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労働契約放棄の残業手当計算
「週間金曜日」誌のチョンボ!

 「週間金曜日#821」10/29号p32&#823から未払い残業手当の請求を勧める記事が掲載されました。記事の主旨には全面賛同なのですが、具体化のところで立ち位置を間違えてしまい、各自の労働契約内容に基づく計算を全く指摘せずに、処罰を以て強制する最低基準である労働基準法準拠の算出法のみを述べています。刑罰法による強制規定よりも有利な契約内容(=就業規則、協定、労働協約など)を捨ててはいけません
 それだと未払い賃金請求額がかなり減る場合があるだけでなく、現在、労働契約内容で支払われていることが攻撃対象にされてしまう危険を生じます。
 加えて、運動論的な配慮、正当な要求をしたことに対する不当な報復弾圧を呼ばないための諸注意が極めて弱く、賃金不払いを長期に継続している様なアウトローの経営者に対する警戒に触れてないのは危ないと思いました。

 立場がハッキリしないための不利益の前例としては、健康保険料負担割合問題があり、企業負担が多いのは悪であるかのキャンペーンに負けて負担割合を折半に近付けたり健保組合を解散したりという事態があります。
 現状の派遣労働者は端から各社の健康保険組合にも厚生年金にも入れず、それが若年労働者の半数に迫り、現役人数不足で制度崩壊に向かっていますが、同様の問題は昔からあり、繊維型産業や地方子会社のような若年労働低賃金構造で健康保険組合を維持するには企業負担割合を増やして低賃金分を補う必要がありました。政府管掌健保が危機的状況なのも加入者に超低収入層ばかりを集めているからです。
 しかし厚生省はこの企業負担増分を目の敵にして折半の方向に指導し、マスコミもそれを煽りました。中でも酷かったのは、健保料100%会社負担で有名だった朝日新聞までが、一般産業界での企業負担分加算を攻撃したことでした。自分たちは他より高給でその会社負担100%の恩恵を被りながら、他は平気で攻撃するデタラメさに「この新聞はダメだ!信用できない!」と思った最初の事件でした。(高度成長期には朝日に倣って健保料100%会社負担を春闘要求に加えていた労働組合も少なくありません)。

 また、賃金請求時効が2年(12/3号)であることについてもあまりに実務的で、支払い側が時効の権利を主張しなければそのまま受領できますし、新たに気付いた事柄の時効は気付いた時点が時効の起算点だという考え方もあって、様々交渉の余地があるので、請求自体は未払い分全額で差し支えないことや、労働組合・争議団などの運動体を通じての交渉では、妥結時に暦年度や決算期を区切りに若干延長するとか、別途「解決金」で取る例は少なくないとか、組合のない事業所で36協定を結んでいる(御用)親睦団体全体会の活用法など、実態に即した記事にして貰いたいものです。

兵庫高教組  労働組合としては弾圧で3人しか残れなかったので未払い分の遡及支払いは請求者のみに留まる少額で済んだはずなのに、会社側が法定分の時間外労働手当さえ支払い拒否し不当配転攻撃を掛けたことで、労基署への違法申告から、国会質問にまで採り上げられ、異例の罰金まで支払った上、全社員の未払い分の精算を求められて40億円近い支払いを行った白木屋争議のモンテローザ社の例などは取り上げて当然のものです。無期限自宅待機という実質全員解雇を受けた組合員たちは博多から札幌まで全国のモンテローサ社傘下の白木屋・魚民・笑笑などに各地の地域労連の支援を受けて一斉に宣伝攻勢を掛けて、争議支援と共に未払い残業手当請求を呼び掛け、手続き書類代書で闘争支援カンパを得て、闘争費・生活費が得られてしまい、争議解決時には非組合員だった社員たちに対しても50万円〜100万円もの未払い賃金が支払われたのだとか。そういう成果を挙げながら弾圧に怯えて労働組合に参加する従業員は新たには現れず職場の労働組合としては結成に失敗してしまったのは残念ですが、会社は不当な支払い拒否で旧悪を徹底して暴かれて、新たに21億円、延べ38億円もの支払いをすることとなり、闘えば解決する好例にはなりました。
 職場に残って働くつもりなら敢えて喧嘩にするような激しい対応法は避けなければいけませんが、労働者が正当な主張をするだけでぶち切れて違法な不利益扱いをしかねない危ない状況があるわけで、単に刑事罰強制の請求権計算だけではなく、法律を守らせるだけでも運動論と、その組織・労働組合が必要であることは触れなければいけないことです。
     See→ ●三多摩労連#12大会議案書 Ctrl-F”白木屋分会”争議 2002/07/20 定期大会
●3人になってもがんばった! 2001/11/13 兵庫高教組
●白木屋闘争勝利報告集会
    他にも例は沢山あります。

