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サンケイvs日経 US-2救難飛行艇輸出
「武器輸出突破口」か「平和輸出」かのせめぎあい

 旧川西飛行機を受け継ぐ新明和工業kkの開発した高性能救難飛行艇をインドに輸出するというニュースが流れてネットを検索しますと、サンケイが「武器禁輸3原則緩和に伴い、・・・・・・・・タブーを取り払い、防衛産業の発展・・・・・・を図る」と、あくまで武器輸出拡大路線の報道。紙面では日曜日の1面トップです。

海自飛行艇 印へ輸出
 中国牽制、政府手続き着手

    産経2013.3.24 06:54 朝刊1面Top(1/2〜2/2ページ) <C1>
    http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130324/plc13032406580005-n1.htm

 政府が、海上自衛隊に配備している水陸両用の救難飛行艇「US−2」をインドに輸出するための手続きに着手したことが23日、分かった。インドは日本側に救難活動や海賊対策でUS−2を導入する方針を伝えてきており、製造元は現地事務所を設け、インド政府との交渉に入った。日本にとり輸出による生産増で1機当たりの製造コストを下げ、自衛隊の調達費を低減させるメリットがある。

 US−2は機体から特殊な装甲や電波などによる敵味方識別装置を外せば「武器」とは認定されないが、自衛隊が運用する航空機だとして輸出はタブー視されてきた。だが、一昨年12月の武器輸出三原則の緩和で「平和貢献・国際協力」に合致するものであれば「武器」も輸出を容認したことに伴い、政府はタブーを取り払い、防衛産業の発展と防衛費の効率化を図る。

 輸出にあたり、製造元の「新明和工業」(兵庫県)は防衛省以外に納入するための「民間転用」の手続きをとる必要がある。その一環として、防衛省が著作権を持つ仕様書やデータなどの資料の開示を求める申請を順次行っており、防衛省も開示に応じている。

 インド政府は3年ほど前から日本政府にUS−2を購入したいとの意向を伝えていた。昨年6月に海自とインド海軍が相模湾で初めて共同訓練を行った際、海自はUS−2も投入、インド海軍幹部は性能の高さを直接確認したという。

 インド政府はUS−2について救難活動に加え、海賊対策に転用することも検討している。インド洋での航行の安全性が高まれば、中東から日本に原油を運ぶ海上交通路(シーレーン)の安定にもつながり、日本にとっても意義は大きい。

 政府高官によると、タイやインドネシア、ブルネイなどもUS−2導入に関心を示している。インドに加え、これらの東南アジア諸国連合(ASEAN)各国と同じ装備を保有し、技術交流や共同訓練を活発化させれば、「高圧的な海洋進出を拡大させる中国への牽制(けんせい)にもなる」(高官)との効果も指摘される。

【用語解説】 US−2

 海難事故の救助を目的とした救難飛行艇で、海上自衛隊は平成18年度から配備。湖での離着水が中心のロシアやカナダの飛行艇とは違い、波高3メートルの荒海でも着水できる世界唯一の飛行艇とされる。航続距離は4700キロメートルで巡航速度は480キロ。

救難飛行艇のインド輸出で近く協議へ 政府
2013/3/24 19:04日経  <C2>

    http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS2400T_U3A320C1PE8000/
 政府は海上自衛隊に配備している救難飛行艇「US2」をインドに輸出するため、近くインド政府と具体的な協議に入る。防衛省はUS2の仕様が民間機と変わらないため、武器技術の輸出を原則禁じる「武器輸出三原則」には抵触しないと判断している。輸出による生産増でコスト削減をめざすほか、インド洋のシーレーン(海上交通路)安定にも役立てる考え。

 US2は水面着陸できる水陸両用の飛行艇。着水能力や低速飛行、航続距離の長さなどに定評があり、インドやブルネイが強い関心を示していた。US2の改装に必要な技術情報の開示や、防衛省以外に納入するための民間転用の手続きはすでに終えており、製造元の新明和工業は海外での商談で具体的なデータを提示できる。

BBS-0276.26-   2012/9/18 (Tue) 01:11:11  <C3>

非軍事で輸出可能!救難飛行艇US-2

(承前)日本の誇る飛行艇PS-1、US-1、US-2などは実は軍事的価値は低く、特殊輸送機や救難艇など一般用途機として輸出できる可能性が大きいのに、武器として輸出して武器輸出制限緩和の突破口としたい思惑から日本国内需要に留められて・・・・・・。

 かってアメリカで(経費のかかる海外駐留をやめて)有事に世界展開する戦略用の巨大輸送機開発をロッキードとボーイングに競わせて、軍事用輸送機にはC−5を採用したため、敗北したボーイングはそれを旅客機に振り向けてB747として市場を席巻したのは有名な話で、新明和工業の高性能飛行艇US−2も非軍事製品として各国の海難救助警察機構に売ればいいのにと思ってるわけです。

 着水してソナーを降ろして潜水艦を探知するって、停まってる飛行機なんか水中待機で待ちかまえるミサイルの餌食で、前線で活躍できる軍事的な実用性なんかありませんて。
 第2次大戦後、本格的に飛行艇開発をしたとこなんか日本以外には無いみたいですからね。
    US-2輸出問題

毎日新聞2013/03/25月2面14新版↑
 読売、毎日、2紙は「民間用途」「民間転用」と報じていて、日経は非該当品の輸出、「武器輸出3原則」の緩和に絡めて「タブーを取り払い」などと鼻息荒く報じたのはサンケイだけ!

