    カーブめぐる証言矛盾

    JR西前社長公判 遺族「真実を」
       <3>

     2005年、兵庫県尼崎市のJR福知山線で列車が脱線し、乗客と運転士107人が死亡した事故で、業務上過失致死傷罪に問われているJR西日本前社長、山崎正夫被告の第3回公判が14日、神戸地裁で行われ、検察側の2人の証人へ尋問が行われました。

     当時JR西日本建設工事部土木課で、事故現場のカーブの半径を半分に変更した工事を設計した岩本幸夫氏が証言。工事について運輸省(当時)近畿運輸局は法令違反の有無などを審査するだけで、カーブの危険性やATS(自動列車停止装置)設置の必要性などは審査しなかったとのべました。

     一方、岩本氏は、カーブ半径の半減により制限速度が時速95キロメートルから70キロメートルに変更された際に制限速度標識を設置した理由について、検察調書と矛盾する証言をしました。調書で岩本氏は「運転士が制限速度の変更を忘れてカーブに進入すれば列車が遠心力で脱線し、乗客に危険が及ぶかもしれないと思った。そのため、標識を設置したほうがよいと考えた」などとのべ、カーブの危険性やATS設置の必要性を認識していたことを明らかにしていました。

     ところが、この日は検察官の尋問に対し、標識設置の理由を「わからない」と繰り返し、調書での自身の発言については「いっていない」「記憶があいまい」とのべ、検察官から、調書の内容に同意の上署名・押印したはずだと指摘されました。

     続いて、福知山線が東西線と直通運転を開始し、列車本数が大幅に増発された1997年春のダイヤ改正に向けて輸送計画を策定した西岡泰樹氏が証言。改正の内容は当時鉄道本部長だった山崎被告に報告しており、それを把握していたはずだとのべました。

     事故で娘を失った大阪市の女性(71)は「岩本氏が真実を語っていないことは、傍聴席から失笑が漏れるほどしどろもどろの様子を見ればわかります。自分で速度標識を立ててその理由がわからないなんて話が通りません。JRから圧力を受けたのかもしれませんが、岩本氏には事故の真実を語ってほしい」と話しました。

    福知山線事故/カーブめぐる証言矛盾/JR西前社長公判 遺族「真実を」
    - しんぶん赤旗'11/01/15社会面第2トップ

    <公判6回>福知山線脱線事故
    「前社長に説明せず」
       ATS整備 元社員証言覆す
       <6>

     2005年、乗客と運転士107人が死亡した兵庫県尼崎市のJR福知山線脱線事故で業務上過失致死傷罪に問われているJR西日本前社長、山崎正夫被告の第6回公判が28日、神戸地裁であり、証人尋問が行われました。

     山崎被告が室長だった安全対策室に勤務した元社員の高村文信氏(現北陸トラベルサービス総務部長)が証言。高村氏は、少なくとも1989年以前から、JR西には半径450b以下のカーブに改良型の自動列車停止装置、ATS-Pを整備する基準があり、その目的は「(脱線などの)重大事故の防止のためです」とのべました。

     一方、それらについて山崎被告に説明していたかとの質問に対しては「説明はしなかった」と答え、検事調書での「報告していた」との証言を覆しました。

     検察側は、高村氏本人が同室勤務当時に作成した、過去の重大事故をピックアップした資料に、カーブでの事故が25年間に2件起きていたことが記されていたと指摘。カーブでは事故の危険性があるためATSを整備する必要性があることを山崎被告に説明していたのではないかと追及しましたが、高村氏は「そういう観点では見ていなかった」などと繰り返しました。
       2011/01/29しんぶん赤旗14面社会・総合面#3トップ

    <証人尋問7T>JR脱線事故裁判
      ATS担当者尋問
       <7T>

     尼崎JR脱線事故で、業務上過失致死傷罪に問われた前JR西日本社長山崎正夫社長(67)の第7回公判が二日、神戸地裁(岡田信裁判長)で開かれ、山崎前社長が鉄道本部長を務めていた当時に、安全対策室で自動列車停止装置(ATS)の整備担当だったJR西社員の証人尋問が実施された。