 未払い残業問題はアサ・ジャー廃刊に始まり唯一残った左側の週刊誌「金曜日」として掲載は当然の重要事項ですが、一般週刊誌が内容不足の記事を載せたのならまだしも、一刻を争う緊急的内容でもないのに、こんな不用意な記事を出してはいけません。そもそも労働基準法そのものに「総則」として、「第一条の2  この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない。 」とされていて、斯界では昔から「法内残業」という言葉すら一般使用されているのに、それを無視して事業者が処罰されない最低基準の計算方法だけ示すなんてトンでもない話です。

 かって同誌が「内部告発」の国鉄労働者個人を実名で記事にしてしまい無用の不当処分を招いたのと同様の現場慣れしない配慮不足の編集なのでしょうか。「JRのレールが危ない!」というキャンペーンでレールのシェリング、軋み割れ、折損多発から危険性を指摘していましたが、実は新幹線保線の知見から毎年の0.08mm程度のレール表面研削で防止できることが10年も継続した新幹線での確認実験で分かり「平成11 年度日本材料学会技術賞」(1999年度)を受賞したことで鉄道各社が折損防止策として対策を進め、JR東日本は2000年にスイス、スペノ社からレール削正車を輸入・増配備・運行していたのを現場の労使が知らず、「危険だ!」「処分だ!」と揉めた実に締まらない話でした。職務的には会社の方が酷いのですが、組合側も技術情報は得られないんですかねぇ?譴責処分した側こそ職務怠慢で譴責処分や厳重注意処分されるのが適切な事件でした。画期的な新技術の導入を社内どころか担当部局にも広報しないなんてどんな会社だ?という疑問もあります。
      See→ ●日記#140: レール破損原因は既に確定済み
●日記#123: レール破断の原因は?

 日本では永年サービス残業が横行して、企業側が莫大な利潤を上げているだけでなく、過労死・鬱自殺といった悲劇がはびこって、国会審議でも主には共産党が百数十回の具体的追及を重ねて厚生労働省から管理通達が出されたものです。 →[労働基準法]

 「労働契約」の多くは、具体的には「別に定める就業規則」が多いのですが、これは監督署への届け出義務と、事業所に備え付けたり、各個人に手渡して周知する義務があり、その変更には労働者の過半数を代表する者、労働組合の意見を聞かなければなりませんし、具体的労働条件については各自の合意のない不利益変更は無効だというのが主たる判例になっています。
 さらに労働組合が会社と協定した内容は、労働協約の一部として就業規則に優先して実施されます。古い組合では包括的な労働協約として労働条件が定められ、それが就業規則になっているでしょう。

 そういう位置付けでみた場合、所定時間外労働賃金計算で、最低基準である労働基準法と、労働契約とで何処が違うかと云いますと、
  • 1日の稼働時間が8時間未満の場合、8時間に達するまでは「法内残業」と呼ばれ、割り増ししなくても処罰されませんが、労働契約で大抵は割り増し対象となっています。休日や深夜の割増率の上乗せもありますから、両方計算して多い方を請求できます。
  • また、監督署への申告は、使用者に対する刑事罰を伴うものですが、労使協定違反、労働協約違反については監督署が取り扱わないよう労働省からきつい縛りを掛けられていて、放置されてしまいます。
     運動を背景の交渉ですと、会社は職場世論を見ながら、払うべきものを考慮するわけで、こちらは世論喚起の運動を背景に、交渉と、民事裁判と、監督署を通じた刑事事件とを重層的に駆使して前出の白木屋・モンテローザ社争議のようなダイナミックで実り多い闘い方が可能になる訳です。

     週間金曜日誌編集部は残業手当の法的実務面だけでなく、運動面からのあれやこれやを解説する記事を追加する必要があると思います。それも物分かりの良い会社に従順な組合の活動家ではなく、常に労働者に有利な解決をどうたぐり寄せるかに知恵を絞る闘う組合の意地悪い参謀格を引っ張り出して書いてもらう必要があるでしょう。派遣法の極限の悪用に見られるように企業側は常に最悪条件を押しつけてくるのですから。

    第2の「天皇機関説弾圧」か?      <2>
    「暴力装置でもある自衛隊」非難
    「2番目じゃダメですか!」以上の愚民化煽動!