 マジで「永久機関実現」報道をしたり、「予混合爆発」云々とか、ああいうレベルで国民に力尽くで極右的政治的方向を押しつける「正論」路線はたいがいにして貰いたい。

 US−2が「防衛庁が開発」とは!裏にどんな事情があるのかは判りませんが、製造業者とされている新明和工業と、2式大艇、紫電改、PX−S設計者の菊原静男氏抜きの表記は行き過ぎではないでしょうか。零戦の開発者に三菱と堀越二郎氏の名を抜いて「海軍省開発」とするようなものです。

読売新聞2013/03/25月2面↑
 一方、半日遅れでWebに掲載した日経新聞では「防衛省はUS2の仕様が民間機と変わらないため、武器技術の輸出を原則禁じる「武器輸出三原則」には抵触しないと判断している。」などと、これは平和利用の商業ベースで報じています。翌日月曜朝刊の紙面では2面左端中段に2段で目立たない扱いなのは抜かれた記事の常。東京新聞と朝日新聞には報道がありません。

 救難飛行艇については武器性がごく低く、海洋警察用や離島連絡用などとして非軍事分野の輸出が可能な製品(See→C3BBS-12/09/18)と指摘していたのですが、設計元の新明和工業サイトの開発史4/5ででも「対戦哨戒機が、着水して捜索するPS-1飛行艇ではなく空中捜索のP-3Cになったことで、救難飛行艇として水陸両用のUS-1を開発した」とあります。
 しかし、今回の報道は、あくまで「武器輸出の突破口」としたいイケイケのサンケイ報道と、非軍事商業ベース拡大の日経報道と、重要な点で真っ向から衝突する形となりました。

 実態でみますと、海洋警察行動を任務とする海上保安庁の巡視船には攻撃してくる北朝鮮工作船を撃沈したガトリング砲(バルカン砲)を搭載して砲弾に炸薬のある破壊力の大きい砲を装備しているので、その範囲であれば救難主体の警察行動とみなされ、戦争する軍への兵器輸出とは見なされないことになります。

 高性能救難飛行艇US-2輸出を、かねてから狙っていた兵器輸出の突破口にして軍事輸出拡大を図るのか、非軍事の評価に留めることで、戦争による莫大な需要を希求する産軍複合体の狙いを封じ込めるのかの大事な分岐点に居るようです。

対戦哨戒機PS−1 vs 救難飛行艇US−2/−1

 歴史的に見ますと「97式飛行艇」や「2式大艇」、零戦を越える新戦闘機「紫電改」を開発した川西飛行機(設計者 菊原静男)が次期開発用に暖めていた改良案を敗戦・航空再開後に米軍から試験用の飛行艇の提供を受けて実用化試験をして小型プロトタイプを作り、先ずは水上専用の試作飛行艇UF-XS→開発名PX-S(PS-1)対潜哨戒飛行艇を開発。しかし後継対潜哨戒機がロッキードP3-Cに決定しPS-1納入が打ち切られたことで、「救難飛行艇」としてその水陸両用版のUS-1、エンジンを増力したUS-1A、さらに離着陸の安定化と与圧室を設けるなど改良のUS-1A改=US-2が作られました。PS−1対戦哨戒機は兵器でしたが、US−1以降は救難任務で警察行動ということです。飛行艇は夜間の離着水ができませんから、せめて陸上の基地からの夜間離着陸を可能にする水陸両用化は救難出動範囲を拡げる必須の機能だったのでしょう。

 飛行艇としては当時から優れていた2式大艇の最大の弱点が波による障害で、波高1m程度が限界で、水の飛沫によりプロペラが曲がってしまう事故を起こしています。戦後、その滑水時の水流を艇体の端の整流板で抑える波消し装置の試験を米軍提供の機材で行って成功、飛行艇PS-1(開発名PX-S)開発に至りました。当初、航空ファンには米軍からマーチン飛行艇の提供を受けたと伝わりましたが、真相はマーチン飛行艇を要求したものの実際には他の機種:グラマン社製のアルバトロス機が提供され、小型の飛行艇UF-XSを試作して確かめています。
  See→飛行艇開発ストーリー1〜5:新明和工業kk(旧川西航空機:紫電改を設計)

