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【トランスと動作周波数】交直両用電車の電源周波数については「50Hz/60Hzどちらでも何て事ない(TDF)」とか「中間の55Hzで設計する」とかの記事が横行していますが、それらは鉄芯入りコイルや電源トランスの動作を良く知らない間違った解説です。トランスの鉄芯には磁気飽和現象があり、ED75のタップ間電圧調整にも使っている磁気増幅器は、この飽和現象を積極的に利用して流通角制御をして電圧を制御しています。一方、歪みのない電圧が必要なトランスの場合は飽和しない直線範囲で使います。すなわち大きな励磁で鉄芯を磁気飽和させると短絡状態になるので、磁気増幅器では制御巻線の励磁電流で制御となりますが、トランスのコイルには短絡状態となる過電圧は掛けられません。 コイルに発生する電圧は、「磁束の変化率×コイル巻数」ですから、電磁鋼板の鉄心が飽和せず使える範囲は材質により磁束密度で1.2〜1.6[Wb/m2≡T(テスラ)](飽和磁束密度1.6〜2.0[Wb/m2≡T])程度であり、磁束の変化率は周波数比例ですから、発生電圧が周波数比例、60Hzより50Hzの方が最大電圧が低い訳で、これが電源電圧に満たないと一種短絡状態になって、トランスとしては動作できません。 今、最大磁束φmで動作しているトランスを想定すると、その巻線電圧は周波数比例 (∵v 航空機の交流電源周波数に400Hzを採用したのは周波数比例の出力を得る軽量化のためですし、数10kHzといった高周波でのスイッチング電源を採用すると鉄心が周波数反比例で小さくて済み、軽量化されます。 【トランスの小型化改良】車載用トランスは特に軽量化が求められますが、それは絶縁材の絶縁性と耐熱性改良と、電磁鋼板自体の磁気特性改良、トランス構造の改良が行われて実現されました。トランスの動作で損失を生じて銅損も鉄損もほとんど総て発熱となり温度上昇しますが、高温ほど放熱効率が良く小型化できるので、トランス材料中で最も熱に弱い絶縁物の耐熱温度で小型化限界が決まります。新系列国電のモータ界磁巻線に高耐熱の「C種絶縁」を採用して小型化したのがこれに当たります。交流電車開発当初にトランスの冷却液に使われたPCB(ポリ塩化ビフェニール)は高温での絶縁性・安定性に優れていて採用されたものですが猛烈な環境毒性が発見されたため使用禁止となり、PCB代替絶縁材を用いた車載トランスの設計・既存車対応にかなりの期間を要して北海道向けの交流電車711系に続くべき交流特急車両781系開発が遅くなり、繋ぎの485系投入では北海道の厳しい気象条件に耐えられず、定期列車のほとんどが運休するほど故障続発となりました。PCBは安全で現実的な処理法が定まらず、当面は永久保存しています。 鉄心の鉄損減少策は、先ず積層構造として、更に珪素含有合金として抵抗率を上げて渦電流損を抑えた熱間圧延の「珪素鋼板」が使われ、更にそれを冷間圧延した「方向圧延鋼板」が圧延方向に透磁率を増して鉄損抑制できることがわかって「オリエント・コア」などとして製品化され、珪素不使用の材質も現れたことで「電磁鋼板(←珪素鋼板)」と呼ぶようになりました。トランスのEIコアでは主磁束方向を圧延方向にして鉄損を軽減、更に「巻鉄芯型トランス」として枠に巻かれたコイルに帯鉄板を通して巻いて、磁路全体を高透磁率低損失構造にしたものが作られました。一般家庭向けの配電線柱上トランスなど巻線が単純なものの新増設をこの低損失=高効率の巻き鉄心型トランスが席巻し始めた時代に丁度重なって交直流電車の開発が行われました。但し、巻鉄芯構造は作業性が悪いので、主に小型トランスで、一旦鉄心だけで巻いて樹脂などで固めたものを切断してコイルと組み合わせる「カットコア・トランス」構造が工夫されました。(但し高圧タップ式交流電気機関車では単巻変圧器と整流変圧器を共通磁路で繋いで軽量化を図っていますから、巻鉄芯構造は採用できないでしょう)。 |
元慰安婦二人を妄想で誹謗中傷する カルト政治団体「幸福の科学」配布ビラ |
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