[ワラ1形]

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鶴見事故の原因、ワラ1形貨車特性考

【ワラ1型脱線事故】 :鶴見事故後 <T1>

日付場所備考
1966/10/28成田線成田-酒々井間ワラ5141
1967/08/27常磐線柏-我孫子間ワラ45986
1968/10/14東北本線蕨-大宮操車場間ワラ2287
1970/08/05東北本線久喜駅ワラ10123
1971/09/06鹿児島本線鳥栖-肥前旭間ワラ12906
1972/05/26山陽本線幡生-厚狭間ワラ5834


【ワラ1型 vs ワム60000型 ワム80000型】 :諸元比較  <T2>

項目諸元観測備考
ワム
60000
ワラ1ワム
80000
ワム
60000
ワラ1ワム
80000
構造2軸2段リンク
全長 mm7,9008,0409,650連結面間
車幅 mm2,819
高さ mm3,770
軸距 mm
全長%
3,560
45.1
4,130
51.4
5,040
52.2
3,5604,046
50.3
5,021 赤推定値
自重 ton9.89.211.0
荷重 ton15.017.015.0
容積 m338.143.252.8
最高速度km/h757575
60〜79
27,054
推定計算mm換算dot
連結面100049840372
端面1364424427526172408
車軸12,1701,9862,315665307567
車軸25,7306,0327,335939851990
端面27,5497,6389,270107910671153
連結面27,9008,0409,650110611211185
全長 mm7,9008,0409,650 608
553
1081
970
813
745
連結面間
端面間
ワラ1形

ワム80000形


<T3>


軸距と車体長(2軸車操向等価質量試算)

鶴見事故の発端
ワラ1形貨車に試験省略・欠陥隠し!  <1>

 国鉄は昔、ほとんどの駅で貨物扱いをしていて、貨物列車が駅毎に荷役した貨車を連結して走ったが、その近代化輸送力増強で配備された有蓋貨車がワム60000、ワム70000、ワラ1、ワム80000(パレット荷役貨車)で、全国で見掛けた。そのうちワラ1型はレールの不整個所で時折減衰振動波形でガチャガチャガチャと烈しくピッチングする姿が非常に印象に残っており、見た目の特徴ではホイールベース(軸距)がかなり短めに見えたことの2点が強く記憶に残っている。

 久保田博著「日本の鉄道車両」に、
 「1963年11月9日、東海道線新鶴見付近の3複線で、下り貨物列車のワラ1形式FCが脱線転覆し、・・・・・・・・上りECが衝突して、161人が亡くなる大事故になった。・・・・・・新製間もないワラ1形式貨車の走行安定性が問題になった。  新形式車両の誕生の場合は、走行安定性などの性能テストを行っているが、ワラ1形式FCの場合は車体長さ、軸距、荷重時の重心高さなどの数値は在来ワム60000とわずかしか変わらないため、走行テストが省略されていた。  しかし以上の数値がわずかな差であっても、当時線路の原因かFCの原因か解明できない競合脱線事故が年間数件発生していたことを考慮すると、新製のワラ1形式の性能テストは実施すべきであったことが教訓として残された。」(p241末〜242−L5)、
 「戦前からの2軸FC(貨車)は、高速になると蛇行動しやすいなどの理由で最高速度が65km/hに抑えられていた」(p242−L8)
 とあり、ワラ1型の図面がある(p241)が、見た目の軸距はもっと短く感じられ、まさに「ワム60000とわずかしか変わらない」形状だったから、掲載図面は東海道線鶴見事故後に貨車の大量改造を行った際に軸距を伸ばす改造をした後の寸法ではないだろうか?