     JR西の安全対策に対する認識を確認するため検察、弁護側双方が証人申請。鉄道本部長は安全対策室など複数の部署を統括する立場で、山崎前社長は1996年6月〜98年6月に勤めた。検察側は安全対策の責任者だった山崎前社長がATSを設置する義務があったと主張している。
       2011/02/02東京新聞夕刊D版8面うめ

    <公判7回>JR西訴訟で社員陳述
      脱線の危険性認識
       <7H>

     2005年、乗客と運転士107名が死亡した兵庫県尼崎市のJR福知山線脱線事故で業務上過失致死傷罪に問われているJR西日本前社長、山崎正夫被告の第7回公判が2日、神戸地裁でありました。山崎被告が室長だった同社安全対策室に所属していた同社員の藤江龍二氏に対する証人尋問が行われました。

     藤江氏は、カーブでの脱線事故の危険性と、それを防ぐATS(自動列車停止装置)の必要性を認識していたとのべた検察調書を否定し、ATS設置は「乗客の転倒を防ぐため」などとのべました。しかし、検察側の質問に対し、「(速度)制限は何のためにあるのかと理詰めで話されると、最終的には脱線(防止)しかないのでそういう供述になった」とのべ、カーブでの脱線事故の危険性とATSの必要性について認識していたことを認めざるをえませんでした。

     また藤江氏は、半径450b未満のカーブに改良型のATS-Pを整備する基準がJR西にあったことについて、「山崎さんは安全対策に見識が深い方なのでご存じであったのではないかと思う」とのべ、山崎被告が基準を認識していたとの考え方を示しました。
       2011/02/03しんぶん赤旗B版4面

    <公判1〜7回>社員ら5人 調書否定    <1_7>

        <証人尋問1〜7> 読売
     JR福知山線脱線事故で、業務上過失致死傷罪に問われたJR西日本の山崎正夫・前社長(67)の公判は地裁で7回を終え、JR西の社員と元社員計8人が証人に立った。尋問は▽現場カーブの危険性▽自動列車停止装置(ATS)整備の必要性――の認識に集中。証人全員が検察側に不利な証言をし、うち5人は検察の供述調書も明確に否定した。一方、検察側は「法廷証言は信用できない」と反論した。(諏訪智史、森大輔)

     ■全面否認 

     「私は無罪です」。初公判(昨年12月21日)で、山崎被告は起訴事実を否認し、「事故が起きる危険性を認識していたとの指摘は事実と全く異なる。私の立場ではATSの必要性に気付くこともできなかった」と、用意した書面を一気に朗読。検察側と全面的に対決する姿勢を鮮明にした。

     第2回(同24日)では、検察側が遺族と負傷者ら計29人の供述調書を朗読。「106人の尊い命を無駄にしないで」「親友を返せ、日常を返せと言いたい」などの心情が法廷に響いた。

     ■現場カーブの危険性

     第3回(1月14日)から証人尋問が始まり、現場を半径600メートルから304メートルの急カーブにする工事の設計に関わった元社員が1人目として出廷。工事が完成した1996年12月当時、山崎被告は鉄道本部長で、現場の危険性が審理された。

     元社員は調書で「運転士が制限速度(70キロ)を失念し、95キロでカーブに進入すれば、遠心力で脱線して乗客に危険が及ぶ」とされたが、法廷では「現場を危険と思ったことはない」と証言。「調書を大幅に修正するには何時間も同じやり取りが必要で苦痛だった」とし、事故が起きて申し訳ないという思いもあって署名したと説明した。

     第4回(同20日)で、3人目の証人になった社員は現場の運転経験がある元運転士。検察側は、工事で現場の制限速度が95キロから70キロになり、直前の直線(120キロ)との速度差が50キロに拡大したことから危険性を立証しようとし、社員は「ブレーキのタイミングが遅れると、最悪、事故が起きるかもしれないと思ったことがある」と述べた。