     官房長官が公務員の政治的中立についての質問を受けて「暴力装置でもある自衛隊、ある種の軍事組織だから、特段の政治的な中立が確保されなければならない」と答えたことをめぐり、政治問題化されていますが、まさに無知の煽りで恥ずかしい限りです。

    仮想敵は国民で創設!警察予備隊→保安隊→自衛隊

     平和的なデモに発砲、取材中のジャーナリストを狙い撃ちで殺害したり、軍事演習対応を口実に一般住民居住区域を砲撃破壊したり、大量破壊兵器保有を捏造して他国に攻め込み戦禍の街にして大統領を死刑にしたりの有無を云わさず強行する暴力組織が軍隊だからこそ、絶対的に文民統制が貫かれる必要があり、それはまともな政府に制御されないと大変なことになるわけで、純粋な発言内容そのものには何等問題はありません。まして日本の場合、政府首脳を殺害する515事件、226事件という軍事クーデターにより軍隊が制御できなくなって破滅のアジア侵略戦争に突き進んだ苦い経験があり、戦後も自衛隊の前身である「警察予備隊」は、アメリカ占領軍が朝鮮戦争に出動している間に左派勢力が政権を握らないよう、侵略外敵ではなく日本国民に銃を向け従わせるための暴力装置として設立された胡散臭い出生の軍隊ですから国民による特に厳重な監視統制が必要です。
     60年安保闘争では自衛隊出動で国会デモ鎮圧を図ろうとする岸信介首相に時の防衛庁長官赤城宗徳(赤城徳彦元農相の祖父。不肖の孫は絆創膏大臣。重なる不祥事発覚で参院選を不利にしたと閣僚を辞任w)が、国民に銃を向けたら自衛隊は存続できない!と断固拒否した話があるくらい危うい存在でした。
     さらに、社共革新共闘が盛んな頃「社共が政権を取れば、自衛隊はその政府に従うべきだ」と法体系遵守を述べた自衛隊幹部を左遷してしまい、暴力機構である自衛隊が政府に従わないクーデターの間接的意思表示として大変警戒されましたが、いまだにそのままになっています。

     こうした極めて普通な評価に対して国会審議を止め、辞任を要求し政治的抹殺を図るというのでは戦前の天皇機関説美濃部達吉博士に対する弾圧と同様の暴挙です。こんな暴論を参院東京選挙区選出丸川珠代議員が国会質疑で罷免を求めて延々と質問を続けていました。
     仙石氏の官房長官としての失敗は、極右議員の多い場所で、学者的なストレートな物言いをして因縁を付けられて法案審議時間を奪われたことで、発言の中味ではありません。本来総理大臣の配下にあって時には命懸けの任務を与えることもあり得る自衛隊に対して、その政府を動かす要人が国会審議の場で直裁・唐突に「暴力装置」と言ってしまっては身もフタもないとは思わなかったんでしょうねぇ(w。せめて226事件非難の話の中で言うべきでした。

     石原慎太郎都知事といい、丸川議員といい、東京がこうしたナチス煽動型の政治家ばかり選ぶようになったのは大変残念です。この類の無茶な発言としては、スーパーコンピュータ開発事業の事業仕分けに際して「世界一になる理由は何があるんでしょうか?2位じゃダメなんでしょうか?」と迫って予算削減方針を決め、世論には大受けした蓮舫議員の暴論があります。

     普通に考えれば、かっては世界一の能力だった日本製スーパーコンピュータが、他国製品に次々抜かれて30位台に落ちるまで新規開発をしてこなかったことが見えて、科学技術立国を標榜してきた日本の見過ごせない後退として何とかしたいと判断する方が順当でしょう。
     ところが、そうした経過と内容を理解できないまま、聞く耳持たずに財務省の振り付けのままに舌鋒鋭く追及して廃止宣告とは、国政が反知性軍団に占領された実に情けない場面に見えました。利権絡みでない技官には純粋に仕事を追求している人達も多く、無知議員の受け狙い衆愚パフォーマンスに叩かれる悔しさには同情します。See→renho_sha蓮舫議員ツイッター「・・・・・娘が理科2がわからない!!と泣いている。もちろん、私にもわからないので聞こえないフリ。」←説明を聞いても理解できなかったのに、分からないまま強権的に切り捨ててはいけません!分からなければ一旦保留でしょう。

     もっともコンピュータの性能評価法は一律ではなく、様々な「ベンチマークテスト」で一応の評価をするわけで、本来は目的毎にソフトウエアーとセットで評価されるべきものですから、1特性だけでの単純評価はできませんし、ハードをソフトと対立させ否定する言い分は間違いです。

     もちろん、開発実務に関係ない高級官僚の食客天下りで莫大な賃金・特別退職金を持っていくのは、スパコン開発に限らず全団体で辞めてもらいたいのは当然で、それを指摘するのであればまともな世論も賛成したでしょうが、肝心のそこを放置して仕分け人の絶対的立場を嵩に着て技術開発そのものを全面否定する乱暴さには辟易とします。重要性を全く理解できないままの思いつきパフォーマンスでしょう。この蓮逢議員も東京選出というのは野蛮な衆愚反知性派を囃す「世論」に次々占領されてしまった様でイヤになります。それは民主的なワイマール体制をぶち壊して世界を地獄に引きずり込んでしまった強力なナチス支持世論の増殖に似ています。

    2010/12/04 23:55

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