PX-S荒波試験
波高4mでのPX-S離着水テスト
US-2量産初号機
飛行艇開発ストーリー1〜5:新明和工業サイトより

 この米軍からの飛行艇機材提供が後の国会で日米軍事協力に当たり憲法に抵触するとして大問題になり政府はタジタジだったのですが、その開発経過自体は報道もあり航空趣味誌などで良く知られていましたから、当時の社共の政治家が暫くは気付かず見過ごしてきた様です。現状の「F35戦闘機共同開発」とはエライ違いですが、その国会論戦で初めて憲法上の重大問題だったことに気付きました。今は技術的にかなり突っ込んだ記事も時折見掛けますので専門担当の人を決めて注目しているのかもしれません。

 外洋では常に数mの波高があって一般の飛行艇は波高0.3m〜1m以下の波のない入り江や島影でないと運航できなかったのですが、新明和は2種類の波消し装置に加え、高揚力装置として翼後縁端(フラップとの境界)から高速の空気を吹き出して失速を防ぐ境界層制御「BLC」を備えて低速での離水・着水ができるようにしたため、タービンエンジンはプロペラ用4発+BLC空気供給用1発の5発を備え、設計当初の目論見としては波高5mで離水・着水可能としていて、大波の頂上から加速して、次の頂上では離水しているなどと言われました。(新明和工業のサイトでは「BLCの採用は唯一」となっていますが、戦闘機F104もBLCを採用していて「唯一採用」ではありません)
    (See→波消し装置と、高揚力装置(境界層制御:BLC)の構造

 ところが、実際に運行してみるとUS−1では水面への墜落事故を頻発させてしまい、波高3mでの離着水などと公称性能には余裕を持たせた模様です。(PS−Xの高波高試験が波高4mで実施された写真と動画が同社サイトにあります)。着水面付近の気流データは飛行場と違い正確には得られませんし、気流に渦があると逆行部で飛行可能限界を越えて翼端失速などが起こり離水着水時では姿勢回復前に落ちてしまうのかも知れません。US-1のかっての事故多発は離着水速度が相対的に遅すぎて瞬間的な僅かの追い風が効いて失速に至り、回復操作が間に合わず墜落に至った可能性もあります。また、PS−1は離水出発なのに対し、US−1では陸上出発で水面に慣れないからなのか?渦の追い風方向の安全をもっと多く見て着水速度を上げるなどの措置を採っているのでしょう。

 翼端失速はローリング方向のモーメントが大きくて、離着水時の低空飛行では失速回復前に左右に回転して復旧できずに水面や地面に至る=墜落する怖ろしい特性で、開発当初の後退翼ジェット戦闘機や三角翼機がこの翼端失速でよく墜落していました。旅客機では翼の根本から先に失速する設計にして、失速に気付いてからの回復操作(仰角減少とエンジンパワー増)が間に合うようにしています。

 加えて、海面の見えない夜間離水・着水は現在もできませんので、救助現場作業は日中に限られますが、それはヘリコプターでも同様で、水陸両用化で陸上の滑走路から夜間離着陸で現場に向かい、高速と長い足で日中救助できますから救難飛行艇US-2の有用性は否定されません。冬の海に落ちた米軍パイロットを凍死寸前に救ったこともあるようです。

 この救難飛行艇US-2インド輸出問題の最大のキーは、サンケイなど右派勢力の目論む(攻撃)兵器輸出例外拡大自由化の突破口にさせてしまうのか、哨戒機から外されて救難機とした平和的な非軍事製品の輸出という位置付けにさせて、戦争圧力拡大に歯止めを掛けるのかのせめぎ合いでしょう。単純なレッテルで「兵器輸出反対」としては却って兵器輸出の実績にされてしまいます。

 かってアメリカの戦闘機に使う半導体メモリーの半数が日本の民生用製品で、「半導体摩擦」でこの輸入を止めてしまうと飛べなくなってしまい、半導体チップは日本製でもそのパッケージ工程だけマレーシアなどに持ち込んで日本製ではなくして逆輸入や対米輸出する辻褄合わせをしたとか、ヴェトナム戦争での機上誘導爆弾スマート爆弾のモニター画面がSONY製の5インチマイクロテレビだったとかあって、民生輸出なのか武器輸出なのか論議を呼んだことがありましたが、あれは民生品を市場調達して武器に使ったものとして武器輸出とはされませんでした。今回も「非兵器」で押さえ込んだ方が今後の兵器輸出の際限のない拡がりを抑えられるのではないでしょうか。今回のサンケイ報道の勇ましさをみても彼等の意図は良く見えます。(オーストラリアやアメリカの牛を数ヶ月日本の牧場で育てて高級和牛にするとか、中国・韓国産あさりを生け簀に泳がせて日本産に洗浄するとか今や農産物・海産物にも拡がった手法は日米半導体摩擦の不良品の多い粗悪半導体使用強要が起原であります)

2013/03/25 18:55

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