     一方で、事故直後に当時の垣内剛社長から「何でも話してほしい」と求められた際の会話として、「遠心力で脱線したら現場脇のマンションに当たるので怖いと思った。脱線の危険性を認識していた」とされた調書の供述を否定。「実際は危険と感じていない。ブレーキをかける地点を見逃してはいけないと思っただけ。引っ越しが迫り、その用意もあって、早く聴取を終えて帰りたかった」と答えた。

     事故で死亡した運転士を指導したこともあり、「お客さんの命を奪い、おけがも負わせ、本当に申し訳ございません」と涙を浮かべる場面もあった。

     ◆検察 「発言不自然」立証に自信 

     ■ATSの必要性

     第5回(同25日)以降は、ATS整備の必要性を中心に尋問が進行。6人目として証言台に立った元社員はATSの開発に関わったことがあり、「事故後の省令改正までATSの主な整備目的は信号無視対策。カーブでの事故防止は付加的だった」と強調した。

     調書では、山崎被告が鉄道本部長当時、静岡県沼津市のJR東海道線での追突事故を受けた社内会議で、ダイヤが乱れてコストがかかるとしてATSに反対したとされた。だが、法廷では「山崎被告はATS整備に前向きで、事実とは異なる。検事に『参考程度だから』と言われ、非常に弱い心で署名してしまった。反省している」と証言した。

     第6回(同28日)に7人目として出廷した元社員は、山崎被告が安全対策室長当時の部下でATSの整備計画に関わった。

     調書では「安全対策室は、半径450メートル未満のカーブは脱線の危険があると認識してATSの整備基準を決め、山崎被告にも伝えた」と記載されたが、元社員は「山崎被告に説明した記憶はない。事故まで基準を忘れており、説明することはあり得ない」と否定。

     「検事から『(上司に基準を)担当者が説明しないのは不自然』と言われて押し切られた」と述べた。

     第7回(2月2日)で8人目の証人になったのは安全対策室でATSの整備計画に関わった社員。鉄道本部内の会議資料に「ATSがあれば防げた事故例」として96年12月にJR函館線のカーブ(半径300メートル)で起きた脱線事故を挙げた。

     「JR西管内でも同様の事故が起こると思ったから」と調書で説明したが、法廷では「ATSには速度超過防止の効果もあると示しただけ。カーブでの事故防止に有効と思ったのではない」とし、「自分の認識と違うストーリーが調書に書かれていたが、早く帰りたかった」と語った。

     この日、検察側は、第3回で調書を否定した元社員の証言は信用できないとし、改めて調書を証拠請求した。他の証人についても「法廷証言より調書の方が信用できる」として調書を証拠採用するよう求める方針。

         ◇

     これまでの公判について、弁護人の一人は「現場の危険性を意識していた社員はいないし、ATSをカーブへ優先的に整備する議論もなかった。調書も検事の明らかな作文」と勢いづく。

     一方、地検幹部は「元社員でもJR西の関連会社で勤務しており、被告を前に不利な証言を避けようとしている。JR西から押収した資料と合わない不自然な発言も多い。危険性の認識などは客観的証拠で裏付けられ、立証に問題はない」と自信を見せる。

     公判は15日に第8回があり、9月30日の第29回まで期日が指定されている。尋問予定の証人は残り22人。
    (2011年2月13日 読売新聞)

    <第8回公判> ATSで矛盾証言
      福知山線事故 JR西社員

             2011/02/16 あかはた 14面【社会・総合】  <8H>

     2005年、乗客と運転士107人が死亡した兵庫県尼崎市のJR福知山線脱線事故で業務上過失致死傷罪に問われているJR西日本前社長、山崎正夫被告の第8回公判が15日、神戸地裁であり、同社社員2人への証人尋問が行われました。

     1994〜04年までJR西の大阪支社運輸部で運転設備を担当した谷内謙一氏(56)は、検察官の「ATS(自動列車停止装置)をカーブに設置するのは速度超過による脱線事故防止のためではないのか」との質問に対し、矛盾した証言を繰り返しました。

     谷内氏は、ATS設置の理由について「速度超過防止のため」と述べる一方、「脱線事故が起きるとは思わなかった」と証言。「速度超過が起きても脱線事故は起きないのか」との問いに同氏は「運転士は速度を守るので起こらない」と答えました。