 ワム80000については当初の軸距5.03mに対して1975年以降製造分から5.3mに延長されたと記されている(「国鉄型車両 事故の謎と行方」p222L1梅原淳・池口英司著東京堂出版2005/09/30刊)
 同書は、狩勝峠脱線実験線で得られた公表されていないワラ1型の欠陥に関して以下のように述べている(p221L−5〜)
 1973年(昭和48年)1月になって得られた結論は、 2軸貨車の軸距という車輪と車輪の間の長さが3.5〜4メートル近辺では安全性が低い というものだった。 ワラ1形の場合、この長さは4.13メートル。十分に危険な数値である。結論はさらに続く。 軸距が延びれば延びるほど安全性が高まり、6メートルとなると脱線の心配はほぼない という。
 先ほど両数の比較として挙げたワム80000形はワラ1形が脱線していた期間中、実は1回も脱線していない。この貨車の軸距は5.04メートル・・・・・・1975年(昭和50年)以降に作られた車両は安定性を高めるために軸距をさらに延ばし、5.3メートルとなっている。


 ワム60000では軸距は連結面間距離の45%しかなく、車輪には車体振動の影響が大きく影響する。ワラ1型ではそれが特に烈しく出たのではないだろうか?<T2>でワラ1とワム60000、ワム80000の軸距比を比較しているが、問題のワラ1がワム8に近い値で、ワム6とは離れているのはどう考えてもおかしい。新型車供用時に性能試験を省略した理由として「ワム6類似寸法」を挙げているのに、実際の数値が安定性の高いワム8に近いなど考えられないだろう。それなら鶴見事故は起こらないで済んでいたはず。久保田氏が掲載したワム6とワラ1の比較図(p241)は、軸距4.13mが対策改造後の値であることを示唆するものとなっている。(半暴露を意図したレイアウトなのだろうか?)
 故久保田博氏は2001年3月刊の著書「日本の鉄道車両」で、ワラ1形の試験省略による走行特性不良の見落としを暴露しているが、それを実験的にも裏付けた狩勝峠実車実験結果も未公表だったのを2005年9月に梅原淳氏が著書で公表したことになる。国鉄「当事者調査事故」にはまだまだ問題が隠されていそうである。

 上図<T3>は車輪踏面から見た等価質量を計算しているが、1/2より大きくなるのはオーバーハングのためで、2軸貨車の軸距比50%の場合には変化分としては2倍の力を受けることを示している。(車長を連結面間ではなく車体端面間で計算しているがほぼ同じ)

※鉄道技研は、一般化・正規化された値ではなく「軸距」とか「バネ下荷重」とか、ナマの値を用いて対外的な解説を行っているが、どうも、現場技術者たちを低く見過ぎているのではないだろうか。航空機設計の解析技術を戦後の航空産業禁止で鉄道技研に持ち込んだとき以来の流れがずっと続いてきた感がしてならない。
 戦中には、零戦のフラッター発生による空中分解事故の振動解析で、急降下時の制限速度を大幅に引き下げたわけだが、その振動解析技術を鉄道車両に適用したのを説明するに当たり、基本的な理論解析である2次振動系の「減衰定数ζ」ではなく、鉄道現場に受け入れられそうな「バネ下荷重」を持ち出して物理現象のパラメターとしては曖昧にしてしまった!
 東海道新幹線の保線作業量見積推定を依頼されて、最も単純な通トン仮説を返して金科玉条化されてしまい、現実には5〜6倍の作業量に現場が長期にパンクした。
 ワラ1形脱線実験でも、車長比ではなく、一般性を欠く軸距ナマ数値で返して「現場の理解」を図った。
のではないだろうか。バネ下荷重など、レールへの衝撃がそれに比例して線路損耗には直結するが、乗り心地の方はバネ定数とバネ上総質量の2次振動系をオイルダンパーや摩擦でどう速やかに制動・吸収するかの話であり、設計開発の着目点として「バネ下荷重」はかなりずれている。お経の如く「バネ下荷重」をいうヲタはほっといても、設計者はそんなもの当然判っているから問題ないのか?あるいは門外漢選別設問に使って、話す内容を切り換えているのだろうか?

<T4>
<T5>


2014/03/05 22:30

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