     谷内氏は、検察調書では「脱線の危険性がある場所には(改良型の)ATS-Pを整備していた」「事故現場はきついカーブだと当時思い、整備の対象となることはわかっていた」とのべましたが、この日は否定。検察官に「内容が違うのに調書に署名したのか」と指摘され、「内容を読まずに署名した」と答えました。

     94〜01年にJR西の経営企画部に属し、東海道、山陽線のATS-P整備を担当した妹尾彰氏(53)は、半径450b未満のカーブにATS-Pを設置する基準について「当時の資料に書いてあるので、(山崎被告は)知っていたのではないか」と証言しました。

    <第8〜9回公判>調書否定 検察側が追及    <8_9>

         <8_9Y>読売新聞
    JR福知山線脱線事故で、業務上過失致死傷罪に問われたJR西日本の山崎正夫・前社長(67)の公判は15、17日に地裁で第8、9回があり、JR西の社員と元社員計4人が証人に立った。自動列車停止装置(ATS)の整備基準やカーブで脱線事故が起きる危険性を巡って、4人全員が検察の供述調書と異なる証言を繰り返し、検察側が厳しく問い詰める場面が相次いだ。調書を明確に否定したのは証人12人のうち9人になった。(諏訪智史、森大輔)

     ■「調書は想像」

     第8回では、9人目の証人として経営企画部でATSなどの予算に関わった社員が出廷した。検察側は、半径450メートル未満のカーブにATSを整備する社内基準があり、山崎被告も認識していたのに整備を怠ったと主張。この裏付けとして、社員が出席した社内会議(1997年)の配布資料をモニターに示した。

     検察側は「基準が書かれている。知っていたのではないか」と迫ったが、社員は「当時はそうかもしれない」と曖昧な返答。「山崎被告も基準を把握していたはず」とする捜査段階の供述も否定し、「想像で話しただけ」と述べた。

     検察側が「先々週の(証人尋問の)打ち合わせで、山崎被告は当然基準を知っていたと言ったばかりではないか」と問うと、社員は「覚えていない」と答えた。

     10人目になった社員は大阪支社でATS整備に関わった。調書では、半径600メートルから304メートルの急カーブにする工事の完成前に現場を歩き、「脱線の危険があると思った」と述べたが、法廷では「工事が終わっておらず、危険かどうか判断できなかった」とした。

     「ATSを個別カーブに整備するのは、(路線ごととする)本社の方針に反し、提案できなかった」とする調書も翻し、「個別整備の発想はない」と証言した。

     ■「うそだったのか」

     第9回では11人目として運輸部でATS整備に関わった社員が出廷。社内会議(2001年)の資料に「速度超過でカーブに入ると遠心力で乗客が転倒し、最悪の場合、脱線の恐れがある」と記していた。

     検察側はATSの整備目的はカーブでの脱線防止とみるが、社員は「主な目的は乗客の転倒防止。ATSの予算を得るため大げさに表現した」と説明。「うそを書いたのか」と追及されると、「安全性を高めるために誇張した」と強調した。

     12人目は安全対策室で過去の事故調査に関わった元社員。尋問では、山崎被告が同室長当時に策定した安全対策計画が焦点になった。検察側は「コストがかかるとしてATSを重視せず、計画では運転士の資質を問題視した」と主張する。

     調書では「(運転士の教育など)ソフト対策に終始し、ハード対策は全くなかった」と記載。検察側は、この計画に基づいて作成された事故対策の資料に、事故を起こした運転士の勤務態度などが書かれていることから、「事故原因を運転士個人の資質に求めているのではないか」と尋ねた。

     元社員は「それが全てとは認識していない」とし、弁護側の質問には「ハード対策がおろそかになった事実はない」と述べた。

             ◇

     106人もの乗客が死亡した事故で、企業幹部の刑事責任が問われる注目の裁判。審理の内容をまとめ、結審まで随時掲載します。初公判から第7回までは13日に掲載しました。

    (2011年2月20日 読売新聞)

    <第10回公判>元安全対策室長も調書否定    <10>

        <証人尋問10> 読売新聞
    JR福知山線脱線事故で、業務上過失致死傷罪に問われたJR西日本の山崎正夫・前社長(67)の公判は25日に地裁で第10回があり、安全対策室長だったJR西の池上邦信・元常務(65)ら2人が証人に立った。池上元常務は、山崎被告が鉄道本部長当時の部下で、山崎被告が安全対策に消極的だったとする捜査段階の供述を翻した。検察の供述調書を明確に否定したのは10人になった。この日で検察側が申請した19人のうちJR西社員、元社員計14人全員の証人尋問が終わった。(諏訪智史、森大輔)

     「仮定の議論だ」。13人目の証人として出廷した池上元常務は、検察側の質問に語気を強めて答えた。1996年にJR函館線で起きた脱線事故を受け、「JR西の旅客車でも(同様の事故が)起きたら、と想像しなかったのか」と何度も尋ねられ、「(脱線が)現実に起こるとは想像できなかった」と繰り返した。

     97年に岡山市の新幹線運転所構内で起きた脱線事故後、山崎被告が安全設備などハード面の対策に消極的な発言をしたとされる調書については「そんな発言をしたことはない。(消極的だったとは)心外に思う。レベルの低い調書だったが、(法廷で)やり合う腹を決めて署名した」と強調。

     「JR西が立ち直ることを嘱望されて社長になった山崎被告が、鉄道本部長当時にさかのぼって裁判を受けるのは不条理だと涙が出ます」とも述べた。

     14人目は運輸部で乗務員の運転指導などに関わった社員。2001年に上司の指示で運転士らのミス防止対策の資料を作成した際、カーブでの速度超過は脱線の危険があると記述した。

     その理由として、社員は「理論上の考えを書いただけで、運転士が大きく速度を超過してカーブに突っ込むと考えたことはない。資料を社内会議などで用いたことはない」と証言した。

     検察側はこの日、第6、7回で調書を否定した元社員と社員について「法廷証言は、証人自身が作成した客観的資料と矛盾する」として調書を証拠請求したことを明らかにした。

    (2011年2月26日 読売新聞)

    <第11回公判>現場カーブ「リスク高い」    <11>

    <証人尋問11>読売

    運輸安全委部会長 検察側主張に沿う証言

     JR福知山線脱線事故で、業務上過失致死傷罪に問われたJR西日本の山崎正夫・前社長(67)の公判は4日、地裁で第11回が開かれ、JR西の社員、元社員以外で初の証人尋問があった。JR東海、JR貨物の各社員と運輸安全委員会の松本陽(あきら)・鉄道部会長の計3人。社員2人はカーブの危険性に否定的だったが、松本部会長は「リスクが高い」と指摘した。(諏訪智史、森大輔)

     15人目の証人として出廷したJR東海の社員は、1989年に長野県のJR飯田線北殿駅構内で起きた電車衝突事故を受け、自動列車停止装置(ATS)の開発に関わった。

     98年以降、手前の直線の運転速度とカーブの制限速度との差が40キロ以上の5か所と運転士が危険とした3か所の計8か所のカーブにATSを整備したとし、「JR他社もカーブにATSを整備した」とする検察側の主張を裏付けた。

     一方、ATSの主な整備目的は信号無視防止とし、信号機約1800か所で優先的に整備したと証言。「(十分な教育を受けた)プロの運転士が運転するので、カーブで脱線する可能性は限りなくゼロに近いと思っていた」と述べた。

     16人目はJR貨物の社員。現場と類似する半径300メートルのカーブで起きたJR函館線の貨物列車脱線事故の再発防止対策に関わった。

     検察側から「旅客列車でも同じ速度でカーブに突っ込んだら脱線すると思うか」と問われ、「思います」と証言。だが、弁護側の質問には「函館線の現場は急な下り勾配でカーブ対策の議論はなく、環境が異なる福知山線の現場の危険に思い至るのは困難」とした。

     17人目の松本部会長は事故直後、独立行政法人「交通安全環境研究所」の主幹研究員として県警の依頼で原因を調査し、鑑定書は公判で証拠採用されている。

     検察側は、鑑定書に「ATSを最優先に整備すれば事故発生は防げた」と記載した根拠を質問。松本部会長は、現場カーブの制限速度が70キロで手前の直線の制限速度(120キロ)との差が50キロあるとし、「速度差50キロのカーブが直線と隣接しているのは相当例外的。リスクは高い」と、検察側主張に沿った証言をした。

     弁護側は最優先と考えた時期を問い、松本部会長は「鑑定書を作る時」と答え、その後の検察側の質問には「速度差が大きいと危険だという考え方は、危険性がわかりやすい指標として事故以前からあった。ただ、事故前に自分がATSを整備すべきだと言えたかはわからない」とした。

     岡田信(まこと)裁判長は、検察側が証拠採用を求めたJR西社員らの供述調書の採否を第13回(22日)で判断する考えを明らかにした。

    (2011年3月5日 読売新聞)

    <第12〜14回公判> 「カーブに脱線の危険」    <12>

        <証人尋問12〜14>読売

    社員ら供述検察側調書 主要部分を証拠採用

     JR福知山線脱線事故で、業務上過失致死傷罪に問われたJR西日本の山崎正夫・前社長(67)の公判は3月14〜31日、地裁で第12〜14回があり、検察側が申請した証人19人の尋問が終わった。岡田信(まこと)裁判長は、検察側が証拠請求したJR西社員ら証人7人の供述調書計11通のうち7通について、現場カーブの危険性などを認めた主要部分を証拠採用した。ただ、これらの供述が信用できるかどうかは今後の審理を踏まえて判断する。(諏訪智史、森大輔)

     「現場に自動列車停止装置(ATS)を整備するべきだった」。第12回では、今回の事故を分析した独立行政法人「交通安全環境研究所」の水間毅・主幹研究員が18人目として出廷し、そう強調した。

     水間主幹研究員は、現場を半径600メートルから304メートルに付け替えた工事を「一般的ではない」とし、「当時、(現場の)安全性を評価できていれば、ATSを優先的に整備すべきだと結論づけられた」と述べた。ただ、検察側から「山崎被告はATSを設置すべきだったか」と問われると、「鉄道事業に携わっておらず答えられない」とした。

     19人目は旧国土交通省航空・鉄道事故調査委員会(事故調、現運輸安全委員会)の山口浩一・元委員。

     法廷で、国鉄当時の後輩だった山崎被告に事故調の最終報告書案を漏えいしたことを認め、山崎被告から「個人の刑事責任が追及されないよう表現を直してほしい」と頼まれて他の委員に働きかけ、報告書では個人が特定できる部署名が「同社(JR西)」に改められたことを明かした。

     現場については「(急カーブへの)工事が終わって運行を開始する前にATSが設置されていないとおかしい」と指摘し、「会社が運転士を大事にしていれば、このような事故は起きなかった」とJR西の体質を問題視。「日勤教育は完全ないじめ」とし、井手正敬(まさたか)・元社長(76)は運転士を厳しく管理していたと証言した。

     第13、14回では、法廷で捜査段階の供述を翻す証言をしたJR西社員らの調書の採否が決定。岡田裁判長は7人について「証言態度に疑問がある」などとして1人1通ずつの主要な供述部分を証拠として採用した。

     採用された調書で、池上邦信・元常務は、1997年に新幹線運転所構内(岡山市)で起きた脱線事故後、旧運輸省との協議に向け、山崎被告から「すぐにハード(対策)をやると言ってええ格好するなよ」などと指示されたと供述。

     他の社員らは「現場カーブは脱線の危険性があるとわかった」「運転士が(工事)以前の制限速度で進入すれば遠心力で脱線し、危険が及ぶと思った」「脱線の危険性があると考えて(JR西管内の)カーブへのATS整備を提案した」などと述べていた。

     岡田裁判長は「証拠能力を認めただけで、信用性は検察、弁護側の主張を聞いて判断する」と説明。採用しなかった4通について「検察側が調書と法廷証言の違いを明確にしていない」「必要性がない」とした。

    (2011年4月5日 読売新聞)

    カーブの危険性 認識困難 <第15回公判>    <15>

        <証人尋問15>読売

    弁護側証人尋問 「ATS整備議論なし」

     JR福知山線脱線事故で、業務上過失致死傷罪に問われたJR西日本の山崎正夫・前社長(67)の公判は8日、地裁で第15回があり、弁護側が申請した証人11人の尋問が始まった。この日は、JR北海道の社員、JR東日本の元常務と部長の計3人が出廷。元常務は「幹部は支社からの情報がないと、危険な場所を確認するのは難しい」とし、鉄道本部長だった山崎被告も、現場カーブの危険性を認識するのは困難だったとの見方を明らかにした。(諏訪智史)

     JR北海道社員は20人目の証人。自動列車停止装置(ATS)の整備に関わっており、「ATSは主に信号無視対策。福知山線事故までJR北海道はカーブに整備しなかった」と述べた。JR函館線カーブで貨物列車が脱線した事故(1996年)の後も社内ではカーブにATSを整備する議論はなかったとも証言した。

     検察側は「山崎被告は函館線事故から現場カーブの危険性を予見できた」としており、この主張に否定的な見解を示したことになる。

     21人目は、ATSの整備計画に関わったJR東日本の安全企画部担当部長。ATSについて「カーブの半径や手前の直線との速度差に基づいて整備したことはない」とし、鉄道業界で統一した整備基準がなかったとする弁護側主張に沿う証言をした。さらに、福知山線の事故前に本社が危険なカーブを個別に選んで整備したこともないと述べた。

     検察側は法廷で、部長の部下と面会したJR西社員2人が山崎被告の書類送検後に交わしたメールを提示。部下が地検の取り調べでATSの整備状況を聞かれたことなどが書かれていたとされ、検察側は「JR西に情報を出したのか」と聞いた。「JR西と協力関係にあり、証言は信用性がない」と印象付けるのが狙いとみられるが、部長は「わからない」と答えた。

     JR東日本元常務は22人目。「幹部がすべて(の分野)に精通するのは不可能で、ATSの詳細な整備基準も知らないと思う」と強調した。「(一般的に)カーブが危険と思ったことはない」とし、福知山線事故も「カーブで脱線するとは思わなかった。運転士が大幅に速度超過した異様と言っていい事故」と指摘した。

     検察側は、3人が山崎被告に有利な証言をしても反対尋問では深く追及しなかった。地検幹部は閉廷後の取材に「現場の危険性やATSの必要性に関し、他社の社員らの認識を聞いても山崎被告の過失の有無には影響がない」と話した。

     この日の尋問終了後、岡田信(まこと)裁判長は「5月下旬にも被告人質問に入る予定」と述べた。

    (2011年4月13日 読売新聞)

    JR福知山線脱線:JR西前社長公判 <第16回>
       カーブにATS、必要性認識せず 元役員ら証言
       <16>毎日

     JR福知山線脱線事故で業務上過失致死傷罪に問われたJR西日本前社長、山崎正夫被告(67)の第16回公判が15日、神戸地裁であった。JR東海とJR四国でそれぞれ安全対策を統括した元役員2人が弁護側申請証人として出廷し、「カーブへの自動列車停止装置(ATS)整備の必要性は認識していなかった」などと述べた。

     JR東海は事故前、直線との速度差が40キロ以上などのカーブ8カ所にATSを整備していたが、元安全対策部長は「乗客の乗り心地のためで、脱線事故を考えたことはなかった」と証言した。

     JR四国は事故前にはカーブにATSを整備しておらず、元鉄道事業本部長は「過去に事故例がなく、運転士が制限速度を守るのが原則だから」と理由を述べた。【重石岳史、米山淳】

    毎日新聞 2011年4月16日 大阪朝刊

    「ダイヤには余裕あった」JR元運転士が証言<第17回>    <17>読売

    尼崎JR脱線事故で業務上過失致死傷罪に問われているJR西日本前社長山崎正夫被告(67)の第18回公判が28日、神戸地裁(岡田信裁判長)であった。JR西の宝塚線の元運転士が出廷し「ダイヤにはかなり余裕があったと思う」と証言した。

    元運転士は東西線開通に伴う宝塚線のダイヤ改正があった1997年から1年間、同線に乗務。「定められた速度で走るのが運転士。
    現場手前で時速100キロを出す必要はなかった。それほど厳しいカーブではなく、危険とは思わなかった」と述べた。

    続いて同線などで運転指導に当たったJR西社員が出廷。
    事故現場を急カーブに付け替えた後「危険と感じたことや、要注意箇所に挙げたこともなかった」と話した。

    また、社員の証言中、発言した傍聴人1人に対し、岡田裁判長が退廷を命じた。
        (2011/04/28 14:24神戸新聞)

    JR脱線公判 「カーブ危険感じず」 運転経験の社員証言<第18回>    <18>読売

    JR福知山線脱線事故で、業務上過失致死傷罪に問われたJR西日本の 山崎正夫・前社長(67)の第18回公判が28日、神戸地裁 (岡田信(まこと)裁判長)であり、弁護側が証人申請したJR西社員 3人が証言した。現場カーブの運転経験のある社員は、山崎被告が 鉄道本部長当時、快速電車を増発させた1997年のダイヤ改正に ついて、「かなり余裕があり、カーブで危険も感じなかった」と述べた。

    社員は改正後もカーブ手前の直線(制限速度120キロ)では 80キロ程度で走行していたとし、「同僚からも余裕がなくなったと 聞いたことはない」と語った。尼崎電車区で運転指導をしたことが ある別の社員は、同電車区の内規にある「要注意箇所」に現場は含まれて いなかったとした。事故前から福知山線の自動列車停止装置(ATS)の 整備に関わっていた社員は「整備の目的は速度超過防止だったが、 脱線防止のためという議論はなかった」と説明した。
        (2011年4月29日 読売新聞)

    「JRに3割責任」信楽高原鉄道事故の負担金 大阪地裁判決    <101>MSNサンケイ 2011.4.27 15:36

     滋賀県甲賀市(旧信楽町)で平成3年に起きた信楽高原鉄道(SKR)事故で、SKRとJR西日本がほぼ折半して負担した遺族らへの補償金などをめぐり、JR西が「事故原因の9割はSKRにある」として、SKRと出資者の県、甲賀市の3者に約25億3千万円の支払いを求めた訴訟の判決が27日、大阪地裁であった。田中敦裁判長は責任割合についてJRが3割、SKRが7割と認定し、既に負担した費用を差し引いた約11億1400万円の支払いをSKRに命じた。県、市への請求は棄却した。同事故の責任割合をめぐる司法判断は初めて。

     事故は3年5月14日午前、SKR(14・7キロ)の単線区間で発生。SKRとJR西日本の列車が正面衝突し、42人が死亡、614人が重軽傷を負った。

     事故当日、信楽駅の出発信号が赤のまま変わらないトラブルに見舞われ、SKRは上り列車を赤信号のまま見切り発車させた上で信号を修理。この修理作業の影響で、本来なら赤になるはずのすれ違い区間(小野谷信号所)の信号が青になり、これに従ったJRの下り列車と衝突した。

     訴訟で最大の争点となったのは、JRが無断で設置した信号設備「方向優先てこ」の評価。JRの下り列車を優先運行させるこの設備が、信楽駅の信号トラブルを招いた一因とされた。

     判決理由で田中裁判長は、SKR列車の見切り発車が「事故原因として最大の過失」とした上で、JR側の過失を検討。方向優先てこについて「操作するときもSKR側に何の報告もしておらず、現場が混乱に陥る原因となった」として事故との因果関係を認めた。

     また、JRの運転士についても、本来なら小野谷信号所で待機しているはずのSKRの上り列車がいなかったことを認識しており、「青信号であっても信頼できないことは予見できた」と注意義務違反を認定。トラブル防止のための乗務員の教育・訓練も不十分だったとし、JRの過失を3割と結論づけた。

     その上で、JRが主張した精算額から、人件費などを減額した約50億円のうち、7割がSKRの負担分とした。


    2011/05/04 23:55

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